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清冽
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せいれつ
ふりがな文庫
“
清冽
(
せいれつ
)” の例文
男女の別は、男は多く
仰
(
あお
)
ぎふし、女は多くうつふしになりたるなり。旅店の
背
(
うしろ
)
なる山に登りて見るに、処々に清泉あり、水
清冽
(
せいれつ
)
なり。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
羨
(
うらや
)
ましい、
素晴
(
すばら
)
しく幸福そうな眺めだった。涼しそうな緑の衝立の蔭。確かに
清冽
(
せいれつ
)
で豊かな水。なんとなく魅せられた感じであった。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
朝凪
(
あさな
)
ぎながら海近い空気の冷たさであったのか。こめかみがうずくような
清冽
(
せいれつ
)
なものに打たれ、立ちどまって深い呼吸をはきだした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
すべての見せかけの情実から放たれることは、実に
清冽
(
せいれつ
)
なわざではないか。とはいへそれが、決して容易いわざだなどといふのではない。
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
そして、その
清冽
(
せいれつ
)
に口をそそぎかけた時、かれは、意外な物を見つけだした。あわててうがいの水を吐いて、向うの草むらへ飛びついた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
水の音がするので、ふと気のついた左膳は、小走りの足をとめて谷間へおりると、
清冽
(
せいれつ
)
なせせらぎにかわいた咽喉を
湿
(
うる
)
おした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
前には母屋へつづく庭がひらけ、うしろはずっと松林だった、厨にはその松林を通して引いた
筧
(
かけい
)
から、絶えず
清冽
(
せいれつ
)
な水がせんせんと溢れていた。
日本婦道記:不断草
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
健造が、妻ということばを云うときその響は大層
清冽
(
せいれつ
)
でありました。無色透明で。智恵子さんのところへ行くそうです。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
わたしが
普蘭店
(
ふらんてん
)
で飲んだ噴き井戸の水などは
清冽
(
せいれつ
)
珠
(
たま
)
のごとく、日本にもこんな清水は少なかろうと思うくらいであった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
儞
(
なんじ
)
に筧の水の
幽韻
(
ゆういん
)
はない。雪氷を
融
(
と
)
かした山川の
清冽
(
せいれつ
)
は無い。
瀑布
(
ばくふ
)
の
咆哮
(
ほうこう
)
は無い。大河の
溶々
(
ようよう
)
は無い。大海の
汪洋
(
おうよう
)
は無い。儞は謙遜な農家の友である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それが雨のあとなどだと、店内の片すみへ川が侵入して来ていて、
清冽
(
せいれつ
)
な
鏡川
(
かがみがわ
)
の水がさざ波を立てて流れていた。
涼味数題
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
木場郷藤ノ尾の一軒家を救護班本部に借りる。まず一同は屋前の林をくぐり、渓流に下り立ち、岩に衣をかけて、激しく流れる
清冽
(
せいれつ
)
の水に身体を沈める。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
妻ノ耳ノ肉モ裏側カラ見ルト
冴
(
さ
)
エ
冴
(
ざ
)
エト白クテ美シイ。アタリノ空気マデガ
清冽
(
せいれつ
)
ニ
透
(
す
)
キ
徹
(
とお
)
ッテイルヨウニ見エル。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
頭上の、
蒼白
(
あおじろ
)
い太陽から降り注ぐ、
清冽
(
せいれつ
)
な夜気の中で、渚の腐れ
藻
(
も
)
の間から、一人の女が身をもたげてきた。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
旧藩時代のさる名高い土木家が、北山の水を町にひくために
開鑿
(
かいさく
)
した水路だそうだが、いつも探さ一二尺ほどの
清冽
(
せいれつ
)
な水が、かなりな速度で、白砂の上を走っている。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
それは羽衣のように軽くて、しかも白砂の上を浅くさらさら走り流れる小川のように
清冽
(
せいれつ
)
なものだ。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
監視者の涙のように
清冽
(
せいれつ
)
でもある。特に文章がダイナミックで、天に飛ぶように躍動している。
真説 石川五右衛門『後編』に期待す
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ことに
清冽
(
せいれつ
)
豊富なるヨルダン川の水源でありまして、
瀑
(
たき
)
あり
淵
(
ふち
)
あり、
急湍
(
きゅうたん
)
あり
洞窟
(
どうくつ
)
あり、大瀑のひびきによりて淵々呼び
応
(
こた
)
え、波は波を乗り越えてゆく壮観を呈しました。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
同時にこの忠臣のお守りをして、玄宗皇帝や楊貴妃の冥福を祈りつつ一生を終ろうという
清冽
(
せいれつ
)
晶玉
(
しょうぎょく
)
の如き決心を固めた……と告白しているが、実は大馬力をかけたお
惚気
(
のろけ
)
だね
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
誠にその水の
清冽
(
せいれつ
)
なることは透き通るばかり、
雪融
(
ゆきどけ
)
の水の集まった清浄な池といってよい。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
人の世のうつし身の男子に
逢
(
あ
)
ふより先、をとめのかの女は
清冽
(
せいれつ
)
な河神の
白刃
(
はくじん
)
にもどかしい此の身の性慾を
浄
(
きよ
)
く
爽
(
さわ
)
やかに
斬
(
き
)
られてみたいあこがれをいつごろからか持ち始めて居た。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
中仙道と尾張路との岐れ路で、
清冽
(
せいれつ
)
なる玉泉をもって名のある、平和な美濃路の一要駅が、今夕、この流言によって、多少とも憂鬱の色に閉されていることを米友が認めました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
網棚
(
あみだな
)
の片隅に置いた骨壺が、絶えず彼の意識から離れなかった。荒涼とした夜汽車の旅だったが、混濁と疲労の底から、何か一すじ
清冽
(
せいれつ
)
なものが働きかけてくるような気持もした。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
清冽
(
せいれつ
)
な流れを、黄昏のうすい光に散らしながら、水車がゆるい速度で廻っている。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
が、水は
清冽
(
せいれつ
)
で底の
藻草
(
もぐさ
)
や小石まで、
透
(
す
)
いて見えるかと疑われるばかり、そして四周を緑濃い山々が取り囲んで、鳴き交う小鳥と空飛ぶ白雲のほかには、訪れるものもない
幽邃
(
ゆうすい
)
さです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それからまた何んといふこと無く
川面
(
かはづら
)
を覗込むだ。流は
橋架
(
はしげた
)
に激して素絹の
絡
(
まつは
)
ツたやうに泡立ツてゐる。其處にも日光が射して薄ツすりと
金色
(
こんじき
)
の光がちらついてゐた。
清冽
(
せいれつ
)
な流であツた。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
彼が、その
清冽
(
せいれつ
)
な水を味わっている間は、清盛に対する怨みも、島にただ一人残された悲しみも、忘れ果てたようにすがすがしい気持だった。彼は、
蘇
(
よみがえ
)
ったような気持になって立ち上った。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
清冽
(
せいれつ
)
掬
(
きく
)
するに堪えたる涙泉の前に立って、我輩は巻煙草を
燻
(
くゆ
)
らしながら得意にエジェリヤの
昔譚
(
むかしものがたり
)
を同行の諸氏に語りつつ、時の移るを忘るるほどであったが、いざ帰ろうという時になって
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
一丈ばかりの滝の水はすこぶる
清冽
(
せいれつ
)
、いざかかろうというところへ滝番に
伴
(
つ
)
れられた一人の狂女、大暴れで滝つぼへ抱き込まれるその顔色の凄いこと、正気の我々ぞっとして逃げだす始末
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
苦熱の一夜を明かした後、足を
清冽
(
せいれつ
)
な水に洗われ、身体を夏の朝の微風になでられながら、その湖水のほとりに立っていたのだ。彼は飛び込んで泳ぎ出した。どこへ行くのかわからなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
庄吉は、欄干へ片手をのせて、その上へ顎を置いて、
清冽
(
せいれつ
)
な水を眺めながら
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
すなわち泉に蟻の落ちてもがいているということに水の
清冽
(
せいれつ
)
、樹陰の近さ等を連想せしめて、むしろ涼しさに属する光景なのでありますが、この句はそれに頓着なく「暑さかな」としています。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
霧の深くたちこめたねっとりした空気を裂いて、時折り
腸
(
はらわた
)
にしみいるような、小鳥の
清冽
(
せいれつ
)
な鳴き声が頭の上をよぎってゆく。妻はその
鶯
(
うぐいす
)
という名をもうとっくに覚えたことを誇らしげに夫にささやく。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
そこにはよどんだ水が流れの
清冽
(
せいれつ
)
さをしらないような、古さだけがあった。正直いちずな貧しい漁師の一家にとっては、それが
円満具足
(
えんまんぐそく
)
のかぎりなのだろうかと、ひとりもどかしがる大石先生だった。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
清冽
(
せいれつ
)
掬
(
きく
)
すべき
冷泉
(
れいせん
)
のある、
其
(
その
)
美
(
うつく
)
しき
花園
(
はなぞの
)
に
入
(
い
)
ることを
得
(
え
)
ました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
中身ばかりの
清冽
(
せいれつ
)
な生きものが
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
どこまで行っても
清冽
(
せいれつ
)
な浅瀬。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
死をもって、貞操を守ったかの女の——“女の道”のかなしさに、人びとは
瞼
(
まぶた
)
をあつくし、その
清冽
(
せいれつ
)
さに、
驚愕
(
きょうがく
)
したのであった。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
清冽
(
せいれつ
)
な水と、苔の濃い緑と、葩のうす紅との色の調和も美しかったし、私はしばらくわれを忘れて見惚れていた。
日本婦道記:桃の井戸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女は
清冽
(
せいれつ
)
な湖水の底にでもいるように感じ、炭酸水を喫するような心持であたりの空気を胸一杯吸った。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
槍のかわりに草刈り鎌を
揮
(
ふる
)
い、ふりかぶるのは刀ではなくて
鉞
(
まさかり
)
であったり、銃をかつぐ肩には駄荷をのせていても、心はこの一挙手一投足に
清冽
(
せいれつ
)
な熱情をこめていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
清冽
(
せいれつ
)
な空気が
鼻腔
(
びこう
)
から頭へ滲み入ると同時に「秋」の心像が一度に意識の地平線上に湧き上がる。
帝展を見ざるの記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
陽のおもてに雲がかかったのであろう、障子いっぱいに射していた日光がつうとかげると、
清冽
(
せいれつ
)
な岩間水に似たうそ寒さが部屋をこめて、お艶は身震いに肩をすぼめた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それでも
清冽
(
せいれつ
)
な水と白砂の感触は、学校での今日の不快な印象を洗い流すのに十分役に立った。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
それは、葉末の露に映った、自分の頭上に、見るも
燦然
(
さんぜん
)
たる後光が照り輝いていて、またその光は、首から肩にかけた、一寸ばかりの空間を、
透
(
す
)
んだ
蒼白
(
あおじろ
)
い、
清冽
(
せいれつ
)
な輝きで覆うているのだ。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
彼は秋の朝の光の輝く、山国川の
清冽
(
せいれつ
)
な流れを右に見ながら、三口から仏坂の山道を越えて、昼近き頃
樋田
(
ひだ
)
の駅に着いた。淋しい駅で昼食の
斎
(
とき
)
にありついた後、再び
山国谷
(
やまくにだに
)
に添うて南を指した。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ふと、この街をめぐる、或る大きなものの構図が、このとき正三の眼に描かれて来だした。……
清冽
(
せいれつ
)
な河川をいくつか乗越え、電車が市外に出てからも、正三の眼は窓の外の風景に
喰入
(
くいい
)
っていた。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
温泉宿から
皷
(
つづみ
)
が
滝
(
たき
)
へ登って行く途中に、
清冽
(
せいれつ
)
な泉が
湧
(
わ
)
き出ている。
杯
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
だが、
加茂
(
かも
)
の堤に出ると、
咸陽宮
(
かんようきゅう
)
の
唐画
(
からえ
)
にでもありそうな
柳樹
(
やなぎ
)
の並木に、
清冽
(
せいれつ
)
な水がながめられて、
冷
(
ひや
)
りと、顔へ、
濡
(
ぬ
)
れ
紙
(
がみ
)
のような風があたる。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大月の
宿
(
しゅく
)
を出た街道は半里ほどすると爪先あがりに
笹子峠
(
ささごとうげ
)
へ一本道、右に
清冽
(
せいれつ
)
な流れをみながら行くこと三十町で
初狩
(
はつかり
)
村へ入る、峠にかかる宿のことで茶店が三四軒
無頼は討たず
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“清冽”の意味
《名詞》
清冽(せいれつ)
(空気や流水が)澄んで、かつ涼やかであること。
(出典:Wiktionary)
清
常用漢字
小4
部首:⽔
11画
冽
漢検1級
部首:⼎
8画
“清”で始まる語句
清
清々
清水
清浄
清楚
清潔
清元
清洲
清明
清吉