)” の例文
池へ投身しようとして駆けて行くところで、スクリーンの左端へ今にも衝突しそうに見えるようにっているのも一種の技巧である。
映画雑感(Ⅲ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それから写真を二枚って貰った。一枚は机の前に坐っている平生の姿、一枚は寒い庭前にわさきしもの上に立っている普通の態度であった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仮に、その女が犯人だとしても、まさか女が裸体で天井裏にいたのもおかしいし、また女が女湯から活動をるなども変な話である。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
十月一日、午前中、赤坂の自宅にて臥床のままレントゲンをる。午後、その結果をみて笹本博士、松本氏と同道、書斎の病床に通る。
年譜 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「左は僕の知つてる人にく似てる。」などゝ言つて笑ふものも有つた。禮服、勞働の姿でれて居た。K君は二枚分けて貰つた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
母が亡くなる直前、私の古い弟子の一人が、母の写真をり、絹地に大きく引き伸ばしてくれましたので、唯今仏間に掲げてございます。
それにつけて思い出すのは私があの写真をってやった時だ。その時お前たちの中に一番年たけたものが母上の胎に宿っていた。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
お袋に兄貴、従妹いとこ、と多勢一緒にった写真を送って来た時、新吉は、「何奴どいつ此奴こいつ百姓面ひゃくしょうづらしてやがらア。厭になっちまう。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それから日比谷ひびやで写真をって、主人、伯父、郷里の兄、北海道の母にとどく可く郵税ゆうぜい一切いっさいはらって置いた。日比谷から角谷は浅草あさくさに往った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一枚の絵葉書は多那川遊園地の桜を背景にF——学園の遊びのパーテイ、吉良、義光ちゃん、八重子の三人が並んでられている写真でした。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
うちの寝台はぎいぎい鳴りますけれど。庭には沢山あなたの好きな羊歯しだえていますよ。(しかしこれはうちのをったのではありません。)
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そしてあくる日は、記念だからと言つて、裏道の、田圃を見晴した二階づくりの写真屋で、手札形の写真を一枚つた。
田舎からの手紙 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
この現象げんしよう少年讀者しようねんどくしやむかつて説明せつめいすることはすこぶ難事なんじであるが、たゞ噴火ふんかさいはつせられた數回すうかい連續的爆發れんぞくてきばくはつ寫眞しやしんれたものと承知しようちしてもらひたい。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「え、写真がないって!……亡くなる前にったのをお祖母さんが持ってると、隆ちゃんは云ったじゃないの。」
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
これはそろいの着物出来ましたとき二人で記念にりましたのんで、新聞にも出たことある問題の写真やのんです。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
聲色をつかつたりして得意になつてる奴があるだらう? 僕はあいふ奴にや、目の玉を引繰返して妙な手附をしてるところを活動寫眞につておいて
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と結んで、おまけにどこでったかわからない私の横顔の写真に、鬼課長狭山氏と標題みだしを付けて割込ましてある。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あえはじず、その有様をらせ、そのまた写真を公然と新聞に掲げていたのが、ようやく影を見せなくなったのは、やっと、大正十二年大震後のことではないか。
明治大正美人追憶 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
写真をったときの仲間としてだけ今も記憶に残っているのだが、事実彼の銀行の行員だが、同僚というわけでなく、同僚などというのはおおげさな話で
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
カメラを持ったお上りさんの青年たちは、モデルをつかって写真をっている外国人を、ふしぎそうに見ているが、まもなく了解して、じぶんたちもやりだす。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ルピック夫人は答えるのである——「そりゃ可愛かわいれてるもんですから、みんな持ってかれてしまったんですよ。だから、一つも手許てもとには残ってないんです」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
これは特に顕著けんちょではないが、いわゆる「あまのじゃく」性を相当もっている。例えば雑誌社などから、家族の集団写真しゅだんしゃしんりにくると、頑として仲間に入らない。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
彼等かれら女の子達ヤンキイガアルズと遊んでいる芝生しばふを通りかかると、「ヘエイ、ボオイズ」とか、変なアクセントの英語で呼びとめ、ぼく達とかたを組み、写真をってくれました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
この服装なりが一番似合うとおおいに得意になって写真までった。服部長八の漆喰細工しっくいざいくの肖像館という見世物に陳列された椿岳の浮雕レリーフ塑像はこの写真から取ったのであった。
意地いじわるき同僚が、君、どう、着色写真でもって、君のブライドに送らんかと戯れ候も一興に候。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
俺もいっしょにってくれと、割りこむように飛んできたのは、思いがけない父の円団治でした。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そして僕の写真もれるようにと希望された。だが僕はその時あいにく写真をっていなかった。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その書類を地下室へ持っていって写真をったのち、すぐメリコフのポケットへ返して錠をおろし、元どおり洋服の釦鈕ボタンを掛けておいた。メリコフはこんこんと眠っている。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
こいつがハリソンのうちへ出入りしていようとは思わなかった。こんな奴が出這入りをして、素っ裸の写真なんぞをらせるようじゃあ、まだほかに何をしているか判らねえ。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
比嘉も、何となく不安な病状だつたので、レントゲンをりたかつたのだと云つてくれた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
獅子獣小さしといえどもり食らう事塵土じんどのごとし、大竜身無量にして金翅鳥こんじちょうたる、人身長大にして、肥白端正に好しといえども、七宝のかめに糞を盛り、汚穢おわい堪うべからず
坂田からは自分がったのだという写真をはがき型に引きのばして送ってきた。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
事情はこみ入っていたのだが、そのため僕には全部今まで隠されていた。僕は死んだ母の写真を見せてもらった。僕には記憶がなかったが……。僕の父もその母と一緒に僕と三人でっている。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
ソコでこの少女が芸者か女郎か娘かは勿論もちろんその時に見さかいのあるけはない——お前達は桑港サンフランシスコに長く逗留して居たが、婦人と親しく相並あいならんで写真をるなぞと云うことは出末なかったろう
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
小母さんも、「私ももう五六度写ったはずだがねえ。いつできるんだろう。まだ一枚もくれないのね」と突っ込む。それから小母さんは、向いの地方じがたへ渡って章坊と写真をった話をする。章坊は
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
山畑にあれの独活ほるうしろでは君がカメラにるべかりけり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かたみかも知れぬと思ひられつつ青澄む空に鳩の舞ふ
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
安成子は河原へ下り立つて寫眞をつた。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「絹子さん、家の新聞にられましたね」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「これが大学でったの」
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
門の内掛稲かけいねありて写真
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
大学の制服を着た写真をこせとある。三四郎は何時いつつて遣らうと思ひながら、つぎへ移ると、案の如く三輪田の御光さんが出て来た。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
師走しわすも十日過ぎに成って岸本は小旅行を思立った。彼は節子の一人でれている写真なぞを自分の眼に触れないところへしまってしまった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
不覚にも、私はその一本を長く借覧中、写真までっておきながら、奥付の印行書林の名や、上梓された年代をつい記録しておかなかった。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
色の白そうな、口髭くちひげまゆや額の生際はえぎわのくっきりと美しいその良人の礼服姿でった肖像が、その家には不似合らしくも思えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
紋付きを着てった写真や、それをモデルにしてかいた油絵などを見ても、なんだかほんとうの祖母らしく思われないが
糸車 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのころ皆で一しょにった何枚かの写真の中の彼の姿だけは、ときおりしかそれを取り出して見なかったせいか
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「そんなことは訳はない。空中から赤外線写真をればいいのだ。わが領土内にいてもこれ位のことは見えるのだ」
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自動車のおとが青山街道にしたかと思うと、東京のN君外三名が甲斐かいの山の写真をりに来たのだ。時刻がおそくて駄目だったが、無理に二枚程撮って帰った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それをこしらえた時分のことや、その着物着て一緒に写真ったりした事が考え出されて、またジリジリ腹立って来て、ええ、こんなもん、拵えんといたらよかった
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)