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患
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わずら
ふりがな文庫
“
患
(
わずら
)” の例文
丁度結婚後二年目の終りに、わしはチフスを
患
(
わずら
)
って、しかもそれがこじれて、三月というもの、病院生活をしなければならなかった。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは私の叔父の家で、その当時、
麹町
(
こうじまち
)
の一番町に住んでいたが、叔父は秋のはじめからの
患
(
わずら
)
いで、歳末三十日の夜に世を去った。
正月の思い出
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
元来欧洲航路のカーゴボートの
一等運転手
(
チーフメート
)
であったのが
肺尖
(
はいせん
)
を
患
(
わずら
)
った
揚句
(
あげく
)
、この病院の新聞広告を見て静養しに来たものだそうである。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼女は僕が会社で自分の配下につかっていた助手の妹で、彼が
肋膜
(
ろくまく
)
を
患
(
わずら
)
って寝たとき、
欠勤
(
けっきん
)
の断りに僕を訪ねて来たことがあった。
壊れたバリコン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しかし彼女は種々の軽い
患
(
わずら
)
いにもかかわらず、非常に晴れ晴れとしていたので、その隠れた病苦もただ彼女の魅力を増すばかりだった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
「唯一つ今のお話の、前の会社の方は、君が盲腸炎をやって長く
患
(
わずら
)
ったことにして置き給え。病気は明かに一身上の都合だから」
秀才養子鑑
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
お前は始終
患
(
わずら
)
ってばかりいるのだから、一と月や二た月転地するよりもいっそ
家中
(
うちじゅう
)
でもっと空気のいい処へ引越すことにしよう。
途上
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は診察の結果を聞いてから、ここを引き揚げたものかと独りで思い
患
(
わずら
)
っていたが、痛がる下の腫物を指で押したり何かしていた院長は
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
光圀かつて、大藩の主にありながら、しきりと思いを国のゆくすえにのみ
患
(
わずら
)
い、財を散じ、臣を労し、なおその業は中道にある。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
叔母は婦人病かなんか
患
(
わずら
)
っていたが、
辺鄙
(
へんぴ
)
な田舎では充分の治療が出来ないというので、私達の家から病院に通うためだった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それはこの手紙によっても察することができるようにかなり重い病気、かなり永い
患
(
わずら
)
いにかかって江戸に残されているのです。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
同仁
(
どうじん
)
病院長山井博士の説によれば、忍野氏は昨夏
脳溢血
(
のういっけつ
)
を
患
(
わずら
)
い、三日間
人事不省
(
じんじふせい
)
なりしより、
爾来
(
じらい
)
多少精神に異常を呈せるものならんと言う。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
春濤は失意に
加
(
くわう
)
るに
瘧
(
おこり
)
を
患
(
わずら
)
い、毅堂の帰府を待ち得ず
悄然
(
しょうぜん
)
として西帰の途に上った。これらの事は皆『春濤先生逸事談』に記述せられている。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
浦子はこどものときにひどい脳膜炎を
患
(
わずら
)
ったため
白痴
(
はくち
)
であった。十九にもなるのに六つ七つの年ごろの智恵しかなかった。
汗
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ここ一年とちょっとの
中
(
うち
)
に、元子は二人ものきょうだいを、失っていた。姉の方はながい
患
(
わずら
)
いののち、そして弟はあっというまの
脳溢血
(
のういっけつ
)
だった。
日めくり
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
まあ、そんなことは、今言わなくったっていい。……先の別れる時に泣いた。……お前いったん戻ってからも、後になって、お前が
患
(
わずら
)
っているのを
雪の日
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
京都の宿で
患
(
わずら
)
いついた時は、書きにくい手紙を伏見屋の金兵衛にあてて、余分な路銀の心配までかけたこともある。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
相当に腕が
利
(
き
)
いたので暮しに事を欠くということがなかったのだが、ふと眼を
患
(
わずら
)
って殆ど失明するまでになった。
遍路
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
背丈の高い怒り肩のかなり際だった風貌なのに、どこか病気でも
患
(
わずら
)
っているような蒼白い
窶
(
やつ
)
れた表情をしていた。
日本婦道記:藪の蔭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ほうお、爺様も
患
(
わずら
)
ったのがね。俺もこれ、この
大
(
お
)
っき孫、嫁にやってがら、こうして床に就いたきりで……」
蜜柑
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
岩田君一家を誘うつもりでいたところ、あいにく、当の岩田君が胃を
患
(
わずら
)
つていて、その計画はフイになつた。
岩田夫人の死を悼む
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
だから重吉は、自分の努力で病勢を納めて来ているものの、本当には拘置所で
患
(
わずら
)
うようになった結核がどの程度のものなのか、正確に知らないも同然であった。
風知草
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
約一年
許
(
ばか
)
りもこうしてやっていたが、此の土地は非常に湿気が多い為め、
遂
(
つ
)
い急性のトラホームを
患
(
わずら
)
った。
私の経過した学生時代
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ここに十二年間
血漏症
(
ちろうしょう
)
を
患
(
わずら
)
い、多くの医者に多く苦しめられ、そのために財産を傾けてしまったけれども何のかいなく、病気は悪くなるばかりという一人の女が
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
しかし、おばあさんもまたしあわせな
人
(
ひと
)
ではありませんでした。ふと
目
(
め
)
を
患
(
わずら
)
って、それがだんだん
悪
(
わる
)
くなって、ついに
両方
(
りょうほう
)
の
目
(
め
)
とも
見
(
み
)
えなくなってしまったのです。
おばあさんと黒ねこ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
この者の処分に万一口出しでもあって、そのままに附けておくと
成
(
な
)
ると、
患
(
わずら
)
いの種を
蒔
(
ま
)
くことになる。
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
そのうち
何処
(
どこ
)
からか、去年の暮れごろから目を
患
(
わずら
)
っていたおじさんが急に失明しかけているというような
噂
(
うわさ
)
を耳にして、私はこれは早く往ってあげなければと思い
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
あんなお美しいおかたが、そんな怖いお
患
(
わずら
)
いをなすっていらっしゃるのは、お気の毒でございますね。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
「寝込むほど
患
(
わずら
)
ったのは、六つの時
麻疹
(
はしか
)
をやってから、ツイぞ覚えのねえ事さ。鬼のかくらんだよ」
銭形平次捕物控:088 不死の霊薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
甲府で罹災する少し前から結膜炎を
患
(
わずら
)
い、空襲当時はまったく眼が見えなくなって、私はそれを背負って
焔
(
ほのお
)
の雨の下を逃げまわり、焼け残った病院を捜して手当を受け
たずねびと
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鶴は、この冬、越後で雪にあって、長らく
患
(
わずら
)
い、その後も、心細く暮しているように聞いております。おゆるしいただけましたら、さぞ、よろこぶことだろうと思いますが
西林図
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
三つの年に脳膜炎を
患
(
わずら
)
ったその子は、命だけは不思議に助かったが、いつも天井を見ていた。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
その後
天平
(
てんぴょう
)
の
御代
(
みよ
)
となって、
聖武
(
しょうむ
)
天皇が眼病を
患
(
わずら
)
い
給
(
たも
)
うた折、
光明
(
こうみょう
)
皇后がこの寺に御
平癒
(
へいゆ
)
を祈念されたところ、幸にして
恢復
(
かいふく
)
され、
叡感
(
えいかん
)
のあまりその香薬師
如来
(
にょらい
)
を胎内仏として
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
剣技
(
うで
)
は左衛門の方が上ではあったが、長年肺を
患
(
わずら
)
っていて、寒気を
厭
(
いと
)
い、紙帳の中で生活しているという身の上で、体力において忠右衛門の敵でなく、忠右衛門のために打ち
挫
(
ひし
)
がれ
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それに肺を
患
(
わずら
)
っておるということだし、一時は
不憫
(
ふびん
)
と思い、杉山の願いもあったから、住まわしてやったが、邸の
為
(
た
)
めに衛生上もよくないから、あの小僧は出て行かせなければならんの
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
おなじ夏のある暁方、肺病の病舎では、三年越し
患
(
わずら
)
った六十近い老人が死んだ。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
汽車の煤煙が眼に這入って、半年も眼を
患
(
わずら
)
い、生活の不如意と、目的のない
焦々
(
いらいら
)
しさで困ってしまいました。半年もすると、両親は尾の道を引きはらい、東京の私の処へやって参りました。
文学的自叙伝
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そのために、数十年来一度も欠かさなかった胡弓の門附けを、この正月ばかりはやめなければならなかった。その翌年は、これはまた木之助自身が感冒を
患
(
わずら
)
ってうごくことが出来なかった。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
お医者に
治
(
なお
)
してもらうさ。治ることだってあるんだから。それはそうと、あたしと、お前さんと、一体、どっちが余計難儀をしてるだろう。お前さんは、自分で眼を
患
(
わずら
)
ってることもしらずにいる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
昔、吉兵衛という篤信な
妙好人
(
みょうこうにん
)
がおりました。妻が
中風
(
ちゅうぶう
)
で長い間
患
(
わずら
)
いましたので、日夜心をこめて看護致しました。室の掃除はもとより、食事の仕度、洗濯もの、下のことまで皆よく世話致しました。
益子の絵土瓶
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
さすがの后も
躊躇
(
ちゅうちょ
)
せられたが、千人目ということにひかされてついに
辛抱
(
しんぼう
)
して
玉手
(
ぎょくしゅ
)
をのべて背をこすりにかかられた。すると病人が言うに、わたくしは悪病を
患
(
わずら
)
って永い間この
瘡
(
かさ
)
に苦しんでおります。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
長く
患
(
わずら
)
っていた。
納戸
(
なんど
)
を病室にして、母が始終看病してやった。亡くなる前の晩、忠八は僕に会いたいと言い出した。僕が枕許に坐ったら
村一番早慶戦
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
一人の劉備を怖れて、将来の
患
(
わずら
)
いを除くために、四海の信望を失うなどは、
下
(
げ
)
の
下策
(
げさく
)
というもので、私は絶対に賛成できません
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
浦子はこどものときにひどい脳膜炎を
患
(
わずら
)
つたため白痴であつた。十九にもなるのに六つ七つの年ごろの智恵しかなかつた。
汗
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「あの、中風を
患
(
わずら
)
っておいでのように伺っていましたけれども、人を
遣
(
や
)
りまして調べましたところでは、精神病でいらっしゃるらしいんですが」
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかしそれを他家へ配ってはならない、家内親類奉公人などが残らず食いつくすに限る。そうすれば決して暑気あたりの
患
(
わずら
)
いはないというのである。
廿九日の牡丹餅
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
患
(
わずら
)
っていたのでございます。それで夜中に起きてどこかへ行ってしまうようなことがあってはと、いつも座敷牢の中に入れられていたのでございますわ
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
月の始めに感冒に
患
(
わずら
)
わされて浦安の石井と云う医院へ入院した。今は全快している、
喇
(
せき
)
が少し出る。今夜は早く寝る。是からは早く寝て早く起きるだろう。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
一度脳を
患
(
わずら
)
ったりなどしてから、気に
引立
(
ひったち
)
がなくなって、
温順
(
おとな
)
しい一方なのが、
彼女
(
かれ
)
には
不憫
(
ふびん
)
でならなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ただいま申し上げましたように、わたくしは追放となりましてから
患
(
わずら
)
いまして、しばらく敦賀に居残りました。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“患”の意味
《名詞》
(カン)苦しむこと。患い。うれい。
(出典:Wiktionary)
患
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
“患”を含む語句
患難
苦患
大患
憂患
肺病患者
患者
長患
疾患
患部
梅毒病患者
中風患者
熱病患者
患苦
患者等
瘋癲患者
御患
婦人患者
外患
諸苦患
恋患
...