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ゆうぜん
ふりがな文庫
“
悠然
(
ゆうぜん
)” の例文
しかし、持彦は
悠然
(
ゆうぜん
)
として水をあび、そしてみそぎの行いを
済
(
すま
)
したのである。それを
見澄
(
みすま
)
した上の官人は
小気味宜
(
こきみよ
)
げに
嗤
(
わら
)
っていった。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
外部からしめた障子へ、手探りながら筆太に何かすらすらとしたため終わると、里好は女を促して
悠然
(
ゆうぜん
)
とめっかち長屋をあとにした。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
かれが自分の卓越について、どの瞬間にも
悠然
(
ゆうぜん
)
として確信をもっていること——すくなくともこれは、かれの年齢からくる利得だった。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
(今度は
悠然
(
ゆうぜん
)
として
階
(
きざはし
)
を
下
(
くだ
)
る。人々は左右に開く)
荒
(
あら
)
び、すさみ、濁り汚れ、ねじけ、曲れる、
妬婦
(
ねたみおんな
)
め、われは、先ず
何処
(
いずこ
)
のものじゃ。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
少し遅れて、大歓呼大拍手のうちに、
悠然
(
ゆうぜん
)
と『ヘルキュレス』が現われて来た。いかにも大きな牛である。機関車ぐらいたしかにある。
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
胡麻塩羅紗
(
ごましほらしや
)
の地厚なる
二重外套
(
にじゆうまわし
)
を
絡
(
まと
)
へる
魁肥
(
かいひ
)
の老紳士は
悠然
(
ゆうぜん
)
として
入来
(
いりきた
)
りしが、内の
光景
(
ありさま
)
を見ると
斉
(
ひとし
)
く胸悪き色はつとその
面
(
おもて
)
に
出
(
い
)
でぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
私はモーニングに身をかため、
悠然
(
ゆうぜん
)
と出て来た。左手を腰の上に、背を丸く曲げると、右手で入口の
扉
(
ドア
)
の鍵をカタリとねじって
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
モーニングを着て、山高帽をかぶって、顔には壁のように白粉を塗って、つけひげをした男が、プラカードを捧げて、
悠然
(
ゆうぜん
)
と歩いていた。
女妖:01 前篇
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
被告はそれをよく理解しかつ答うべきことを知ってるかのように、
悠然
(
ゆうぜん
)
と頭を振った。彼は口を開き、裁判長の方を向き、そして言った。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
僕の眼に広島上空に
閃
(
ひらめく
)
く光が見える。光はゆるゆると夢のように
悠然
(
ゆうぜん
)
と伸び
拡
(
ひろが
)
る。あッと思うと光はさッと速度を増している。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
実はせんだって
臥竜窟
(
がりょうくつ
)
を訪問して主人を説服に及んで
悠然
(
ゆうぜん
)
と立ち帰った哲学者と云うのが取も直さずこの八木独仙君であって
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
或
(
あるい
)
は
聖
(
しょう
)
観音ともいわれる。すべての飛鳥仏のごとく下ぶくれのゆったりした
風貌
(
ふうぼう
)
、
茫漠
(
ぼうばく
)
とした表情のまま左手に
壺
(
つぼ
)
をさげて
悠然
(
ゆうぜん
)
直立している。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
いいつけると、
床几
(
しょうぎ
)
を求め、彼は強いて、
悠然
(
ゆうぜん
)
たる
容態
(
ようたい
)
を
保
(
たも
)
とうとした。自分の顔いろを
窺
(
うかが
)
う衆臣の心理はいま微妙にうごきつつあるからだった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
青大将はもたげた首を振り動かして、
悠然
(
ゆうぜん
)
とあたりの藪のにおいを
嗅
(
か
)
いだ。いたどりの根もとにすっと伸びて行った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
大きななまずが、金色の髭をはやして、淵の底のほうを
悠然
(
ゆうぜん
)
と泳いでいきました。たいていみんなが見たのです。
山の別荘の少年
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
寄りつける訳のものじゃない処の日本の娘さんたちの、見事な——一口に云えば、ショウウインドウの内部のような散歩道を、私は一緒になって、
悠然
(
ゆうぜん
)
と
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
が、出来るだけ
悠然
(
ゆうぜん
)
と
北京官話
(
ペキンかんわ
)
の返事をした。「我はこれ
日本
(
にっぽん
)
三菱公司
(
みつびしこうし
)
の忍野半三郎」と答えたのである。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見物席のそこらここらから笑い
私語
(
ささめ
)
く声が聞えたが、
有繋
(
さすが
)
は紅葉である、少しも
周章
(
とっちら
)
ないで舞台へ来ると、グルリと後ろ向きになって
悠然
(
ゆうぜん
)
として紺足袋を脱いだ。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そうなれば、守衛には最早どうにも手がつかなかった。——伊藤が見ていると、須山はその人ごみの中を
糞
(
くそ
)
落付きに落付いて、「
悠然
(
ゆうぜん
)
と」降りて行ったそうである。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
もう一人は
悠然
(
ゆうぜん
)
としてズボンのかくしに手を入れ空を仰いで
長嘯
(
ちょうしょう
)
漫歩しているふぜいである。空はまっさおに、ビルディングの壁面はあたたかい黄土色に輝いている。
Liber Studiorum
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
……牛魔王一匹の
香獐
(
こうしょう
)
と変じ
悠然
(
ゆうぜん
)
として草を
喰
(
くら
)
いいたり。
悟空
(
ごくう
)
これを悟り
虎
(
とら
)
に変じ
駈
(
か
)
け来たりて香獐を喰わんとす。牛魔王急に
大豹
(
だいひょう
)
と化して虎を撃たんと飛びかかる。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
願わくは、心源最も深き所より理性の霊気を開発して、その無限の風光、無限の快楽中に一身を処し、世海の狂風激浪の間に立ち、
悠然
(
ゆうぜん
)
として閑歳月を楽しまんことを。
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
ある夕べ、主膳は、このたのもしい旧友の頭を五つばかり揃えて、
悠然
(
ゆうぜん
)
としてうそぶきました
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なかなかおちついたもので,それから
悠然
(
ゆうぜん
)
と、ダロク張りの
煙管
(
きせる
)
へ煙草を詰め込み、二三
吹
(
ぷく
)
というものは吸ッては吹き出し、吸ッては吹き出し、それからそろそろ立ち上ッて
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
と憎々しげにせせら笑って
悠然
(
ゆうぜん
)
と引き上げ、朝昼晩、牛馬羊の生肉を食って力をつけ、顔は鬼の如く赤く大きく、路傍で遊んでいる子はそれを見て、きゃっと叫んで病気になり
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
立派な大仏の形が
悠然
(
ゆうぜん
)
と空中へ浮いているところは甚だ雄大……これが
上塗
(
うわぬ
)
りが出来たらさらに見直すであろうと、一層仕事を急いで、どうやら
下地
(
したじ
)
は出来ましたので、いよいよ
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
浮世絵はその
錦絵
(
にしきえ
)
なると絵本なるとを論ぜず共に著しき
衰頽
(
すいたい
)
を示せり。時勢は
最早
(
もはや
)
文政
天保
(
てんぽう
)
以後の浮世絵師をして
安永
(
あんえい
)
天明
(
てんめい
)
時代の如く
悠然
(
ゆうぜん
)
として制作に従事する事を許さざるに至れり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「なりません。」と石井翁、一ぷくつけてスパリスパリと
悠然
(
ゆうぜん
)
たるものである。
二老人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
私は日本全国を
震駭
(
しんがい
)
させつつある重大事件の
巨魁
(
きょかい
)
が帝都の中央を
悠然
(
ゆうぜん
)
とタクシーで
疾駆
(
しっく
)
してゆく後影を見送りながら、何とも名状しがたい気持ちを抱いて、ぼんやりその場に立ちつくしていた。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
しかし老人はビクともせず、
悠然
(
ゆうぜん
)
と正面へ突っ立ったが、
猪
(
しし
)
の皮の袖無しに、
葛
(
くず
)
織りの山袴、一尺ばかりの脇差しを帯び、
革足袋
(
かわたび
)
を
穿
(
は
)
いた有様は、粗野ではあるが威厳あり、
侮
(
あなど
)
り難く思われた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鼻の先でそいつを
曲
(
ま
)
げ、口へもってきて、
悠然
(
ゆうぜん
)
と噛みしめる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
かれは底力のある声量と
悠然
(
ゆうぜん
)
たる態度でまずこういった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
安斉先生は
悠然
(
ゆうぜん
)
として学習室へもどって
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
筆をとどめて
悠然
(
ゆうぜん
)
たること
良
(
やや
)
久
(
ひさ
)
し。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
と、越前守忠相、はいって来たお艶へは眼もくれずに、すでに
悠然
(
ゆうぜん
)
と泰軒へ向きなおって、他意なくほほえんでいる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
吾輩の眼前に
悠然
(
ゆうぜん
)
とあらわれた陰士の顔を見るとその顔が——
平常
(
ふだん
)
神の製作についてその
出来栄
(
できばえ
)
をあるいは無能の結果ではあるまいかと疑っていたのに
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
陸
(
おか
)
のほうでは
穴山梅雪入道
(
あなやまばいせつにゅうどう
)
が
白旗
(
しらはた
)
の
宮
(
みや
)
のまえに
床几
(
しょうぎ
)
をすえ、四
天王
(
てんのう
)
の面々を左右にしたがえて
悠然
(
ゆうぜん
)
と見ていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
公爵は天井を仰ぎ、人々の顔を眺め、
悠然
(
ゆうぜん
)
と、あちらこちら見廻していたが、やがて、窓越しに見える
巴里珈琲店
(
キャフェ・ド・パリ
)
の屋根にとまっている鳩を一羽、二羽……と数え始めた。
ノンシャラン道中記:04 南風吹かば ――モンテ・カルロの巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
すでに五人を斬って捨てた島田虎之助は、またかの
塀際
(
へいぎわ
)
に飛び戻って
悠然
(
ゆうぜん
)
たる平青眼の構え。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
昨夜の
悠然
(
ゆうぜん
)
たる態度に似ず、非常に落着かない。何事か云いだしかねている
様子
(
ようす
)
だった。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
態
(
なり
)
に似合わず
悠然
(
ゆうぜん
)
と
落着済
(
おちつきす
)
まして、
聊
(
いささ
)
か
権高
(
けんだか
)
に見える
処
(
ところ
)
は、土地の士族の子孫らしい。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
熊
(
くま
)
にせんべいを買って口の中へ投げ込んでやる。口をいっぱいにあいて下へ落ちたせんべいのありうる可能性などは考えないで
悠然
(
ゆうぜん
)
として次のを待っている姿は罪のないものである。
あひると猿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
もっとも山井博士の信用だけは危険に
瀕
(
ひん
)
したのに違いない。が、博士は
悠然
(
ゆうぜん
)
と葉巻の煙を輪に吹きながら、巧みに信用を
恢復
(
かいふく
)
した。それは医学を
超越
(
ちょうえつ
)
する自然の神秘を力説したのである。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それからかれこれ
小
(
こ
)
一時間も
悠然
(
ゆうぜん
)
と腰を落付けて久しぶりで
四方山
(
よもやま
)
の話をした。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
この騒がしい場所の騒がしい時にかの男は
悠然
(
ゆうぜん
)
と尺八を吹いていたのである。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そのなまずが、まったく、一メートルほどもある大きさで、おどろいたことには、ぴかぴか光る金のながい髭をうちふり、小さな目を光らし、いばりくさって
悠然
(
ゆうぜん
)
と泳いでいったのです……。
山の別荘の少年
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
……青い平原の上に
泡
(
あわ
)
立ち群がる山脈が見えてくるが、その峰を飛越えると、鏡のように静まった瀬戸内海だ。一機はその鏡面に散布する島々を点検しながら、
悠然
(
ゆうぜん
)
と広島湾上を舞っている。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
彼は
悠然
(
ゆうぜん
)
と腰から煙草入れを取り出し、そうして、その煙草入れに附属した
巾著
(
きんちゃく
)
の中から、ホクチのはいっている小箱だの火打石だのを出し、カチカチやって
煙管
(
きせる
)
に火をつけようとするのだが
親友交歓
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
据えられた床几に腰を下ろすと、まず
悠然
(
ゆうぜん
)
と見廻した。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これらの者を迎えて、
扈従
(
こじゅう
)
の将星を左右に
繞
(
めぐ
)
らし、
悠然
(
ゆうぜん
)
と
床几
(
しょうぎ
)
に
倚
(
よ
)
っている光秀のすがたには、まさに新しき「天下人」たるの威風に欠けるものはなかった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
悠
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“悠然”で始まる語句
悠然見南山