“従容:しょうよう” の例文
“従容:しょうよう”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花11
中里介山8
吉川英治5
岡本かの子3
夏目漱石2
“従容:しょうよう”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 芸術・美術 > 芸術史 美術史40.0%
文学 > フランス文学 > 小説 物語3.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.0%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「彼は恐れず悲しまず、従容しょうようとして死んで行った。とにもかくにも凡人ではない。……では彼奴あいつは預言者か?」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
敬刑せらるゝに臨みて、従容しょうようとして嘆じて曰く、変宗親そうしんに起り、略経画けいかく無し、敬死して余罪ありと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
見ずや、上野の老杉ろうさんは黙々として語らず訴へず、独りおのれの命数を知り従容しょうようとして枯死こしし行けり。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そうだ。君たち少年だけで、大空へ脱れたまえ。わしと、博士とは、従容しょうようして、君たちを送るよ」怪老人も、僕等を促す。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
見ずや、上野の老杉ろうさんは黙々として語らず訴へず、ひとりおのれの命数を知り従容しょうようとして枯死こしし行けり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大風の吹き去ったあとの枯野に端坐している心持で、従容しょうようとしてその一曲を弾じつづけている形は、見事というべきものです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
司教は、おそらく自らそうとは認めなかったろうが、心の中の何かに一撃を受けたように感じた。けれど彼は従容しょうようとして答えた。
だが、二十八年二月、日本海軍が威海衛いかいえいを占領した時に、丁汝昌は従容しょうようと自殺してしまったのだ。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
と口にて衣紋えもんを引合わせ、縛られたるまま合掌して、従容しょうようとして心中に観音の御名みなを念じける。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
歓之助、時に十七歳——彼等壮士の結構を知るや知らずや、従容しょうようとして十余人を一手に引受けてしまった。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
従容しょうようとして、たゞ優しい仕事に、男がいたはりたずさはつてゐる自然の姿にほかならなかつた。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
彼は、従容しょうようとして席に復した。が、あまたたび額の汗をぬぐった。汗は氷のごとく冷たかろう、と私は思わず慄然りつぜんとした。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして、頭から静かに、玉鬘たまかずらを取りはずし、首から勾玉をとりはずすと、長羅の眼を閉じた顔を従容しょうようとして見詰めていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
しかし彼らはそんなことにまごつきはしなかったろう。いかにも従容しょうようとして答えたに違いない。
従容しょうようとしてせまらず、晏如あんじょとしておそれず、偉なるかな、偉なる哉。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
山背大兄王は胆駒をで、従容しょうようとして斑鳩寺いかるがのてら(法隆寺)に入られる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
そういう最悪の場合に立ちいたっても、従容しょうようとして帰するがごとく身を持さねばならぬ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
床屋が来ると、先生は従容しょうようとして鏡の座に向い、何か心深く決するところがありと見え、
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこで、浜に泳ぎついたというよりは、波に任せて、そっと持って来て置いてもらった茂太郎は、極めて従容しょうようとして、砂浜の上にすっくと立ちました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この騒ぎを余所よそに大杉は相変らず従容しょうようとして児供の乳母車を推して運動していた。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ようを病み、自から起たざるを知り、異薬をしりぞけ、特に従容しょうようとして死す。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
なお、その親戚の一人からの手紙には、「助かる見込のない事を宣告された時の伯父は、実に従容しょうようとしていて、顔色一つ変えなかった」と附加えてあった。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
荘子いわく「儵魚じょうぎょいで遊びて従容しょうようたり。これ魚の楽しむなり。」と。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
と、『古老物語』にあるが、戦い敗れた後の重成の従容しょうようたる戦死の様が窺われる。
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「万事休す」と観念した彼は、従容しょうようと首の座について、瞑目めいもくしていた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仰ぐと、高楼の一層、月あかるき処、こうき、琴を調べ、従容しょうようとして、独りめるかのような人影がある。まさに孔明その人にちがいない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外から来た亡者はもとより口をかず、中にいた踏台もまた一言半句を言わないで、あちらを向いて従容しょうようとして踏台の役目を果してしまったのであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
渠はその麗しきひげひねりつつ、従容しょうようとして検事の席に着きたり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小野さんは心配の上にせる従容しょうようの紋付を、まだあつらえていない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お銀様は引裂いた紙を、従容しょうようとして香箱の中に詰めながら返事をしました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と一喝し、静かに、袁氏の廟地びょうちを拝して後、従容しょうようと首を授けた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余輩よはいの村田翁の門下に教を請うや、翁従容しょうようとしてのたまわく、けいらの如き、石仏を麻縄にて縛りたる如き、究屈なる学問をなして、何の効かある。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
信盛のぶもりはもう決死の気を眉にも見せていた。すぐにも、従容しょうようと死を受けとる覚悟でなければ、今の信長の顔を見て、これだけのことはいえないはずであった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らは倒れると、倒れたままに、十字を切って従容しょうようと神の国へ急いだ。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ソクラテスが従容しょうようとして死に就いたのはそのためであったであろう。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
その職をくすがごとく、従容しょうようとして手綱を操り、競争者におくれずすすまず、ひまだにあらば一躍して乗っ越さんと、にらみ合いつつ推し行くさまは
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そういえば嘗てわたくしと池上の縁談を取纏める方向に入れていた力の入れ方も、いま急にへん代えして破却に向けて入れようとする力も同じく従容しょうようとしたものであります。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
刑場に於ける彼女の気高い態度、そして従容しょうようたる死に就いては、スタエル夫人も麗筆を振ひ、また手近かな所では漱石の所謂いわゆる仄筆そくひつ」も振はれてゐる。
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
雲のごとき智者と賢者と聖者と神人とを産み出した歴史のまっただ中に、従容しょうようとして動くことなきハムレットを仰ぐ時、人生の崇高と悲壮とは、深く胸にしみ渡るではないか。
二つの道 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
対馬守は、待ちうけていた者に会うような、ゆとりのある態度で、従容しょうようと駕籠を降りた。——途端、目についたのは脱兎のごとくに迫って来る若侍の姿だった。それも十八九。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
従容しょうようとは死ねないにしても、私は私らしい死に方をしよう。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
しかして後に従容しょうようとして斬死の手段がよかろうではないか
そして、従容しょうようとして刑場の露と消えたということです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
古今の大哲人ソクラテスが、毒杯を仰いで、従容しょうよう死に就かんとした時、多数の友人門弟らは、絶えずその側に侍して、師の臨終を悲しみながらも、またその人格の偉大なるに驚嘆していた。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
慌てた孫に、従容しょうようとして見向いて、珠数を片手に、
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫人、従容しょうようとして座に返る。図書、手探りつつもとの切穴をさぐる。(間)その切穴に没す。しばらくして舞台なる以前の階子の口より出づ。猶予ためらわず夫人に近づき、手をつく。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と半眼に、従容しょうようとして口誦こうじゅして、
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と腕を解いて、廉平は従容しょうようとして居直った。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
帯のない女の衣裳形が、水手かこたちの口のに上らないところを以てして見ると、これは早くもお角さんのたしなみがあずかって救われたものです。お角さんは従容しょうようとして言いました、
従容しょうようとして死んでいったというのである。
と、縄も解かせず、従容しょうよう、首を斬らせた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
従容しょうようとして名を得る口惜くやしさ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時主人は従容しょうようとして言った。
胡氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
 女の身として、優しいもの、こびあるもの、従うものに慕われて、それが何の本懐です。私は鱗をもって、角をもって、爪をもって愛するんだ。……鎧は脱ぐまい、と思う。(従容しょうようとして椅子に戻る。)
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
葛木は従容しょうようとして云った。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は、従容しょうようと縄を受けた。
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
時に看護員は従容しょうよう
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
時に看護員は従容しょうよう
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白耳義ベルギーの首府の看護婦学校長であった英国婦人エジス・カヴェル女史が去年独逸ドイツ軍のために捕えられて従容しょうようとして死刑にいたようなことは、母性中心説から見れば当然批難せらるべきことであろう。
母性偏重を排す (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
あるじ従容しょうようとして、時には枕を高うし、心を広くもち、よく身を養い、内外を見ておればよいのであります。決してそれは、奴婢鶏犬ぬひけいけんに及ばないからではなく、主の分を破り家の法にそむくからです。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この前英国の巨船タイタニック号が大西洋に沈没したときの話を聞くに、最後にいたりながら泰然自若たいぜんじじゃくとして落着きはらい、死を見ること帰するがごとく、従容しょうようとして船と共に沈めるもの数十名の多きに達したという。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
棉花を積んだ船、落花生を満載した荷船、コークス、米、石炭、粘土、籐、鉄材、それらの間に交って、フィリッピン材の紅と白とのラウアンが、鴨緑江おうりょくこう材のケードルや、暹羅シャム材の紫檀したんと競いながら、従容しょうようとして昇って来た。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ふだんから室子は結局のところは男に敵わないと思っていたが、この青年は抜群の腕と見えて、彼女の左舷の方に漕ぎ出ると、オールへ水の引掛け方も従容しょうようと、室子の艇の、左舷の四分の一の辺へ、艇頭を定めると、ほとんど半メートルの差もなく漕ぎ連れて来る。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
悠々ゆうゆうとか従容しょうようとか云う字はかくがあって意味のない言葉になってしまう。この点において今代きんだいの人は探偵的である。泥棒的である。探偵は人の目をかすめて自分だけうまい事をしようと云う商売だから、いきおい自覚心が強くならなくては出来ん。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御承知でもござろうが、甲斐の恵林寺は、武田信玄以来の名刹めいさつで、昔、織田信長があの寺を攻めてやきうちを試みた時、寺のあるじ快川国師かいせんこくしは楼門の上に登り、火に包まれながら、心頭を滅却すれば火もおのずから涼しといって、従容しょうようとして死に就いたえらい出家である。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
人間はかなしく、弱いものだ、恵林寺の僧がもし大悟徹底していたら、火中であんなことは云わず、黙って静かに死んだことだろう、おそらく従容しょうようとして、黙って死んだのが事実だと思う、火中にあって、心頭を滅却すれば火もまた涼し、などというのは泣き言にすぎない、けれども、その泣き言を云うところに