“仄筆”の読み方と例文
読み方割合
そくひつ100.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
沙翁はクラレンス公爵の塔中で殺さるる場を写すには正筆せいひつを用い、王子を絞殺こうさつする模様をあらわすには仄筆そくひつを使って、刺客の語をり裏面からその様子を描出びょうしゅつしている。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
男女の痴情ちじやう写尽しやじんせんとせば、どうしても房中ばうちうの事に及ばざるを得ず。されどこは役人の禁ずる所なり。故に小説家は最も迂遠な仄筆そくひつを使つて、やつと十の八九をゑがく事となる。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
刑場に於ける彼女の気高い態度、そして従容しょうようたる死に就いては、スタエル夫人も麗筆を振ひ、また手近かな所では漱石の所謂いわゆる仄筆そくひつ」も振はれてゐる。だが事実は詩人の空想よりもつと残酷であつた。
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)