弱々よわよわ)” の例文
ふゆぎて、はるになったとき、二ほんのばらのえだにはちいさな弱々よわよわしいがでました。そして、それは、なつになってもれはしませんでした。
花と少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
顔を上げた私と、枕にもたれながら、じっと眺めた母と、顔が合うと、坊や、もうなおるよと言って、涙をはらはら、差俯向さしうつむいて弱々よわよわとなったでしょう。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どこへいくの?」と、その中のひとりが、ほとんど聞きとれないくらいの、弱々よわよわしい声でたずねました。
糸を抜かれたよりも婆娑ばさとした姿に変って、大言壮語も吐かず弱々よわよわと佐賀の城下へかれて行った。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貫一は猛獣などを撃ちたるやうに、彼の身動も得為えせ弱々よわよわたふれたるを、なほ憎さげに見遣みやりつつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かく真のフェミニストは質的のものだ。女性から言えば、弱々よわよわしくフェミニストたらざるを得ない男性より昂然こうぜんとしていても、女性に理解力ある男性の方が見込みがある。
女性崇拝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
火鉢にはカンカン火がおこっていたし、鉄瓶の湯は沸々ふつふつたぎっていたのだが、何とはなく、私はこの、僅か二三カ月見なかった友の様子から、一種違った、妙な弱々よわよわしさと云ったものを感じた。
自殺を買う話 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
しかし弱々よわよわしく晴れて
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
いかにもその少年しょうねんは、弱々よわよわしそうであり、さびしそうでもありましたから、「ああ、おはいりよ。」と、しょうちゃんがいいました。
友だちどうし (新字新仮名) / 小川未明(著)
はじめのうちしばらくは、くちばしをカチカチやっていましたが、それから、しゃがれた弱々よわよわしい声で話しだしました。すると、たちまち不平ばかりならべたてます。
……柱かけの花活はないけにしをらしく咲いた姫百合ひめゆりは、羽の生えたうじが来て、こびりつくごとに、ゆげにも、あはれ、花片はなびらををのゝかして、一筋ひとすじ動かすかぜもないのに、弱々よわよわかぶりつた。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かかるも彼はおのづと思に沈みて、その動す手もたゆく、裂きては一々読むかとも目をこらしつつ。やや有りて裂了さきをはりし後は、あだかもはげしき力作につかれたらんやうに、弱々よわよわと身を支へて、長きうなじを垂れたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
弱々よわよわと見える痩身白皙そうしんはくせきの、武者らしからぬ武者振りの一将と。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子供こどもは、これにたいして、すげなくあたまをふりました。そして、うつろにひらいたで、電燈でんとうひかりが、うす弱々よわよわしくただよう、四ほうまわしました。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
というのは、みんながみんな、冬のあいだの弱々よわよわしさはえてしまって、からだじゅうに力があふれ、元気いっぱいになったことを、見せたくてたまらなくなったからです。
銃をも、引上げて身に立てかけてよこしたのを、弱々よわよわと取つてひっさげて、胸を抱いて見返ると、しまの膝を此方こなたにずらして、くれないきぬの裏、ほのかに男を見送つて、わかれおしむやうであつた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれど、すべてのうつくしい婦人ふじんは、弱々よわよわしかったように、きさきくびのまわりにけられた、あおいし首飾くびかざりのおもみをささえるにえられないほどでした。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これが角屋敷かどやしきで、折曲おれまがると灰色をした道が一筋ひとすじ、電柱のいちじるしく傾いたのが、まえうしろへ、別々にかしらって奥深おくぶこう立って居る、鋼線はりがねが又なかだるみをして、廂よりも低いところを、弱々よわよわと、斜めに
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほかの少年しょうねんたちが元気げんきでいるのに、その少年しょうねんは、青白あおじろかおをして、弱々よわよわしそうでした。そのうちに、ベルがって、試験場しけんじょうはいるときがきました。
中学へ上がった日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
浅黄あさぎ角絞つのしぼり手絡てがらゆるう大きくかけたが、病気であろう、弱々よわよわとした後姿うしろすがた
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
するとそれは、とおばかりのおとこで、しかもその子供こどもは、弱々よわよわしくえたうえに、盲目めくらであったのであります。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
してくれる? ありがとう。」と、弱々よわよわしい、あおかお少年しょうねんは、きゅうかがやかして、おれいをいいました。
友だちどうし (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ねえ、おねえちゃん、なにをかんがえているの。なにかおもしろいおはなしかしてくれない。」と、そばにねている少年しょうねん弱々よわよわしいこえで、ひとなつこくいいました。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このひろ世界せかいに、二人ふたり両親りょうしんのこされて、こうしていろいろとつらいめをみなければならなかったが、なかにも弱々よわよわしい、盲目めくらおとうとは、ただあねいのちとも、つなとも、たよらなければならなかったのです。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そうね。」と、弱々よわよわしそうなみつは、かんがえていましたが
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)