トップ
>
平素
>
ふだん
ふりがな文庫
“
平素
(
ふだん
)” の例文
平素
(
ふだん
)
女房
(
かない
)
にいたぶられてゐる亭主は女房の
不在
(
るす
)
に台所の隅で光つてゐる
菜切庖丁
(
なきりばうちやう
)
や、葱の尻尾に触つてみるのが愉快で溜らぬものだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
で、彼らは
平素
(
ふだん
)
であったならもっともっと大騒ぎでもっともっと非難攻撃すべきこの重大の裏切り事件をも案外
暢気
(
のんき
)
に見過ごした。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一体
(
いったい
)
この人の
平素
(
ふだん
)
住んでいるのは有名なブッシュというところで、
此処
(
ここ
)
には美術学校もあるし、この土地はこの人に
依
(
よ
)
って現われたので
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
平素
(
ふだん
)
めつたに思出した
例
(
ためし
)
も無いやうなことが、しかも
昨日
(
きのふ
)
あつたことゝ言ふよりも今日あつたことのやうに、生々と浮んで来た。
犬
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
今降りつゞく雨の日は深夜の如く沈み返つて木の葉一枚動かず、
平素
(
ふだん
)
は朝から聞えるさま/″\な街の物音、物売りの声も全く杜絶えてゐる。
花より雨に
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
平素
(
ふだん
)
温和
(
おとな
)
しい
善
(
よ
)
い人の
怒
(
おこ
)
ったのは
甚
(
ひど
)
いもので、物をも云わずがらりと戸を開けて中へ飛込み、片手に
抜身
(
ぬきみ
)
を
提
(
さ
)
げて這入ると、未だ寝は致しません
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それからおみよが
平素
(
ふだん
)
の行状などを少しばかり訊いて、半七はここを出た。しかし彼はまだ
腑
(
ふ
)
に落ちなかった。
半七捕物帳:08 帯取りの池
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そうして私の問いに任せて、岩形氏の
平素
(
ふだん
)
の行状をぽかぽかと語り出したが、その概要を今までの調査の内容と綜合してみると結局こんな事になるのであった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
だとて我が今理屈を味方にするでもない、世間を味方にするでもない、汝が手腕の有りながら
不幸
(
ふしあはせ
)
で居るといふも知つて居る、汝が
平素
(
ふだん
)
薄命
(
ふしあはせ
)
を口へこそ出さね
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
一つは古くて「
平素
(
ふだん
)
のため」のであり、一つは新しくて特別の場合のためのであった。両方とも黒だった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「自分は、多少の余財を作って等身大の馬を
製
(
こしら
)
えて招魂社にでも納めたい」というのが
平素
(
ふだん
)
の願望で
幕末維新懐古談:69 馬専門の彫刻家のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その太夫さんは、やんごとなきお方の
落
(
おと
)
し
胤
(
だね
)
、何の
仔細
(
しさい
)
があってか、わたしはよく存じませねど、お身なりを
平素
(
ふだん
)
よりはいっそう
華美
(
はで
)
やかにお作りなされ、香を
焚
(
た
)
いて歌を
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところがお酒を飲まない
平素
(
ふだん
)
は、たいへん話下手で、それに吃りました。
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
「御主人は
平素
(
ふだん
)
巫山戯
(
ふざけ
)
たことを好んでなさいましたか」
闘争
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
が、素性は争われず、それにそうでない
平素
(
ふだん
)
の時でも、度外れたお
喋舌
(
しゃべ
)
りの彼だったので、まくし立てることまくし立てること!
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
平素
(
ふだん
)
神信心をしない
罰
(
ばち
)
だよ。いいえ、
善
(
い
)
い
罰
(
ばち
)
だよ。幾ら助けたいにも、お前さんだと知つちや、助けられないぢやないか。」
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
今降りつゞく雨の日は深夜の如く沈み返つて木の葉一枚動かず、
平素
(
ふだん
)
は朝から聞えるさま/″\な街の物音、物賣りの聲も全く杜絶えてゐる。
花より雨に
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
「
行徳
(
ぎょうとく
)
!」と呼ばって入って来て勝手口へ荷をおろす出入の魚屋の声も、井戸端で
壮
(
さか
)
んに魚の水をかえる音も、
平素
(
ふだん
)
に
勝
(
まさ
)
って勇ましく聞えた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
だとて我が今理屈を味方にするでもない、世間を味方にするでもない、汝が
手腕
(
うで
)
のありながら不幸せで居るというも知って居る、汝が
平素
(
ふだん
)
薄命
(
ふしあわせ
)
を口へこそ出さね
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます、
良人
(
やど
)
は
平素
(
ふだん
)
牛肉
(
うし
)
などは三
人前
(
にんまへ
)
も
喰
(
た
)
べました
位
(
くらゐ
)
で……。女「おや、お
待
(
ま
)
ちなさいまし、
早桶
(
はやをけ
)
の
中
(
なか
)
でミチ/\
音
(
おと
)
が
致
(
いた
)
しますよ。妻「
魔
(
ま
)
が
魅
(
さ
)
したのでせう。 ...
明治の地獄
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その夕方屋根裏の
室
(
へや
)
に帰りついて、マリユスは自分の服装をながめ、初めて自分のきたなさと不作法と「
平素
(
ふだん
)
の」服装でリュクサンブールに散歩に行く非常な愚かさとを気づいた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
平素
(
ふだん
)
から淋しいところであるのに、この頃は物取りがあったり辻斬りがあったりして、宵のうちから人通りはないようなところなんですね、そこを島田先生が一人で、
謡
(
うたい
)
をうたって
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と歌つたが、それは
平素
(
ふだん
)
健かで、仕事にいそがしくしてゐたものが、たまに病にかかつて間を得たので、久し振にのんびりした気持になつて
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
平素
(
ふだん
)
から実は宗蔵とあまり言葉も交さなかった。唯——「一家の
団欒
(
だんらん
)
、一家の団欒」この声が絶ず実の心の底に響いていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
信心深かそうな老夫婦が大地に
平伏
(
ひれふ
)
して拝んでいたので、陛下は
平素
(
ふだん
)
の慣例を破られ、ご会釈されたということなどで
喇嘛の行衛
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今朝
(
けさ
)
は
平素
(
ふだん
)
よりも
激
(
はげ
)
しく
匂
(
にほ
)
ひわたる
線香
(
せんかう
)
の
烟
(
けむり
)
が
風
(
かぜ
)
になびいて
部屋
(
へや
)
の
中
(
なか
)
まで
流
(
なが
)
れ
込
(
こ
)
んでくるやうにも
思
(
おも
)
はれた。
吾妻橋
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
その上揶揄は彼の
平素
(
ふだん
)
のことであった。彼は好んで諧謔を弄した、とフルーリー・ド・シャブーロンは言っている。彼の性格の根本は快活な気分であった、とグールゴーは言っている。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
夜
(
よ
)
が明けて百姓が通り掛って騒ぎ、名主へも届けたが、甚藏は
平素
(
ふだん
)
悪
(
にく
)
まれもの、何うか死んで呉れゝばいゝと思っていた処、甚藏が絹川べりで鉄砲で
撃殺
(
うちころ
)
されているというのを村の人達が聞込んで
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ウマそうな
味噌
(
みそ
)
汁の香を
嗅
(
か
)
いだ。その朝は、よく
可笑
(
おか
)
しな顔付をして姪達を笑わせる
平素
(
ふだん
)
の叔父とは別の人のように成った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
フランクリンめ、
平素
(
ふだん
)
から人間は正直でなくつちやならぬと言ひながら、寒いとついこんな嘘まで平気で言つてのけてゐる。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
平素
(
ふだん
)
はそのような
細々
(
こまごま
)
しいことには、決して留意しない陸奥守ではあったが、恐怖らしいものに
捉
(
とら
)
えられている今は、そんなことにさえ心が引かれ
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
巡査はわたくしの上着を
剥
(
はぎ
)
取って所持品を改める段になると、
平素
(
ふだん
)
夜行の際、不審尋問に遇う時の用心に、印鑑と印鑑証明書と戸籍抄本とが
嚢中
(
のうちゅう
)
に入れてある。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お隅は
平素
(
ふだん
)
から一角は酒の上が悪く
我儘
(
わがまゝ
)
なのを知っております、また女が出ると
柔
(
やわら
)
かになる事も存じているから、
却
(
かえ
)
って
斯
(
こ
)
う云う時は女の方が
宜
(
よ
)
かろうと思って、
後
(
あと
)
の方からつか/\と進み出まして
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
多忙
(
いそが
)
しがっている人に似合わず、達雄はガッカリしたように坐って、
復
(
ま
)
た煙草を
燻
(
ふか
)
し始めた。何となく彼は
平素
(
ふだん
)
のように
沈着
(
おちつ
)
いていなかった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
博士は
平素
(
ふだん
)
大学教授といふ名前を厭がつてゐたが、多くの大学教授のうちで、博士は京都大学の最も誇るべき人であつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
藤田未亡人の家には六畳三畳
二間
(
ふたま
)
つゞきの二階がある。久しい間死んだ主人の寝てゐた処であるが、その後は折々天気の好い時風を入れるだけで
平素
(
ふだん
)
は明間になつてゐる。
来訪者
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
平素
(
ふだん
)
は家臣の面々と膝を交えて談笑し肘押しぐらいはするのであるが、一旦何事かある時には威厳忽ち四辺を払って堂々たる一城の城主の貫禄、いかなる勇士をも圧服する。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
幸「
平素
(
ふだん
)
は木綿で
宜
(
い
)
いなんて
彼
(
あれ
)
は少し変って居るね」
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
舞台で人生を
演活
(
しいか
)
すためには、
平素
(
ふだん
)
からかうした
囚
(
とら
)
はれない情態が必要なのか、それとも舞台の心持が家庭生活にまで
伝染
(
うつ
)
つてゆくのだらうか。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
朝が来て見ると、
平素
(
ふだん
)
はそれほど気もつかずにいた書斎の内の
汚
(
よご
)
れが
酷
(
ひど
)
く岸本の眼についた。彼は長く労作の場所とした二階の部屋を歩いて見た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「あのドン・ダンチョンという方で、決して
平素
(
ふだん
)
は人様などと争う方ではございません」
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
君江は
平素
(
ふだん
)
から頼んである表の
肴屋
(
さかなや
)
に電話をかけ、間貸しのおばさんを呼出して様子をきくと、昨夜お友達の女給さんが見えて、先生はその女と一緒にお出かけになったきりだという返事である。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ある日、秋濤はいつものやうに
香
(
にほひ
)
のいゝ
葉巻
(
シガー
)
を
啣
(
くは
)
へて教室に入つて来たが、
平素
(
ふだん
)
にない生真面目な調子で、皆の顔を見た。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
復
(
ま
)
た岸本は箪笥の前に立って見た。
平素
(
ふだん
)
は節子任せにしてある抽筐から彼女の自由にも成らないものを取出して見た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
頭髪
(
かみ
)
を香油で撫でつけるやら、ハンカチへ香水をしめすやら、そしてむやみにソワソワして腕時計ばかり気にしている。正気の沙汰じゃなかったね……
平素
(
ふだん
)
の日ならそれでもいいさ。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
胴の締り
工合
(
ぐあひ
)
といひ、ふつくりとした肉つきといひ、
平素
(
ふだん
)
あまりこんなものを見馴れない喜平の素人眼にも、何だか
謂
(
い
)
はくがありさうに見えました。
小壺狩
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
其日、丑松は学校から帰ると直に蓮華寺を出て、
平素
(
ふだん
)
の勇気を
回復
(
とりかへ
)
す積りで、何処へ行くといふ
目的
(
めあて
)
も無しに歩いた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
ふっくりとした唇にも、
平素
(
ふだん
)
は愛嬌があるらしい。今はしっかりと結ばれている。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
往つてみると、伯耆にも色々山はあつたが、二人が
平素
(
ふだん
)
描
(
か
)
き馴れてゐるやうな珍らしい山は一つも無かつた、二人は
落胆
(
がつかり
)
して今一つの方へ出掛けた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そして、家を持った年にはこういうことが有った、三年目はああいうことが有った、と
平素
(
ふだん
)
忘れていたようなことを心の底の方で
私語
(
ささや
)
いて聞かせた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
平
常用漢字
小3
部首:⼲
5画
素
常用漢字
小5
部首:⽷
10画
“平素”で始まる語句
平素着
平素点