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ふだん
ふりがな文庫
“
平生
(
ふだん
)” の例文
愛子は縁側から静かにこっちを振り向いて
平生
(
ふだん
)
と少しも変わらない態度で、柔順に無表情に縁板の上にちょっと
膝
(
ひざ
)
をついて挨拶した。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
仰付
(
おほせつけ
)
られけるにぞ徳太郎君をも
江戸見物
(
えどけんぶつ
)
の爲に
同道
(
どうだう
)
なし麹町なる
上屋敷
(
かみやしき
)
に
住着
(
すみつけ
)
たり徳太郎君は役儀もなければ
平生
(
ふだん
)
閑
(
ひま
)
に任せ
草履取
(
ざうりとり
)
一人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
千代子は
途切
(
とぎ
)
れ途切れの言葉で、
先刻
(
さっき
)
自分が
夕飯
(
ゆうめし
)
の世話をしていた時の、
平生
(
ふだん
)
と異ならない元気な様子を、何遍もくり返して聞かした。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
平生
(
ふだん
)
口やかましい女房の顔を見るのも苦しかったが、それよりも苦しいのは三日の後に差し迫っている年貢の期限であった。
雁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は後藤氏の言葉を聞いている中に、なるほどさすが馬専門の人で、動物を
平生
(
ふだん
)
からいじりつけているだけに、なかなか詳しい。
幕末維新懐古談:55 四頭の狆を製作したはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
▼ もっと見る
平生
(
ふだん
)
よりは夜が更けていたんだから、早速お
勤
(
つとめ
)
の
衣裳
(
いしょう
)
を脱いでちゃんと
伸
(
の
)
して、こりゃ女の
嗜
(
たしなみ
)
だ、姉さんなんぞも遣るだろうじゃないか。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして話をしているのは
全
(
まった
)
く叔父で、それに
応答
(
うけこた
)
えをしているのは
平生
(
ふだん
)
叔父の手下になっては挊ぐ
甲助
(
こうすけ
)
という村の者だった。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
平生
(
ふだん
)
だと立ち上るだけでも大変なのですが、それでも
生命
(
いのち
)
がけの女の気もちになって舞台に出てみますと、不思議なくらい楽に動けますので
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
顔を洗つて髪を結つた時、女中のマリイがパンとシヨコラアを運んで来た。まだ八時前で、
平生
(
ふだん
)
よりも一時間ほど朝の食事には早いのである。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
しかしそれを若いお内儀さんのお婿として看る時にはお菊の眼も又違って、
平生
(
ふだん
)
から若いお内儀さんの不運をお気の毒だと思わないでもなかった。
黄八丈の小袖
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そういえば、これは、今はじめてそれと気がついたことで、
平生
(
ふだん
)
の真喜にはこんなところは露ほども感じられなかつた。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
平生
(
ふだん
)
隊中の者に
謂
(
い
)
つて居たさうです……僕は阪本氏の為めなら何時でも一命を捨てるつてネ……果して龍馬が斬られて同志が新撰組へ復讎に行つた時
千里の駒後日譚拾遺
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
娘たちも
平生
(
ふだん
)
とは見違えるように奇麗に着飾って何かにつけてはれがましく仰山な声を上げる。若い衆子供はそれぞれ
揃
(
そろ
)
いの浴衣で威勢よく馳け廻る。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
と
平生
(
ふだん
)
から少し慾の深い伊作は、赤児を包んでいる美しい
布
(
きれ
)
を解いて見ました。すると、赤児の腹のところに、三角にくけた
胴巻
(
どうまき
)
が巻きつけてありました。
三人の百姓
(新字新仮名)
/
秋田雨雀
(著)
坂の中段もとに
平生
(
ふだん
)
並んで居る左右二頭の
唐獅子
(
からじし
)
は何処へか
担
(
かつ
)
ぎ去られ、其あとには中々馬鹿にはならぬ舞台花道が出来て居る。
桟敷
(
さじき
)
も左右にかいてある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
渠がその翌朝の十時頃に目をさますと、
平生
(
ふだん
)
の通り飯の支度は出來てゐた。が、二人は無言で食事を終つた。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
一
(
ひと
)
つには
平生
(
ふだん
)
からおつぎに
對
(
たい
)
する
勘次
(
かんじ
)
の
態度
(
たいど
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
て
其處
(
そこ
)
に一
種
(
しゆ
)
の
恐怖
(
きようふ
)
を
感
(
かん
)
じて
居
(
ゐ
)
たからでもあつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
三人の子供は
怖
(
こわ
)
がって、遠巻にして、
平生
(
ふだん
)
に似もやらぬ父親の赤く酔った顔を不思議そうに見ていた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ところが
平生
(
ふだん
)
は、割合に片づいているので、いつ何時お客があっても、少しもあわてずにすむのです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
平生
(
ふだん
)
友達と話してる間でさへ、どれほど私の壽命が縮まつてるか、お母さんには分らないんですか。
仮面
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
気がへんになったといえば一番それが手ッとり早いもんだから……都合もそのほうがいゝもんだから、
平生
(
ふだん
)
若宮君をよく思わない奴なぞみんなそう決めていやァがる。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
脱いだ袴を畳んで、桃色メリンスの
袴下
(
はかました
)
を、同じ地の、大きく菊模様を染めた腹合せの
平生
(
ふだん
)
帯に換へると、智恵子は窓の前の机に坐つて、襟を正して
新約全書
(
バイブル
)
を開いた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
平生
(
ふだん
)
なれば大広間、
溜
(
たまり
)
の間、雁の間、柳の間なんて、大小名の居る処で中々
喧
(
やか
)
ましいのが、丸で無住のお寺を見たようになって、ゴロ/″\
箕坐
(
あぐら
)
を
掻
(
かい
)
て、怒鳴る者もあれば
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
私がお
前
(
めえ
)
さんに
平生
(
ふだん
)
お世話に成って居りますから、娘を殺して金を取るような人でねえ事は知って居りますが、宜うがすか、お
前
(
めえ
)
さんと
若
(
も
)
し私が中が悪くって、
忌々
(
いめえま
)
しい奴だ
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その
平生
(
ふだん
)
は、どうかするとひどく子供っぽく澄んで見える瞳に愁しげな影がさしていた。
或る母の話
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
平生
(
ふだん
)
はそれを出して遊ばうとはしませんが、
玩具
(
おもちや
)
棚の一番下にある黒い箱がそれです。女の友達の来て居る時に
刺繍
(
ぬひ
)
を
拵
(
こしら
)
へて遣つたり、人形を作つたりしてやることがあるのです。
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
君覚えているだろう?
平生
(
ふだん
)
は、人間や
洋車
(
ヤンチャ
)
や馬車が雑沓しているところだ。三階、四階の青や朱で彩色した高楼が並んでいる。それが今はすっかり扉を閉め切って猫の仔一匹いない。
防備隊
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
平生
(
ふだん
)
ならば、銀座通りはまだ宵のうちだ。全日本の流行の
粋
(
すい
)
をそぐった男女の群が、まるで自分の邸内でも歩いているように、屈託のない足どりでプロムナードを楽しんでいる時刻だ。
犠牲者
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
チッバ マーキューシオー、
足下
(
おぬし
)
は
平生
(
ふだん
)
あのロミオと
調子
(
てうし
)
を
合
(
あは
)
せて……
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
私は
平生
(
ふだん
)
痲痺していた速力の感じが、そのとき急に鋭くなりました。
十時五十分の急行
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
そればかりでなく、
平生
(
ふだん
)
から鋭い機智を以て聞えて居るSは
たちあな姫
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
寝室は
平生
(
ふだん
)
トルストイが、書斎に
定
(
き
)
めてゐる一室だつた。
山鴫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
平生
(
ふだん
)
ですら、そうなら病気の時はなおさらだ。病気の時に友達が世話をするのは、誰から云ったっておかしくはないはずだ」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
平生
(
ふだん
)
から無口なのがイヨイヨ意気地が無くなって盃を逃げ逃げ
後退
(
あとしざ
)
りをして行くうちに、部屋の隅の押入の半分
開
(
あ
)
いた
襖
(
ふすま
)
の前に横倒しになって
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と
良人
(
をつと
)
は云つて、ピガルの広場から地下電車に乗ることにした。人が込むだらうからと云つて一等の切符を買つたが、車は
平生
(
ふだん
)
よりも
乗客
(
のりて
)
が
少
(
すくな
)
かつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
平生
(
ふだん
)
からの処へ、今度煩い附きまして、もう二月三月、十日ばかり前から、また大変に悩みますので、医者と申しましても、三里も参らねばなりませぬ。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
平生
(
ふだん
)
着馴
(
きな
)
れた
振袖
(
ふりそで
)
から、
髷
(
まげ
)
も島田に由井ヶ浜、女に化けて
美人局
(
つつもたせ
)
……。ねえ坊ちゃん。梅之助が一番でしょう」
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
平生
(
ふだん
)
よりもまた近しくなった処、眼鏡屋の妻君のいうには、私の宅でも柳橋の古川さんに掛かっておりますが、どうも、さらに
験
(
げん
)
が見えません処を見ると
幕末維新懐古談:28 東雲師逝去のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「お前さん
此頃
(
このごろ
)
は何だか
欝
(
ふさ
)
いでばかり居るね。
平生
(
ふだん
)
から陽気な人でも、
矢張
(
やっぱ
)
り苦労があると見えるんだね。」
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今日は此方のお
神楽
(
かぐら
)
で、
平生
(
ふだん
)
は真白な鳥の
糞
(
ふん
)
だらけの鎮守の宮も
真黒
(
まっくろ
)
になる程人が寄って、安小間物屋、駄菓子屋、
鮨屋
(
すしや
)
、おでん屋、水菓子屋などの店が立つ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「
平生
(
ふだん
)
なら、あそこだつて、何でもないんですけども……。今日は女の方には少し無理でした——」
山間の旅舎
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
平生
(
ふだん
)
、私どもが読誦している『心経』には、『般若波羅蜜多心経』の上に、「
摩訶
(
まか
)
」の二字があったり、さらにまた、その上に「仏説」という字があるということです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
枕許に心細く
籠洋燈
(
かごランプ
)
が消え残っていた。——
自棄
(
やけ
)
で、その晩、何としてもうちへ帰れないまゝ、
平生
(
ふだん
)
贔負
(
ひいき
)
にしてくれる浅草の待合へころがりこんでしまった奴である……
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
妹が一かどの鑑賞家のつもりで、兄の繪について批評めいた口を利いたり、流行の藝術的用語など使つて生意氣な議論を
喋々
(
てふてふ
)
するのを、齒の
軋
(
きし
)
むほど
平生
(
ふだん
)
厭がつてゐたのだつた。
仮面
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
その又左衛門は
平生
(
ふだん
)
眼が悪くて勤めに不自由をするところから
女
(
むすめ
)
のお
岩
(
いわ
)
に婿養子をして隠居したいと思っていると、そのお岩は
疱瘡
(
ほうそう
)
に
罹
(
かか
)
って顔は皮が
剥
(
む
)
けて渋紙を張ったようになり
四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
『よく見ませうよ、
平生
(
ふだん
)
に見ようと思つたつて見られやしないのですから。』
御門主
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
其の中で
藤本
(
ふじもと
)
と云う鰻屋で料理を致す
家
(
うち
)
が有ります。六斎が引けますると、茂之助は
何日
(
いつ
)
も
其家
(
そこ
)
へ往って泊りますが、一体贅沢者で、田舎の肴は喰えないなどと云う事を
平生
(
ふだん
)
申して居ります。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
私は直ぐ腹の中でフフンと云ふ氣になつたが、
可成
(
なるべく
)
平生
(
ふだん
)
の快活を
裝
(
よそ
)
うて
菊池君
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
阪
(
ママ
)
本さんは
平生
(
ふだん
)
きたない風をして居つて顔付も恐ろしい様な人だつたが、此間は顔も奇麗に肥え大変立派になつて入らつしやつた、
吃度
(
きつと
)
死花が咲いたのでせう、間もなく没くなられたと云ひました
千里駒後日譚
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
なお
平生
(
ふだん
)
の虚勢を捨てないのだった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
“平生”の意味
《名詞・形容動詞》
普段。常日頃。
(出典:Wiktionary)
平
常用漢字
小3
部首:⼲
5画
生
常用漢字
小1
部首:⽣
5画
“平生”で始まる語句
平生着
平生服
平生帶
平生穿
平生夢寐
平生由緒