布團ふとん)” の例文
新字:布団
「頭から布團ふとんを冠つて居りました、何しろ大變な血で、一應は綺麗にしてやりましたが、御檢死前のことですから、そのまゝにして置きました」
たのみ外へ遣置やりおき急立せきたつこゝろしづめて覗見のぞきみるにへい四郎は夜具やぐもたれて鼻唄はなうたうたひ居るにぞよく御出おいでなんしたと屏風びやうぶの中にいりぬしに御聞申事がある布團ふとんの上へあがりけれどもなんの氣もつかところ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よくせき土地とち不漁しければ、佐渡さどから新潟にひがたへ……といたときは、枕返まくらがへし、と妖怪ばけものつたも同然どうぜん敷込しきこんだ布團ふとんつて、きたからみなみひつくりかへされたやうに吃驚びつくりした。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御米およね宗助そうすけのするすべてをながらたりいたりしてゐた。さうして布團ふとんうへ仰向あふむけになつたまゝこのふたつのさい位牌ゐはいを、えない因果いんぐわいとながいてたがひむすけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
またモイセイカは同室どうしつものにもいたつて親切しんせつで、みづつてり、ときには布團ふとんけてりして、まちから一せんづつもらつてるとか、めい/\あたらしい帽子ばうしつてるとかとふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
發作ほつさが止むと暫くの間、彼女は疲れ果てゝ横になつてゐたが、それから小聲で云つた——「ジエィン、あなたの足はむきだしなのね、此處で横になつて、私のお布團ふとんでお包みなさい。」
綱の中程のところに、一寸では見えないやうに刺し込んである針が五本、十本、それは布團ふとん針の太くたくましいので、そのあたりの綱に、少しばかり血がにじんでゐるのも無氣味です。
愛想あいそかさず、こいつを病人びやうにんあつかひに、やしき引取ひきとつて、やはらかい布團ふとんかして、さむくはないの、とそでをたゝいて、清心丹せいしんたんすゞしろゆびでパチリ……にいたつては、ぶんぎたお厚情こゝろざし
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
存命ながらへ孝行のよめに苦勞をさせんよりはいつそぬるぞましならん今宵の留守を幸ひに首をくゝつて死なんものと四邊あたりさぐり廻りけるに不※ふと細帶ほそおびの手にさはれば是幸ひと手繰寄たぐりよせ枕元まくらもとなる柱の根へ夜着よぎ布團ふとん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もう一呼吸ひといきで、あがるところであつた。臺所だいどころから、座敷ざしきへ、みづ夜具やぐ布團ふとん一所いつしよちまけて、こたつはたちまながれとなつた。が屈強くつきやうきやく居合ゐあはせた。女中ぢよちうはたらいた。家内かないおちついた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「俺は布團ふとんを冠つて寢て居るんだよ、ちよいと來て見るが宜い」
させにける此時吉兵衞は布團ふとんの上よりくだり兩人に向ひ申けるはわれ將軍しやうぐん落胤らくいんとは全く僞りにて實は紀州名草郡平野村の修驗者しゆけんじや感應院の弟子寶澤といふ者なるが平野村にお三婆と云ふ者あり其娘こそ誠におたね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……すみねまして、あのお布團ふとんへ。……申譯まをしわけがございません。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おかみさん、つまんで布團ふとんつけなさいよ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)