委細いさい)” の例文
しかし「委細いさい拝眉はいびの上」とあるきりで、はっきりしたことは何も書いてなかった。ただ「次郎の行末とも、自然関係ある儀に付、云々うんぬん
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
委細いさいは、勝入が腹心の者三名にとくと申しふくめてある。そちは馬子にふんして、この金を馬の背に積み、その者たちにただいてゆけばよい」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ブラウンには委細いさいつうじていたが、朝早くだから、まだ新聞に発表されない前で、一般にはなんら知れていなかったのだ。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
長八は更に我が子にむかって、探索たんさくの心あたり四、五カ所を云い聞かせると、長三郎は委細いさいこころえて、父の前を退いた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「そんな平気な事で、いくさが出来るかい」と女は、委細いさい構わず、白い顔を久一さんの前へ突き出す。久一さんと、兄さんがちょっと眼を見合せた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしういうものでございますが、現世げんせりましたときからふかくあなたさまをおしたもうし、こと先日せんじつ乙姫おとひめさまから委細いさいうけたまわりましてから、一層いっそうなつかしく
委細いさいの心は分らねどさては、扨は、細君が彼れの身持をとがめぬのみかは何も彼も承知の上で却て彼れに腹を合せ、彼れが如き異様なる振舞をさしむるにや
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
駕籠きには委細いさい命じてあるから、ギイと上ってスタスタスタ、急ぎ行きかけるかと思うと、なかなか出ない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
明智は委細いさいを語って、一応配電室を検べて見たいと申出でたので、S氏は直接彼をそこへ案内したが、無論、その時分には、部屋は空っぽ、何の異状もない。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
吟味ぎんみに及ばれけるが只々伊賀亮いがのすけ萬事を取計ひしゆゑ委細いさいは存じ申さずと云に然らばとて常樂院其餘の者を吟味ぎんみするに是も同斷の答へゆゑ入牢の上嚴重に拷問がうもん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
新蔵はこう委細いさいを話し終ると、思い出したように団扇うちわを使いながら、心配そうに泰さんの顔をうかがいました。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
このことがみかどのおみゝたつしましたので、お使つかひをくだされてお見舞みまひがありました。おきな委細いさいをおはなしして
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
もっともシャブズン氏からは手紙を貰って来た。シャブズン氏の手紙の中には委細いさい書いてある筈だ
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
半之助方小僧こぞうぶるえしつつ、酒一斗はとても入りね候と返答へんとういたし候ところ、山男、まずは入れなさるべく候として申し候。半之助も顔色青ざめ委細いさい承知しょうちと早口に申し候。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
委細いさいかまわずそのまま縁からおあがりなさって、差しおきました緋色繻珍ひいろしゅちんしとねに御着座になり、脇息きょうそくに肘などをおつきなされ、尊大なる御様子にて半刻ほどお待ちねがいます。
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
是れは医者の子で至極しごく面白いたしかな人物と見込んだから、この男に委細いさいの内情を打明けて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
本当は二十日ごろまでに、兄より何か、委細いさいのおしらせあるか、と待って居たのですが。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
平次は次第に緊張しますが、八五郎の話は委細いさい構わず続きます。
祈祷きとうしてなおしたことなどを委細いさいもうしあげました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あらわすつもりです。委細いさいの事はそれを御覧下さい
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「ハッ、委細いさい、わかりましてござりまする」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ここを日本のメロドラマでゆくと、委細いさいみ込んだ姐御あねごが、湯上りの身体を鏡台の前にえて諸肌もろはだ脱いで盛大な塗立工事にかかろうというところ。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
委細いさいは後で話す。逃げ隠れする程なら、大牟田公平は、遙々はるばる国表くにおもてから出て来て、しかもここまで参りはいたさん。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
できるだけ簡略な言葉で父の病気の危篤きとくに陥りつつあるむねも付け加えたが、それでも気が済まなかったから、委細いさい手紙として、細かい事情をその日のうちにしたためて郵便で出した。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
田宮は薄痘痕うすいものある顔に、一ぱいの笑いを浮べたなり、委細いさいかまわずしゃべり続けた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし委細いさい事情じじょうってわたくしには、あのうつくしいおかお何所どこやらにひそむ、一しゅさびしさ……新婚しんこんよろこぶというよりか、しろつらい運命うんめいに、仕方しかたなしに服従ふくじゅうしているとったような
そこでじゃ、そこもとの身の上ばなしも、委細いさいうけたまわったが、養子というものは、いわばまあ、富くじみたよう——当たらぬことには、これほどつまらぬ話はない。近い例が、その御身じゃ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
うすると貴様の再遊に都合がかろうといって、故意わざとその手紙に封をせずにけて見よがしにしてあるから、何もかも委細いさい承知して丁寧に告別して、宿にかえって封なしの手紙をひらいて見れば
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
委細いさい承知。みなまで仰言おっしゃるな。つまりですナ、この牛君……牛様に武芸万般を仕込んでぜひともヘルキュレスを闘技場アレエヌの砂に埋葬しようという。……それならば秘策は万事拙者せっしゃの方寸にありますヨ。
という自信をもって、この縄生なおうに陣をとどめるとすぐ、津田、富田の二名に、委細いさいを云いふくめ、長島の信雄の城へ、ひそかに通わせていたのである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
委細いさいを聞き終った日錚和尚は、囲炉裡いろりの側にいた勇之助ゆうのすけを招いで、顔も知らない母親に五年ぶりの対面をさせました。女の言葉が嘘でない事は、自然と和尚にもわかったのでしょう。
捨児 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ロンドン警視庁はさっそく同市警察に照会して該事件に関する委細いさいの報告を受け取ったが、それによると、書類の上では、犯罪の状況、生殖器の「斬り裂」き方、犯人をめぐる神秘の密度など
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「ははあ。なるほど委細いさいそこに!」大作は自分の胸を打つ真似まねをして
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
少し頼みたい事ができたが、わざわざ呼び寄せるのも気の毒だし、電話では手間がってかえって面倒になるし、仕方がないから、速達便で手紙を出す事にしたから、委細いさいはそれを見て承知してくれ。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
委細いさい、承知いたしました」
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「この上は、少しも早く一月寺へ立ち帰り、委細いさいの下書を作りました上、仰せのように致して、またのお沙汰を待ちまする。では、これにておいとまを……」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分と左膳とのあいだの乾坤二刀の争奪……誰も知る者のないはずなのに、この、突如としてあらわれた異装の一隊は、そのいきさつを委細いさい承知しょうちしてわれからこの場へ踏みこんできたらしい口ぶりだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
万吉とても同じであろう、川縁かわべりへ駈けだして行くと、無論、誰か持主のある物だろうが、委細いさいかまわずもやいを解いて、手頃な小舟をやしろの裏へいて来る。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
委細いさい何事も、安房あわどのがお心得ある。……何。わしか。入道一刀斎の行く先は、いくらでもある。何の、ちまたの世間に限ろうぞ。案ずるな。おさらば、おさらば
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——委細いさいは、夜前、申しおいた通りである。合図次第、よきように」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
委細いさい承知いたしたと、使いの者へお伝え願いたい」という。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
委細いさいはやがて分る日が参りましょう。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
委細いさい、木村丈八から』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
委細いさい、承知』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)