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奥床
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おくゆか
ふりがな文庫
“
奥床
(
おくゆか
)” の例文
旧字:
奧床
過ぎ行く舟の
奥床
(
おくゆか
)
しくも
垂込
(
たれこ
)
めた簾の内をば
窺見
(
うかがいみ
)
ようと首を
伸
(
のば
)
したが、かの屋根船は早くも遠く川下の方へと流れて行ってしまった。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
白日
(
はくじつ
)
に照された景色よりも月光に照されてぼんやりしている景色の方が、何とのう、神秘的な、怪奇的な
奥床
(
おくゆか
)
しい気分をそそると同じように
歴史的探偵小説の興味
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
家柄のある家に生れたので
眉目秀麗
(
びもくしゅうれい
)
で、
如何
(
いか
)
にも貴公子然としており、立居振舞も鷹揚で、また品がよく
奥床
(
おくゆか
)
しかったから
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
句の
良
(
よ
)
し
悪
(
あ
)
しも
畢竟
(
ひっきょう
)
、作者の心にあるのであります。作者の心が
奥床
(
おくゆか
)
しい心であれば自然に奥床しく映じ、奥床しく諷詠するようになります。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
羅門のさばきは、いつも
奥床
(
おくゆか
)
しかった。得手勝手な東儀与力とは、その実力はもちろん、人格においても、
雲泥
(
うんでい
)
の差である。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
「純日本式の、手入れの届いた
厠
(
かわや
)
には必ず一種特有な、上品な匂いがする、それが云うに云われない
奥床
(
おくゆか
)
しさを覚えさせる」
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
始めて汽車の中で
出逢
(
であ
)
つた時からして、何となく人格の
奥床
(
おくゆか
)
しい細君とは思つたが、さて打解けて話して見ると、別に御世辞が有るでも無く
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「それは僕も賛成だ、そんな物欲しそうな事は言わん方が
奥床
(
おくゆか
)
しくて好い」と主人はいつになく直ちに迷亭に加担する。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
先生の方では「なかなか
奥床
(
おくゆか
)
しい方だ」なぞ云って母を賞めていましたけれども、母の方は奥床しいどころでなく真剣に嫌がっていたようでした。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「
何
(
ど
)
うせこの頃の人は
皆
(
みんな
)
ペンを使いますから、筆を持たせると形がつきません。お互っこですけれど、字の特別に巧いのは何となく
奥床
(
おくゆか
)
しいものです」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
能登守がまたそれに相手にならず、
勉
(
つと
)
めて避けている態度を、
奥床
(
おくゆか
)
しいとも
歯痒
(
はがゆ
)
いとも見ている人もありました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
住太夫はお園の
胆気
(
たんき
)
と、語り口の
奥床
(
おくゆか
)
しいのに打込んで、これこそ我が相続をさせる者が見つかったと
悦
(
よろこ
)
んだ。
竹本綾之助
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「立派な
造作
(
こしらえ
)
、中身も恐らく名有る刀匠の鍛えであろう——何から何まで
奥床
(
おくゆか
)
しい心憎い住居の様子ではある」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
十八番の右は海を隔てて向ふに富士を望む処で別に趣向といふでもないが、ただこの一巻の最終の画であるだけに、この平凡な景色が何となく
奥床
(
おくゆか
)
しく見える。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
その頃でも
凝
(
こ
)
った料理屋などは菊座の燭台、ろうそくの火で飯を食い、手堅い商店では鉄網のかかった大行灯で客扱い、時代後れがかえって
奥床
(
おくゆか
)
しい気もしたものだ。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
地味が品質の検校を受けてしばしば上品の列に加わるのは、さびた心の
奥床
(
おくゆか
)
しさによるのである。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
他人から御馳走になるには少しでも高価なものを望むのが人情なのに、安い方を望むとは何という
恬淡
(
てんたん
)
で
奥床
(
おくゆか
)
しい人柄でしょう。まったく当代まれに見る見上げた税務吏員です。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
そこには氏の人格の
奥床
(
おくゆか
)
しささえ窺われて、確信のそのまま溢れたような飾り気のない文章は氏の内面の生活の素朴を思わせ、人をしてすずろに尊敬の念を起こさせるのである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
私は一日も早く大原さんと
貴嬢
(
あなた
)
が
奥床
(
おくゆか
)
しい御夫婦におなりなすってお二人揃って世中を感化なさる処を拝見したいと思いますよ。オホホ何ですって、そんな事は望まれないって。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
飯のつけようも
効々
(
かいがい
)
しい
女房
(
にょうぼう
)
ぶり、しかも何となく
奥床
(
おくゆか
)
しい、上品な、
高家
(
こうけ
)
の風がある。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかもそれは意識的にしたのでなく、偶然の結果からして、年代の
錆
(
さび
)
がついて出来てるのだった。それは古雅で
奥床
(
おくゆか
)
しく、町の古い過去の歴史と、住民の長い記憶を物語っていた。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
風
号
(
さけ
)
び雲走り、
怒濤澎湃
(
どとうほうはい
)
の間に立ちて、動かざること
巌
(
いわお
)
の如き日蓮上人の意気は、壮なることは壮であるが、煙波
渺茫
(
びょうぼう
)
、風
静
(
しずか
)
に波動かざる親鸞上人の胸懐はまた何となく
奥床
(
おくゆか
)
しいではないか。
愚禿親鸞
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
ここにもわずかばかりだが
胡瓜
(
きゅうり
)
の畑を作ってあるのが彼には
奥床
(
おくゆか
)
しかった。
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
姿にしても
其通
(
そのとほり
)
だ、
奈何
(
いか
)
にもキチンと
締
(
しま
)
ツて、
福袢
(
じゆはん
)
の
襟
(
えり
)
でも
帯
(
おび
)
でも、または
着物
(
きもの
)
の
裾
(
すそ
)
でもひツたり體にくツついてゐるけれども、
些
(
ちつ
)
とだツて
氣品
(
きひん
)
がない。別の
言
(
ことば
)
でいふと、
奥床
(
おくゆか
)
しい點が無いのだ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「さすがに
奥床
(
おくゆか
)
しい。やっぱり、やってるね」
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
しかしわれわれは人の家を
訪
(
と
)
うた時、座敷の
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
にその家伝来の書画を見れば何となく
奥床
(
おくゆか
)
しく
自
(
おのずか
)
ら主人に対して敬意を深くする。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
おもうと今更のように
奥床
(
おくゆか
)
しさをおぼえるのでござりますが父はそのときにはじめてお遊さんの
琴唄
(
ことうた
)
をきいて非常にかんどうしたのでござります。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
姪が出して来て見せたものは、手紙と言っても、純白な紙の
片
(
きれ
)
にペンで細く書いた僅かな
奥床
(
おくゆか
)
しい文句であった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
すべてのものを幽玄に化する一種の
霊氛
(
れいふん
)
のなかに
髣髴
(
ほうふつ
)
として、
十分
(
じゅうぶん
)
の美を
奥床
(
おくゆか
)
しくもほのめかしているに過ぎぬ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
またその方が
奥床
(
おくゆか
)
しいのに、この通り、番付いっぱいに自分の名前を書き
潰
(
つぶ
)
し、岩見重太郎でも、水戸黄門でも、下の方へ小さく記して得意げにしているところは
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
黴臭
(
かびくさ
)
いにおいと、軽い
樟脳
(
しょうのう
)
みたような香気が一緒になった中から、どこともなく
奥床
(
おくゆか
)
しい別の匂いがして来るようであるが、なおよく気を落ち付けて嗅ぎ直して見ると
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
飯
(
めし
)
のつけやうも
効々
(
かひ/″\
)
しい
女房
(
にようばう
)
ぶり、
然
(
しか
)
も
何
(
なん
)
となく
奥床
(
おくゆか
)
しい、
上品
(
じやうひん
)
な、
高家
(
かうけ
)
の
風
(
ふう
)
がある。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
客を応待する心の深さもしのばれて、なかなか
奥床
(
おくゆか
)
しいのである。
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
立入って知らないが
奥床
(
おくゆか
)
しいと思った。
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「実にどうも
奥床
(
おくゆか
)
しい」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それほど
由緒
(
ゆかり
)
のない建築もまたはそれほど
年経
(
としへ
)
ぬ樹木とても何とはなく
奥床
(
おくゆか
)
しくまた悲しく
打仰
(
うちあお
)
がれるのである。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
人の技倆を、それだけに見るほど、この人の修養もそれだけに深いものと思えば、
奥床
(
おくゆか
)
しい思いがする。よい人に会ったと兵馬は謹んでその言うところを聞いていると
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
極度の白きをわざと
避
(
さ
)
けて、あたたかみのある
淡黄
(
たんこう
)
に、
奥床
(
おくゆか
)
しくも
自
(
みずか
)
らを
卑下
(
ひげ
)
している。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
丹塗
(
にぬり
)
の柱、
花狭間
(
はなはざま
)
、
梁
(
うつばり
)
の波の
紺青
(
こんじょう
)
も、
金色
(
こんじき
)
の
竜
(
りゅう
)
も色さみしく、昼の月、
茅
(
かや
)
を
漏
(
も
)
りて、
唐戸
(
からど
)
に
蝶
(
ちょう
)
の影さす
光景
(
ありさま
)
、古き
土佐絵
(
とさえ
)
の画面に似て、しかも名工の
筆意
(
ひつい
)
に
合
(
かな
)
い、
眩
(
まば
)
ゆからぬが
奥床
(
おくゆか
)
しゅう
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
聞いて見ると、蓮太郎は赤倉の温泉へ身体を養ひに行つて、今其
帰途
(
かへりみち
)
であるとのこと。其時
同伴
(
つれ
)
の人々をも丑松に紹介した。右側に居る、何となく人格の
奥床
(
おくゆか
)
しい女は、先輩の細君であつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
何処までも遠慮深くおとなしくしている方がかえって
奥床
(
おくゆか
)
しく美しくはあるまいか。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「二尺四寸、
大湾
(
おおのた
)
れで
錵
(
にえ
)
と匂いの
奥床
(
おくゆか
)
しいこと、とうてい言語には述べ尽されぬ」
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
眉を払ってあの
奥床
(
おくゆか
)
しい堂上のぼうぼう眉を染めることだけは、奥方のそれと並ぶわけにはゆきませんけれども、お君はわざわざそんなことをしないでも、これで充分に満足しました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
気品の
勝
(
すぐ
)
れていることを何となく
奥床
(
おくゆか
)
しく感じてしまいました。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
奥
常用漢字
中学
部首:⼤
12画
床
常用漢字
中学
部首:⼴
7画
“奥”で始まる語句
奥
奥様
奥州
奥方
奥深
奥羽
奥山
奥義
奥行
奥津城