名刺めいし)” の例文
たいへんほがらかな、可愛かわいい娘さん達なので、喜んで、一緒に写真をとったり名刺めいしもらったり、手振てぶり身振りで会話をしたりしました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
中にはおれより背が高くって強そうなのが居る。あんな奴を教えるのかと思ったら何だか気味がるくなった。名刺めいしを出したら校長室へ通した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
名刺めいしもつくらせ、それからホテルの海野先生へ、ゲンコウタノムの電報、速達、電話、すべて私自身で発して居りました。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「至急当直将校に会わせて下さい。内容はお目にかからなければ言えませぬ。早く願います。僕の名刺めいし此所ここにあります」
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
「じゃあ、これも仏への供養だ。わしの名刺めいしを持って、葬式屋の陳三郎ちんさんろうの店から、棺桶とはなを貰って行くがいい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鮟鱇あんかうはらをぶく/\さして、かたをゆすつたが、衣兜かくしから名刺めいしして、ざるのなかへまつすぐにうやうやしくいて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
忽ち其墓の前に名刺めいしを置いて落涙らくるいする一青年せいねん士官しかん姿すがたが現われる。それは寄生木やどりぎ原著者げんちょしゃである。あゝ其青年士官——彼自身最早もう故山の墓になって居るのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ははあ、きみのおうちとおいのですか。ちょっとそれをせてくださいませんか。わたしはこういうものです。」と、紳士しんしは、名刺めいしして、信吉しんきちわたしました。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そうか。よろしい。わしの名刺めいしに向うの番地を書いてやるから、そこへすぐ今夜行きなさい。」
まへはどうするかねしくないかとはれて、わたしべつにほしいものがござんした、此品これさへいたゞけばなによりとおびあひだからきやく名刺めいしをとりしていたゞくまねをすれば、何時いつ引出ひきだした
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
名刺めいしつうじてゐるところへ、大入道おうにうどうのAおくからて、かれむかへてくれた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
友人というのは、某会社ぼうかいしゃ理事りじ安藤某あんどうぼうという名刺めいしをだして、年ごろ四十五、六、洋服ようふく風采ふうさいどうどうとしたる紳士しんしであった。主人は懇切こんせつおくしょうじて、花前の一しんにつき、いもしかたりもした。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
これは皆名刺めいしの配達だった。お部屋へもどったとき、照彦様は
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
学校がっこうからかえると、おとうさんが、「今年ことしから、おまえが、年始ねんしにおまわりなさい。」といって、おとうさんの名刺めいしを四まいわたしなさった。そうだ、ぼくは、十二になったのだ。
ある少年の正月の日記 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一通り中の設備を見てからネネムは警察長と向い合って一つのテーブルに座りました。警察長は新聞のくらいある名刺めいしを出してひろげてネネムに恭々うやうやしくよこしました。見ると
全体ぜんたい綜合そうがふしたところで、わたしあたまのこつた印象いんしやうふのは——はじめての出会であひ小川町をがはちやうあたりの人込ひとごみのなかであつたらしく、をんなそで名刺めいしでも投込なげこんだのがそもそもの発端はじまりで、二度目どめおなとほりつたとき
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その坂井さかゐには元日ぐわんじつあさはや名刺めいしんだだけで、わざと主人しゆじんかほずにもんたが、義理ぎりのあるところ一日いちにちのうちにほゞ片付かたづけ夕方ゆふがたかへつてると、留守るすあひだに、坂井さかゐがちやんとてゐたので恐縮きようしゆくした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「年賀ってものはコッソリ名刺めいしをおいて逃げるものだ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
名刺めいしには、東京とうきょう住所じゅうしょ文学博士ぶんがくはくし山本誠やまもとまことといういてありました。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから二日ふつかばかりして、坂井さかゐ名刺めいしへた立派りつぱ菓子折くわしをりつて、下女げぢよれいたが、先達せんだつては色々いろ/\御世話おせわになりまして、難有ありがたぞんじます、いづ主人しゆじん自身じしんうかゞはず御座ございますがといて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
名刺めいしをこしらえていただきたいんです」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)