かく)” の例文
かく、養家はそれから好い事ばかりが続いた。ちょいちょい町の人達へ金を貸つけたりして、夫婦は財産の殖えるのを楽んだ。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
致しかく宜敷計らひ候はん初瀬留樣にも此程このほどは日毎に御噂おうはさばかりなりと無理むりに手を取り其邊そのあたりなる茶屋へともなさけさかななどいださせて種々馳走ちそう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それから二人は、「まあかく行ってみよう」と云って、一緒に墓所へ出掛けて行った。見ると、はたして、墓石の字の、「本」が「木」になっている。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
で由三は、餘りに綾さんの世馴よなれた所置振り、何んとも謂はれぬ一種の不快を感じた。其でもかく話がきまツて、由三の一家はすぐに其の家へ引越した。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
まち獨立どくりつ立派りつぱ病院びやうゐん維持ゐぢされやうはいとか、かくわるいながらも病院びやうゐんるのはいよりもましであるとかと。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
うまるやうではかく人里ひとざとえんがあると、これがためにいさんで、えゝやつといまもみ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほかの事で君を呼んだのでは無いが、実は近頃世間に妙な風評が立つて——定めし其はもう君も御承知のことだらうけれど——彼様あゝして町の人がかく言ふものを、黙つて見ても居られないし
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
相手にたゝかひ居によりかくたすけんと存じ宵闇よひやみ暗紛くらまぎれに切付たるは女の聲ゆゑ偖は女房を切たるかと狼狽うろたへたる處に傍邊かたはらより男一人打て掛りしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かくかれ醫科大學いくわだいがく卒業そつげふして司祭しさいしよくにはかなかつた。さうして醫者いしやとしてつるはじめにおいても、なほ今日こんにちごと別段べつだん宗教家しゆうけうからしいところすくなかつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おとらは途々みちみちお島に話しかけたが、かく作の事はこれきり一切口にしないという約束が取極とりきめられた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ええ那様そんな事なら訳はないです。それじゃ明朝あしたかく行って、しらべてみて直しますが、そう云う事は長念寺の和尚おしょうところへも行って、次手ついでにおはなしなすったらいでしよう。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
あゝ、おまをしましやう、丁度ちやうどいてあげますほどおこめもございますから、それなつのことで、山家やまがえましてもよるのものに御不自由ごふじいうもござんすまい。さあ、かくもあなたおあがあそばして。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かく検屍けんしの済むまでは、といふので、蓮太郎の身体は外套でおほふたまゝ、手を着けずに置いてあつた。思はず丑松はひざまづいて、先輩の耳の側へ口を寄せた。まだそれでも通じるかと声を掛けて見る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一つは多少たせう慈愛に引かれた結果けつくつもあツたが、さらに其のおくを探ツたら、周三をツて了ツては血統けつとう斷絶だんぜつの打撃となるから、出來ぬ我慢をしてかく周三の意志いし尊重そんちようすることにした。子爵はあきらめたのだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
致させまじかれをつとの一大事と申は何か仔細のある事ならんとかく願ひのすぢ取上て遣はすべし然れども今は此混雜こんざつゆゑのち趣意しゆいは聞んにより一まづ其者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その時、その妙善の梵妻だいこくが、お茶を持って入って来たんです。で、かく夫妻ふたりとも判然はっきり見た。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
そこで私は、この晴二郎には、かく兄弟も親類もあることでござえますから、死骸を引取らして頂いて、一ト晩だけは通夜をしてやりとうごぜえんすと、恁う申しあげましたんです。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
アンドレイ、エヒミチはハヾトフが自分じぶん散歩さんぽさそつて氣晴きばらしせやうとふのか、あるひまた自分じぶん那樣仕事そんなしごとさづけやうとつもりなのかとかんがへて、かくふく着換きかへてともとほりたのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
多勢の子供たちを育てるために、長いあひだかく私は彼女を働かせて来た。
余震の一夜 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「嫌う嫌わないは別問題さ。かく結婚したと云うのは事実だろう」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)