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ふりがな文庫
“
叱咜
(
しった
)” の例文
互いに口角泡を飛ばして世の
頽廃
(
たいはい
)
を怒り、人心の堕落と無恥を
叱咜
(
しった
)
している、「要するに彼らは猿だ、犬だ、豚だ」などとわめく。
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蛤鍋
(
はまなべ
)
かなんかをつつきながら、しきりと女に酌をとらせていたものでしたから、右門は大声に
叱咜
(
しった
)
すると、まずその荒肝をひしぎました。
右門捕物帖:10 耳のない浪人
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
一箇の釜は飯が既に
炊
(
た
)
けたので、炊事軍曹が大きな声を挙げて、部下を
叱咜
(
しった
)
して、集まる兵士にしきりに飯の分配をやっている。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
剃刀を持ったまゝわな/\ふるえているお久には、河内介の
叱咜
(
しった
)
の声もおそろしかったが、それ以上に道阿弥の顔つきの方が
物凄
(
ものすご
)
かった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
黄人
(
こうじん
)
の私をして白人の
黄禍論
(
こうかろん
)
を信ぜしめる間は、君らは
須
(
すべから
)
く妻を
叱咜
(
しった
)
し子を
虐
(
しいた
)
げ
太白
(
たいはく
)
を挙げてしかして帝国万歳を
三呼
(
さんこ
)
なさい。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
地唄に、三味がまじって、踊りはじめたが、心に憂悶のある光丸は、幾度も手をまちがえて、師匠から、はげしく
叱咜
(
しった
)
された。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そこで、まっ先に、同輩たちを呼びたてながら、ただごとならぬ悲鳴、物音、
叱咜
(
しった
)
の場所まで、ひと息に、
馳
(
か
)
けつけて来た。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頭上
(
ずじょう
)
の騒動はいよいよ
爛熟
(
らんじゅく
)
し、ポルトガル人の
叱咜
(
しった
)
する声にまじって、帆柱の倒れる音や重いものを曳きまわす音、
大鋸
(
おおが
)
で木を挽く音、手斧で打ち割る音
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
かくの如く勢強き恐ろしき歌はまたと
有之間敷
(
これあるまじく
)
、八大竜王を
叱咜
(
しった
)
する処、竜王も
懾伏
(
しょうふく
)
致すべき
勢
(
いきおい
)
相現れ申候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
イエスは弟子たち一同を鋭く見まわしつつ言下に、「
退
(
さが
)
れ、サタン! 汝は神のことを思わず、かえって人のことを思う」と強く
叱咜
(
しった
)
し給うた(八の三一—三三)。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
ふたりがびくびくもので、一、二寸前へ刻み出たとき、源十郎は、大刀に
鍔
(
つば
)
鳴りをさせて
叱咜
(
しった
)
した。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
こんな場合にいつも先陣を争う髯将軍はいかにせしぞと
後
(
のち
)
に聴けば、将軍、剛力の
遅々
(
ぐずぐず
)
が
癪
(
しゃく
)
に触って堪らず、
暫時
(
しばし
)
叱咜
(
しった
)
督励していた為に、思わず大いに遅れたという事だ。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
その当惑した二人の者を、尚も
嬲
(
なぶ
)
ろうとでもするかのように、三度、勇ましい鬨の声が谷の四方から湧き起った。猟犬の猛々しく吠ゆる声。何者をか
叱咜
(
しった
)
する人間の叫び。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
燕王戦
罷
(
や
)
んで営に
還
(
かえ
)
るに、
塵土
(
じんど
)
満面、諸将も
識
(
し
)
る能わず、語声を聞いて王なるを
覚
(
さと
)
りしという。王の
黄埃
(
こうあい
)
天に
漲
(
みなぎ
)
るの中に
在
(
あ
)
って
馳駆奔突
(
ちくほんとつ
)
して
叱咜
(
しった
)
号令せしの状、察す
可
(
べ
)
きなり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
喃々
(
なんなん
)
私語
(
しご
)
する貴婦人達を
叱咜
(
しった
)
して、「こんな
豚共
(
ぶたども
)
に
聴
(
き
)
かせるピアノではない」とピアノの
蓋
(
ふた
)
を
閉
(
とざ
)
してサッサと帰ったこともあり、普仏戦争当時、
戦塵
(
せんじん
)
を避けたリヒノフスキー邸で
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
時計のゼンマイを巻きあげてすべての想像上の観客を
叱咜
(
しった
)
し、独白すると同時に世界じゅうにむかって呼びかける——どういうわけがあるのかわたしは了解にくるしむのであるが
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
公子
外道
(
げどう
)
、外道、その女を返せ、外道。(
叱咜
(
しった
)
しつつ、窓より出でんとす。)
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「おい! みんな!」と、周囲に
散
(
ちら
)
かっている乾児達を呼んだ。烈しい
叱
(
しか
)
り付けるような声だった。
喧嘩
(
けんか
)
の時などにも、
叱咜
(
しった
)
する忠次の声だけは、狂奔している乾児達の耳にもよく徹した。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
いつもならば戦場で千騎万騎を
叱咜
(
しった
)
する坂東声を筒いっぱいにふり立てて、頭から噛みつくように罵りたけるわがままのあるじが、これほどの強い忍耐力をもって自分に対するというのが
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これが大ぜいの若者たちを自由自在に操縦もし
叱咜
(
しった
)
もしたあの
気嵩
(
きかさ
)
で美しく張のあった母かと、呆れもし
暗涙
(
あんるい
)
に
噎
(
むせ
)
びながら、身震いが出るほど嫌味なものを感じますが、粗末にはできません。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
係官は苦笑をしのびながら
叱咜
(
しった
)
した。角帯の男の瞳には、その自分の権威なきみじめな様子を、想うゲーム取りに蔑んで見られはしまいかと云う馬鹿な危惧が、ありありと表われていたからである。
撞球室の七人
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
叱咜
(
しった
)
していない時は笑っている。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
とゴルドンが
叱咜
(
しった
)
した。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
すると美佐子は彼の
叱咜
(
しった
)
をキッカケにして一層声を放って泣いた。「
堪忍
(
かに
)
して下さい、あたしあなたに今日まで隠していたことがあるのよ」
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一見剣客と思われる逞しい
五分月代
(
ごぶさかやき
)
が、突如そこに姿を見せると、明らかに新手の助勢であることを示しながら、
叱咜
(
しった
)
するように叫びました。
旗本退屈男:01 第一話 旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
城内から
溢
(
あふ
)
れ出た若侍たちは、うろたえている人足どもを
叱咜
(
しった
)
して、その空濠の底から、石に押しつぶされた
工人
(
こうじん
)
の死骸を引きあげさせている。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「泣蟲ッ、
朝腹
(
あさっぱら
)
から
何
(
な
)
んだ。」と父は鋭い
叱咜
(
しった
)
の一声。然し、母上は懐の片手を抜いて、静に私の
頭
(
かしら
)
を撫で
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それまでにも、妙に、威圧されるものを感じていたのに、その
叱咜
(
しった
)
の声は、完全に、時次郎を打ちのめした。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
と強く自らを
叱咜
(
しった
)
している弥生は、それでも、これがあの栄三郎のおすまいかと思うと、今にも眼がしらが熱くなってきそうで、そこらにある
乏
(
とぼ
)
しい世帯道具の一つ一つまでが
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
刀真っ向に振り冠り、暗々たる
土蔵
(
くら
)
内に踏み入りながら、冬次郎は
叱咜
(
しった
)
した。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
無法に住して放逸
無慚
(
むざん
)
無理無体に暴れ立て暴れ立て進め進め、神とも戦え仏をも
擲
(
たた
)
け、道理を
壊
(
やぶ
)
って壊りすてなば天下は我らがものなるぞと、
叱咜
(
しった
)
するたび土石を飛ばして
丑
(
うし
)
の刻より
寅
(
とら
)
の刻
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ツカツカと愛一郎のそばへ行くと、ドスのきいた声で、中村が
叱咜
(
しった
)
した。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「起て」宗利は
叱咜
(
しった
)
した、「沙汰するまで閉門を申付ける」
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
また
鈍根
(
どんこん
)
の子弟を
恥
(
は
)
じしめて、
小禽
(
しょうきん
)
といえども芸道の秘事を解するにあらずや汝人間に生れながら鳥類にも
劣
(
おと
)
れりと
叱咜
(
しった
)
することしばしばなりき
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その
叱咜
(
しった
)
を、振り向けもしないのだ。兵は発狂状態をやがておこす。——二十八日合戦は、こうして加茂の一角で勝った。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と知るや、突然見物人を押し分けて前へ出ると、ぎらりおのれのわきざしを抜き放って、それを黙山の手に持たせながら、
叱咜
(
しった
)
するように鋭く叫びました。
右門捕物帖:10 耳のない浪人
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それをば無理無体に荒くれた
馬子供
(
まごども
)
が
叱咜
(
しった
)
の声激しく落ちた
棒片
(
ぼうぎれ
)
で容捨もなく打ち
叩
(
たた
)
く、馬は激しく
手綱
(
たづな
)
を引立てられ、
轡
(
くつわ
)
の痛みに堪えられぬらしく、白い歯を
噛
(
か
)
み、
鬣
(
たてがみ
)
を逆立て
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
まさに
神采
(
しんさい
)
奕々
(
えきえき
)
として、
梟雄
(
きょうゆう
)
弾正太夫をさえ、
叱咜
(
しった
)
し去らん勢いである。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
マンは、毎朝、食事のとき、金五郎と勝則とを
叱咜
(
しった
)
する。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
それは
瀕死
(
ひんし
)
の者のこえとは思えぬ烈しい
叱咜
(
しった
)
だった
荒法師
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
上眼づかいに栄三郎が
叱咜
(
しった
)
する。源十郎は笑った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と、心では
叱咜
(
しった
)
してみるものの、どうしようもない
顫
(
ふる
)
えを白い刀身に
刻
(
きざ
)
むだけで、いつまで斬ッてかかれなかった。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐らくは
真向浴
(
まっこうあ
)
びせにすさまじい
叱咜
(
しった
)
の声をでも浴びせかけるだろうと思われたのに、主水之介の姿を見眺めるや大きく先ず
莞爾
(
かんじ
)
として打ち笑ったものです。
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
馬上から大音を挙げて
叱咜
(
しった
)
したが、父は
屹
(
きっ
)
と正則を見上げて、某の運が拙いばかりに、汝を生け捕って此のようにすることが出来なかったのは残念であると、臆する色もなく云い返したと云う話。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「くどい!」と広太郎、腹に据えかね、はじめて
叱咜
(
しった
)
を響かせた。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かれは自分を
叱咜
(
しった
)
するように
呻
(
うめ
)
いた。
足軽奉公
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と、路地の口から往来の左右を、いわゆる“
恐
(
こわ
)
らしき者”といわれる
権柄
(
けんぺい
)
と
叱咜
(
しった
)
で、群集を、押しひらいた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けしきばみながらどやどやと木刀小
太刀
(
だち
)
ひっさげて駆け迫ってきた門人どもに
莞爾
(
かんじ
)
とした
笑
(
え
)
みを送ると、
叱咜
(
しった
)
したその
一喝
(
いっかつ
)
のすばらしさ! すうと胸のすくくらいです。
右門捕物帖:26 七七の橙
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「あかん、あかん、弾けるまで夜通しかかったかて
遣
(
や
)
りや」と激しく
叱咜
(
しった
)
する声がしばしば階下の奉公人共を
驚
(
おどろ
)
かした時によるとこの幼い女師匠は「
阿呆
(
あほう
)
、何で覚えられへんねん」と
罵
(
のの
)
しりながら
撥
(
ばち
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「いかがでござるな!」と西川正休、
叱咜
(
しった
)
するように声を掛けた。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“叱咜”の意味
《名詞》
叱 咜(しった)
大声で叱ること。
大声で励ますこと。
(出典:Wiktionary)
叱
部首:⼝
5画
咜
部首:⼝
8画
“叱”で始まる語句
叱
叱咤
叱言
叱責
叱呼
叱正
叱声
叱々
叱陀
叱付