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刹那
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せつな
ふりがな文庫
“
刹那
(
せつな
)” の例文
私
(
わたし
)
の長い
寫眞物語
(
しやしんものかた
)
りのペエジにも
悲喜
(
ひき
)
こも/″\の出來事が
繰
(
くり
)
返されたが、あの
刹那
(
せつな
)
にまさる
嬉
(
うれ
)
しさがもう
再
(
ふたゝ
)
びあらうとは
思
(
おも
)
へない。
写真と思ひ出:――私の写真修行――
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
壮大なこの場の自然の光景を背景に、この無心の熊さんを置いて見た
刹那
(
せつな
)
に自分の心に湧いた感じは筆にもかけず
詞
(
ことば
)
にも表わされぬ。
嵐
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と云ふ決心が出來れば、或は二つの情願が、死の
刹那
(
せつな
)
に
融合
(
ゆうがふ
)
してしまふ樣にもならうが、之とて今の亨一に
強
(
しひ
)
ることが出來なかつた。
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
ベアトリーチェに接近することが出来るということを知った
刹那
(
せつな
)
、そうすることが彼の生活には絶対に必要なことのように思われた。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
そしてその
刹那
(
せつな
)
、手燭もあんどんもことごとく消えて、あたりは鼻をつままれてもわからぬ暗々の闇一色とかわってしまったのです。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
もう死んだものと諦めた
刹那
(
せつな
)
に、ぱっと生きかえったのである。死中に活を求める。これこそ日本にのみ伝わる武芸の神秘であった。
浮かぶ飛行島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
如何に愛し合って居る男女でも、
刹那
(
せつな
)
々々の気分の動きがその純情に不純の
礫
(
こいし
)
を混じえぬと、どうして云い切ることが出来ましょう。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
いつ死ぬかもしれぬ身であるならば、せめて自分が天職とも信じて選んだ職場で、それも自分の情熱を傾けつくした
刹那
(
せつな
)
に倒れたい。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
真ッ二つ! 孫兵衛の息と手が、さっと放たれようとした
刹那
(
せつな
)
、
甲比丹
(
かぴたん
)
の三次やほかの者たちと、こっちの縁側にいた見返りお
綱
(
つな
)
が
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鳴神
(
なるかみ
)
おどろおどろしく、はためき渡りたるその
刹那
(
せつな
)
に、
児
(
じ
)
の
初声
(
うぶこえ
)
は
挙
(
あが
)
りて、さしも
盆
(
ぼん
)
を
覆
(
くつがえ
)
さんばかりの大雨も
忽
(
たちま
)
ちにして
霽
(
は
)
れ
上
(
あが
)
りぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
丹治は大きな獲物の落ち
来
(
きた
)
る
刹那
(
せつな
)
の光景を想像しながら鶴の方を見た。鶴は平気で長い
頸
(
くび
)
を
傾
(
かし
)
げるようにしていた。丹治は眼を
睜
(
みは
)
った。
怪人の眼
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その男は
仕合
(
しあわ
)
せにも大した
怪我
(
けが
)
もせず、
瀑布
(
ばくふ
)
を下ることが出来たけれど、その一
刹那
(
せつな
)
に、頭髪がすっかり白くなってしまった
由
(
よし
)
である。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この
刹那
(
せつな
)
に箱の
蓋
(
ふた
)
をあけると、案の通り土で造った円筒状の
煙管
(
キセル
)
の雁首が一箇出た。箱の蓋を
能
(
よ
)
く見ると、
煙草
(
タバコ
)
を刻んだ跡もある。
土塊石片録
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
岡田は只それだけの
刹那
(
せつな
)
の知覚を閲歴したと云うに過ぎなかったので、無縁坂を降りてしまう頃には、もう女の事は綺麗に忘れていた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「ようこそ、花聟さま」と、ふたたび金切り声がひびいたと思う
刹那
(
せつな
)
、その声のぬしは腕を差し出しながら私のほうへ走って来た。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
その叫びをあげる
刹那
(
せつな
)
は全く、ありとあらゆる記憶、あらゆる感じ、それらのものが、一度に総勘定でもするように頭に浮かんで来た。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
その消えたのはほんの一
刹那
(
せつな
)
で、また同時に消える数がわずかだったが、畔の全体の長さに沿うて一列二列の間はぼかされていた。
世界怪談名作集:04 妖物
(新字新仮名)
/
アンブローズ・ビアス
(著)
……まる三年以上も、彼を取巻き、押えつけ、
閉籠
(
とじこ
)
めていたもの、どす黒く重苦しい壁のようなものがはたし状を書いた
刹那
(
せつな
)
に崩れた。
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
まことにその
刹那
(
せつな
)
の尊い恐しさは、あたかも「でうす」の御声が、星の光も見えぬ遠い空から、伝はつて来るやうであつたと申す。
奉教人の死
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
刹那
(
せつな
)
即
(
すなわ
)
ちモーメントの出来事を……」と、云ったような言葉遣いが、譲吉の僧侶に対する反感を、一層強めた。殊にその坊主が
大島が出来る話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その道楽が職業と変化する
刹那
(
せつな
)
に今まで自己にあった権威が突然他人の手に移るから快楽がたちまち苦痛になるのはやむをえない。
道楽と職業
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして彼には、この
刹那
(
せつな
)
を境にして自分が、この地上で自ら
為遂
(
しと
)
げなければならぬ事の何かを、完全に悟ったような気がしていた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
鍵を受取ってポケットに入れようとしたが、その一
刹那
(
せつな
)
に片手でデッキの
欄干
(
てすり
)
に掴まっていた中野学士が鮮やかな足払いをかけた。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
其の一
刹那
(
せつな
)
、己が彼女から真先に受けた印象は、
彼
(
か
)
の
女
(
じょ
)
の体中に星の如く附着してピカピカと光って居る、無数の
宝石類
(
ほうせきるい
)
であった。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
根が尽きて気があせり、構えが崩れた一
刹那
(
せつな
)
を、一気に勝ちを制してやろう。相手の不思議なあの構えを、突き崩すのが急務である
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「机に臂をついてみて」さてどうするのかというと、それは誰にもわからぬ。作者はただ臂をついた
刹那
(
せつな
)
を捉えたまでなのである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
葉子はソファを
牝鹿
(
めじか
)
のように立ち上がって、過去と未来とを断ち切った現在
刹那
(
せつな
)
のくらむばかりな変身に打ちふるいながらほほえんだ。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
よろめくように
立上
(
たちあが
)
ったおせんは、
窓
(
まど
)
の
障子
(
しょうじ
)
に
手
(
て
)
をかけた。と、その
刹那
(
せつな
)
、
低
(
ひく
)
いしかも
聞
(
き
)
き
慣
(
な
)
れない
声
(
こえ
)
が、
窓
(
まど
)
の
下
(
した
)
から
浮
(
う
)
き
上
(
あが
)
った。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
彼女がこう言った
刹那
(
せつな
)
、その馬は荷を積んだ
驢馬
(
ろば
)
を避けようとしたはずみに、ちょうどこっちへ進行して来た人力車と真向かいになった。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
あの一
刹那
(
せつな
)
にわたくしの運命は定まったのでございます。わたくしは開けようと思った戸を開けずに、
帷
(
とばり
)
の蔭に隠れていました。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
「われを売る者、この中にひとりあり。」キリストはそう
呟
(
つぶや
)
いて、かれの一切の希望をさらっと捨て去った、
刹那
(
せつな
)
の姿を巧みにとらえた。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そしてあなたを
抱
(
だ
)
きとめに走ろうとする
刹那
(
せつな
)
、わしはあなたが両手を広げて涙をいっぱい目にためて、わしのほうに走ってくるのを見た。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
こんな事を考えながら女は
寐入
(
ねい
)
ってしまったが、ある一
刹那
(
せつな
)
にその眠りが突然
醒
(
さ
)
めた。あたりを
見廻
(
みまわ
)
せば、ほとんど真っ暗になっている。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
これが目にはいった
刹那
(
せつな
)
は恐ろしい気さえしたが、寄って行って声をかけると、老人らしく
咳
(
せき
)
を先に立てて答える女があった。
源氏物語:15 蓬生
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
その
刹那
(
せつな
)
に、わたしはなんとも言えない一種の
戦慄
(
せんりつ
)
を感じたことを白状しなければならない。その乗客はかの三好透であった。
深見夫人の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一寸した
刹那
(
せつな
)
である。
千仞
(
せんじん
)
の崖の上に立ったように目まいがした。急に目先が真暗になった。そしてそれが先達の最期だった。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
不意に視野に入れた
刹那
(
せつな
)
、私は急に何か自分に
憑
(
つ
)
いていたものから
醒
(
さ
)
めたような気持で、その建物の中で多数の病人達に取り囲まれながら
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
無論
腕木
(
うでぎ
)
の支柱があり、黒鉄の上下
槓
(
こう
)
が横斜めに構えてはいた。その
把手
(
ハンドル
)
を菜っ葉服の一人が両手でしっかと引き降しに
圧
(
おさ
)
えた
刹那
(
せつな
)
である。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
銀子のある瞬間が世にありし日の懐かしい夫人の感じを
憶
(
おも
)
い起こさせるのて、座敷へ姿を現わした
刹那
(
せつな
)
の印象が心に留まった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いかに、江戸の隅から隅まで、闇夜も真昼のように見とおす心眼を持った闇太郎にしろ、ろ半を出て、河岸に突っ立った
刹那
(
せつな
)
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
見つけられたと思ったものは、急に頭から冷水をかけられたような気分がして、穴があったら地の中へ隠れたいと思う
刹那
(
せつな
)
過ぎた春の記憶
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
改札口の重い戸を力まかせに閉めて、転ぶように階壇を飛び降りたが、その
刹那
(
せつな
)
、新宿行きの列車は今高く汽笛を鳴らした。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
最初の発見者が駈けつけた
刹那
(
せつな
)
に、ジャックは
屍
(
し
)
体を離れて、その時は静かに、そこらの暗い一隅に立って人々の
驚愕
(
きょうがく
)
を見ていたに相違ない。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そうしてその表現がまた
刹那
(
せつな
)
のひらめきの鋭い利用や、間投詞の巧妙な投げ込み方によって、一分のすきもないものである。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
刹那
(
せつな
)
、彼はあけ放たれたドアの中へすべり込んで、壁の陰に身をひそめた。それは真に危機一髪で——もうその時彼らは踊り場に立っていた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
しかも「永遠に立脚して、
刹那
(
せつな
)
に努力する人」こそ、はじめてかかる境地を、ほんとうに味わうことができるのであります。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
刹那
(
せつな
)
の積み重つた甘さでもある。女を眼の前に坐らせて、これから起つて来る刹那に就いて、富岡は自分のいやらしさをためしてみたかつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
で、何かいい出しそうにじッ! とおさよを見すえた
刹那
(
せつな
)
!
裂帛
(
れっぱく
)
の叫び声がどこからともなく尾をひいて陰々たる屋敷うちに流れると……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
かの
刹那
(
せつな
)
のことについてわが語るを得るは是のみ、曰く、彼を視るに及びわが情は他の一切の願ひより解かると 一三—一五
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
自分が何かをああ美味しい! とたべた
刹那
(
せつな
)
、又ああいい空気だと感じた瞬間、すぐその下から、忽ちいろいろと苦しい心持を感じて来ている。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
“刹那”の解説
刹那(せつな、sa: kṣaṇa)は、時間の単位・概念。
(出典:Wikipedia)
刹
常用漢字
中学
部首:⼑
8画
那
常用漢字
中学
部首:⾢
7画
“刹那”で始まる語句
刹那的
刹那主義
刹那々々
刹那刹那
刹那感