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充
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ふりがな文庫
“
充
(
みた
)” の例文
それを
充
(
みた
)
すべく一寸失敬して、これから出掛けて来る。ボーイさん。自動車をそういって呉れ給え。じゃ、また明日逢うことにしよう
一枚の切符
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
また彼は水素を
充
(
みた
)
した石鹸玉が、蒼ざめた人と街とを昇天させながら、その空気のなかへパッと七彩に浮かび上がる瞬間を想像した。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
人間の生活は、全く苦惱で而も意味は空ツぽだけれども、智識は其の空ツぽを
充
(
みた
)
して、そして
種々
(
さまざま
)
の繋縛をぶち
斷
(
き
)
ツて呉れるのだ。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
彼の心は
事業
(
しごと
)
の方へ向いた。その自分の気質に適した努力の中に、何物を
以
(
もっ
)
ても
満
(
みた
)
すことの出来ない心の空虚を
充
(
みた
)
そうとしていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
我身
(
わがみ
)
も
不肖
(
ふしょう
)
ながら家庭料理の改良を
本
(
もと
)
として大原ぬしの事業を助けばやと未来の想像は愉快に
充
(
みた
)
されて結びし夢も
温
(
あたたか
)
に楽しかりき。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
▼ もっと見る
夫人と話していると、妻の静子に
依
(
よ
)
って
充
(
みた
)
されなかった欲求が、わずか三四分の同乗に依って、十分に充たされたように思った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
が、それでいて、無理に目覚めさせられた若さの
寂
(
さび
)
しさとでも言おうか、私の心のどこかしらに
充
(
みた
)
されない寂しさがあった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
私は、私の欲望を
充
(
みた
)
してくれるものが一つもない、かうした處にこの上
愚圖々々
(
ぐづ/\
)
は出來ない。私は立上つた、そして今迄ゐた寢床を見返つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
丁度
(
ちょうど
)
、十年前憶えたヴェルレエヌの句そのまま、「秋の日のヴィヲロンの、溜息の身にしみて、ひたぶるにうらがなしい」気持に
充
(
みた
)
されながら。
十年
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
かく汝らは預言者を殺しし者の子たるを自ら
証
(
あかし
)
す。なんぢら己が先祖の
桝目
(
ますめ
)
を
充
(
みた
)
せ。蛇よ、
蝮
(
まむし
)
の
裔
(
すゑ
)
よ、なんぢら
争
(
いか
)
でゲヘナの刑罰を避け得んや。
如是我聞
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
かれは希望に
充
(
みた
)
されて通った熊谷街道と、さびしい心を抱いて帰って行く弥勒街道とをくらべてみた。若い元気のいい友だちがうらやましかった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
だから、僕に対して恋の勝利者である君は、僕の贈り物が、一面に於て如何に悲しい思い出をもって
充
(
みた
)
されて居るかをも十分認めてくれるであろう。
恋愛曲線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それで自己の最大要求を
充
(
みた
)
し自己を実現するということは、自己の客観的理想を実現するということになる、即ち客観と一致するということである。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
美しい
彫刻
(
ほり
)
のある、銀の台付の杯を、二つ並べて、浪路は、黄金のフラスコ型の
壜
(
びん
)
から、香りの高い酒を
充
(
みた
)
して
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
代って
舌鼓
(
したつづみ
)
うちたいほどの
甘
(
あま
)
い
哀愁
(
あいしゅう
)
が復一の胸を
充
(
みた
)
した。復一はそれ以上の意志もないのに
大人
(
おとな
)
の
真似
(
まね
)
をして
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ざっと水の流るる音、これから上は、残雪の他、水を得られないとて水筒に
充
(
みた
)
し、一直線にこの急坂を登る。
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
だからいかに巧みに
詠
(
よ
)
みこなしてあっても、一句一首のうちに表現されたものは、
抒情
(
じょじょう
)
なり叙景なり、わずかに彼の作品の何行かを
充
(
みた
)
すだけの資格しかない。
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
壺には念入りに鉄漿を
充
(
みた
)
してあるので、
極熱
(
ごくねつ
)
の気に蒸れて、かびたような、すえたような
臭気
(
におい
)
が湧く。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……眼の中が
自然
(
おのず
)
と熱くなって、そのままベッドの上に突伏したいほどの思いに
充
(
みた
)
されつつ、かなしく
両掌
(
りょうて
)
を顔に当てて、眼がしらをソッと押え付けたのであった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それで希望の幾分なりとも
充
(
みた
)
し得たことに満足して、思い切って本流を離れ、仙人谷を遡って、立山の室堂に出ることを心の中では既に思い定めていたのであった。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
単に
頑是
(
がんぜ
)
ない聴衆の好奇心を
充
(
みた
)
すためならば、入って行く必要もなかったろうと思う説明に入っていることである。これには何か隠れたる約束があるのではないか。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼女のお腹を
充
(
みた
)
し、身体を暖めてくれたのは、お菓子や火ばかりではありません。お菓子でも火でもなく、ベッキイを養い暖めてくれたものは、もちろんセエラでした。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
冬になって天地が
蕭条
(
しょうじょう
)
たる色彩に
充
(
みた
)
される。そういう天地の間にある時、茶褐色の鳶の姿が物にまぎれて見えるというのであろう。保護色などという面倒な次第ではない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
人が、知るための興味のみで科学的研究をなすことは稀である。一般に人は、役立つという目的を研究に求めている。そしてこの目的を
充
(
みた
)
し得るのは、政策によってのみである。
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
即ち一方の水銀柱は十粍下り一方の開いた方の水銀柱は十粍上りました。そこで開いた方の口の水銀の上へ少し許りの硫酸を
充
(
みた
)
して置けばどうでしょう。当然硫酸は
溢
(
あふ
)
れる訳です。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
来る客の望を
愜
(
かな
)
へるのは、クリストの意志を
充
(
みた
)
す
所以
(
ゆゑん
)
であるから、拒んではならない。折角来た客に隠れて逢はないでは残酷である。こんな風に云はれて見れば、一々道理はある。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
比喩
(
ひゆ
)
は
廃
(
よ
)
して露骨に申しますが、僕はこれぞという理想を奉ずることも出来ず、それならって俗に和して肉慾を
充
(
みた
)
して以て我生足れりとすることも出来ないのです、出来ないのです
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
床の間は床板を張って室内の他部と判明に対立することを要する、すなわち床の間が「いき」の条件を
充
(
みた
)
すためには本床であってはならない。
蹴込床
(
けこみどこ
)
または敷込床を択ぶべきである。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
伸子の両親を愛し彼らからもまた愛されることによって
充
(
みた
)
そうと、どんなにか楽しんでいたのに、円満にゆかず、こんな遺憾なことはないと、自身あのように涙に
咽
(
むせ
)
んで云ったのに。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
おしおはちょっと相手の顔を見返したまま、黙ってその盃を
充
(
みた
)
した。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
たえ子はその
晩
(
ばん
)
も女中のお春と二人きりの
淋
(
さび
)
しい食卓に向つて、腹立しさと侮辱と悲哀とに
充
(
みた
)
された弱い心を
強
(
し
)
ひて平気らしく
装
(
よそほ
)
ひながら
箸
(
はし
)
を執つてゐたが、続いて来る
苛々
(
いら/\
)
しい長い一夜を考へると
復讐
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
君等ほど愛に飢え、愛に
充
(
みた
)
されているものはない
地を掘る人達に
(新字新仮名)
/
百田宗治
(著)
藜藿
(
れいかく
)
我
(
わが
)
腸
(
はらわた
)
を
充
(
みた
)
し
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
信一郎の心が、こうした義憤的な興奮で、
充
(
みた
)
された時だった。妻の静子は、——神の
如
(
ごと
)
く何事をも疑わない静子は、信一郎を促すように云った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そしてモデルとして周三の氣に適つたお房は、肉體
美
(
び
)
の最も完全なものとして周三の心の
空乏
(
くうぼう
)
を
充
(
みた
)
すやうになつた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「マア
急
(
せ
)
くな。俺は、そんなことよりも、五万円の
使途
(
つかいみち
)
について考えたいと思っているんだ。だが、君の好奇心を
充
(
みた
)
す
為
(
ため
)
に、一寸、簡単に苦心談をやるかな」
二銭銅貨
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
二人は子供のやうに遊び狂ひながら絶対に心は恋愛に
充
(
みた
)
されてゐた。随分性質の悪い
悪戯
(
いたずら
)
をし合つて怒つたり、
苛
(
いじ
)
めたりし合つても、愛の揺ぎを感じなかつた。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして、そのもてなしの中でも、とりわけ嬉しかつたのは、たつぷりある御馳走で、死にさうな食慾を
充
(
みた
)
してゐる私たちを、じつと見てゐる女主人の
滿足氣
(
まんぞくげ
)
な
微笑
(
ほゝゑ
)
みだつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それが
充
(
みた
)
されぬと愛する者の生命を
賭
(
と
)
しても、立退いてしまわずにはいないのである。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それから十分ばかりたった
後
(
あと
)
の事である。白葡萄酒のコップとウイスキイのコップとは、再び無愛想なウェエタアの手で、
琥珀色
(
こはくいろ
)
の液体がその中に
充
(
みた
)
された。いや、そればかりではない。
西郷隆盛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
胸は蜂の巣を突ついたような音を立てる、かと思うと、又、雷のようにごろごろ言いました。洗面器の半分ほどは、たちまちに
充
(
みた
)
され、この
儘
(
まま
)
全身の血液を
咯
(
は
)
き尽すのではないかと思いました。
人工心臓
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それらの
充
(
みた
)
された最後の欲望の強度または稀少性をそれらの消費量の減少函数として表わす方程式または曲線を作ることが出来、また数学によって各交換者がその欲望の最大満足を得られるのは
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
私としてはただ、形も何もないある憧れの心を
充
(
みた
)
すための手紙を書いているのにすぎなかった。だが、たといそれだけのことだとしても、私はまだ、決して、叔父を憎んでいるような時ではなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
と、お三婆は、持った銚子で、自分の杯に
充
(
みた
)
して
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ところで肉と肉とが接觸したら、其の
渇望
(
かつばう
)
が
充
(
みた
)
されて、お前に向ツて更に
他
(
た
)
の
望
(
のぞみ
)
を持つやうになツた。
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
……君、僕が合意の殺人だといった意味が分るでしょう。……彼等は、最近までは、各々、正当の夫や妻によって、その病的な慾望を、かろうじて
充
(
みた
)
していました。
D坂の殺人事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
駭くのと一緒に、有頂天になって、躍り上って、
欣
(
よろこ
)
ぶべき
筈
(
はず
)
であった。が、実際は、その紙幣を見た瞬間に
云
(
い
)
い知れぬ不安が、潮の
如
(
ごと
)
くヒタ/\と彼女の胸を
充
(
みた
)
した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
痩
(
や
)
せて青黒い
隈
(
くま
)
の多い長身の肉体は内部から慾求するものを
充
(
みた
)
し得ない悩みにいつも
喘
(
あえ
)
いでいた。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
数日以来(千八百七十六年)日本に
赴
(
おもむ
)
かばやと思ふ心
止
(
とど
)
め難し。されどこの旅行はわが日頃の
蒐集
(
しうしふ
)
癖を
充
(
みた
)
さんが為のみにはあらず。われは夢む、一巻の著述を成さん事を。題は『日本の一年』。
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お初は、好奇心に
充
(
みた
)
されて来た風で
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
充
常用漢字
中学
部首:⼉
6画
“充”を含む語句
充満
充分
充滿
充溢
充實
補充
填充
充填
充血
充実
充牣
充盈
充足
腦充血
充行
汗牛充棟
王充
補充兵
拡充
充々
...