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馴々
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なれなれ
ふりがな文庫
“
馴々
(
なれなれ
)” の例文
「鎌倉殿に対して、兄の弟のと、
馴々
(
なれなれ
)
しいことば
遣
(
つか
)
い、聞き捨てにならぬ無礼であるが、多分、人違いであろう。さもなくば狂人か」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
馴々
(
なれなれ
)
しく
詞
(
ことば
)
をかける
位
(
ぐらい
)
を
切
(
せめ
)
てもの
心遣
(
こころや
)
りに、
二月
(
ふたつき
)
三月
(
みつき
)
を
過
(
すご
)
す
中
(
うち
)
に、飛騨の涼しい秋は早くも別れを告げて、寒い冬の山風が吹いて来た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
後ろの窓際まで行ってその
閾
(
しきい
)
の上にそれを載せたが、また私の側に帰って来て、「この前の幕は何でしたか」と
馴々
(
なれなれ
)
しく
訊
(
き
)
いた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「君の出て来ることは、乙骨からも聞いたし、高瀬からも聞いた」と相川は
馴々
(
なれなれ
)
しく、「時に原君、今度は細君も御一緒かね」
並木
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
おせいの亭主はさう云つて、ゆき子の立ち場が初めて判つたらしく、少々
馴々
(
なれなれ
)
しいぞんざいさで、亭主は暗い
小舎
(
こや
)
のなかへ上り込んで来た。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
▼ もっと見る
夫人は、弟にでも話すように、
馴々
(
なれなれ
)
しかった。青年は姉の言葉をでも、聴いているように、一言一句に、微笑しながら肯いた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ある日、豆小僧が柴を刈つて、束ねてゐますと、どこからかしら一人の
婆
(
ばあ
)
さんが出て来て、
馴々
(
なれなれ
)
しく言葉をかけました。
豆小僧の冒険
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
百蔵もまたズカズカと馬の傍へ寄って、お松に向って
馴々
(
なれなれ
)
しく口を
利
(
き
)
き出そうとした時に、前に
手綱
(
たづな
)
を曳いていた馬子が、不意に後ろを向きました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その
後
(
あと
)
からお勢も続いて上ッて来て、遠慮会釈も無く文三の傍にベッタリ坐ッて、常よりは
馴々
(
なれなれ
)
しく、しかも顔を
皺
(
しか
)
めて
可笑
(
おか
)
しく
身体
(
からだ
)
を揺りながら
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
夫がマルセイユに上陸中、何人かの同僚と一しょに、あるカッフェへ行っていると、突然日本人の赤帽が一人、
卓子
(
テーブル
)
の側へ歩み寄って、
馴々
(
なれなれ
)
しく近状を尋ねかけた。
妙な話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「あれ、また、乱暴なことを
有仰
(
おっしゃ
)
います。」と
微笑
(
ほほえ
)
みながら、道は
馴々
(
なれなれ
)
しく
窘
(
たしな
)
めるがごとくに言った。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母の前をも
憚
(
はばか
)
らぬ男の
馴々
(
なれなれ
)
しさを、憎しとにはあらねど、
己
(
おのれ
)
の
仂
(
はした
)
なきやうに
慙
(
は
)
づるなりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「やあ
其
(
そ
)
の
後
(
ご
)
は——」と帆村は
馴々
(
なれなれ
)
しく
挨拶
(
あいさつ
)
をした後で直ぐ云った。「今日は本庁の
臨時雇
(
りんじやとい
)
というところでして、ちょっと先生のところの劇薬の在庫数量を拝見に参りましたが」
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
或いは婦人に普通なる心弱さ、ないしは好奇心からではないかと、思うくらいに
馴々
(
なれなれ
)
しかったこともあるが、それにしては彼らの姿形の、大きくまた
気疎
(
けうと
)
かったのが笑止である。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「道さん」などと
馴々
(
なれなれ
)
しく而も
幼名
(
おさなな
)
を以て余を呼ぶ者は外に無い、幼い時から叔父の家で余と一緒に育てられた乳母の連れ子で、お浦と云う美人で有る、世間の人は確かに美人と褒め
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「よい御天気で」と
手拭
(
てぬぐい
)
をとって
挨拶
(
あいさつ
)
する。腰を
屈
(
かが
)
める
途端
(
とたん
)
に、三尺帯に
落
(
おと
)
した
鉈
(
なた
)
の
刃
(
は
)
がぴかりと光った。四十
恰好
(
がっこう
)
の
逞
(
たくま
)
しい男である。どこかで見たようだ。男は旧知のように
馴々
(
なれなれ
)
しい。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
勿論
(
もちろん
)
ぼくには、
馴々
(
なれなれ
)
しく、
傍
(
そば
)
によって、声をかける
大胆
(
だいたん
)
さなどありません。
只
(
ただ
)
、あなたの横にいた、柴山の
肩
(
かた
)
を
叩
(
たた
)
き、「なにを見てる」と
尋
(
たず
)
ねました。それは、あなたに言った積りでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
初め予ロンドンに
著
(
つ
)
いた夜勝手が分らず、ユーストン街にユダヤ人が営む旅館に入って日夜外出せず。客の間に植物標本を持ち込んで整理し居る内、十七、八の女毎度
馴々
(
なれなれ
)
しく物言い懸ける。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
小父さんはたいそう話が上手って聞いたんだよ、話しておくれよ、と少年は
馴々
(
なれなれ
)
しく云って、川辺の上にべたんと坐ったので、ああ、よいとも、と云って彦太郎も草の上に腰を下し、足を伸ばした。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そこまで来ると少年はまたもやわたしに
馴々
(
なれなれ
)
しくして来た。
美少年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
孫は、わざと自堕落な口調で
馴々
(
なれなれ
)
しく云った。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
武蔵のすがたを見ると、非常に
馴々
(
なれなれ
)
しく——いや自分の息子たちと同年輩なので、やはり子どものように見えるのであろうか
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ゆき子は、この部屋に、昔から住んでゐるやうな
馴々
(
なれなれ
)
しさで、食事の支度をした。富岡は、仕方なくポケットの名刺を出してゆき子に見せた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
男は笑いながら
馴々
(
なれなれ
)
しく近寄って来たが、市郎は容易に油断しない、蝋燭を突き付けたままで
其
(
その
)
顔を
屹
(
きっ
)
と睨んでいた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
応接室に案内する間も、勝平は叮嚀に
而
(
しか
)
も
馴々
(
なれなれ
)
しげに、瑠璃子に話しかけようとした。が、彼女は冷たい切口上で、相手を傍へ寄せ付けもしなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
小金は三吉に
挨拶
(
あいさつ
)
して、
馴々
(
なれなれ
)
しく正太の傍へ寄った。親孝行なとでも言いそうな、
温順
(
おとな
)
しい盛りの年頃の
妓
(
おんな
)
だ。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「二言目には、七兵衛さん、七兵衛さんと、
馴々
(
なれなれ
)
しくおっしゃるが、どうしてまた、わしの名前までそう軽々しく御承知だえ。その
猫撫声
(
ねこなでごえ
)
が油断がならねえ」
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
馴々
(
なれなれ
)
しくいうと、急に胸を
反
(
そ
)
らして、すッきりとした
耳許
(
みみもと
)
を見せながら、顔を
反向
(
そむ
)
けて
俯向
(
うつむ
)
いたが、そのまま
身体
(
からだ
)
の平均を保つように、片足をうしろへ引いて、
立直
(
たちなお
)
って
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
尤も私の不断接している女は、厭にお澄しだったり、厭に
馴々
(
なれなれ
)
しかったりして、一見して如何にも安ッぽい女ばかりだったから、然ういうのを
看慣
(
みな
)
れた眼には少しは
異
(
ちが
)
って見えたには違いない。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そう
馴々
(
なれなれ
)
しい応対もできなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ご懇意という程でもないが——主人の使いなどで、しげしげ参るうちに、あのように
御気
(
ごき
)
さくなので、いつのまにか、
馴々
(
なれなれ
)
しゅう伺っておるので」
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
信一郎の方から、改めて
挨拶
(
あいさつ
)
する機会のないほど、向うは親しく
馴々
(
なれなれ
)
しく、友達か何かのように言葉をかけた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
何処へいらしたンだらうとか、何時頃、お帰りでせうとか、不作法な程、とても
馴々
(
なれなれ
)
しいンですのよ
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
「
沢山
(
たんと
)
、待たせてさ。」と
馴々
(
なれなれ
)
しく云うのが、遅くなった意味には取れず、
逆
(
さかさま
)
に
怨
(
うら
)
んで聞える。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
斯
(
か
)
くして
真実
(
ほんとう
)
の𤢖は逃げ去ったが、𤢖類似の怪しい男は
未
(
ま
)
だ眼の前に残っている。
此
(
この
)
男は
果
(
はた
)
して善か悪か、敵か味方か、市郎も
其
(
その
)
判断に
苦
(
くるし
)
んで
佇立
(
たたず
)
んでいると、男は
愈
(
いよい
)
よ
馴々
(
なれなれ
)
しい。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この子供はお茶を注いで、七兵衛にすすめたが、そのまま出て行かないで、お客様の傍へきちんとかしこまり、例の般若の面は後生大事にして、そうして、七兵衛に
馴々
(
なれなれ
)
しく話しかけるのです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
歌が済みますと、奥様は
馴々
(
なれなれ
)
しく
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「——だれかと思ったら、おまえは漬物屋の
唐牛児
(
とうぎゅうじ
)
じゃないの。人の家へ断りなしに入ってくるなンて、泥棒のするこったよ。なにサ
馴々
(
なれなれ
)
しそうに」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
でも、貴女が子供達を遊ばして下さるのは、ご親切ですけれども、あまり
馴々
(
なれなれ
)
しくさせないで頂きたいと思いますの。家庭教師は、女中ではありませんから。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と、一面識も無き者の我名を呼ぶに綾子は呆れ、
婦人
(
おんな
)
の顔を
瞻
(
みまも
)
るのみ。委細構わず
馴々
(
なれなれ
)
しく
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おつや (
馴々
(
なれなれ
)
しく。)今晩はなかなか冷えますね。
影:(一幕)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
酒肴
(
さけさかな
)
の註文も
馴々
(
なれなれ
)
しい。そして独りでチビチビ飲み初めた。李逵は汗拭きの布を出して、鼻と口を
抑
(
おさ
)
えていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
入交って亭主柏屋金蔵、
揉手
(
もみで
)
をしながらさきに挨拶に来た時より、打解けまして
馴々
(
なれなれ
)
しく
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「松虫様ではありませんか」先では、こういって、
馴々
(
なれなれ
)
しくほほ笑みかけながら近づいてきたのであったが
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
馴々
(
なれなれ
)
しくて犯し
易
(
やす
)
からぬ品のいい、いかなることにもいざとなれば驚くに足らぬという身に
応
(
こたえ
)
のあるといったような風の
婦人
(
おんな
)
、かく
嬌瞋
(
きょうしん
)
を発してはきっといいことはあるまい
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
でもなお、
執
(
しつ
)
こく何か言いながら、
馴々
(
なれなれ
)
しげに寄って来る山伏なので、その
厚顔
(
あつかま
)
しさを叱るように、また
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こうした場所だ、
対手
(
あいて
)
は弘法様の化身かも知れないのに、
馴々
(
なれなれ
)
しいこという。
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
といった調子に、
馴々
(
なれなれ
)
しい
媚
(
こび
)
をたたえて迎えましたが、金吾には、夢々おぼえのない女なので
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「流行りません癖に因果と
貴方
(
あなた
)
ね、」と口もやや
馴々
(
なれなれ
)
しゅう
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると城太郎は、いつものように、
馴々
(
なれなれ
)
しく
縋
(
すが
)
りかけたが、急に手を引っ込めて
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
馴
漢検準1級
部首:⾺
13画
々
3画
“馴々”で始まる語句
馴々敷