頑張がんば)” の例文
諸君がどんなに頑張がんばって、馬鈴薯ばれいしょとキャベジ、メリケン粉ぐらいを食っていようと、海岸ではあんまりたくさん魚がとれて困る。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
見せてやろう、と思ってね。こないだから大分だいぶ弱らしているんだが、やっぱり頑張がんばっているんだ。どうも剛情な奴だ。驚ろいたよ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
父がひとり東京に踏みとどまって頑張がんばって、あたしだけ、兄のところへやっかいになりに来たのだけれども、本当にあたしには何も無いのよ。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
だが、ここまで頑張がんばっていて何も食わないで出るというのは、どうも都合が悪いから、私はゆっくりでいいと断わって「オムレツ」を頼んだ。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
「もう今日で七日というもの、ああやって頑張がんばって、動こうともしないで、見せつけがましい金番をしているのは、なんて図々しい奴でしょう」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
十日間頑張がんばると、五千人の人造人間部隊が出来るから、これをもって、イギリス本土への上陸作戦が、うまくいくにちがいないと考えたのである。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
前のバック台にすわり、「ほれっ、引いてみろ」と頑張がんばり、木株のような腕を曲げ、鼻の穴を大きくして、にらみつけます。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
私はちょっとさからって見せたが、自分が頑張がんばっていればおばあさんの力ではどうにもならないのを知っているものだから、身ぶりだけで抵抗しいしい
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
庸三は長いあいだの荷物を卸して、それだけでもせいせいした気持だったが、当惑したのは子供のために頑張がんばろうとした姉と葉子との対峙たいじであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
勝負は自分の方が負けだと見てとると、彼女はいて頑張がんばらずに、ただ微笑ほほえみつづけ、気長に好機を待つことにした。
あッ、三番が追い込んで来た。あと五十米。あッ危い。並びそうだ。はげしい競り合い。抜かすな、抜かすな。逃げろ、逃げろ! ハマザクラ頑張がんばれ!
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
出るな、と見込んだからでは決してあるまいが、そうなるとお雪派の策士は、ますますもって四万円即金を頑張がんばる。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
こらえよ。我慢のしどころだぞ。ここ十日も頑張がんばれば、先にやった密使もつき、必ずや、味方の援軍えんぐんがやってくる」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にんじん——大丈夫だよ、とうさん。まったく、前学年はすこしいい加減にやったところがあるよ。今度は、せいいっぱい頑張がんばろうって気が起こってるんだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
それはどこまでも過失だと言って頑張がんばり通すか、でなければ「まことにそうでした。以後はつつしみますから」
これに反し酒の好きな者は医師がいかにその害を説くも、百薬のちょうなりと頑張がんばって聴かぬものが多い。心のきらいと物の善悪を混同こんどうする者は実際を見るめいうしなう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
むしほそったことも、そと白々しらじらけそめて、路地ろじ溝板どぶいたひと足音あしおときこえはじめたことも、なにもかもらずに、ただひとり、やぶだたみうええた寺子屋机てらこやつくえまえ頑張がんばったまま
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
一時のこらしめだから、甥の吉太郎を厚木から呼寄せるのが順当だと申して、私には義理の叔父で、小松屋の支配人をしている安兵衛と申すのが、独りで頑張がんばって、とうとう甥の吉太郎を
テーブルや椅子などで突っかい棒をしてき止めていたが、やがて、安楽椅子を戸の内側へぺったり寄せつけてその上に胡坐あぐらいて頑張がんばっていた弘少年が、「やあ」と大声で笑い出した。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
船長は船長としての公の立場から、それを犯すことは出来ないと頑張がんばった。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
妻恋坂、司馬道場の屋敷内には、まだふしぎな頑張がんばり合いがつづいている。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あれで祖父おじいさんもなかなか頑張がんばっていて、本陣庄屋の仕事を阿爺おやじに任せていいとは容易に言わなかった。それほど大事を取る必要もあるんだね。おれなぞは、お前、十七のとしから見習いだぜ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夜は、橋のたもと辻々つじつじに銃剣つきの兵隊や警官が頑張がんばった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
「うむ、そうだ、そのつもりでお前も頑張がんばれ!」
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
吾輩が風呂場へ廻ると、敵は戸棚から馳け出し、戸棚を警戒すると流しから飛び上り、台所の真中に頑張がんばっていると三方面共少々ずつ騒ぎ立てる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だから、そのころ、なにか苦しい目にぶつかると、あの哀れな人達プロレタリアアトを思えと、自分に言いきかせて、頑張がんばったものです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
行き詰って、田舎の医師の家へまたを入れに行ったとき、しゅうとめ頑張がんばっていて、近所に取っていた宿から幾度逢いに行っても逢うことが出来なかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
俺は、もう、二年間も教員室で頑張がんばって来たんだ。もういけねえ。クビになる前に、俺のほうから、よした。きょう、この時間だけで、おしまいなんだ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「僕はあの二十分も前に、僕の室へかえっていたのだ。僕さえ図書室にズッと頑張がんばっていたら、いくら僕が弱くてもどうにかお役に立ったろうにと思ってね」
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
猿之助の父は段四郎で踊りで名の知れた人、母のことじょ花柳はなやぎ初代の名取なとりで、厳しくしこまれた踊りの上手じょうず。この二人が息子のために舞台前に頑張がんばっている。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
写生にっていた田山白雲の姿も見えなかったが、例のイヤな桶屋さんだけは、抜からぬ面で頑張がんばっていたものですから、うんざりせざるを得ませんでした。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「おやおやみんな改宗しましたね、あんまりあっけない、おや椅子も丁度いい、はてな一つあいてる、そうだ、さっきのヒルガードに似た人だけまだ頑張がんばってる。」
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼はそこにぴったりと頑張がんばって、楽譜を両手に閉じ、没表情な眼つきをし、苦々にがにがしげな口つきをしていた。がついに彼は、クリストフがいるのをふたたび忘れたかのように言った。
ルピック夫人が、どんなに、そんなはずはないと頑張がんばっても、彼女は、いつも、それを持って来て置くのを忘れるのである。それに第一、壺があったって、なんの役にも立たないわけである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
もっと頑張がんばってみたらよかったろうに、———じたいそう云う策略にかけては姑のおりんと好い取組だと云われた彼女が、案外あっさり旗を巻いて、おとなしく追ん出てしまったのはなぜであろうか
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なかには、かおさえあらやもうようはねえと、ながしのまんなか頑張がんばって、四斗樽とだるのようなからだを、あっちへげ、こっちへのばして、隣近所となりきんじょあわばすひま隠居いんきょや、膏薬こうやくだらけの背中せなかせて、弘法灸こうぼうきゅう効能こうのう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
『いや、まかり通る』——く男ではない。清盛も、頑張がんばった。
あい変わらず傍若無人に振る舞って頑張がんばっている。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そりゃ、なおるまでは、やっぱりあたし、お父さんがどんなに出て行けって言ったって、この家に頑張がんばってお母さんの看病をさせていただくつもりだけど。
冬の花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
海原力三は最初のうちは猛烈に頑張がんばって、犯人でないと云い張った。しかし後に至って遂に係官の指摘したとおり、一切の犯行を認めたということであった。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そう頑張がんばっていてはついには正宗の名刀で速射砲と立合をするような奇観を呈出するかも知れません。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あの人たちが頑張がんばり通すまで、こっちもここを動かないことにしてはどう、ねえ、宇津木さん」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
批評界全体が彼を非難し、彼の方ではすべてを罵倒ばとうし去ろうとしていた。彼は口をつぐむように仕向けられるのでなお頑張がんばったのであって、譲歩の様子を示したくなかったのである。
裏木戸と言っても、瀬川はもとより俳優の下足を扱う口番でもなく、無論頭取部屋に頑張がんばっている頭取の一人でもなかったが、香盤こうばんの札くらいは扱っており、役者に顔が利いていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
掴まえる迄は幾日でも頑張がんばる覚悟かも知れなかった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
兄さんも、こんどの事件では、相当強硬に頑張がんばっているらしい。姉さんも、なかなか折れて出そうもない。チョッピリ女史が傍に控えているんじゃ、だめだ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ところが主人の自信はえらいもので、おれが神経病じゃない、世の中の奴が神経病だと頑張がんばっている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして頑張がんばりに頑張ったが、いくら頑張っても切断された片腕はいつまでたっても元のように生えないことが分っていたから、無理やりに内地へ連れかえったのである。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つまり、行手に希望がありさえすれば、疲労も、飢餓も、頑張がんばるだけ頑張って行く張合いというものがあるが、さて、頑張り通した揚句が外ヶ浜ではたいがいうんざりする。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ぐれ出した鶴さんは、口喧くちやかましい隠居の頑張がんばっているこのしきいも高くなっていた。お島はおゆうの口から、下谷の女を家へ入れる入れぬで、苦労している彼の噂をおりおり聞されたりした。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)