“非人(ひにん)” の例文
ア! 非人(ひにん)がきたぞ非人が、三ツの死骸(しがい)をかたづけるんだな。やあいけねえ、伊那丸(いなまる)の首を河原(かわら)の方(ほう)へ持っていってしまやがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
磔柱(はりつけばしら)は周囲の竹矢来(たけやらい)の上に、一際(ひときわ)高く十字を描いていた。彼は天を仰ぎながら、何度も高々と祈祷を唱えて、恐れげもなく非人(ひにん)の槍(やり)を受けた。
じゅりあの・吉助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
下(さ)げての詫(わび)ごと何(なん)としてするべきならずよしや膝(ひざ)を屈(ま)げればとて我親(わがおや)決(けつ)して肯(きゝい)れはなすまじく乞食(こつじき)非人(ひにん)と落魄(おちぶ)るとも新田如(につたごと)きに此口(このくち)腐(くさ)れても助(たす)けを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いかに非人(ひにん)の寄場(よせば)といいながら、よくもまあこうまで集めたと思われるほど、五つから七つぐらいまでの乞食の子供をかずにしておよそ五十人ばかり。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
思ふ道に迷(まよ)ふとか云ひて子を慈(いつく)しむ親の心は上(かみ)將軍より下(しも)非人(ひにん)乞食(こじき)に至る迄替(かは)る事なき理(ことわ)りなり其時また上意に芝八山は町奉行の支配(しはい)なりとて越前我意(がい)に募(つの)り吟味を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
気の毒な米友は、この騒ぎのうちに隠ヶ岡から地獄谷へ突き落されてしまい、役人も非人(ひにん)も刑の執行を済まして、今ゾロゾロと山を下って帰って来るところであります。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
えらそうに構えてたって死ぬときゃあ乞食や非人(ひにん)と変りゃあしないんだ、骨になりゃあ大名も犬猫もおんなしこった、ねえちょいと、めそめそしないでぱあっとやっちゃおうよ。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
非人(ひにん)が来(き)て、死者(ししゃ)の手(て)や、足(あし)を捉(とら)えて穴(あな)の中(なか)に引込(ひきこ)んでしまうのだ、うッふ! だが何(なん)でもない……その換(かわ)り俺(おれ)は彼(あ)の世(よ)から化(ば)けて来(き)て、ここらの奴等(やつら)を片端(かたッぱし)から嚇(おど)してくれる
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そんな次第で日本の古代では農民が主(おも)になっておりまして、農民以外の者は公民(おおみたから)ではない。「たみ」ではない。百姓すなわち人民の仲間に加わらないから、これを「非人(ひにん)」と申す。
江戸の鳥追(とりおひ)といふは非人(ひにん)の婦女(ふぢよ)音曲(おんきよく)するを女太夫とて木綿(もめん)の衣服(いふく)をうつくしく着(き)なし、顔(かほ)を粧(よそほ)ひ、編笠(あみがさ)をかむり、三弦(さみせん)に胡弓(こきう)などをあはせ、賀唱(めでたきうた)をおもしろくうたひ、門々(かど/\)に立て銭を乞(こ)ふ。
文治は麻※※(あさがみしも)長大小(ながだいしょう)のまゝ馬の轡(くつわ)に飛付く体(てい)を見るより附添(つきそい)の非人(ひにん)ども
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
非人(ひにん)の姿「死」の下絵
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
四条河原の非人(ひにん)小屋の間へ、小さな蓆張(むしろば)りの庵(いおり)を造りまして、そこに始終たった一人、佗(わび)しく住んでいたのでございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
屑屋の加山と、非人(ひにん)に変装した波越とは、見え隠れに尾(つ)いて行った。その二人の影を目あてとして、また東儀与力が尾いてゆくから、ちょうど三段尾行である。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葬(はうむ)りて修羅(しゆら)の妄執(まうしふ)を晴(はら)し申さんとて千住小塚原(こづかはら)の御仕置場へ到り非人(ひにん)の小屋へ立寄(たちより)些(ちと)御頼み申度ことありて參(まゐ)りたり昨日御仕置になりたる武州幸手宿富右衞門の首(くび)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そんな野暮(やぼ)なことは俺は言わねえ、大名旗本であろうとも、乞食(こじき)非人(ひにん)であろうとも、十八文よこす奴はみんな俺のお得意様だからどこへでも行ってやる、矢でも鉄砲でも持って来い
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
江戸の鳥追(とりおひ)といふは非人(ひにん)の婦女(ふぢよ)音曲(おんきよく)するを女太夫とて木綿(もめん)の衣服(いふく)をうつくしく着(き)なし、顔(かほ)を粧(よそほ)ひ、編笠(あみがさ)をかむり、三弦(さみせん)に胡弓(こきう)などをあはせ、賀唱(めでたきうた)をおもしろくうたひ、門々(かど/\)に立て銭を乞(こ)ふ。
私(わたし)が少(すこ)しもお前(まへ)の身(み)なら非人(ひにん)でも乞食(こじき)でも構(かま)ひはない、親(おや)が無(な)からうが兄弟(きやうだい)が何(ど)うだらうが身(み)一(ひと)つ出世(しゆつせ)をしたらば宜(よ)からう、何故(なぜ)其樣(そん)な意氣地(いくぢ)なしをお言(い)ひだと勵(はげ)ませば、己(お)れは何(ど)うしても駄目(だめ)だよ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
非人(ひにん)が來(き)て、死者(ししや)の手(て)や、足(あし)を捉(とら)へて穴(あな)の中(なか)に引込(ひきこ)んで了(しま)ふのだ、うツふ! だが何(なん)でもない……其換(そのかは)り俺(おれ)は彼(あ)の世(よ)から化(ば)けて來(き)て、此處(こゝ)らの奴等(やつら)を片端(かたツぱし)から嚇(おど)して呉(く)れる、皆(みんな)白髮(しらが)にして了(しま)つて遣(や)る。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
加山耀蔵(ようぞう)は鉄砲笊(てっぽうざる)をかついで紙屑屋(かみくずや)に化け、波越八弥はどこから見つけて来たかと思うほどひどいボロを着こんで、頭から酒菰(さかごも)をかぶり、うまうまと非人(ひにん)に変装した。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私共が天上皇帝を祈りましたせいか、あの恐ろしい幻は間もなく消えてしまいましたが、その代り太刀音を聞いて起て来た非人(ひにん)たちが、四方から私どもをとり囲みました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あなた様のお屋敷へ火をつけた穢多(えた)非人(ひにん)の在所(ありか)を、訴えて出ようと思いまする」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
城富聞てハイ酒代は何程(いくら)でも上ますから首(くび)は何卒私しへ下さりませと申に非人(ひにん)共夫ならば大負(おほまけ)にして金二分も置(おか)つしやい城富ハイ夫は御安いこと若し/\然樣ならば何卒富右衞門の首(くび)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「天雲(あまぐも)の上をかけるも谷水をわたるも鶴(つる)のつとめなりけり」——こう自(みずか)ら歌ったほど、彼の薬を請うものは、上(かみ)は一藩の老職から、下(しも)は露命も繋(つな)ぎ難い乞食(こじき)非人(ひにん)にまで及んでいた。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「黙れ、穢多(えた)非人(ひにん)の分際(ぶんざい)で」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見苦しい非人(ひにん)小屋が、何軒となく立ち並んで居りますが、今はもうここに多い白癩(びゃくらい)の乞食(こつじき)たちも、私などが思いもつかない、怪しげな夢をむすびながら、ぐっすり睡入(ねい)って居(お)るのでございましょう。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)