阿片あへん)” の例文
阿片あへん喫煙所へばかり案内したがっている。そして君らはよく知っていながら、決して口には言わない、最後には死が控えていることを。
其他そのた阿片あへんにしろ大麻だいまにしろ何れも麻酔作用を有するものであつて、大麻のごときは古来印度の僧侶が「じやう」に入るときに用ひたものである。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
カアル・マルクスの『宗教は国民の阿片あへんである』(Religion ist das Opium des Volks.)
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
朝、胃痛ひどく、阿片あへん丁幾チンキ服用。ために、咽喉のどかわき、手足のしびれるような感じがしきりにする。部分的錯乱と、全体的痴呆。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
阿片あへん戦争(一八四〇—四二)で中国が開国した後は極東の一角日本を開けばこれで旧文明国を資本主義世界に開放する事業が完成するわけである。
黒船来航 (新字新仮名) / 服部之総(著)
あの燃えるような紅い花に、世界のありとある悪があつまっていたのだ。彼は罌粟けしからは阿片あへんの採れることを知っていた。
トム公は、草原の中に乾いている快走船ヨットの中で、阿片あへんの混合している噛み煙草を噛んで、黄いろい泡を口の中で揉みながら、夕方の空をながめていた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その俗衆趣味は、ややもすればウェルテリズムの阿片あへんに酔う危険のあったその頃のわれわれ青年の眼を現実の俗世間に向けさせる効果があったかもしれない。
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
阿片あへん支那シナにおいては戦争より大きな事をしているが、始めて白人が是を廈門アモイ駐屯軍ちゅうとんぐんへ持ってきたときには、単に煙草のまぜ物として売ったのだそうである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
をんなと、ばくちと、阿片あへんと、支那人しなじんの一しやうはその三つの享樂きやうらく達成たつせいさゝげられる——などとふと、近頃ちかごろわかあたらしい中華民國ちうくわみんこく人達ひとたちからしかられるかもれないが
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それを想像するか思い出すほどに、余の精神状態は尋常を飛び越えていたからである。ドクインセイのこまかに書き残した驚くべき阿片あへんの世界も余の連想にのぼった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はなはだしいのは監督とぐるで鉱山へ入り込む商人から阿片あへんを売りつけられたりして、金など持っている少年はほとんど無いが、英国人の技師長は、途方もない金をとって
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
ミンナが肺患になって、その病苦を忘れるために阿片あへんみ始め、次第に猜疑心さいぎしんは強くなっていた。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
阿片あへんをドッサリ浦塩うらじおに持ち込んで、方々に売り付けてお金を儲けた事がチャンとわかってるんだ……だけども遣り方がナカナカ上手でハッキリした証拠が上らないために
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし英夷えいい阿片あへん交易のことに付き、瘍医を広東へ渡し療治を施させ、これに継ぐに引痘を以てする等の苦心(『海国図志』中奥東日報に見ゆ)、その思慮深遠というべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それが可能な国にいたら阿片あへん吸飲者になっていたかも知れないと思う。私の生活はむしろ甚だストイックだが、この魂の放浪に対してはおよそだらしなく自制心がないようである。
流浪の追憶 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
けれども心配そうに、口ごもりながら、「行ってもすぐ帰って来るのでは意味がない、それから、どんな事があっても阿片あへんだけは吸わないように。」という下手へたな忠告を試みた。
佳日 (新字新仮名) / 太宰治(著)
つまり生涯の根気でそろ/\みずから節するのほかに道なしと決断したのは、支那人が阿片あへんめるようなもので随分苦しいが、ず第一に朝酒を廃し、しばらくしてぎに昼酒を禁じたが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ゆえにこの燻製肉を一度くらえば、あたかも阿片あへんにおいて見ると同じ麻痺的症状まひてきしょうじょうきたし、絶対的人間嫌いが軟化なんかし、相対的そうたいてき人間嫌いと変るという文字通り苦肉くにくの策を含んだものであった。
緒方のいうには、「月夜に散歩していると、何となくよい気持になり、つい夢心持になって歩き廻るのさ。事は違うが、チャンの阿片あへんに酔うた心持もこんなものかしら。」(月狂生)
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
銀座の市場では阿片あへんの花が陽気に満開し、薬種屋の前では群集が巡邏じゅんらに口輪をめている。地球の地下室では切開された、メロ・ドラマの開演のベルがけたたましく鳴りひびくのだった。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
ただ私の場合は、用具や設備に面倒な手数がかかり、かつ日本で入手の困難な阿片あへんの代りに、簡単な注射や服用ですむモルヒネ、コカインの類を多く用いたということだけを附記しておこう。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
そして阿片あへんもハシシュも手に入れることができなかったので、彼は頭の中に暗黒を満たさんために、ブランデーと強ビールとアブサントとの恐るべき混合酒、ひどい昏睡こんすいを起こさすべきものに
カタリカタリとまわる、数十尺の鏡の三角筒の中に、花屋の店をからにして集めてきた、千紫万紅が、阿片あへんの夢のように、花弁一枚の大きさが畳一畳にも映ってそれが何千何万となく、五色のにじとなり
鏡地獄 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして漸っといまあの象が阿片あへんの広告であったことに気がつき出す
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
... 罌粟は無論阿片あへんを取る位な魔酔性の者だから病人には悪いさ」小山
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
白塔の夢の外なる何ごとの夢をもな見そせめて阿片あへん
そしてそれは阿片あへんのごときものだ、と申しました。
Kの昇天:或はKの溺死 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
阿片あへんをふかしたりしてゐました。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
阿片あへんいぶる……
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
この倶楽部クラブの門鑑を阿片あへんダラといった。番人は、それを認めると、鍵を出して、突当りの頑固な戸を開けた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝来、胃痛はげし。阿片あへん丁幾チンキ十五滴服用。この二三日は仕事をせず。我が精神は所有者未定アベイヤンスの状態にあり。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
苦力達クウリイたち營營えいえいはたらくく、をんな——細君さいくんひたいために、ばくちをしたいために、阿片あへんひたいために。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「睡り薬だろう、それも利きの良いところを見ると南蛮物だ、ツイ此間池の端の丸屋で盗まれた毒薬の中に、天竺てんじく阿片あへんからった、恐ろしい眠り薬があると聴いたが」
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
天保十年(千八百三十九年)には林則徐阿片あへん二万ばこを焼き、その明年に及んで英清の戦争となり、同天保十三年(千八百四十二年)においては、英兵上海を抜き南京にせま
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
の研究にるに、彼等は何れも矢毒(即ち野獣を射てこれを毒殺すべくやじりに塗る毒)クラーレ、ヴェラトリンのごとき猛毒の使用を知り、あはせて阿片あへん規那きな大麻おほあさヤラツパ
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
僕はエジソンという発明家を、世界の危険人物だと思っています。快楽は、原始的な形式のままで、たくさんなのです。酒が阿片あへんに進歩したために、支那がどんな事になったか。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
今からちょうど百年前、英国は中国を相手に阿片あへん戦争をおこしたが、この時たった一人の英人宣教師が殺されたのを口実として、あの香港を奪いとって今日におよんでいるのである。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
君たちのその喜びは、誘惑のえさであり、阿片あへん喫煙者の夢だ。君たちは自由のために酔わされて、生を忘れている。絶対的な自由、それは精神にとっては狂気であり、国家にとっては無政府だ……。
その上に腰をかけて談判をするのだそうだが、横着な事には大きな括枕くくりまくらさえ備えつけてある。しかしひじを突くためか、頭をせるためかは聞きただして見なかった。彼等は談判をしながら阿片あへんを飲む。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、妙な手附てつきをして阿片あへんを吸う真似をした。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
「睡り藥だらう、それもきゝのよいところを見ると南蠻物だ。この間池の端の丸屋で盜まれた毒藥の中に、天竺てんぢく阿片あへんから採つた、恐ろしい眠り藥があると聽いたが——」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
また將相達しやうしやうたちはなぜあれほど主權しゆけんあらそふのか? おほくの婢妾ひせうにくきたいために、ばくちにふけ悠悠いういう閑日月かんにちげつ自由じいうにしたいために、豪華がうくわ廊房らうばう阿片あへんゆめひたりたいために。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
中でも、あばき合いで糶上せりあげられたのは、阿片あへん、魔薬、毒のたぐい、紫ギヤマンのびんや黒い薬塊やっかいを見ると、けいずいどもは、肉を争奪するけだもののように、仲間争いをして引きこみます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『慢性モヒ中毒。無苦痛根本療法、発明完成。主効、慢性阿片あへん、モルヒネ、パビナール、パントポン、ナルコポン、スコポラミン、コカイン、ヘロイン、パンオピン、アダリン等中毒。白石国太郎先生創製、ネオ・ボンタージン。文献無代贈呈。』——『寄席よせ芝居の背景は、 ...
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
モヒか阿片あへんか、少くとも媚薬位は入って居そうな気がしてならなかったのですが、この神聖なる恋人達は、そんな事を押してどうこう云うことの出来ないほど、弱気で臆病で