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透通
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すきとお
ふりがな文庫
“
透通
(
すきとお
)” の例文
さびしい風が裏の森を鳴らして、空の色は深く
碧
(
あお
)
く、日の光は
透通
(
すきとお
)
った空気に
射渡
(
さしわた
)
って、夕の影が濃くあたりを
隈
(
くま
)
どるようになった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
若
(
わけ
)
エ時分には散々お
母
(
ふくろ
)
に苦労をさせました…勇助さん此の水を御覧なさい、能く澄んでるでしょう、
透通
(
すきとお
)
って底が見えるぐらいだのに
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
呆気
(
あっけ
)
に取られて目も放さないで
目詰
(
みつ
)
めて居ると、雪にも
紛
(
まが
)
ふ
頸
(
うなじ
)
を
差
(
さし
)
つけ、くツきりした
髷
(
まげ
)
の根を見せると、
白粉
(
おしろい
)
の
薫
(
かおり
)
、
櫛
(
くし
)
の歯も
透通
(
すきとお
)
つて
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
仔細に見れば、二の腕や腿のあたりに
生毛
(
うぶげ
)
も生えていたし、毛穴も見えたけれど、それにも
拘
(
かかわ
)
らず、全体の感じは、すべっこくて、
透通
(
すきとお
)
っていた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
九女八は、
莨
(
タバコ
)
の
脂
(
やに
)
の流れた筋が、
飴
(
あめ
)
色に
透通
(
すきとお
)
るようになった、
琥珀
(
こはく
)
のパイプを
透
(
すか
)
して眺めて
市川九女八
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
月は益〻
冴
(
さ
)
え返って乙女の全身は
透通
(
すきとお
)
るかとばかり、蒼白い光に
煙
(
けぶ
)
っている。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
皮膚は蝋燭の様に白く
透通
(
すきとお
)
り、鼻は低いが口元は小さく、その丸い両の眼玉は
素絹
(
そぎぬ
)
を敷いた様に少しボーッとしてはいますが、これが又何と言いますか、恐ろしく甘い魅力に富んでいるんです。
とむらい機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
とお銀様が
慄
(
ふる
)
え上るその
頭髪
(
かみ
)
の上で、二つの蝶が食い合っていました。竜之助には、いよいよ
判然
(
はっきり
)
とその蝶が
透通
(
すきとお
)
るように見えるのであります。蝶の噛み合う歯の音まで
歴々
(
ありあり
)
と聞えるのであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
横ざまに長く
棚曳
(
たなび
)
く雲のちぎれが銀色に
透通
(
すきとお
)
って輝いている。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
トもんどりを打って手足を一つに縮めた処は、滝を分けて、すとんと別の国へ出た
趣
(
おもむき
)
がある、……そして、
透通
(
すきとお
)
る胸の、暖かな、
鮮血
(
からくれない
)
の美しさ。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
到頭あんなに
零落
(
おちぶれ
)
てしまったんですが、それでもお嬢様があゝ
遣
(
や
)
って
彼様
(
あんな
)
に親孝行をなさるんですよ、だがあんな
扮装
(
なり
)
をして入らしっても
透通
(
すきとお
)
るような
好
(
い
)
い御器量で
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それは前の二つの例とは違い、顔ばかりではなく、全身まばゆいばかりの金色で、仮面の
外
(
ほか
)
に何か
透通
(
すきとお
)
る様な薄い黄金製の衣裳を着ていたらしいということであった。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
金兵衛さんが紺の
透通
(
すきとお
)
った着物を着て、
白扇
(
はくせん
)
であおいで風通しのいい座敷に座っていると、顔見知りの老船頭だの、大工の
棟梁
(
とうりょう
)
のところの
伊三
(
いさ
)
という
甥
(
おい
)
だのがかわるがわるに
旧聞日本橋:17 牢屋の原
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
紳士 口でな、
最
(
も
)
う其の時から。
毒蛇
(
どくじゃ
)
め。
上頤
(
うわあご
)
下頤
(
したあご
)
へ
拳
(
こぶし
)
を
引掛
(
ひっか
)
け、
透通
(
すきとお
)
る歯と
紅
(
べに
)
さいた唇を、めりめりと
引裂
(
ひきさ
)
く、
売婦
(
ばいた
)
。(足を挙げて、
枯草
(
かれくさ
)
を
踏蹂
(
ふみにじ
)
る。)
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
透通
(
すきとお
)
った闇夜も、
闌干
(
らんかん
)
たる星空も、自動車の風よけガラスの
隙間
(
すきま
)
から、彼の頬にざれかかるそよ風も、彼の世の常ならぬ結婚の首途を祝福するものでなくて何であろう。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
だが
好
(
よ
)
い湯で、塩気があって
透通
(
すきとお
)
るようで、
極
(
ごく
)
綺麗です、玉子をゆでて居る奴があるので、手拭に包んで玉子を湯に
浸
(
つ
)
けて置くと、
心
(
しん
)
が温まるという、どういう訳かと
皆
(
みんな
)
に聞くと
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この美しい
女
(
ひと
)
は、その
膚
(
はだえ
)
、その
簪
(
かんざし
)
、その
指環
(
ゆびわ
)
の玉も、とする端々
透通
(
すきとお
)
って色に出る、心の影がほのめくらしい。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
色くっきりと白くして
豊頬
(
しもぶくれ
)
の愛敬のある、少しも
白粉気
(
おしろいけ
)
の無い実に
透通
(
すきとお
)
る様な、是が本当の美人と申すので、此の娘が今
襷掛
(
たすきがけ
)
で働いて居ります、
余
(
あんま
)
り美しいから人が立停って見て居る様子。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
顔色は
透通
(
すきとお
)
る様に白かった。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
浅黄
(
あさぎ
)
の
手絡
(
てがら
)
が
解
(
と
)
けかかって、
透通
(
すきとお
)
るように
真白
(
まっしろ
)
で
細
(
ほそ
)
い
頸
(
うなじ
)
を、膝の上に抱いて、
抱占
(
かかえし
)
めながら、
頬摺
(
ほおずり
)
していった。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私
(
わし
)
はそのまま目を
外
(
そ
)
らしたが、その一段の
婦人
(
おんな
)
の姿が月を浴びて、薄い煙に包まれながら向う岸の
潵
(
しぶき
)
に
濡
(
ぬ
)
れて黒い、
滑
(
なめら
)
かな大きな石へ
蒼味
(
あおみ
)
を帯びて
透通
(
すきとお
)
って映るように見えた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
婦
(
おんな
)
の全身、
廂
(
ひさし
)
を
漏
(
も
)
る月影に、たら/\と人の姿の溶ける
風情
(
ふぜい
)
に、輝く雪のやうな翼に成るのを見つゝ、沢は自分の胸の血潮が、同じ其の月の光に、
真紅
(
しんく
)
に
透通
(
すきとお
)
るのを覚えたのである。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
雪のやうなお手の指を
環
(
わ
)
に遊ばして、高い
処
(
ところ
)
で、青葉の上で、虹の
膚
(
はだ
)
へ嵌めるやうになさいますと、其の指に空の色が
透通
(
すきとお
)
りまして、紅い玉は、
颯
(
さっ
)
と夕日に映つて、まつたく虹の
瞳
(
ひとみ
)
に成つて
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
病気が
復
(
なお
)
ったと思った晩、手を曳いて、てらてら光る長い
廊下
(
ろうか
)
を、
湯殿
(
ゆどの
)
へ連れて行って、
一所
(
いっしょ
)
に
透通
(
すきとお
)
るような
温泉
(
いでゆ
)
を浴びて、岩を
平
(
たいら
)
にした
湯槽
(
ゆぶね
)
の
傍
(
わき
)
で、すっかり体を流してから、
櫛
(
くし
)
を抜いて
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
時
(
とき
)
は
濡
(
ぬ
)
れたような真黒な
暗夜
(
やみよ
)
だったから、その
灯
(
ひ
)
で松の葉もすらすらと
透通
(
すきとお
)
るように青く見えたが、
今
(
いま
)
は、
恰
(
あたか
)
も曇った一面の
銀泥
(
ぎんでい
)
に描いた墨絵のようだと、
熟
(
じっ
)
と見ながら、
敷石
(
しきいし
)
を
蹈
(
ふ
)
んだが
星あかり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その春の雪のような
膚
(
はだ
)
へ——
邪慳
(
じゃけん
)
な叔父叔母に孝行な真心が、うっすりと、薄紅梅の影になって
透通
(
すきとお
)
る。いや、お話し申すうちにも涙が出ますが、間もなくあわれに消えられました。遠国へな。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「真赤な
鰭
(
ひれ
)
へ。凄い月で、紫色に
透通
(
すきとお
)
ろうね。」
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
透通
(
すきとお
)
るばかり美しい。
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
透
常用漢字
中学
部首:⾡
10画
通
常用漢字
小2
部首:⾡
10画
“透”で始まる語句
透
透間
透徹
透綾
透明
透見
透視
透彫
透過
透垣