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迂濶
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うかつ
ふりがな文庫
“
迂濶
(
うかつ
)” の例文
「
迂濶
(
うかつ
)
だった、八重」そういって彼は、上から八重を見下ろした。「……おまえがいたじゃないか、
此処
(
ここ
)
におまえがいたじゃないか」
日本婦道記:小指
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ほんとに
迂濶
(
うかつ
)
だった。失踪したのは、取調べの結果、先月の二十九日、つまり三日前だった。そいつに誰も気がつかなかった……」
獏鸚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
イヤ、それはあとにして下さい。それが若しあの恐怖王だとすると、
迂濶
(
うかつ
)
には云えない様な気がします。その前に僕は一度ゴリラ男を
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「そんな
迂濶
(
うかつ
)
なことで好いのかね。これからは品物を缶に入れさせて置いて、これでいくらと聞いてみるのだね。ごまかされるよ。」
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
今は
止
(
や
)
めていても
兇状持
(
きょうじょうもち
)
で随分人相書の廻ってるのがあるから、
迂濶
(
うかつ
)
な事が出来ないからさ。御覧よ、今本願寺
参
(
まいり
)
が一人通ったろう。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
大事の娘が死んだ以上、どうして死んだのか確かに判らねえでは、
迂濶
(
うかつ
)
に死骸を引き取ることは出来ねえと、こう云うのだそうで……。
半七捕物帳:55 かむろ蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
元より、
迂濶
(
うかつ
)
な手出しをする気はないのだが、この場合、指をくわえて、彼の姿を見のがすのはいかにもむざむざな気がしたのである。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうだとすれば
悪阻
(
つわり
)
を隠していた時期もあっただろうに、そんなことをも見過していたのはあたし等の
迂濶
(
うかつ
)
と云うべきであろうか。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
迂濶
(
うかつ
)
な根性にも慈悲の浸み透れば感涙とどめあえぬ十兵衛、だんだんと赤土のしっとりとしたるところ、飛石の
画趣
(
えごころ
)
に
布
(
し
)
かれあるところ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
(勿論死に対する情熱は例外である。)
且
(
か
)
つ又恋はそう云うもののうちでも、特に死よりも強いかどうか、
迂濶
(
うかつ
)
に断言は出来ないらしい。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
後
(
のち
)
の面倒を
慮
(
おも
)
って
迂濶
(
うかつ
)
に手は出さんが、
罠
(
わな
)
のと知りつつ、
油鼠
(
あぶらねずみ
)
の
側
(
そば
)
を去られん
老狐
(
ふるぎつね
)
の如くに、遅疑しながらも、尚おお勢の身辺を廻って
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
男女問題を論ずる多数の識者が、この男女の性欲の不平等を重要な一つの資料として商量しないのは
迂濶
(
うかつ
)
の甚しいものである。
私娼の撲滅について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
それを追いかけて五人の武士が、
迂濶
(
うかつ
)
にも半町ほど走った時、川に面した堤の斜面から、三人の人影が躍り出て、素早く駕籠を取り巻いた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
結婚してから、その間の開きを発見して
吃驚
(
びっくり
)
した藤浪君は
迂濶
(
うかつ
)
を免れない。三谷さんがもっと若かったら、他の連中が
疾
(
と
)
うに射落している。
善根鈍根
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「
希臘
(
ギリシャ
)
の哲学者などは存外
迂濶
(
うかつ
)
な事を云うものだね。僕に云わせると天下に恐るべきものなし。火に
入
(
い
)
って焼けず、水に入って溺れず……」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、考えたが、そんなことが、有るべきはずでなかったし、自分の心の迷いから、幻に見たことを、
迂濶
(
うかつ
)
に、人には話すこともできなかった。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
それ吾人が先祖は決して徳川氏封建末路の人民のごとく遅鈍・
迂濶
(
うかつ
)
にしてしかも
怯魂軟腸
(
きょうこんなんちょう
)
、深窓の婦女子然たる人にあらず。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
われながら
迂濶
(
うかつ
)
千万、実は昨日、船を立つ時に、駒井氏から借用して来た「
遠眼鏡
(
とおめがね
)
」というものが、ここにあるではないか。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
迂濶
(
うかつ
)
なほうである。もう、その令嬢を問題にしていないという澄ました顔で、悠然と煙草のけむりを吐いて、そうして四季の風物を眺めている。
令嬢アユ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
二人して僕のことを
迂濶
(
うかつ
)
な奴、
頓馬
(
とんま
)
な奴、助平な奴などあざ笑っているのかも知れないと、僕は非常に不愉快を感じた。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
お高は、何ゆえ早くここへ気がつかなかったろうと
迂濶
(
うかつ
)
に思えて、同時に、あさましい気もちがこみ上げてきた。そんな金なぞいらないと思った。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それにしても菫の花をいままで少しも知らずにいた私の
迂濶
(
うかつ
)
さ!……だがそんな迂濶なところのある私だけに、いま、——こんな人生のこんな瞬間に
卜居:津村信夫に
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「長左衛門どのの言われるとおり、向うの様子がもう少し知れないと、
迂濶
(
うかつ
)
に手は出せないという頭領始め
領袖方
(
りょうしゅうがた
)
の御意見だ。しっかり遣ってきてくれ」
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
そのあと相手がどう出るか、それがわかったうえでなければ、
迂濶
(
うかつ
)
に笑顔は見せられない、といった態度である。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
迂濶
(
うかつ
)
な真似をして此の身を
害
(
そこな
)
ってはならぬ、いよ/\一命が
危
(
あやう
)
いという時にこそ、この短刀を持って突殺してくれよう、それまでは獣の様子を見ましょう
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一人は非常識であり、一人は
迂濶
(
うかつ
)
だったので、いっしょに外出する時や、あるいは家で、夕方露台に
肱
(
ひじ
)
をかけて談笑する時でさえ、慎重さを欠いていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
がこれだってなかなか立派なもんじゃないか。東京の鑑定家なんていうものの言うことも
迂濶
(
うかつ
)
に信用はできまいからね。田舎者の物だというんで変なけちを
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
実はK——博士の贈りものであったことを、
迂濶
(
うかつ
)
な庸三も大分後になってやっと感づいて、それでともかくこのロオマンスに大詰が来たことも
呑
(
の
)
みこめた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
無論、腕ずくで襲うつもりだったが、門番の私兵の
迂濶
(
うかつ
)
から、彼が律氏を訪問したことを知ったのである。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
単に必要があるかと申しますのは、
精
(
くわ
)
しくいえば、時代がそれを要求するかということになりましょう。それは
迂濶
(
うかつ
)
なわたくしに取っては、難問題でございます。
『新訳源氏物語』初版の序
(新字新仮名)
/
森鴎外
、
森林太郎
(著)
自分らの
迂濶
(
うかつ
)
さや不馴れさやが、この不便と手ちがいを
惹
(
ひ
)
き起すのではない。幾日かの経験で、すっかりそういう結論を得た彼らの眼は、
瞋
(
いか
)
りに燃えたって来た。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼
(
あの
)
オトナしい角谷、
今年
(
ことし
)
十九の彼
律義
(
りちぎ
)
な若者が——然し此驚きは、我
迂濶
(
うかつ
)
と
浅薄
(
せんぱく
)
を
証拠
(
しょうこ
)
立
(
だ
)
てるに過ぎぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
お光が
色情
(
しきじやう
)
にほだされ
迂濶
(
うかつ
)
と
口走
(
くちばし
)
り掛り合に成て當惑に及びしも口の禍ひなり
然
(
さり
)
ながら天に口なし人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
京子は加奈子に就いて、そんな性格解剖もしなかったのか、出来ないのが京子の性質であったのか、京子は殆ど加奈子との
迂濶
(
うかつ
)
な友情を疑ったことはない様子だった。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
迂濶
(
うかつ
)
に近寄っては、
怪我
(
けが
)
のあるのは当然として、
却
(
かえ
)
って、またも取り逃がすことになるかも知れぬ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
愚直な爺は先達をあの怖ろしい忿怒の
虜
(
とりこ
)
にさせたのが彼自身であることを
迂濶
(
うかつ
)
にも知らない。男はいよいよ火花のように燃え上って、元三の襟首をぎゅっと掴み寄せた。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
……それにつけても、あなたさまのような、江戸一といわれる捕物のご名人が、ここでこうして控えておいでになるんでは、いかな盗賊どもも
迂濶
(
うかつ
)
には手出しもなりますまい。
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
のみならず諸君……もしくは諸君の脳髄の代表者たる全世界の科学者たちの脳髄が、きょうが今日までこの矛盾、不可思議に気付かないでいたのは、何という
迂濶
(
うかつ
)
さであろう。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
狙
(
ね
)
らった上は決して
免
(
の
)
がさぬ。光代との関係は確かに見た。わが物顔のその
面
(
つら
)
を
蹂
(
ふ
)
み
躙
(
にじ
)
るのは朝飯前だ。おれを知らんか。おれを知らんか。はははははさすがは学者の
迂濶
(
うかつ
)
だ。馬鹿な奴。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
自転車に乗れる青年を求むという広告文で、それと察しなかったのは
迂濶
(
うかつ
)
だった。新聞記者になれるのだと喜んでいたのに、自転車であちこちの記者クラブへ原稿を取りに走るだけの芸だった。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
そして、まだ
鉄砲
(
てっぽう
)
の
手入
(
てい
)
れをしておかなかったのを、
迂濶
(
うかつ
)
であったと
気
(
き
)
づいたのです。その
翌日
(
よくじつ
)
、
昼
(
ひる
)
すぎごろのこと、
入
(
い
)
り
口
(
ぐち
)
へなにかきたけはいがしたので、
見
(
み
)
ると
怪物
(
かいぶつ
)
が
顔
(
かお
)
を
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
していました。
深山の秋
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
哀れなる動物はひどい恐怖に襲われているらしく、歯をむき出して、
顎
(
あご
)
からよだれを垂らして、わたしが
迂濶
(
うかつ
)
にさわったらばすぐに
咬
(
か
)
みつきそうな様子で、主人のわたしをも知らないように見えた。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
「これはまた
迂濶
(
うかつ
)
千
万
(
ばん
)
。
飴売
(
あめうり
)
土平
(
どへい
)
は、
近頃
(
ちかごろ
)
江戸
(
えど
)
の
名物
(
めいぶつ
)
でげすぜ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
汁粉もなかなか通なお方があって
迂濶
(
うかつ
)
に商売は出来ません。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
勝氏は決してかかる
迂濶
(
うかつ
)
の人物にあらず。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
我ながら
迂濶
(
うかつ
)
千万であったと思う。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
「鈴鹿の裏を抜けるにおれ様の名を知らぬとは
迂濶
(
うかつ
)
なやつだ、大蛇嶽闇右衛門とは、山城、大和、伊賀、近江きっての山賊様よ!」
だだら団兵衛
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
迂濶
(
うかつ
)
に手を放せば、彼は底知れぬ
暗黒
(
くらやみ
)
に転げ
墜
(
お
)
ちて、お杉と同じ運命を追わねばならぬ。さりとて
此
(
こ
)
のままの
暗黒
(
くらやみ
)
では仕方が無い。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
親子ではあるがこれを機会に、敵味方になろうもしれぬ! では
迂濶
(
うかつ
)
には! 迂濶には云えぬ! 今になって早瀬は感付いた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
窮鼠
(
きゅうそ
)
猫
(
ねこ
)
を噛むということも一応思ってみる必要がある。ちょっと暗闇に
眸
(
ひとみ
)
が馴れてこないうちは
迂濶
(
うかつ
)
に飛びかかれぬ気もした。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
迂
漢検準1級
部首:⾡
7画
濶
漢検1級
部首:⽔
17画
“迂濶”で始まる語句
迂濶者
迂濶千万
迂濶々々
迂濶〻〻