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轍
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てつ
ふりがな文庫
“
轍
(
てつ
)” の例文
「え? また駕籠ですか。南蛮幽霊のときもそうでござんしたが、あいつと同じ
轍
(
てつ
)
で、また江戸じゅうを駆けまわるんでげすかい?」
右門捕物帖:02 生首の進物
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
だからこの第一部だけをとつて、又しても『假面の告白』の
轍
(
てつ
)
を踏みはしまいかと心配するのは、おそらく杞憂といふものだらう。
三島由紀夫:ナルシシスムの運命
(旧字旧仮名)
/
神西清
(著)
……日吉や、お父っさんは、御無念なので、あんなことばかしいうけれど、おまえまでが、お父っさんの
轍
(
てつ
)
を踏んではいけないよ。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここ数旬にして帝都は挙げて睡魔の
坩堝
(
るつぼ
)
と化し、黒死病の蔓延によって死都と化した史話の如く、帝都もその
轍
(
てつ
)
を踏む
惧
(
おそ
)
れなしとしない
睡魔
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
兎も角も溝口屋へ行つた平次は、三河町の佐吉の
轍
(
てつ
)
をふまないやうに、外廻りから探索の手をつけました。表通りは六間間口の磨き拔いた格子。
銭形平次捕物控:136 鐘五郎の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
果然
(
くわぜん
)
彼
(
か
)
れは
幾
(
いく
)
ばくもなくして
漢族
(
かんぞく
)
のために
亡
(
ほろ
)
ぼされた。
獨
(
ひと
)
り
拓拔氏
(
たくばつし
)
のみならず
支那塞外
(
しなさくぐわい
)
の
蠻族
(
ばんぞく
)
は
概
(
おほむ
)
ねその
轍
(
てつ
)
を
履
(
ふ
)
んでゐる。
国語尊重
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
で、背に腹はかえられぬの
轍
(
てつ
)
を踏んで、有楽町のガード横丁まで引っかえして来ると、小八というおでん屋へ這入った。
泣虫小僧
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そこで、告白の遺書を書かせて、黒鉛の弾を示し、射ったらまず川に転げて落ちて、俺の二の
轍
(
てつ
)
を踏めと云ってやった。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
……其時は自分はバイロンの
轍
(
てつ
)
を踏んで、筆を劍に代へるのだ、などと論じた事や、その後、或るうら若き美しい人の、
潤
(
うる
)
める星の樣な
双眸
(
まなざし
)
の底に
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
天才は不遇な
裡
(
うち
)
に味もあれば同情もあるのだ——虚名を求めて彼女の
轍
(
てつ
)
を踏むときバクレンとなるなかれ。(鉄箒)
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
京都の公卿をして、再び
護良親王
(
もりながしんのう
)
の
轍
(
てつ
)
を踏ましむるなかれという気概のために、憎まるるものがないとはかぎらない。烈しく憎まるる時は暗殺される。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
南清
(
なんしん
)
で植民会社を創立したり、その当時の不遇政客の
轍
(
てつ
)
を踏んで
南船北馬
(
なんせんほくば
)
席暖まる
遑
(
いとま
)
なしと云う有様であったが、そのうちにばったり消息が無くなって
雨夜続志
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
日本の歴史にして果たして西洋史と
轍
(
てつ
)
を同じゅうするものならば、我々も
近
(
ちか
)
ごろ言う国家々々という声が今後いくらか弱りはせぬかと懸念に
堪
(
た
)
えないと同時に
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
その天資、
慷慨
(
こうがい
)
にして愛国の至情に富む、何ぞその相
肖
(
に
)
たるの
酷
(
はなはだ
)
しき。
而
(
しこう
)
してその文章を
擲
(
なげう
)
ち去りて、
殉国
(
じゅんこく
)
靖難
(
せいなん
)
の業につきたるが如き、二者ともにその
轍
(
てつ
)
を同じうせり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ここに女優たちの、近代的情熱の燃ゆるがごとき演劇は、あたかもこの
轍
(
てつ
)
だ、と
称
(
とな
)
えて
可
(
い
)
い。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かれらがこの侮辱に対して、なにゆえに手を
束
(
つか
)
ねていたかということは、出奔し去った五人の婿を前車の
轍
(
てつ
)
としたのみではない、が、ここではまず談話の本筋を進めることにする。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この勢いに乗じて事の
轍
(
てつ
)
を改むることなくば、政府にて一事を起こせば文明の形はしだいに具わるに似たれども、人民にはまさしく一段の気力を失い文明の精神はしだいに衰うるのみ。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
しかし、それは
他事
(
ひとごと
)
ではありません。今度は私自身がその仕舞図を描くことになったのですから、そんな前車の
轍
(
てつ
)
をふまないように注意しなくてはいけないと思って緊張しているのです。
謡曲仕舞など:――文展に出品する仕舞図について――
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
けれども、江戸の俳人の象徴派が試みたことは、彼が鎌倉の末に手をつけて、失敗の
轍
(
てつ
)
を示して置いたのであつた。彼は、自分の後進者には、この方面には進ませようとせなかつたらしい。
短歌本質成立の時代:万葉集以後の歌風の見わたし
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
そのときヨーロッパ文明諸国が今日の、イタリー、スペインおよびポルトガルの
轍
(
てつ
)
を踏んで産業的、商業的および政治的従属状態に陥らないで済むための唯一のチャンスは、社会革命にある。
汽船が太平洋を横断するまで
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
百露の
轍
(
てつ
)
、それあに
鑑
(
かんがみ
)
せざるべけんや。たといここに人あり、いま現に
雲漢
(
うんかん
)
より
降
(
くだ
)
るも、その言行神聖ならずんば、人いずくんぞ上帝の一子なりとなさんや。いわんやその子孫においてをや。
教門論疑問
(新字新仮名)
/
柏原孝章
(著)
師匠の団十郎もそれがために往々
傲慢
(
ごうまん
)
の誤解をまねいたが、彼もやはりその
轍
(
てつ
)
を踏んでいたのであろう。そうして一面には
頗
(
すこぶ
)
る
覇気
(
はき
)
に富んでいたらしく、一種
精悍
(
せいかん
)
の気がその風貌に
漲
(
みなぎ
)
っていた。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今其
轍
(
てつ
)
を蹈んで、無邪気な山人の心を勝手に
忖度
(
そんたく
)
し、而も夫を
以
(
もっ
)
て自己の不明を弁解するの具に供しようとすることは、真に恥ず可きの至りであるが、この際暫く読者の
寛恕
(
かんじょ
)
を得て筆を進めたい。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
安政二年
(
あんせいにねん
)
十月二日
(
じゆうがつふつか
)
の
江戸大地震
(
えどだいぢしん
)
に
於
(
おい
)
て、
小石川
(
こいしかは
)
の
水戸屋敷
(
みとやしき
)
に
於
(
おい
)
て
壓死
(
あつし
)
した
藤田東湖先生
(
ふぢたとうこせんせい
)
の
最後
(
さいご
)
と、
麹町
(
かうじまち
)
神田橋内
(
かんだばしない
)
の
姫路藩邸
(
ひめぢはんてい
)
に
於
(
おい
)
て
壓死
(
あつし
)
した
石本李蹊
(
いしもとりけい
)
翁
(
おう
)
の
最後
(
さいご
)
は
全
(
まつた
)
く
同
(
おな
)
じ
轍
(
てつ
)
を
踏
(
ふ
)
まれたものであつた。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
支那に路上春を
鬻
(
ひさ
)
ぐの
女
(
ぢよ
)
を
野雉
(
やち
)
と云ふ。
蓋
(
けだ
)
し徘徊
行人
(
かうじん
)
を
誘
(
いざな
)
ふ、
恰
(
あたか
)
も野雉の如くなるを云ふなり。邦語にこの輩を
夜鷹
(
よたか
)
と云ふ。
殆
(
ほとんど
)
同一
轍
(
てつ
)
に出づと云ふべし。野雉の語行はれて、
野雉車
(
やちしや
)
の語出づるに至る。
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「復た
阿爺
(
おやじ
)
の
轍
(
てつ
)
を
履
(
ふ
)
みはしないか、それを豊世は恐れてる」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
(たとえ、勝家の
轍
(
てつ
)
をふむまでも、まだ無傷の兵力と、残余の柴田党を
糾合
(
きゅうごう
)
して、抗戦を長びかせば、そのうちに、四囲の変化も起ろう)
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ともかくも溝口屋へ行った平次は、三河町の佐吉の
轍
(
てつ
)
をふまないように、外廻りから探索の手をつけました。表通りは六間間口の磨き抜いた格子。
銭形平次捕物控:136 鐘五郎の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ねえ法水君、捜査官が猟奇的な興味を起したばかりに、せっかく事件の解決を失った例が決して少なくはないのだぜ。いや、僕も危うくその
轍
(
てつ
)
を
踏
(
ふ
)
むところだったよ。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
あの
轍
(
てつ
)
を踏んで、あの時とは場合も違うし、清吉と、マドロスとは、性格に於ても比較にならないが、それでも、万々一……清吉のことを考え出してみると、駒井も
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こゝに女優たちの、近代的情熱の燃ゆるが如き演劇は、
恰
(
あたか
)
も此の
轍
(
てつ
)
だ、と
称
(
とな
)
へて
可
(
い
)
い。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分はバイロンの
轍
(
てつ
)
を踏んで、筆を剣に代へるのだ、などと論じた事や、その後、或るうら若き美しい人の、潤める星の様な
双眸
(
さうぼう
)
の底に、初めて人生の曙の光が動いて居ると気が付いてから
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私だって情熱があれば、蓮ちゃんの
轍
(
てつ
)
を踏む位何でもないけれど……職業なンか持ってると、そうそう男のひと一と目見て、
一途
(
いちず
)
にやれないからなの、——でもそろそろ本当は困ってンのよ。
泣虫小僧
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「井伊大老の
轍
(
てつ
)
を踏むと申すか!」
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
『年号ばかり、建炎と
革
(
あらた
)
めても、金の皇帝がまたそれをやれば、同じ
轍
(
てつ
)
をくりかえすに決っている。ただ長いか短いかだけだ』
人間山水図巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
作ろうとして、その実行に取りかかって、失敗しなかったものは一人もありません、みな失敗です、駒井さん、あなたの理想も、事業も、その
轍
(
てつ
)
を踏むにきまっています、失敗しますよ
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
かりに持明院統の
量仁
(
かずひと
)
を皇太子とはなされていても、もうそんな歴代のおろかな
轍
(
てつ
)
は、御自身ふたたび
践
(
ふ
)
もうなどとは思ってもおられない。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
須磨子なども寄ってたかって高い処へ押し上げてしまってそうして
梯子
(
はしご
)
を引いたような形だから、ああいう運命に落つるのも
已
(
や
)
むを得ないのであった、今また沢正にも同じ
轍
(
てつ
)
を踏ませるな
生前身後の事
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「それは分るが、何千年来、愚なる前例を、史に見ながら、なぜまた、二つのものが、分りきった愚の
轍
(
てつ
)
をふむのか、拙者には、怪しまれる」
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それゆえ、現朝廷の内々のおぼしめしを伺うても、またぞろ、承久の
轍
(
てつ
)
を踏んではと、俄に起ちもせぬのではなかろうか
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まずはこのおなじ
轍
(
てつ
)
を踏みはずさない人間通有の欲の目に迎えられ、武士大衆は公然、ごうごうと不平を鳴らしだした。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今とても
先生
(
せんじょう
)
金右衛門が、あぶなく同じ
轍
(
てつ
)
を踏むところであったのを、身をかわして、その野槍の
柄
(
え
)
をつかみ、片手で大刀を抜かんとして見せながら
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そう無造作にいってくれるな——おれの
轍
(
てつ
)
をふんで、ふたたび
亡父
(
ちち
)
の名を汚すようでは、今つぶした方がいい」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
前に、佐久間、柴田などが、みな同じ
轍
(
てつ
)
をふんで失敗を繰り返した築城の地は、尾張寄りのそこの一角だった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今のうちに、
尊王
(
そんのう
)
の大義を建て、外夷を討つ計を立てなかったら、この日本は、支那と同じ
轍
(
てつ
)
をふむほかない。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
所詮
(
しょせん
)
ふたたび乱世じゃ。室町家の末路の
轍
(
てつ
)
を踏もうも知れぬ。いや、勝家には危ぶまれる。どうあろう? 諸侯
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……しかし年を経て、彼の勢力が
駸々
(
しんしん
)
と諸州に根を張るようにでもなったすえには、
一朝
(
いっちょう
)
には仆せますまい。なぜなら前に北条の仆れた
轍
(
てつ
)
を見ておりますから
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「新野は小城であるし彼の軍隊は少数なので、つい敵をあなどったため、呂曠、呂翔も惨敗をうけたものです。——何でまた、貴殿まで同じ
轍
(
てつ
)
を踏もうとなさるか」
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
心ある人は、かくてはやはり南宋の泰平も、その芸術の殿堂も、久しからずして北宋や唐や漢代の
轍
(
てつ
)
をふむものではないかと、どこかで危ぶんでいたことであるだろう。
人間山水図巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貴公はしきりと、いちど失敗した
轍
(
てつ
)
を二度は踏まんといったが、その失敗は、棒自身が、棒であることを知らず、剣のごとき気をもって、
浅薄
(
あさはか
)
な計画で敵へ近づいたからだ。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
轍
漢検準1級
部首:⾞
19画
“轍”を含む語句
轍鮒
車轍
途轍
覆轍
一轍
前轍
転轍機
転轍器
陋轍
達磨転轍器
轍心
転轍手
転轍台
転轍
此轍
愚轍
御轍
同一轍