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貪慾
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どんよく
ふりがな文庫
“
貪慾
(
どんよく
)” の例文
自然の前でも後ろでもいい、要は常に鋭き感性とその
貪慾
(
どんよく
)
を以て、画家は、素晴らしい仕事をさえやってのければそれが万事である。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
燭台の灯火が大きく揺れ、壁上の
陰影
(
かげ
)
がその瞬間大
蜘蛛
(
ぐも
)
の形を描き出したのは、月子の
貪慾
(
どんよく
)
な心願を映し出したとも云われるのである。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして、聞いたばかりの短い言葉から推察されるあらゆる外の情勢を理解しようとして
貪慾
(
どんよく
)
になった。出て来て手を洗いながら又訊いた。
刻々
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
周圍の四人の
貪慾
(
どんよく
)
に輝く目にぎゆつと睨められてゐると、見てゐる間に、からだ中の血液が吸ひ取られてしまひさうに思はれた。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
狙
(
ねら
)
ったのであるその点は理性的打算的であったさればある場合には負けじ魂がかえって
貪慾
(
どんよく
)
に変形し門弟より
徴
(
ちょう
)
する月謝やお
膝付
(
ひざつき
)
のごとき
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
また
嚮導者
(
きょうどうしゃ
)
としては欠乏を持っている。そしてそのあらゆる満足はただ欲情を満たすことである。彼らは恐ろしく
貪慾
(
どんよく
)
である。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
禍害
(
わざわい
)
なるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、汝らは
酒杯
(
さかずき
)
と皿との外を潔くす、然れども内は
貪慾
(
どんよく
)
と放縦とにて満つるなり。
駈込み訴え
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「東洋人というものは、お
主
(
ぬし
)
のように、
左様
(
さよう
)
に
貪慾
(
どんよく
)
ではない。余の欲しいのは、
白紙命令書
(
はくしめいれいしょ
)
だ。それを百枚ばかり貰いたい」
独本土上陸作戦:――金博士シリーズ・3――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と、かれの
貪慾
(
どんよく
)
な
相好
(
そうごう
)
がニヤニヤ
笑
(
え
)
みくずれてきた。——湖水の中心では、いましも
鈎
(
かぎ
)
にかかった
獲物
(
えもの
)
があったらしい。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
数日来多少
場数
(
ばかず
)
を踏み、
貪慾
(
どんよく
)
に気の狂った彼とても、云い難き恐れの為に、戦慄を感じないではいられませんでした。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
貪
(
むさぼ
)
り求めるこころ、すなわち
貪慾
(
どんよく
)
の心を離れた慈悲のこころをほかにして、どこにも「菩薩の道」はないのです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
幾何
(
いくら
)
になるだろうかと銘々心の
裡
(
うち
)
で、荘田の持つ筆の先に現れる数字を、
貪慾
(
どんよく
)
に空想しながら、美奈子が小切手帳を持って、入って来るのを待っていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それは
仄
(
ほの
)
かで濃厚な
黄昏
(
たそがれ
)
を味わうという顔付きに一致して、いくらか横着に構えた
貪慾
(
どんよく
)
な落着きにさえ見えた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その魂は
貪慾
(
どんよく
)
であって、現在の男や女や大地や情熱や思想などを、しかも苦々しい
凡庸
(
ぼんよう
)
な
卑賤
(
ひせん
)
なものまでも、喜んで感じ許容し観察し理解したがっていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この愚劣と不正と
貪慾
(
どんよく
)
とが日一日と烈しくなって行くのを見ながら、それに対して何事をも為し得ないとは!
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
従来親戚の間の評判のよくない私、妄想や、誤解や、曲解や、悪意や、敵意から、偏屈、一刻、怠惰、
吝嗇
(
りんしょく
)
、
貪慾
(
どんよく
)
、等、等、勝手放題な悪名をばらまかれた私である。
結婚
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
殘忍で
貪慾
(
どんよく
)
で、
狡猾
(
かうくわつ
)
で、手のつけやうのない兇賊團でしたが、二、三年前東海道を荒し拔いて江戸に入り、それから引續き諸人の恐怖と迷惑の
種子
(
たね
)
になつてゐたのでした。
銭形平次捕物控:239 群盗
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
だが近代での工藝の堕落が富者の
貪慾
(
どんよく
)
に起因している事実を否定できるか。その堕落を救おうとする個人作家が、再び富者に依存するとは矛盾もはなはだしいではないか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
居士
(
コジ
)
は、
人命犯
(
じんめいはん
)
には
必
(
かな
)
らず萬已むを得ざる原因ある
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひ、
財主
(
ざいしゆ
)
の
老婆
(
ろうば
)
が、
貪慾
(
どんよく
)
を
憤
(
いきど
)
ふるのみの
一事
(
いちじ
)
にして
忽
(
たちま
)
ち
殺意
(
さつい
)
を
生
(
せう
)
ずるは殺人犯の原因としては甚だ淺薄なりと
言
(
い
)
ひ
「罪と罰」の殺人罪
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
松木の八十五倍以上の俸給を取っているえらい人もやはり
貪慾
(
どんよく
)
に肉を求めているのであった。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
それもこの上ない
貪慾
(
どんよく
)
な坊主だというので二ヶ月経つか経たぬ間に飛び出して来て、昔
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
この以外にもまだ幾つかあるようだが、あまり
貪慾
(
どんよく
)
だから一部分は遠慮することにした。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
櫻木大佐
(
さくらぎたいさ
)
の
一行
(
いつかう
)
が、
功成
(
こうな
)
り
此處
(
こゝ
)
を
立去
(
たちさ
)
つた
後
(
あと
)
に、
何時
(
いつ
)
他國人
(
たこくじん
)
が
入替
(
いれかわ
)
つて、
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
上陸
(
じようりく
)
せまいものでもない、
貪慾
(
どんよく
)
飽
(
あ
)
く
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らぬ
歐米人
(
をうべいじん
)
が、
※一
(
まんいち
)
にも
其後
(
そのゝち
)
此處
(
こゝ
)
に
上陸
(
じやうりく
)
したなら
夫
(
それ
)
こそ
大變
(
たいへん
)
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
何卒
(
どうぞ
)
十分に言はせて下さイ——僕は常に母の不心得を、
仮令
(
たとひ
)
無教育の為めとは言ひながら実に情ないことと思ふのです、
大洞
(
おほほら
)
の伯父——
全
(
まる
)
で不義
貪慾
(
どんよく
)
の
結塊
(
かたまり
)
です、父さんの如きも
何
(
どう
)
ですか
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
たとい君子ではないにもせよ、智的
貪慾
(
どんよく
)
を知らない青年はやはり彼には路傍の人だった。彼は彼の友だちに優しい感情を求めなかった。彼の友だちは青年らしい心臓を持たぬ青年でも好かった。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
此銅物屋の親父夫婦
貪慾
(
どんよく
)
強情にて、七年以前
見
(
み
)
せの手代一人土藏の三階にて腹切相果申候、此度は其恨なるべしと皆人申候、銅物屋の事故大釜二つ見せの前左右にあり、五箇年以前此邊出火之節
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
和助はそのうしろ姿を見おくりながら、いま
掴
(
つか
)
んだ娘の手のしめっぽい柔らかな、しっとりと冷たい感触を慥かめるように右の手をじっと握り緊めながら、唇のまわりに
貪慾
(
どんよく
)
そうな微笑をうかべた。
追いついた夢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
新しい蜘蛛の巣は
綺麗
(
きれい
)
なものだ。古い蜘蛛の巣はきたなく
厭
(
いや
)
らしく蜘蛛の
貪慾
(
どんよく
)
が不潔に見えるが、新しい蜘蛛の巣は蜘蛛の貪慾まで清潔に見え、私はその中で身をしばられてみたいと思ったりする。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
貪慾
(
どんよく
)
無情の聖女。
永久
(
えいきゅう
)
に聖なる聖女。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
シャトー・アルヌーへ至るデューランス
河
(
がわ
)
の橋さえもほとんど牛車を
支
(
ささ
)
うること
能
(
あた
)
わじ。彼ら牧師輩は皆かくのごとく、
貪慾
(
どんよく
)
飽くなきの徒なり。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
『ちッ、貴様たちに、何がわかる。わが君の御刃傷には、やむにやまれない理由があっての事だ。上野介の
酷薄
(
こくはく
)
貪慾
(
どんよく
)
なことは、世上の定評に聴けッ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これを細別すれば、憎悪、嫉妬、
貪慾
(
どんよく
)
、自己保全、功名心、遺産問題、その他多くの項目になる。つまり、人間感情のすべてのカテゴリーがこれに含まれる。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは人間の誰れよりも強い星の性格と、
貪慾
(
どんよく
)
なる本能と、鋭き神経と、体力と而して最も
秀
(
すぐ
)
れたる表現力を兼ね備えているものでなければならないと思う。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
「でも死骸がなかったひには」尚若者は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。しかしその眼は
貪慾
(
どんよく
)
らしく、小判の上に注がれた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
女や酒に身を持ち崩す男があるように、形而上的
貪慾
(
どんよく
)
のために身を亡ぼす男もあろうではないか。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
が、その媚や微笑の底には、
袖乞
(
そでご
)
いのような
卑
(
いや
)
しさや、
狼
(
おおかみ
)
のような
貪慾
(
どんよく
)
さが隠されていた。此の若い男女が交しているような微笑とは、金剛石と木炭のように違っていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
烏は、既に、
浅猿
(
あさま
)
しくも、雪の上に群がって、
貪慾
(
どんよく
)
な
嘴
(
くちばし
)
で、そこをかきさがしつついていた。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
こまやかなる味はひには
貪慾
(
どんよく
)
の心も深く起り、おろそかなる味はひ落ちぶれたる衣には
瞋恚
(
しんい
)
の思ひ浅からず、よしあしは変れども、
輪廻
(
りんね
)
の種となることはこれ同じかるべし。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
三種類の外国語に熟達したが、それも、ただ、外国の好色
淫猥
(
いんわい
)
の詩を読みたい為であった。僕の空想の胃袋は、他のひとの五倍も広くて、十倍も
貪慾
(
どんよく
)
だ。満腹という事を知らぬ。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それに、近頃お吉の
貪慾
(
どんよく
)
な追求を持て余して、切れたがっていると言った噂も、佐太郎には暗い影でした。全く佐太郎にとって、この二三年来のお吉は、重荷だったに相違ありません。
銭形平次捕物控:034 謎の鍵穴
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
布施とは、ただ今も申し上げたごとく、
貪慾
(
どんよく
)
のこころをうち破って、他に
憐
(
あわれ
)
みを施すことです。持戒とは、規則正しい生活の意味で、道徳的な
行為
(
おこない
)
です。
忍辱
(
にんにく
)
とは、
堪
(
こら
)
え忍ぶで、忍耐です。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
そこには、老年で富裕で
貪慾
(
どんよく
)
で、過激な王党であるとともに過激なヴォルテール党ともなるシャンテルシエ侯爵がいた。そういう変わった男もずいぶんいたものである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
補佐する
高資
(
たかすけ
)
に至っては——長崎高資に至っては、
貪慾
(
どんよく
)
にして
苛察
(
かさつ
)
の小人、賄賂を
貪
(
むさぼ
)
り訴訟を決し、私情をもって人事を行い、ひたすら威服を
擅
(
ほしいまま
)
にす。……人心北条氏を離れおるぞ!
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それに、近頃お吉の
貪慾
(
どんよく
)
な追及を持て餘して、切れたがつてゐると言つた噂も、佐太郎には暗い影でした。全く佐太郎に取つて、この二三年來のお吉は、重荷だつたに相違ありません。
銭形平次捕物控:034 謎の鍵穴
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
アア、何という
貪慾
(
どんよく
)
な復讐鬼であろう。彼は玉村家の、最後の一人までも、イヤ、一家のものばかりではない。その近親にまで手を延ばして、残酷無比の
殺戮
(
さつりく
)
を行おうとしているのだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
豊かなる「物」と
貪慾
(
どんよく
)
な精神とが、門を閉じて私慾の小国を作っていた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
嫉妬
(
しっと
)
、
貪慾
(
どんよく
)
、
猜疑
(
さいぎ
)
、
陰険
(
いんけん
)
、飢餓、
憎悪
(
ぞうお
)
など、あらゆる不吉の虫が
這
(
は
)
い出し、空を
覆
(
おお
)
ってぶんぶん飛び
廻
(
まわ
)
り、それ以来、人間は永遠に不幸に
悶
(
もだ
)
えなければならなくなったが、しかし、その匣の
隅
(
すみ
)
に
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
強い制作力ある画家ほど、飽きやすく、
貪慾
(
どんよく
)
にして
我儘
(
わがまま
)
である。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
お客のあさはかな虚栄と卑屈、店のおやじの
傲慢
(
ごうまん
)
貪慾
(
どんよく
)
、ああもう酒はいやだ、と行く度毎に私は禁酒の決意をあらたにするのであるが、機が熟さぬとでもいうのか、いまだに断行の運びにいたらぬ。
禁酒の心
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
『お気の毒なものだ。——世間の眼から見る上野介様と、ここから見る上野介様とは、まるで違うが、世間は、そう思うまい。さだめし、栄華三昧の
貪慾
(
どんよく
)
なお方と思われているだろうに、……何という不運なお方だろう。しかし是非もない事だ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貪
常用漢字
中学
部首:⾙
11画
慾
漢検準1級
部首:⼼
15画
“貪慾”で始まる語句
貪慾漢
貪慾癖
貪慾者
貪慾執心
貪慾邪慳