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痕跡
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こんせき
ふりがな文庫
“
痕跡
(
こんせき
)” の例文
形の上で意識的に調和を求めたような
痕跡
(
こんせき
)
はみられない。胴体のくねりも遊び足もない。それぞれが
古樸
(
こぼく
)
に佇立しているだけである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
なんとなれば全巻を通じて簡単な代数式一つなく、またなんらの簡易な器械を用いていかなる量を測定した
痕跡
(
こんせき
)
もないからである。
ルクレチウスと科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ところが、残念にもその
痕跡
(
こんせき
)
はいま残っておりません。また現場捜査をした人もおそらくははっきり記憶していないだろうと思います。
五階の窓:06 合作の六(終局)
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
すなわち、子どもの遊びには遠い大昔の、まだ人間が一般に子どもらしかった頃に、まじめにしていたことの
痕跡
(
こんせき
)
があるのである。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
磐梯山破裂
(
ばんだいざんはれつ
)
の
跡
(
あと
)
には
大
(
おほ
)
きな
蒸氣孔
(
じようきこう
)
を
殘
(
のこ
)
し、
火山作用
(
かざんさよう
)
は
今
(
いま
)
もなほ
盛
(
さか
)
んであるが、
眉山
(
まゆやま
)
の
場合
(
ばあひ
)
には
毫
(
ごう
)
も
右樣
(
みぎよう
)
の
痕跡
(
こんせき
)
を
止
(
とゞ
)
めなかつたのである。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
▼ もっと見る
けれども気のせいか、常から
蒼
(
あお
)
い頬が一層蒼いように感ぜられた。その蒼い頬の一部と眼の
縁
(
ふち
)
に
先刻
(
さっき
)
泣いた
痕跡
(
こんせき
)
がまだ残っていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
意志の
痕跡
(
こんせき
)
は少しもなかった。何が欲求されてるのかだれにもわからなかった。何がなされてるのかだれにもわからなかった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
今日でもなお、燃やされた古い木の幹などの明らかにそれと認めらるる
痕跡
(
こんせき
)
で、
叢林
(
そうりん
)
の奥に震えていたあわれな人々の露営の場所が察せらるる。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかし、この秩序が一度回復されれば、あの出来事のあらゆる
痕跡
(
こんせき
)
は消えてなくなり、万事は元どおりになることだろう。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
盗賊の
行方
(
ゆくえ
)
は一向わからない上に、彼らが忍び出でた
痕跡
(
こんせき
)
のある濠端は、ちょうど兵馬が通りかかったと同じ方向でした。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ただ徳田秋声氏や葛西善蔵氏の作品には、官能的にも思想的にも、西洋人にかぶれたと云ふ
痕跡
(
こんせき
)
が少い。それ
丈
(
だ
)
けは安全に云ひ得られるかと思ふ。
東西問答
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「しかし、それなら何か凶行の
痕跡
(
こんせき
)
が残っていそうなものなのに、足跡はあるがほかになんにもないじゃないですか?」
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
雑草の中の
水溜
(
みずたま
)
りに
鳩
(
はと
)
が降りて何かを
漁
(
あさ
)
り歩いているのが、いかにものんびりした光景で、
此処
(
ここ
)
ばかりはそんな
山津浪
(
やまつなみ
)
の
痕跡
(
こんせき
)
などは
何処
(
どこ
)
にもない。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
みな罪悪である。
吾等
(
われら
)
の心象中
微塵
(
みじん
)
ばかりも善の
痕跡
(
こんせき
)
を発見することができない。この世界に行わるる吾等の善なるものは
畢竟
(
ひっきょう
)
根のない木である。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
私の死ぬるまで消し難い
痕跡
(
こんせき
)
を残すのではあるまいか、と思われる、そのような妙に、やりきれない事件なのである。
親友交歓
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すでに学校に心を
帰
(
き
)
すれば、
門閥
(
もんばつ
)
の念も同時に断絶してその
痕跡
(
こんせき
)
を見るべからず。市学校は、あたかも門閥の
念慮
(
ねんりょ
)
を
測量
(
そくりょう
)
する試験器というも
可
(
か
)
なり。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
一番先に調べにやつた停車場では、昨日から今日にかけて、娘が汽車に乗つて行つたやうな
痕跡
(
こんせき
)
はないと言つて来た。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
それがおそろしく変形して厚い多肉部が生じ種子はまったく
不熟
(
ふじゅく
)
に
帰
(
き
)
して、ただ果実の中央に
軟
(
やわ
)
らかい黒ずんだ
痕跡
(
こんせき
)
を存しているのみですんでいる。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
隠語など
認
(
したた
)
めたものだろう? 自殺者が自殺をする場合、何かこの世へ
痕跡
(
こんせき
)
を残す! それと全く同じ意味で、あれだけの隠語を書いたまでである。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そしてその第一は、今までのような醜い
痕跡
(
こんせき
)
残存が完全に跡を絶ったことだ。だから顔面整形手術の如きものが、どんどん行われるようになったのだ。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
地球が造られた始めにはそこに
痕跡
(
こんせき
)
すら有機物は存在しなかった。そこに、或る時期に至って有機物が現われ出た。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そして
永劫
(
えいがふ
)
の或期間だけ蓋の形を保續して來た、要するに
集
(
あつ
)
まツた人の力が
歳月
(
さいげつ
)
と
闘
(
たゝか
)
ツて來たのだ。雖然戰ツた
痕跡
(
こんせき
)
は、都て埃の爲に消されて了ツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
で、彼は何か
痕跡
(
こんせき
)
はないかと、急いで自分の全身を頭から足の先まで見回し始めた。服もずっと一通り調べてみた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「雲の柱が彼方の山岳をかすめて、すさまじく立ち昇ったかと見えた。だが、
雲表
(
うんぴょう
)
の神秘、自然の迅速、誰かよく、その
痕跡
(
こんせき
)
をとらえて実証できよう」
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
落ちない迄も
苔
(
こけ
)
を痛めさうな、この上もなくデリケートな板庇の上に、幅五寸、長さ三尺ほどの板を載せて、曲者はこれを踏んで、何んの
痕跡
(
こんせき
)
も殘さずに
銭形平次捕物控:205 権三は泣く
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その時になって見ると、過ぐる七年を私は
嵐
(
あらし
)
の中にすわりつづけて来たような気もする。私のからだにあるもので、何一つその
痕跡
(
こんせき
)
をとどめないものはない。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「シャスタの南東頂上が
欠損
(
けっそん
)
してマック・クラウド谷が吹き飛ばされ、谷の
痕跡
(
こんせき
)
が、一筋も残らない」
火と氷のシャスタ山
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
岸の水の浅いところへ死骸を投げこんでおくわけにはゆくまいからね、被害者の背中や肩についている特殊の
痕跡
(
こんせき
)
は、ボートの底の
肋材
(
ろくざい
)
に触れたことを示している。
マリー・ロジェエの怪事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
かつ鯨の歌の第一句「雲かかる」の五字極めて拙く候。かく言ひては「雨とふらせて」と照応するためにこの蛇足の語を加へたる
痕跡
(
こんせき
)
歴々として余り見つともなく候。
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
倒れた兵士は、雪に
蔽
(
おお
)
われ、暫らくするうちに、
背嚢
(
はいのう
)
も、靴も、軍帽も、すべて雪の下にかくれて、彼等が横たわっている
痕跡
(
こんせき
)
は、すっかり分らなくなってしまった。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
八の顔は右の
外眦
(
めじり
)
に大きな
引弔
(
ひつつり
)
があつて頗る醜い。それに彼のこれ迄に経験して来た、暗い、鈍い生活が顔に消されない
痕跡
(
こんせき
)
を
印
(
しる
)
してゐる。併し少しも陰険な処は無い。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「君子は世を
没
(
おわ
)
るも」云々は『論語』
衛霊公
(
えいれいこう
)
篇に君子を規定する他の四章と相並んでいる独立の章であって、『春秋』の述作と関係があるというごとき
痕跡
(
こんせき
)
は全然ない。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
じっと廊下先の障子を一本一本
巨細
(
こさい
)
に見まわしていましたが、と——果然、その
痕跡
(
こんせき
)
があった。
右門捕物帖:03 血染めの手形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
この講和条件の中には、戦争中に歓迎された
露西亜
(
ロシヤ
)
流の無併合、無賠償説の影響のないのは勿論、ウィルソンの堂々たる十四カ条の
痕跡
(
こんせき
)
さえ留めていないではありませんか。
非人道的な講和条件
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
その文章には少しも頭脳不調の
痕跡
(
こんせき
)
は見られなかつた。一箇月の療養と看護とで平復退院。
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
愛の
痕跡
(
こんせき
)
も残さず変わってしまうものだと人の言うのは
嘘
(
うそ
)
でないと、苦しい体験をはじめてするという気もしてこの侮辱にじっと堪えていることはできないことであると思って
源氏物語:40 夕霧二
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
わたしが発見したとおもったのは衝動だったのかしら、わたしをさまよわせているのは痙攣なのだろうか。まだわたしは原始時代の無数の
痕跡
(
こんせき
)
のなかで迷い歩いているようだった。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
明かに鉄鍋の
痕跡
(
こんせき
)
と思えるが、面白い事に三つの足は習慣に過ぎなく、底よりも上についているので用をなさない。だが陶工たちは知ってか知らぬか、元通りに必ず三つ足をつける。
現在の日本民窯
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
時計を持っている手が、
微
(
かす
)
かに顫えるのと一緒に、夫人の顔も
蒼白
(
あおじろ
)
く緊張したようだった。ほんのもう、
痕跡
(
こんせき
)
しか残っていない血が、夫人の心を可なり、
脅
(
おびや
)
かしたようにも思われた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
穴の蓋は自然に閉まってしまうので、あとにはなんの
痕跡
(
こんせき
)
も残らないのですからね
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それが
貝層
(
かひそう
)
の四五
尺
(
しやく
)
下
(
した
)
からである。
曾
(
かつ
)
て
攪亂
(
かくらん
)
せる
痕跡
(
こんせき
)
の
無
(
な
)
い
貝層中
(
かひそうちう
)
からである。
探検実記 地中の秘密:06 疑問の加瀬貝塚
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
そうした血統上の
痕跡
(
こんせき
)
は、何よりも
雄弁
(
ゆうべん
)
にツルゲーネフの生活(彼は
一生涯
(
いっしょうがい
)
独身で押し通しました)が物語っているのですが、文芸作品の面から言うと、ここに訳出した短編『はつ恋』に
「はつ恋」解説
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
もし或る人物が、留守にどこかの窓を開けて、そこから
闖入
(
ちんにゅう
)
して来るとすれば、窓の或るどこかに、コジあけた
痕跡
(
こんせき
)
が残っているか、でないとしても、多少の指紋が残っているべきはずである。
ウォーソン夫人の黒猫
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
化石として残るのは、たいてい硬骨部分の一部と、その他の部分のかすかな
痕跡
(
こんせき
)
とである。そういう断片的な材料をもとにして、化石学者たちは、原体制の復原という困難な仕事をなしとげる。
イグアノドンの唄:――大人のための童話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
女性の特徴たる乳房その他の
痕跡
(
こんせき
)
歴然
(
れきぜん
)
たり、教育の参考資料だという口上に
惹
(
ひ
)
きつけられ、
歪
(
ゆが
)
んだ顔で見た。ひそかに抱いていた性的なものへの嫌悪に逆に作用された
捨鉢
(
すてばち
)
な好奇心からだった。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
昔結核を患った
痕跡
(
こんせき
)
もあるし、それが再発したのだといわれます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
「野暮は
揉
(
も
)
まれて粋となる」というのはこの
謂
(
いい
)
にほかならない。
婀娜
(
あだ
)
っぽい、かろらかな微笑の裏に、
真摯
(
しんし
)
な熱い涙のほのかな
痕跡
(
こんせき
)
を見詰めたときに、はじめて「いき」の真相を
把握
(
はあく
)
し得たのである。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
苦痛の
痕跡
(
こんせき
)
であった
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
知らず
識
(
し
)
らずの間に心持を相続していたような
痕跡
(
こんせき
)
がありますが、これから亡びるものは永久に、また根こそげなくなるのです。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼らは話される対話の
痕跡
(
こんせき
)
を
歌劇
(
オペラ
)
から注意深く消し去って、モーツァルトやベートーヴェンやウェーバーらの作品のために、自己流の
叙唱
(
レシタチーヴ
)
を書いた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
“痕跡”の意味
《名詞》
過去に何かが起こったことを示す跡。
(出典:Wiktionary)
痕
常用漢字
中学
部首:⽧
11画
跡
常用漢字
中学
部首:⾜
13画
“痕”で始まる語句
痕
痕迹
痕形
痕々