“引弔”の読み方と例文
読み方割合
ひつつり100.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
八の顔は右の外眦めじりに大きな引弔ひつつりがあつて頗る醜い。それに彼のこれ迄に経験して来た、暗い、鈍い生活が顔に消されない痕跡こんせきしるしてゐる。併し少しも陰険な処は無い。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
先に立つて行く軍人の雨覆あまおほひが八の絆纏のそでと摩れ摩れになつて、その軍人は通り過ぎた。八は子供の時に火傷やけどをして、右の外眦めじりから顳顬こめかみに掛けて、大きな引弔ひつつりがあるので、徴兵に取られなかつた。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
併し別に目に留まるものがない。八は此部屋より外の部屋に行つて見ようといふ程の気力はない。顔の筋が皆ゆるんで、火傷やけどあと引弔ひつつりの為めに、赤んべえをしてゐるやうな目がどろんとしてゐる。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)