“満更:まんざら” の例文
“満更:まんざら”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂19
夏目漱石12
芥川竜之介7
谷崎潤一郎5
海野十三4
“満更:まんざら”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 彫刻 > 彫刻史 各国の彫刻3.7%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.5%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「それは満更まんざら嘘ではない。何度もおれは手招てまねぎをした。」と、素直すなお御頷おうなずきなさいました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その友人が、後に私が発狂したと云う噂を立てたのも、当時の私の異常な行動を考えれば、満更まんざら無理な事ではございません。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「話しはそんなに運んでるんじゃありませんが——寒月さんだって満更まんざら嬉しくない事もないでしょう」と土俵際で持ち直す。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしこの事を心得た百姓は、その巣を掘って穀を過分に得、またその肉を常翫するから満更まんざら丸損まるそんにならぬ。
頼門の弁解は苦しそうでした。尤も土岐氏は金森家の祖先で、亥太郎は頼門の幼名、満更まんざら嘘を言って居るわけではありません。
お勢の言葉は満更まんざら嘘でもなかったでしょう、華奢きゃしゃな胸を抱いて、こう言う唇が、少しあおざめます。
朦朧もうろうとはしながらも、烏帽子えぼしの紐を長くむすび下げた物ごしは満更まんざら狐狸こり変化へんげとも思われない。
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
細君の弁解を聞いた時、健三は満更まんざらうそとも思わなかった。けれどもそのほかにまだ意味が残っているようにも考えた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
看護婦はコーラ・ワードといってすこぶる美人であったが、いつの間にかハリーに心を寄せ、ハリーも満更まんざら厭でない様子であった。
誤った鑑定 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
満更まんざらじゃねえな、八。小唄お政に呼出しをかけられるのは、一千人という弟子の中でも、手前一人だろう」
満更まんざら苦しくない事もないんだろうが、一つは新参の自分に対して、景気を見せるためじゃないかと思った。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
莫迦ばか——」男爵は、満更まんざらでもない様子で、ニヤリと笑って、真弓の逃げてゆくあとを、見送った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もしそれがうまく行けば、そこは複雑な迷路みたいな町だし、夕暗のことだから、うまく逃げおおせることも、満更まんざら不可能ではなかった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
されば満更まんざらあとかたのない話ではござりますまいが、御家来衆は兎に角として、殿様が左様な企てに耳をおしになりましたかどうか。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし会って見ると、満更まんざら知らない顔でもないので、用だけ聴いてすぐ帰って貰う事もできなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし談話の模様から鼻息の荒いところなどを綜合そうごうして考えて見ると、満更まんざら人の注意をかぬ獅鼻ししばなとも思われない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なに試験なんかどうにかこうにかやっつけまさあと受合ったところに、満更まんざらの虚勢も見えなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
写したとはいいながら原作が優れており自分も手間をかまわず丹念にやった仕事であるので、これならば自分のお礼の意味も満更まんざらではあるまい。
「虎——という男です、満更まんざらの乞食じゃありません、あれでも昔は伝馬町の伊豆屋の若旦那で、虎松さんと言われた良い男の成れの果てで——」
なかには埃塗ほこりまみれの手で、湯気の立つたスウプの皿を持つてゐるのを見掛けたと言ふからには、これも満更まんざら嘘だとばかしは言はれない。
この調子では手のひら位の大きさの雪の結晶を作る話も満更まんざら夢とばかりはいわれなくなって来た。
雪雑記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
その津田君が躍起やっきになるまで弁護するのだから満更まんざら出鱈目でたらめではあるまい。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
又盛衰記の鬼界が島は、たとひタイテイではないにしても、満更まんざら岩ばかりでもなささうである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
行者の云うことがほんとうなら、同じ主家に奉公をした侍がこんな姿に落ちぶれているのは、今のわが身に思い合わせて満更まんざら哀れでないこともない。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あの白い眼にじりじりやられたのも、満更まんざら持前の半間はんまからばかり来たとも云えまい。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お延の彼に対する平生の素振そぶりから推して見ると、この類測に満更まんざらな無理はなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから、石ということを頭に置いて色々なことを試みさせて見ましたが、彫ることには心がないのではありませんから、なかなか満更まんざらではありません。
この露月の、萎れ屈している逍遙そぞろあるきに、満更まんざら理由のないわけでもありませぬ。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「あの誘拐かどわかしなら、俺の方じゃもう検挙あげるばかりになっているんだ。満更まんざら知らねえ顔でもない兄哥に恥を掻かせるでもないと思ってね」
それでも状袋が郵便函の口をすべって、すとんと底へ落ちた時は、受取人の一週間以内に封をひらく様を想見して、満更まんざら悪い心持もしまいと思った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御前おまへだつて満更まんざら道楽をした事のない人間でもあるまい。こんな不始末を仕出しでかす位なら、今迄折角かねを使つた甲斐がないぢやないか」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と云ったところでこう見えても、満更まんざら好意も人情も無いわがまま一方の男でもない。
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あの小僧さんか、——それじゃ満更まんざら嘘じゃあるめえ。八、戸を開けてやるがいい」
「もう大丈夫、お母さんがあんまり仰山ぎょうさん過ぎるからいけないんだ」といったその時の言葉を考えてみると、満更まんざら母ばかり責める気にもなれなかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まあ何にしても明日見舞いに行てこう、中川の奥様から満更まんざら知らん仲と違うし
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それで実験技術としては満更まんざら縁のない話でもないので、私の所の講師のT君が私の方をめて、その研究所へはいって、専心その方面の仕事を始めることになった。
原子爆弾雑話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ツイ二三日前うわさをしていた乾物屋のお柳、——ガラッ八も満更まんざらでなかったらしい、町内の評判娘の死は、平次の職業意識を、ほんの少しばかり湿っぽくします。
「へエ——、そんなもんですかね、——もっともあの娘は満更まんざらじゃねえが」
満更まんざらこれらの婦人たちの贔屓目ひいきめではなかったでもあろうか。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「いかがですな。お蓮のかた、東京も満更まんざらじゃありますまい。」
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
満更まんざら容色きりょうではないが、紺の筒袖つつそで上被衣うわっぱりを、浅葱あさぎの紐で胸高むなだかにちょっとめた甲斐甲斐かいがいしい女房ぶり。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤くなったり青くなったりして星尾の物語るところは、満更まんざらうそであるとは思えなかった。彼はその変態性欲について大いに慚愧ざんきにたえぬと述べて、汗をふいた。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
丑松はムキになりました。その様子は満更まんざら嘘らしくもありません。
だから頼むのだ。おれの云う事に満更まんざら論理のない事もあるまい
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども一日の旅行を終りて草臥れ直しの晩酌に美酒佳肴びしゅかこう山の如く、あるいは赤襟赤裾あかえりあかすその人さえも交りてもてなされるのは満更まんざら悪い事もあるまい。
徒歩旅行を読む (新字新仮名) / 正岡子規(著)
この分なれば、彼の計画は満更まんざら夢に終ることもないようです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「いくら丈夫の私でも、満更まんざら考えない事もありません」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分は母の批評が満更まんざら当っていないとも思わなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
満更まんざら莫迦ばかを見たわけでもないと云ふものさ。
創作 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
むかし嵯峨に独照といふ僧が居た。黄檗わうばく隠元いんげんが日本へやつて来た折、第一に払子ほつすを受けたのは、この独照だつたといふからには、満更まんざらの男では無かつたらしい。
祐吉も満更まんざらそんな事の嫌いな柄でもありません。
それから一松斎は、満更まんざら、芸道にもくらからぬ言葉で、江戸顔見世かおみせの狂言のことなど、訊ねるのだったが、ふと、やや鋭い、しかし、静かさを失わぬ目つきで、雪之丞を見詰めると、
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そういって、もう音信たよりはないものと思いながらも約束は約束だから待っていますと、先方も満更まんざら打っちゃって置いたのではなく、五月の末になって、長谷川栄次郎からたよりがありました。
あなただって、僕をお笑いなさるけれど実はなかなか論理がお好きのようでもあるし、この方面ではあるいは僕の先輩かも知れないくらいだから、満更まんざら興味のないことではなかろうと思うんです。
途上 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
などと、叔母さんは満更まんざらでもない様子です。
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
一本で夫程それほど長く使えるものが日に百本も出ると云えば万年筆を需用する人の範囲は非常な勢をもって広がりつつあると見ても満更まんざら見当違けんとうちがいの観察とも云われない様である。
余と万年筆 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もっとも、ほんとに仏蘭西製のこの種の豪のモノが世界じゅうに散らばってることも満更まんざらうそじゃあないんだが、その多くは、女中つきで倶楽部くらぶなんかに出没するグラン・オペラ的な連中で
「笹野の旦那だって満更まんざら他人じゃないし」
「物好きも満更まんざら無駄じゃなかったわけで」
満更まんざら知らぬその方でもあるまいに——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
満更まんざらうそとはおもはん。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「よろしい」彼は満更まんざらでない面持おももちうなずいた。「ではこの装置を開けましょうが、爬虫どもを別の建物へ移さねばならぬので、その準備に今から五六時間はかかります。それは承知して下さい」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
満更まんざら夢でもないらしいよ」
「さあ、幾らか気も変になっているか知れないが、所謂いわゆる狂人きちがいと云うのでも無いようだ。」と、安行は考えて、「彼女あれも俺のうち満更まんざら縁が無いでも無いのだ。お前も知っているだろう。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何しろ、その時分は、あの女もたった一人のおふくろに死別しにわかれた後で、それこそ日々にちにちの暮しにも差支えるような身の上でございましたから、そう云うがんをかけたのも、満更まんざら無理はございません。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「昨夜のことなんだよ、それは……。火の番の、常爺つねじいが、両方の耳で、たしかに、そいつを聴いたよッて、あおい顔をして、のおいらに話したんだ。満更まんざらいつわりを云っているんだたァ、思えねぇ」
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ふみの言葉や仮名づかいには田舎のばばが書いたらしいおぼつかないふしぶしも見えるけれども、文字はそのわりにまずくなく、お家流の正しいくずし方で書いてあるのは、満更まんざら水呑みずのみ百姓でもなかったのであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
殊に広い一本道のはずれに淋しい冬の落日を望み、西北にしきた寒風かんぷうに吹付けられながら歩いて行くと、何ともなく遠い行先の急がれるような心持がして、電車自転車のベルのをば駅路の鈴に見立てたくなるのも満更まんざら無理ではあるまい。
あははははは、其処そこへ気が付かれるとはあなたも僕に劣らない神経質ですな。なるほど、そうおっしゃられると、僕はあの時分のことをだんだん思い出して来ましたが、僕もあの時満更まんざらそれに気が付かなくはなかったのです。けれども僕はこう考えたのです。
途上 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「兎も角も、そのでっかいのが、グヮラグヮラドシンと来ると、舞台に居た六、七人の踊り子が、——ワッ怖いッ——てんで、皆んなあっしの首っ玉にブラ下ったんだからてえしたもので、あんな役得があるんだからでっかい雷鳴も満更まんざら悪くありませんね」
例のことね。すっかり分りましたよ。昨夜ゆうべです。昨夜とこの中でね、ハッと気がついたのです。どうも済みません。やっぱり私の思い違いでした。一度も御逢いしたことはないのです。併し、御逢いはしていないけれど、満更まんざら御縁がなくはないのですよ。
モノグラム (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
見ると、人品骨格満更まんざらの乞食とも思えませんが、お釜帽の穴のあいたのを目深まぶかに、念入のボロを引っかけて、片足は鼠色ねずみいろになった繃帯ほうたいで包み、本当の片輪かどうかはわかりませんが、あやな松葉杖などを突っ張って居ります。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
この時事に臨んでかつて狼狽ろうばいしたる事なきわれつらつら思うよう、できさえすれば退却も満更まんざらでない、少なくとも落車にまさること万々なりといえども、悲夫逆艪さかろの用意いまだ調ととのわざる今日の時勢なれば、エー仕方がない思い切って落車にしろ
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女流教育家といふと、十人が十人、雀のやうに質素じみ扮装みなりをして、そしてまた雀のやうにお喋舌しやべりをよくするものだとばかし思つてゐるむきが多いやうだが、女流教育家といつた所で満更まんざらそんな人ばかしで無いのは、三輪田みわだ真佐子女史がよく証明してゐる。
「むむ。……大きに其方の申すとおりだ。織田家のうちには、わしの父や母方の縁故をたどれば、顔を知らぬまでも、訪ねて参ればわかる程度の知人は満更まんざらないこともない。けれど、初めが大事だからなあ。わけて問題は大きい。生半可なまはんかな人物を仲に介するほどならないほうがよい」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「七平が言う通り、お勝手が開いていれば、下手人は外から入って、外へ逃げたはずじゃありませんか、ところが下女は自分で開けたと言うし、この通り、お勝手から外の往来へ出る、裏口も昨日の朝は開いていなかった——小僧二人の口が合うところをみると、これも満更まんざら嘘じゃないでしょう」
お前と生れぬ先からの許嫁いいなずけだというのを満更まんざら知らないではなかったが、つい自分の少しばかりの智恵に引かされて、東京でどうかして見ようと思ったり、先方の食えない腹の中がよく判って居るくせに、男爵の婿になっても悪くない、と一度でも思ったのがオレの迷いだったよ、勘弁してくれよ
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
だが、一面、その「早わかり本」の愛読者なる政治家が、その頃最も新しい政治家で、生涯のうちに、かなりの良い仕事をしてくれ、人のためにも、国のためにも、大きな手柄を立ててくれたことを考えると、ダイジェスト智恵や「早わかり本」の手柄も満更まんざらではなかったという結論が生み出せないこともないわけである。