淺黄あさぎ)” の例文
新字:浅黄
白衣びやくえ淺黄あさぎの袴の平服になつて、居室ゐまの爐の前に坐つた道臣は、ポン/\と快い音のする手を二つ鳴らしてお駒を呼んだ。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「お袋は取つて六十七だが、白地の手拭は汚れつぽいからと言つて、淺黄あさぎの手拭でなきや、どうしても使はねえ」
淺黄あさぎ手絡てがらけかゝつて、透通すきとほるやうに眞白まつしろほそうなじを、ひざうへいて、抱占かゝへしめながら、頬摺ほゝずりしていつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あれもぱりいたづらもの烟管きせるいてたちあがる、女猫めねこよびにと雪灯ぼんぼりうつ平常着ふだんぎの八ぢよう書生羽織しよせいばをりしどけなくひきかけて、腰引こしひきゆへる縮緬ちりめんの、淺黄あさぎはことにうつくしくえぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おとすは淺黄あさぎ瑠璃るりかは
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
切る心算りかも知れないよ。俺にはそんな氣がしてならねえ、——お茶屋へ始めて來たやうな淺黄あさぎ裏が、女中に一分の祝儀は出來過ぎて居るぜ。ね、番頭さん
みちすがらも、神祕しんぴ幽玄いうげんはなは、尾花をばなはやしなかやまけた巖角いはかどに、かろあゐつたり、おもあをつたり、わざ淺黄あさぎだつたり、いろうごきつつある風情ふぜい
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちよいと樣子を見ただけでも、お銀は圓三郎のあはせのほころびを縫つてゐた樣子だ——お銀の部屋に、田舍じまの袷と、淺黄あさぎ股引もゝひきのあつたのを、お前も見たらう
そらいろふちのやうです、なんつたらいでせう。……あをとも淺黄あさぎともうす納戸なんどとも、……」
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次は氣のない顏をして、自分の膝つ小僧を抱いたまゝ、縁側から初秋の淺黄あさぎ色の朝空を眺めて居ります。
トタンにかまち取着とツつきはしらもたれた淺黄あさぎ手絡てがら此方こつち見向みむく、うらわかいのとおもてはせた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
眞新しい看板に「さざなみ」と書き、淺黄あさぎの暖簾に鎌輪奴かまわぬと染め出した入口、ヒヨイと見ると、頭の上の大輪飾おほわかざりが、どう間違へたか裏返しに掛けてあるではありませんか。
「おりう、」とおもはず抱占だきしめたときは、淺黄あさぎ手絡てがらと、ゆきなすうなじが、あざやかに、狹霧さぎりなかゑがかれたが、る/\、いろがあせて、うすくなつて、ぼんやりして、一體いつたいすみのやうになつて、やがて
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
尻切袢纒ばんてん淺黄あさぎ股引もゝひき、見得も色氣もない男で、案外こんなのが飛んだ色男かもわかりません。
淺黄あさぎ角絞つのしぼり手絡てがらゆるおほきくかけたが、病氣びやうきであらう、弱々よわ/\とした後姿うしろすがた
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「金ですよ、親分、小判が何んと五、六百兩、いや、千兩ばかり、淺黄あさぎのボロきれを包んで——」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
もすそをすらりと駒下駄こまげた踏代ふみかへて向直むきなほると、なかむかうむきに、すつとした襟足えりあしで、毛筋けすぢとほつた水髮みづがみびんつや。とけさうなほそ黄金脚きんあしの、淺黄あさぎ翡翠ひすゐ照映てりはえてしろい……横顏よこがほ見返みかへつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五十前後の鬼が霍亂くわくらんを患つたやうな惡相の武家、眼も鼻も口も大きい上に、澁紙しぶがみ色の皮膚、山のやうな兩肩、身扮みなりも、腰の物も、代表型テイピカル淺黄あさぎ裏のくせに、聲だけは妙に物優しく
一寸ちよつと言添いひそへることがある、ごろから元二げんじやはらかな下帶したおびなどを心掛こゝろがけ、淺黄あさぎ襦袢じゆばんをたしなんで薄化粧うすげしやうなどをする、もつといまでこそあれ、時分じぶん仲間ちうげんかほ仙女香せんぢよかうらうとはたれおもひがけないから
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あの男の恰好ですよ。しんの出た帶を猫じやらしに結んで、淺黄あさぎの手拭の申分なく汚れたのがブラ下り、着物のすそが十二單衣になつて、かゝとに去年からのでつかいあかぎれが四つ五つ口を
尻切袢纒ばんてん淺黄あさぎの股引で、あれでも甥には違ひないのですから、縁側の隅つこに小さくなつて居ましたが、その遺言を讀み聽かせると、唯もう聲を揚げて男泣きに泣き出したのです。
「白と淺黄あさぎの染分けで、眞ん中にたちばなの模樣があります」