)” の例文
「お時さんの子や」とか、「あんな若いおんあれへん」とか言つて、自分をせびらかした。其の中にはお時さんの弟も混つてゐた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
……おっさん、今もあなたはあの時のような眼で、私の前途を案じて見ておいででございましょうな。だがご心配くださいますな。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜかおッさんは、つらです、そして私をしかるように「窪田さん、そんなものをごらんになるならあっちへ持っていらっしゃい」
あの時分 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「では、お前には年よつたおつさんがあるのだね。そして、そのおつ母さんを慰めるために、あんないゝ声を出して謡ふのか?」
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
二郎はこれこそきっと神様のお告げだと思って、この道さえ真直に行けば恋しい、あさんに遇われるのだと勇気を出して歩きました。
迷い路 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「坊様。あんたあおとっさまとおっさまと夜何をするか知っておりんさるかあ。あんたあ寐坊ねぼうじゃけえ知りんさるまあ。あははは」
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたくしのおァさまは、それはそれはやさしい、いおァさまでございます……。兄妹きょうだいは、あんまり沢山たくさんかずわかりませぬ……。』
お父ちゃんもおしゃんも、ほかに兄弟もなかけんなあ、村の家におのし一人ば置いといて俺が山に入るわけにもゆかんき、こうして……
破れわらじ (新字新仮名) / 三好十郎(著)
山登りをしたりして遊んできましたが「とても静かな土地で、土地の人も醇朴でいい温泉地ですから、おアさんも一度いって見ませんか」
「おッさん、実は気がうっして来たんで、一杯飲ましてもらいたいんです、どッかいい座敷を一つ開けてもらいましょうか?」
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
そして、「さあ、おン、ぽん/\揉んでや。」と、まるで幼児が母親に甘えるやうな口調で、お雪伯母にねだるのであつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
……そげんいやあ、あんたのおッあんと、おッさんも、昔、好きあうて夫婦になりござったごたる。あんたのことも、わかってくれるさ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
この石の下には、屹度きつとかにが居るよ、さ、おツさんがかうして、石を引起して居るから坊やは自分で蟹をつかんでお捕り……」
熊と猪 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
父はかなたを向きたるまま「おッさんはどこかへ行つたかい」「ハイ先刻さつき差配のおばさんの許まで行つて来るといふて」
小むすめ (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「おっア、それも承知だ。が、あと三日のうちに祝言の真似事だけでもしないと、俺の男が立たないことがあるんだ」
仔羊たちが、ごくごく乳を吸っている間、おっさん連は、脇腹わきばらを鼻の頭で激しく小突こづかれながら、安らかに、素知そしらぬ顔で、口を動かしている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「おとっさんやおっさんにもよろしく言ってください。病人も御覧の通りで、もう心配することはありませんから。」
影を踏まれた女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
加代 だつて、おつさん、鉄ちやんばかりが危い目に会ふんぢやないわよ。あたしたちも戦争の真中まんなかにゐるのよ。
「然うです。略して『だあこ』とも言います。『その煙草取ってだあこ』とやります。伊勢の『おさん』伊賀の『いたゞこ』といって有名なものです」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
うとおあが、そこで化け物だ幽霊だと、口争いをはじめてしまったが、とにかくこの「時計屋敷」のこわいことは、村の子供たちはよく知っていた。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なあに構うものか、乃公おれしにも何もせぬからうちのおッさんによろしくいっれ、ただ江戸に参りましたとえばれで分る。鉄屋くろがねやも何とも云うことが出来ぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ただそのうちのエピソオドに現われている一事件です。主人公の画家のえさんとおっさんとの間の関係です。
最後の逃路にげみちは、母親よりなかった。古風な、祇園の芸妓げいこさんのおあさんばかりではない。まだその時分には、牛肉を煮る匂いをきらった老女は多かったのだ。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「ねいおッさん、小手の家では必ず省作に身上しんしょうを持たせるといってるそうだから、ここは早く綺麗きれいに向うへくれるのさ。おッ母さんには御異存はないですな」
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ぼくはまず家へ帰ったらおっさんの前へ行って百けたぐらいのむつかしい勘定かんじょうを一ぺんにやって見せるんだ、それからきっと図画だってうまくできるにちがいない。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
やがて破れ障子の間からするりと出てきてあおぐろい顔をにやりとさせた——「なあおっあ、お弁当があんのに休まれっかい、あたいは雨なんておっかなくねえや」
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「俺もよく知らないんだがね」と、兄は云ひ憎さうな調子で、「売薬だがね、好くく薬なんださうだ。あさんが是非買つて来いと云ふんだから、買つて行けよ」
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
「おあ! おうさに言うなよ。お父うは、馬一匹買えるだけに、金をめてから知らせるべし。」
(新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「おっさんが来るからです」とおえいは答えた、「こんどおっ母さんが来れば、きっと先生はこの子をおろすでしょう、だから逃げだして、よそで産もうと思ったんです」
「おんたちは人に寄りすがつてゐさへすれば好えと思ふのが大間違ひよ。わしだつてあんた等をかつゑさしやせん積りで此の通り身体の続くだけ働いとるぢやないか……。」
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
私からおあさんを電話口い呼び出して「今夜は家で晩御飯をたべなさって何時頃に帰りはりますよって」と、その時分にお梅いう女子衆おなごしゅに自動車で迎いに来てもらいます。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「しばらく。——おッつァん。おッさん。僕、妹をつれて来たからよろしく頼むよ。」
やんちゃオートバイ (新字新仮名) / 木内高音(著)
また新吉にののしられてゐるのではないかと心配になつて来た、いつも二言目には、うちのあちやんが、と云ふのが口癖で、心の底からおはまを愛してゐる彼女は、さうなると
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
メドヴェージェンコ 可哀かわいそうだ。もうこれで三晩、おっさんの顔を見ないんだからな。
腫物できもんの神さんの石切の下の百姓に預けられたいうさかい、親父も気のせわしい男やったが、こっちもこっちで、八月でおんのおなか飛びだすぐらいやさかい、気の永い方やない。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「何云いなはると! おとうさんやおッさんが、こぎゃん貧乏びんぼうしよるとがわからんとな!」
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「師匠のお利益ためになる事やつたら、わてはんにどないに言はれたかて辛抱しまつさ。」
「お前、苦しいのかい。おっさんはね、毎日お前のことばかり思ってたんだよ。早く来たくって来たくって、しょうがなかったんだけど、皆家のものが病気ばかりしていてね。」
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「僕の下宿の婆さんが、古賀さんのおっさんから聞いたのを今日僕に話したのです」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おっさんも気は附くまいが、また何とか云い様もあろうよ。
「オッちゃん! 早くお逃げよ。サア、早く逃げようよ」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「でもキクやん、おつさんがないもの。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
さん居ない おさん居ない
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
なァいておさんをなかすなや
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
おつたきり
本部の段々で (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「どうなすッたんでしょう、市十郎さまは。……ねえ、おあ様。呼んで来ましょうか。たまには、御一緒におあがりなさいッて」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたは、まだ、お坊ちゃんじゃけん、すぐ人のいうこと信じるけんど、うちのおさんやおさんて、あなたの十倍も、百倍も、海千山千うみせんやません
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
ぢや私もおつさんの言ふことをきかないで、油断したばちとあきらめて、お前さんにはれてしまひませう。けれども私には年よりの母がゐる。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「おっア、それも承知だ。が、あと三日のうちに祝言の真似事だけでもしないと、俺の男が立たないことがあるんだ」
おッさんはすこぶるむずかしい顔をして樋口の顔を見ています、樋口はいつもの癖で、下くちびるをかんではまた舌の先でなめて、下を向いています。
あの時分 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)