殿様とのさま)” の例文
旧字:殿樣
まだうらわかでありながら再縁さいえんしようなどというこころ微塵みじんもなく、どこまでも三浦みうら殿様とのさまみさおとうすとは見上みあげたものである。
殿様とのさまのおしのびめいたり、しんみり父親の油滲あぶらじんだ手を思い出したりして、後に随いて廻っているうちに、だんだんに情緒じょうちょが出た。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
天守てんしゆしたへもあなとほつて、おしろ抜道ぬけみちぢや不思議ふしぎぬまでの、……わし祖父殿おんぢいどん手細工てざいくふねで、殿様とのさまめかけいたとつけ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
といって、これまでのことをのこらずもうげました。殿様とのさまはいちいちびっくりして、目をまるくしていておいでになりました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おくでは殿様とのさま手襷掛たすきがけで、あせをダク/\ながしながら餡拵あんごしらへかなにかしてらつしやり、奥様おくさまは鼻の先を、真白まつしろにしながら白玉しらたまを丸めてるなどといふ。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
一寸ちょいとした事だが可笑おかしい話があるその次第は、江戸で御家人ごけにんの事を旦那だんない、旗本はたもとの事を殿様とのさまと云うのが一般の慣例である、所が私が旗本になったけれども
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今でこそ樟脳しょうのうくさいお殿様とのさまたまりたる華族会館に相応ふさわしい古風な建造物であるが、当時は鹿鳴館といえば倫敦ロンドン巴黎パリの燦爛たる新文明の栄華を複現した玉のうてなであって
りゅうなら竜、とらなら虎の木彫をする。殿様とのさま御前ごぜんに出て、のこぎり手斧ちょうなのみ、小刀を使ってだんだんとその形をきざいだす。次第に形がおよそ分明になって来る。その間には失敗は無い。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
漸く人心地ひとここちに立ちかえりぬ、聞けば予が苦しさの余りに、仙台萩せんだいはぎ殿様とのさま御膳ごぜんを恋しく思いしよりも、なお待ちこがれし八合目の石室せきしつの炉辺にえられ、一行は種々の手段を施こし
それもこれも、みんなおいらのせえだッてんじゃ、てんでがありゃしねえや。どこの殿様とのさまがこさえたたとえからねえが、ながものにゃかれろなんて、あんまりむこうの都合つごう良過よすぎるぜ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「それからお殿様とのさまでございます」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
殿様とのさまこまって、また家来けらいたちに御相談ごそうだんなさいましたが、家来けらいたちの中にもだれ一人ひとり、この難題なんだいをとくものはありませんでした。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これは、三重濠さんぢゆうぼりで、まるおくでがす。お殿様とのさまは、継上下つぎかみしも侍方さむらひがた振袖ふりそで腰元衆こしもとしゆづらりとれて御見物ごけんぶつぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わしはこちらでまだ三浦みうら殿様とのさまに一もおにかかりませぬが、今日きょうひいさまのお手引てびきで、早速さっそく日頃ひごろのぞみかなえさせていただわけにはまいりますまいか。
アヽ当家たうけでも此頃このごろかういふ営業えいげふを始めたのぢや、殿様とのさま退屈凌たいくつしのぎ——といふばかりでもなくあそんでもられぬからなにがな商法しやうはふを、とふのでおはじめになつたから、うかまア諸方しよはう吹聴ふいちやうしてんなよ。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところがしばらくすると、またおとなりくに殿様とのさまから、信濃国しなののくにへお使つかいが手紙てがみってました。手紙てがみといっしょに二ひき牝馬めうまれてました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
エヽ殿様とのさま今日こんにちは。士「イヤ、い天気になつたの。 ...
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さあ、殿様とのさまを。」
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)