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放埒
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ほうらつ
ふりがな文庫
“
放埒
(
ほうらつ
)” の例文
突然、馬は車体に引かれて突き立った。瞬間、蠅は飛び上った。と、車体と一緒に崖の下へ
墜落
(
ついらく
)
して行く
放埒
(
ほうらつ
)
な馬の腹が眼についた。
蠅
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
なんの
放埒
(
ほうらつ
)
もなくなった。勇気も無い。たしかに、疑いもなく、これは
耄碌
(
もうろく
)
の姿でないか。ご隠居の
老爺
(
ろうや
)
、それと異るところが無い。
八十八夜
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もとより長き
放埒
(
ほうらつ
)
に、貧しく乏しくなりはしても、玉より輝く美容のために身を粉にしても、
入揚
(
いれあ
)
ぐる
娼婦
(
しょうふ
)
の数も
稀
(
すくな
)
くないのでした。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
あらゆる
放埒
(
ほうらつ
)
、物盗り、辻斬りまでやって、なお
恬然
(
てんぜん
)
たる悪行の甘さを夢みるお十夜だが、母を思う時、かれはもろい人間だった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
若い時はずいぶん
放埒
(
ほうらつ
)
な暮しもしたようですが、今ではすっかり堅くなって、兄の佐兵衛を助けて、家業大事に励んでおります。
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
あの男は酒を飲んだり、
放埒
(
ほうらつ
)
なまねをしたりするのは、大嫌いなんだが、それだのに父親はあの男でなければ、夜も日も明けないありさまだ!
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
彼奴
(
きゃつ
)
め
長久保
(
ながくぼ
)
のあやしき女の
許
(
もと
)
に
居続
(
いつづけ
)
して妻の
最期
(
さいご
)
を
余所
(
よそ
)
に見る事憎しとてお辰をあわれみ助け
葬式
(
ともらい
)
済
(
すま
)
したるが、七蔵
此後
(
こののち
)
愈
(
いよいよ
)
身持
(
みもち
)
放埒
(
ほうらつ
)
となり
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ときには自分から
放埒
(
ほうらつ
)
無慙の人間のようにも見せかけていたのは、たった一つ自分に在るこの気の弱さを隠すカムフラーヂュに過ぎないのだ。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
猾智で
放埒
(
ほうらつ
)
極まるものだそうである。まるで鴉の王国といった風だそうである。初めて私はこの小樽でそれを思い当った。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
愛子の涙——それは察する事ができる。愛子はきっと涙ながらに葉子と倉地との間にこのごろ募って行く奔放な
放埒
(
ほうらつ
)
な醜行を訴えたに違いない。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
放埒
(
ほうらつ
)
がたび重なるにつれて、幕府の執政たる土居
大炊頭利勝
(
おおいのかみとしかつ
)
、本多
上野介正純
(
こうずけのすけまさずみ
)
は、
私
(
ひそか
)
に越前侯廃絶の策をめぐらした。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そして他の者なら死んでしまってるかもしれないほどの
放埒
(
ほうらつ
)
と不摂生にも、彼の
頑強
(
がんきょう
)
な健康は害されないらしかった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
これには何か子細があるに相違ないと、さらに進んで詮索するとお時はまた驚かされた。外記が小普請入りの処分を受けたのは身持
放埒
(
ほうらつ
)
の
科
(
とが
)
であった。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あるいは真実の愛情のない
放埒
(
ほうらつ
)
な
遊蕩
(
ゆうとう
)
生活をしたりして育つと、恋物語をあざわらい、恋愛小説を小説家や詩人の単なる虚構にすぎないと考えるものである。
傷心
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
自分の
放埒
(
ほうらつ
)
を時代になすりつけるわけではないが、まあ、この徳川末期の時代というものを一渡り見てみるがいい、おれは三千石だし、勝のおやじは四十俵だ。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
仕えの女腹から出た定明は、父の歿後、母の許すところとなり引き取られて育ったが、異常な野性と、
放埒
(
ほうらつ
)
の気性は経之とはまるで違った性格をひらいて見せた。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
色は衰えたといってもまだ
残
(
のこ
)
んの春を
蓄
(
たくわ
)
えている。
面
(
おも
)
だちは長年の
放埒
(
ほうらつ
)
で
荒
(
すさ
)
んだやつれも見えるが、目もと口もとには散りかけた花の感傷的な気分の反映がある。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
ただ
放埒
(
ほうらつ
)
に時を移す者のごとく見なして、老人もこれを許し、また青年自身もこれを許して、その言行の正しからざることがあっても、
自
(
みずか
)
らも世人も
咎
(
とが
)
めなかった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
久次の
放埒
(
ほうらつ
)
に乗じてこれを押し込め、真柴の天下を覆さんと云ふ大望を懐きたりしが、手もなく裏をかかれ、久次の放埒は手段なりと聞き、これに手向はんとせしに
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
騒擾
(
そうじょう
)
と沈滞との
淵
(
ふち
)
である。そして仕事が減ずるとともに、欠乏は増加していった。それは自然の法則である。人は夢想の状態にある時、必然に
放埒
(
ほうらつ
)
となり柔惰となる。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
正面から時代と闘うことは
勿論
(
もちろん
)
、大きな声では批評もできず、
諷刺
(
ふうし
)
も
僅
(
わず
)
かに
匿名
(
とくめい
)
の
落首
(
らくしゅ
)
をもって我慢する人々、大抵は中途で挫折して、酒や
放埒
(
ほうらつ
)
に身をはふらかす人々が
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
もし世の中に本当に善人といふものがあるのなら、それは恐らく寧ろ
放埒
(
ほうらつ
)
な人々の間に見いだされるに違ひない。私は潔癖な少年の常として、他人の悪には非常に寛大だつた。
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
最後に、残りの一部分を、平岡の
放埒
(
ほうらつ
)
から生じた経済事状に帰した。
凡
(
すべ
)
てを概括した上で、平岡は
貰
(
もら
)
うべからざる人を貰い、三千代は嫁ぐ
可
(
べ
)
からざる人に嫁いだのだと解決した。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
究屈を嫌って
放埒
(
ほうらつ
)
を好み規律を嫌って
我儘
(
わがまま
)
を好むような人に物の真相が解る
気支
(
きづかい
)
がない。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
けれどその代り、
涯
(
はて
)
しもない大洋と、限りない
蒼空
(
あおぞら
)
と、それから、波も、風も、オゾーンも、元気な水夫達の
放埒
(
ほうらつ
)
な生活も、すべてはみな、叔父の若さを養うのには充分であった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
まず吉岡どの自身の
放埒
(
ほうらつ
)
をあげ威福をほしいままにし、公法を犯して常に白小袖を着すこと。
饗宴
(
きょうえん
)
に善美をつくし酒興遊楽に
耽
(
ふけ
)
ること。乱舞の者を召抱え、
鷹
(
たか
)
を飼うこと百羽を越えること。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
永い間、十年近い間、耕吉の
放埒
(
ほうらつ
)
から
憂目
(
うきめ
)
をかけられ、その上三人の子まで産まされている細君は、今さら彼が郷里に引っこむ気になったという動機に対して、むしろ軽蔑の念を抱いていた。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
酒と女の
巷
(
ちまた
)
へ、やりどころのない
我儘
(
わがまま
)
と、頭の
廻
(
めぐ
)
らしようのない
鬱憤
(
うっぷん
)
を、
放埒
(
ほうらつ
)
な心に育てて派手な場処へと、豪華を競いにいったが、家にかえれば道徳の人情責めと、いわゆる世間の義理とが
竹本綾之助
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
谷山家の内情……特に龍代の
放埒
(
ほうらつ
)
の底意を、ドン底まで
看破
(
みぬ
)
いておりましたAは、それから一か八かの芝居を巧みに打って、私を谷山家の養子に
嵌
(
は
)
め込んでしまうと、いい加減な口実を作って
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
放埒
(
ほうらつ
)
だけならまだしも助かるが、
殊更
(
ことさら
)
、幕府の
忌諱
(
きき
)
に触れるような所行ばかりする。政道に不平を抱いているかのように
推測
(
おしはか
)
られ、幕府の諸侯
取潰
(
とりつぶ
)
しの政策に口実を与えるような危険な状態になった。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
貞之進は自分の
放埒
(
ほうらつ
)
を父が聞及んでのこと、ヒシと胸板を貫かれ、おず/\部屋へ迎え入れたが、庄右衛門は手織の
袷
(
あわせ
)
に
絹糸
(
いと
)
の這入ったゞけを西条の豪家として、頬から下へ福々しい顔に変りはなく
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
その
放埒
(
ほうらつ
)
な乱行をもって知られている。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
眼につく一切のものが、過ぎたロココの優雅さのように低声で、
放埒
(
ほうらつ
)
に巻き上った絨氈の端にまで、不幸な気品がこぼれている。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
生涯を物欲に
委
(
ゆだ
)
ね切って、ずいぶん無理な金を溜めたためにさんざん諸人の
怨
(
うら
)
みを買ったらしく、先年女房に死に別れ、
放埒
(
ほうらつ
)
な
倅
(
せがれ
)
を勘当して
銭形平次捕物控:145 蜘蛛の巣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
慰めようと思っていたのです。ところが来てみると、父は
放埒
(
ほうらつ
)
きわまる色情狂で、しかも卑劣この上もない茶番師なんです!
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
吉宗も、まだ新之助といって、紀州家の部屋住みでいた当時は、よく市中に出て、
市井
(
しせい
)
の不良と大差のない
放縦
(
ほうじゅう
)
放埒
(
ほうらつ
)
をやッていた経歴がある。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしそうした
放埒
(
ほうらつ
)
な、利己的な生活のなかにも、氏には愛すべき善良さがあり、尊敬すべき
或
(
あ
)
る品位が認められました。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それから一年ほどの後に、甚五郎は身持
放埒
(
ほうらつ
)
の
廉
(
かど
)
を以って留守居役を免ぜられ、
国許逼塞
(
くにもとひっそく
)
を申付けられた。
恨みの蠑螺
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
放埒
(
ほうらつ
)
な、移り
気
(
ぎ
)
な、想像も及ばぬパッションにのたうち回ってうめき悩むあの
大海原
(
おおうなばら
)
——葉子は失われた楽園を慕い望むイヴのように、静かに小さくうねる水の
皺
(
しわ
)
を見やりながら
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
と答えて平然たるものでしたが、僕はその時、その洋画家を、しんから
軽蔑
(
けいべつ
)
しました。このひとの
放埒
(
ほうらつ
)
には苦悩が無い。むしろ、馬鹿遊びを自慢にしている。ほんものの
阿呆
(
あほう
)
の快楽児。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
放埒
(
ほうらつ
)
な生活をし、遊び歩き、勝手な時間に帰ってき、おもしろいことをし、働いた様子も見せず、払ってくれとも言わないで借金をし、よその家の窓ガラスをこわし、乱暴なまねをし
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
もうこの頃から、忠直卿の
放埒
(
ほうらつ
)
を非難する声が、家中の士の間にさえ起った。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
かつて持彦の
放埒
(
ほうらつ
)
に
慄
(
おび
)
えた彼女は、もう慄えることがなくなっていた。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
売る土がなくなると姉が死んだといって、蔵前の
札差
(
ふださ
)
しに、来年さらいねんの扶持米を金にして貸せといたぶりに行く。札差し稼業はもとよりそういう
放埒
(
ほうらつ
)
な、または貧乏な
武士
(
さむらい
)
があって太るのだ。
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
甚
(
はなは
)
だしい酒乱にも至らず、甚だしい
放埒
(
ほうらつ
)
もない。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「あの万太郎と来ては、尾張殿も持てあまされている
放埒
(
ほうらつ
)
息子と聞いておるが、御三家の一子、知らぬふりをしているわけにもまいるまいな」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
勤めるたいそうな材木屋だが——金に不自由がなくなると、人間はどうしても
放埒
(
ほうらつ
)
になるんだね。お蔭様でこちとらは——
銭形平次捕物控:107 梅吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そうして、室の中は暗くなると、跳ね上げられた鹿の毛皮は、閃めく剣の刃さきの上を踊りながら
放埒
(
ほうらつ
)
に飛び廻った。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「毎日毎晩あそび暮らしていては勤め向きもおろそかになる。兄の
放埒
(
ほうらつ
)
にも困り果てた」と、源三郎は
苦々
(
にがにが
)
しそうに言った。「今夜もきっと柳町か祇園であろうよ」
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
自分の
放埒
(
ほうらつ
)
時代にしじゆう留守をさせられた彼女の、若き妻としての外出中の夫に対する心遣ひを、こまごまと打開けたものや、子の無い自分が長柄川閑居時代に
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
放
常用漢字
小3
部首:⽁
8画
埒
漢検1級
部首:⼟
10画
“放埒”で始まる語句
放埒者
放埒無頼
放埒病
放埒三昧
放埒不覊
放埒無慚