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戀人
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こひびと
慘酷い/\
汝めには
滅されたのぢゃ! おゝ、
戀人よ!
我命よ! いや/\、
命とは
言はれぬ、
死んでしまうてゐやる
我戀人!
夕げ
終りての
宵々家を
出ては
御寺參り
殊勝に、
觀音さまには
合掌を申て、
我が
戀人のゆく
末を
守り
玉へと、お
志しのほどいつまでも
消えねば
宜いが。
然れば、
最とやさしき名と覺えしが、何とやら、おゝ——それ
慥に横笛とやら言ひし。嵯峨の奧に
戀人の住めると、人の話なれども、定かに知る由もなし。
彼女が、
戀人の
片山と一
緒に
生活したのは、
僅かに三ヶ
月ばかりだつた。
彼がその
屬してゐる
黨の
指令のもとに、ある
地方へ
派遣された
後、
彼等は
滅多に
逢ふ
機會もなかつた。
なやましき
柳を
吹く
風さへ、
赤き
蟻の
群る
如し。あれ、
聞け、
雨乞の
聲を
消して、
凄じく
鳴く
蝉の、
油のみ
汗に
滴るや、ひとへに
思ふ、
河海と
山岳と。
峰と
言ひ、
水と
呼ぶ、
實に
戀人の
名なるかな。
マーキュ はて、
足下は
戀人ではないか? すればキューピッドの
翼でも
借りて、
鴉や
鳶のやうに
翔ったがよからう。
……だがその
夜始めて、
彼女は
戀人の
激しい
熱情に
身を
投じたのだつた。
御恨み申は
罪のほども
恐ろしゝ
何ごとも
殘さず
忘れてお
主さまこそ二
代の
御恩なれ
杉原三
郎といふお
人元來のお
知人にもあらず
况てや
契りし
事も
何もなし
昨日今日逢しばかり
若かもお
主さまの
戀人に
未練のつながる
筈はなし
御縁首尾よく
整のへて
睦ましく
暮し
給ふを
予の
戀人よりも
美しい!
何もかも
見通しの
太陽でも、
現世創って
以來、
又とは
彼女程の
女をば
見なんだのぢゃ。
探れと
仰せらるゝとも
夫に
違背はすまじけれど
我が
戀人周旋んことどう
斷念めてもなる
事ならず
御恩は
御恩これは
是なり
寧そお
文取次いだる
体にして
此まゝになすべきか
否や/\
夫にては
道がたゝず
實は
斯々の
中なりとて
打明けなば
孃さま
御得心の
行くべきか
我こそは