つゝが)” の例文
於茲こゝにおいてりてきぬ。韓湘かんしやうなぐさめていはく、いたむことなかれ、われる、きみつゝがあらず、ひさしからずして朝廷てうていまたきみもちふと。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こりゃ、しっかりとおやらう! つい最前いまがたまでこひしさにぬるくるしみをてござったその戀人こひゞとのヂュリエットはつゝがない。すれば、それが幸福しあはせ
ふかかくし是までつゝがなくおきしはまつたく我が恩なり因て我に從ひ申すべし所詮しよせん喜八が命はたすからぬなりと云ひければお梅は大いに驚きしが是は粂之進我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それ/″\牢内に入れ置く例でございます、文治を乗せたる船が海上つゝがなく三宅島へ着きますると、こゝに一条の騒動出来しゅったいの次第は次回に申上げます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おん身等もかしこに跪きては、慈悲を願ひ給ふならずや。我はおん身等に對して何のつみをもおかしゝことなし。我髮の白きをあはれみ給はゞ、つゝがなく家に歸らしめ給へといふ。
四晝夜しちうや航海かうかいつゝがなくぎて、右舷うげん左舷さげんせてはかへなみおとともに、刻一刻こくいつこくちかづききた喜劇きげきむかつて、橄欖島かんらんたうぼしき島影しまかげを、雲煙うんゑん渺茫べうぼうたるへんみとめたのは、は二ぐわつの二十五にち
くれば治承四年、淨海じようかい暴虐ばうぎやくは猶ほまず、殿でんとは名のみ、蜘手くもで結びこめぬばかりの鳥羽殿とばでんには、去年こぞより法皇を押籠おしこめ奉るさへあるに、明君めいくんの聞え高き主上しゆじやうをば、何のつゝがもおさぬに
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
朝夕はめつきり寒さが加はりましたがつゝがもなくご起居あそばしますか。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
そなたも麿まろも、その恐ろしい女人を母に持って、一度は膝に掻き抱かれた事もあるのに、こうして今日きょうまでつゝがなく育って来た。それを思うと、女人は猛獣や大蛇のように、人を喰い殺したり毒気を
二人の稚児 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ロミオ 此上このうへ歡樂よろこびわしぶのでなかったら、早急さっきふわかるゝのはかなしいことであらう。つゝがなうござりませ。
もし、あの、わたしかちとなれば、のおかた奥様おくさまを、つゝがなう、おもどしになりますやうに……お約束やくそく出来できませうか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今日影のうらゝかに此積水の緑を照すを見るにつけても、我は永く此底に眠るべき身の、つゝがなくて又此天日の光に浴するを思ひ、涙の頬に流るゝを禁ずること能はざりき。
この幸運こううんじやうじて、吾等われら温順すなほ昨日きのふみちかへつたならば、明日めうにち今頃いまごろにはふたゝ海岸かいがん櫻木大佐さくらぎたいさいへたつし、この旅行りよかうつゝがなくをはるのであるが、人間にんげん兎角とかくいろ/\な冐險ぼうけんがやつてたいものだ。
反故ほごにしては男子の一分いちぶんたゝずと、大きに肩をお入れ遊ばして、芳野艦がつゝがなく帰朝し、先ず横須賀湾に碇泊ていはくになりますと直ぐ休暇をとって品川へお繰出しとなり、和国楼へおいでになって
佛門に入った者はつゝがなきことを得て、大僧都だいそうず権僧正ごんそうじょうの地位に至った。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
述て種々饗應もてなしけるに後藤もつゝがなき歡びを云て暫時しばらくさけ宴交くみかはせしがやがて半四郎を養子にもらたきよし物語りしに半左衞門も大いに悦び迅速すみやかに承知なしければ此に於て萬事のはな調とゝのひ五左衞門はたゞちに半四郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
サンタをば姫いたく怖れ給ひて、燃ゆる山、ひろき海の景色はいかに美しからんも、かゝる怖ろしき人の住める地に往かんことは、わが願にあらず、おん身のつゝがなかりしは、聖母マドンナの御惠なりと宣給ふ。
きゝて家來の男女はまた驚きつゝがなき歸りをば悦び且疑ふばかりなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)