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御立腹
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ごりつぷく
中間七助と云ふ者
先刻より此樣子を見て
心可笑く走り出で主人を
止め
先々御待下さるべし只今彼方にて承まはりしが
御立腹は
御道理なり然しながら女を
『
昨日我々は
那麼に
話したのですが、
何を
俄に
御立腹で、
絶交すると
有仰るのです、
何か
其れとも
氣に
障ることでも
申しましたか、
或は
貴方の
意見と
合はん
考を
云ひ
出したので?』
どんな
大至急要用でも
封といふを
切つた
事は
無く、
妻とは
言へ
木偶がお
留守居して
居るやうに
受取一通で
追拂つて、それは
冷淡に
投げて
置いたものなれば、
旦那さまの
御立腹は
言はでもの
事
頼むサア/\山崎町へ行油屋へ
押込で遣らんと云故長兵衞と久五郎の兩人は
甚だ
心配なし
先生貴公の
御氣象では
御立腹なさるゝも
御道理なれど先々
能咄合て大ぎやうにならぬ樣に
懸合が宜しく何れにも明日の事に致す
積りなれば
兎も
角も
御鎭まり下されよと漸々に
宥めけり
此家の
内に
一人もなし
老婆さまも
眉毛よまれるなと
憎々しく
言ひ
放つて
見返りもせずそれは
御尤の
御立腹ながら
是れまでのこと
露ばかりも
私知りての
事はなしお
憎しみはさることなれど
申譯の
一通りお
聞き
遊ばして
昔の
通りに
思召してよと
詫入る
詞聞きも
敢へず
何といふぞ
父親の
罪は
我れは
嫁になどゝは
思ひも
寄らぬことなり
芳之助は
兎もあれ
我れ
許さずと
御立腹の
數々それいさゝかも
御無理ならねどお
前さまと
縁きれて
此世何の
樂しからずつらき
錦野がこともあり
所詮は
此命一つぞと
覺悟の
道も
同じやうに
行逢つてお
前さまのお
心伺へば
其通りとか
今更御違背のある
筈なし
私は
嬉しう
存じますを
商賣の事ゆゑ
厭ひませんが
若内儀さん承まはるも餘り
率爾ながら
能急に金子が出來ました尤も外より
御融通なされたとか仰せなれども
金子と云ふものは
勿々容易には
調ひ難きもの
最早濟し事ながら
既に流れ買に賣拂はんとする處なりしが
彼金は
何處から御融通なされしにや
些申し
惡き事なるが
御立腹なさるな
内儀樣一文
貰の
袖乞を