小鼻こばな)” の例文
が、小鼻こばな両傍りやうわきからあごへかけて、くちのまはりを、ぐしやりと輪取わどつて、かさだか、火傷やけどだか、赤爛あかたゞれにべつたりとたゞれてた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まァおまえじいやであったか! そうえばるほどむかし面影おもかげのこっています。——だい一その小鼻こばなわき黒子ほくろ……それがなによりたしかな目標めじるしです……。
小鼻こばなのひらいた大きな鼻、そしてあの、ふとんをかさねたような巨大なまっかなくちびるです。
魔法博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かしの実が一つぽとりと落ちた。其かすかな響が消えぬうちに、と入って縁先に立った者がある。小鼻こばな疵痕きずあとの白く光った三十未満の男。駒下駄に縞物しまものずくめの小商人こあきんどと云う服装なり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
をりふし鵞鳥がてうのやうなこゑうたうた調しらべは左迄さまで妙手じやうずともおもはれぬのに、うた當人たうにん非常ひじやう得色とくしよくで、やがて彈奏だんそうをはると小鼻こばなうごめかし、孔雀くじやくのやうにもすそひるがへしてせきかへつた。
その外小鼻こばなの両側から口辺へかけても太い皺があり、それが何か苦いものをめたような気むずかしい表情に見え、鼻の下と、頤の先とに、バラバラと数えられる程の疎髥そぜんがある。
半分紛失ふんしつしている小鼻こばなのわきへ、タラタラと脂汗あぶらあせをながしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うむ、」とふ。なかからふちへしがみついた、つら眞赤まつかに、小鼻こばなをしかめて、しろ天井てんじやうにらむのを、じつながめて
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
(にやけたやつぢや、國賊こくぞくちゆう!)とこゝろよげに、小指こゆびさきほどな黒子ほくろのあるひらた小鼻こばなうごめかしたのである。ふまでもないが、のほくろはきはめて僥倖げうかうなかばひげにかくれてるので。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なんほこら巫女みこは、やけのこつた町家まちやが、つたまゝ、あとからあとからスケートのやうに駈𢌞かけまはゆめたなぞと、こゑひそめ、小鼻こばなうごかし、眉毛まゆげをびりゝとしたなめずりをしてふのがある。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
相対あひたひする坊主ばうずくちは、三日月形みかづきなりうへおほきい、小鼻こばなすぢふかにやつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よううて、べつに、これうてありませぬ。ありませぬ、けれども、お前樣まへさまいまから、何處どこかれます。何處どこへ、何處どこへ、何處どこへ?」……とあざけるやうに、小鼻こばな調子てうしつたかたをする。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おもはず突立つゝたつと、出来できかゝつたざうのぞいて、つの扁平ひらたくしたやうな小鼻こばなを、ひいくひいく、……ふツふツはツはツといきいてたのが、とがつたくち仰様のけざまひとつぶるツとふるふと、めんさかさまにしたとおもへ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)