ふて)” の例文
又「打ったで済むか、ことに面部の此のきず縫うた処がほころびたら何うもならん、亭主の横面を麁朶そだで打つてえ事が有るか、ふてえ奴じゃアおのれ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それぢや錢形の、この娘にきつと泥を吐かせるから待つて居て貰はうか。飛んだ可愛いらしい顏をしてゐるが、ふてえ阿魔だ。さア歩けツ」
「どうして、あの楽天坊主、一筋縄で行く奴じゃァねえ。——肚の底を叩いたらどんなまだふてえことをたくらんでるか分ったもんじゃァねえ。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「打ったがどうした、十八文は俺の看板だ、その看板を情けねえの、あたじけねえのケチを附けやがって、ふてえ野郎だ」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ふてえ野郎だ。誰が苛責た。年の若いものつらまえて。よしよしおれが今にかたきを打ってやるから。その代り帰るんだぜ」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
箆棒べらぼう、おつめんなもんぢやねえ、それだらぜにせよぜに、なあ、ぜにさねえつもりすんのが泥棒どろぼうよりふてえんだな、西にしのおとつゝあ躊躇逡巡しつゝくむつゝくだから、かたで
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ぬすんでよ、それでたつた酒三升で濟したちうだ。地主だ、總代だなんどと威張つてやがつて、ふてえ親子だ。雨乞ひにだつて一昨日おとてえから出やしねでねえか。
旱天実景 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
もしそうならば、重々ふてえ奴らだ。しかしお城坊主の伜なんぞには随分悪い奴がある。下手へたをやると逆捻さかねじを喰うから、気をつけて取りかからなけりゃあならねえ
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
野郎やらうおれいまげたお賽錢さいせんめアがツて、ふてやつだ。ぶンなぐるからおもへツ』とよばはる。
ふてえ奴」と、裴元紹は、のど首を締めつけて、いきなり短剣でその首を掻き落そうとした。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そ、そ、それが第一ふてえんです。話にも理窟にもならねえほど太てえ事をしやがるんです。
お鳥は奥から出て来ると、ふてくさったような口を利いて、茶の間にごろごろしていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かんかん虫手合いで恐がられが己れでよ、ふて腐れが彼奴だ。
かんかん虫 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「いつになったら払おうというんだ、ふてあまめ。」
「じゃあ又帰っていやがるのだ。ふてえ奴だなあ」
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
どうした? ふてえ野郎だ。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「それはどうした、一期半期の奉公人が、三百両の大金を溜めたなんて言ったって、お白洲しらすじゃ通用しねえよ、ふてえ野郎だ」
半「成らんも成るもあるものか、くもお蘭さんを生埋いきうめにしやアがったな、此の坊主、ふてえ奴だ、お蘭さんの代りに此の中へ這入へえれ、間抜めが」
何程なんぼ心細こゝろぼせえかわかんねえもんですよ、もつともこれ、ものせえあんだからうしてられんな難有ありがてやうなもんぢやあるが、そんでも四斗樽とだるふてたがところむぐつたとき
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「乞食よりも意気地がなくて、ぬすよりもふて芥溜ごみため牢人と思っているが、それがどうした」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふてえ野郎だ、どうも眼つきがおかしいから、あんな奴が薩摩の廻し者なんだろう」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ふてえ御了簡ッちゃありゃしねえ。どうして探り出そう、誰から嗅ぎ出そうと手蔓てづるをたぐって行くうちにね、ゆうべこちらへ御菓子折とかを届けためくらとあの若い野郎とを嗅ぎ当てたんですよ。
あんなふてえ罰あたりはねえ。——始終しょっちゅう金平さんはそういっているんだ。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
ふてえ野郎だ。よしよし今におれが送り出してやるから待ってろ」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あの野郎、なま若え癖に、ふてえ奴だ。」
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
農「うか、なんとハア此の村でも段々人気にんきが悪くなって、人の心も変ったが、徳野郎あれはあのくれえふてえ奴はねえノ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふてえ殿様野郎だ。これから踏込んで、三万七千石の家中を引っくり返し、人身御供ひとみごくうにあがる志賀内匠というお武家を救い出して来ましょう。親分」
「畜生ッふて外道げどうだ。そんな野郎にご領内の地べたを一寸いっすんでも踏ませてなるもんけえ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天誅というのは、金持やなんかでふてえことをした奴を踏んごんで行って斬っちまって、その首をさらしたりなんかするんだ、なかには前以て高札を立てておどしといて斬る奴なんぞもあるんだ。
「かつぐとしたら楽天坊主だ。」三浦は引取って「吾妻に死なれ、若宮に死なれ、これでまたもしチョコに死なれたらいかに料簡のふてえ奴でも……料簡の太え奴は太えだけそれだけどッかに脆いところがある。——いゝ加減気を ...
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「何をもぞもぞしているんだ、——平次をかつごうなんてふてえ女に掛り合っていると、お前もひどい目に逢わされるぞ」
半「斯ういう事も有ろうかと思って居た、さア坊主ふてえ奴だ、手前てめえは衣を着る身で斯んな事をしやアがってふてえ奴だ」
「わっしはお妾の鬼目付おにめつけで、一緒についてまいりました。ところが旦那、ふてえ女もあるもんで、この人のいい宅助に鼠薬ねずみぐすりめさせやがって、プイと、途中で姿を隠してしまいました」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「へえ、贋物に違いありませんか、ふてえ奴ですね」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「何をもぞ/\して居るんだ、——平次をかつがうなんてふてえ女に掛り合つて居ると、お前もひどい目に逢はされるぞ」
官員さまのお姓名なめえかたってふてえ野郎だ……これ此処にござる布卷吉さんと云うのは、年イ未だ十五だが、えれえお人だ、忘れたか、両人ふたり共によく見ろ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふてやつだ」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ヘエッ、そんなもんですかねえ。まがい物と解っているなら、踏込んで挙げちまおうじゃありませんか、諸人を惑わして、銭を取るのはふてえ野郎だ——」
清「ふてえ婆だ十円取って五円くすねたのだ仕様のねえ狡猾婆こうかつばゞあだ、そんなら御一緒にお前さんのうちきましょう」
お瀧はふてえ女だがさすがにお君を殺したところへ、お吉が手燭を持つて出て來たので、あわてて短刀を拔かずに逃げたのだらう——證據はいくらもある。
今年になるまでくっついて居て、其の亭主が邪魔になるもんだから追出してしまいてえと思い、とがもねえ者へ不義の名を附けようとするだ、ふてい阿魔じゃねえか
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お滝はふてえ女だがさすがにお君を殺したところへ、お吉が手燭を持って出て来たので、あわてて短刀を抜かずに逃げたのだろう——証拠はいくらもある。
其の代り手前てめえを横須賀へ女郎にめて、己もそれだけ友達に顔向けの出来るようにしなければならねえ、覚悟しろ此の坊主ふてえ奴と、まア斯ういう訳になるのだ
「時次の野郎猫ばばをきめて、懐ろ鏡一つでお松の気を引こうなどはふて料簡りょうけんじゃありませんか」
女房は返えさず打ち打擲したそうです、口惜しいから悪態を云うと門弟が引出して、の通りったりどぶの中へ突込つきこんだりして、丸で豚を見たようです、ふてい奴ですなア
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お銀さんがみんな知っている。手前は大名のお部屋様を口説き廻したろう、ふてえ奴だ、——もっと証拠が欲しかったら手前が鼠取りを買った生薬屋きぐすりやれて来ようか」
う有っても貸せねえってものア無理にゃア借りねえ、じゃア云って聞かせるが、コレ女だと思うから優しく出りゃアい気に成りやアがって、ふてえ事をしやアがって
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふてえ野郎だ。主人の持物なんかと道行みちゆきをしやがって、人殺しの疑いくらいは天罰てんばつだと思えッ」
色気も恋もめてしまった、あんま実地過じっちすぎるが、それじゃアばゞあう五円くすねたな、ふてえ奴だなア、それはいゝが、その大事な観音様と云うのはどんな観音様だえ、お見せ
ふてえ野郎ですね、——たつたそれだけの證據を揃へるために、幇間たいこもちの善八を殺したんで?」