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夙
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つと
ふりがな文庫
“
夙
(
つと
)” の例文
吾人は進歩主義を奉じ、人道的に
云為
(
うんゐ
)
し、西欧諸国の人士の
下
(
もと
)
に立たざらんと欲するものにして、これ世人の
夙
(
つと
)
に認むる所ならん。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「冬次郎様をはじめとし、戸ヶ崎氏や汝らが、諸角覚蔵方に滞在し、我々の様子うかがいおること、拙者においては
夙
(
つと
)
に承知じゃ」
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
暇があればキリシタンのお経を読み、感きわまれば到るところで、ひとり祈るの習慣を持っていることは、田山白雲も
夙
(
つと
)
に認めている。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
西欧の文化国なら罪はわれわれ自身にあることが
夙
(
つと
)
に自覚されているのだが、わが国では罪を「赤鼻の獄史」に帰して
恬
(
てん
)
として恥じない。
チェーホフ試論:――チェーホフ序説の一部として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
ヤマメはこの頃
夙
(
つと
)
に盛んになり、釣人仲間でも鮎に飽きた人が、人の知らない渓谷を探検的に出掛けるやうになつたが、実に美しい魚だ。
夏と魚
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
▼ もっと見る
この頃の室生、小林、林、河上、佐藤春夫、その他を作家というのであれば、私や稲公は作家の埒から
夙
(
つと
)
にはずれているようなものです。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
いやしくも一国の宰相でありながら、夜は更けて
寝
(
い
)
ね、朝は
夙
(
つと
)
に起きいで、時務軍政を見、その上、細かい人事の賞罰までにいちいち心を
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
伝右衛門の素朴で、
真率
(
しんそつ
)
な性格は、お預けになって以来、
夙
(
つと
)
に彼と彼等との間を、
故旧
(
こきゅう
)
のような温情でつないでいたからである。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この
藷
(
いも
)
なかりせば国内の食物は
夙
(
つと
)
に尽きて、今のごとく人口の
充
(
み
)
ち
溢
(
あふ
)
れる前に、外へ出て生活のたつきを求めずにはいられなかったろう。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼の烱眼は
夙
(
つと
)
に近代資本主義的生産方法の帰趨を洞察していたのであり、アメリカを目してブルジョア社会の「未来の土地」であるとなし
辞典
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
当時、諭吉は
旧
(
きゅう
)
中津藩
(
なかつはん
)
の士族にして、
夙
(
つと
)
に
洋学
(
ようがく
)
に志し江戸に来て
藩邸内
(
はんていない
)
に在りしが、軍艦の
遠洋航海
(
えんようこうかい
)
を聞き、
外行
(
がいこう
)
の
念
(
ねん
)
自
(
みず
)
から禁ずる
能
(
あた
)
わず。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
自己
(
じこ
)
の
現在
(
げんざい
)
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る
經濟界
(
けいざいかい
)
は
夙
(
つと
)
に
變化
(
へんくわ
)
して
居
(
ゐ
)
るに
拘
(
かゝは
)
らず
此
(
こ
)
れに
對
(
たい
)
して
充分
(
じうぶん
)
の
理解
(
りかい
)
のないのが
寧
(
むし
)
ろより
重大
(
ぢうだい
)
なる
原因
(
げんいん
)
である。
金解禁前後の経済事情
(旧字旧仮名)
/
井上準之助
(著)
何故というに天保八年の春に
梓行
(
しこう
)
せられた『広益諸家人名録』は
夙
(
つと
)
に詩人として枕山の名と住所とを掲げているからである。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
夙
(
つと
)
に実業に雄飛せんとする君がこの
陋巷
(
ろうこう
)
の貧乏文人に何の求むる事があるかというような頗るイヤ味タップリなものだった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
されば支那人も
夙
(
つと
)
に禽獣が農事に大功あるを認め、十二月に
臘
(
ろう
)
と名づけて先祖を祭ると同日、
蜡
(
さ
)
といって穀類の種神を祭り
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
但あきつかみに於ては、其すぢが、神に飜訳せらるゝほどに、日本の霊魂信仰が、
夙
(
つと
)
に変化して居つたことを示して居る。
琉球の宗教
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
太祖が諸子を封ずることの過ぎたるは、
夙
(
つと
)
に
之
(
これ
)
を論じて、
然
(
しか
)
る
可
(
べ
)
からずとなせる者あり。洪武九年といえば建文帝未だ生れざるほどの時なりき。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
夙
(
つと
)
にたしかに私のうちに存したが以前にはそれに精神の眼を向わせなかったところのものに、私が初めて注意するかのごとくに思われるのである。
省察:神の存在、及び人間の霊魂と肉体との区別を論証する、第一哲学についての
(新字新仮名)
/
ルネ・デカルト
(著)
満洲
(
まんしゅう
)
事変以来
擡頭
(
たいとう
)
し来れるファッシズムに対して、若し〔軍部〕にその人あらば、
夙
(
つと
)
に英断を以て抑止すべきであった。
二・二六事件に就て
(新字新仮名)
/
河合栄治郎
(著)
今から一千三百年前におこなわれた大化改新が、明治維新にまさるとも劣らぬ大維新であったことは、諸君も
夙
(
つと
)
に熟知しておられるところであろう。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
正成
夙
(
つと
)
に戦死し、続いて北畠
顕家
(
あきいえ
)
は和泉に、新田義貞は北陸に陣歿し、今や南朝は落漠として悲風吹き
荒
(
すさ
)
び、ひたすら、新人物の登場を待って居た。
四条畷の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と今にして思えば、
夙
(
つと
)
に偉人の資格を主張したのである。三つ四つどころでない。生れ落ちた時の記憶だから大きい。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
天明の頃、肥後の医師に富田
太鳳
(
たいほう
)
なるものあり、
慷慨
(
こうがい
)
にして奇節あり、高山彦九と
交驩
(
こうかん
)
し、
夙
(
つと
)
に尊王賤覇の議を唱う。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
彼は
夙
(
つと
)
に起信して、この尊をば一身
一家
(
いつけ
)
の
守護神
(
まもりがみ
)
と敬ひ奉り、事と有れば祈念を
凝
(
こら
)
して
偏
(
ひとへ
)
に頼み聞ゆるにぞありける。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
砲術家の三男に生れた下曾根さんは、
夙
(
つと
)
に耶蘇教信者となり、父とは違った意味の軍人—耶蘇教伝道師になりました。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
この人々は官民間で
夙
(
つと
)
に美術界のことに尽力していた人で、当時の
物識
(
ものし
)
りであり、先覚者でもあったのであります。
幕末維新懐古談:47 彫工会の成り立ちについて
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
人民の直接政治の方はむしろこれに比し遙かに弊害多いということは、
夙
(
つと
)
に深く一般の識者から認識されておった。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
百合の国上
埃及
(
エジプト
)
の王にして、蜂の国下埃及の王、アモン・ラーの化身、輝けるテーベの主、ウシマレス大王の一子セトナ皇子は、
夙
(
つと
)
に聡慧の誉れが高い。
セトナ皇子(仮題)
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しかし尋常ということの方がもっと深い根底を有つことは、
夙
(
つと
)
に禅宗等の説く所でありました。民藝は‘Normal art’と呼ばれていいのです。
民芸の性質
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
かの『自然の体系』に見られるが如きフランス唯物論の自然観に対してゲーテは
夙
(
つと
)
に強い反発を感じた。自然は機械的なものでなく、生ける生命である。
ゲーテに於ける自然と歴史
(新字旧仮名)
/
三木清
(著)
この人は土州人で、
夙
(
つと
)
に平民主義を持っていたから、普通教育には最も意を注いで、従って私どもの学区取締にも、度々直接して諮問せらるる事もあった。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
夙
(
つと
)
に天下の等しく認めるところで、関東魚はこの点、一言半句なく関西魚の前に頭を下げずにはいられない。
洗いづくりの美味さ
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
夙
(
つと
)
に聖賢の道に志ざし、常に文武の教に励み、
熊沢蕃山
(
くまざわばんざん
)
その他を顧問にして、藩政の改革に努め、
淫祠
(
いんし
)
を
毀
(
こぼ
)
ち、
学黌
(
がくこう
)
を設け、領内にて遊女稼業まかりならぬ。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
昨日一日山の上で濛々として
咫尺
(
しせき
)
を辨ぜぬ淫雨に降り籠められ、今朝は
夙
(
つと
)
に起きいでゝ二十五町の急阪を驅けるがごとく急ぎ下り、勝手の分らぬ船の乘降に
湖光島影:琵琶湖めぐり
(旧字旧仮名)
/
近松秋江
(著)
「ウヽ、
芳賀
(
はが
)
君の
今日
(
こんにち
)
あることを、わしは
夙
(
つと
)
に知つとつた。芳賀君は
尤
(
もつと
)
も頭脳も
秀
(
ひい
)
でてをつたが、彼は山陽の言うた、才子で無うて真に刻苦する人ぢやつた」
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「ムシロ内々読マレルヿヲ覚悟シ、期待シテイタ」というのが本心であったことを、私は
夙
(
つと
)
に見破っていた。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
俳句が強い人情を詠ずるに適せぬことは、先覚の
夙
(
つと
)
に説いている通りだから、繰返す必要もあるまいと思う。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
自分は
夙
(
つと
)
に人生を左程有意義に考えてはいず、人間の生活を寧ろ悲惨で滑稽なものだと考えているのである。勿論、自分達の生活をもひっくるめての話である。
錯覚した小宇宙
(新字新仮名)
/
辻潤
(著)
彼れは向象賢とは別で、支那系統の人で、
而
(
しか
)
も若い時支那で学んだ人であるが、彼れの活眼なる、
夙
(
つと
)
に沖縄の立場を洞察して、向象賢の政見を
布衍
(
ふえん
)
しています。
琉球史の趨勢
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
精細なる句の俗了しやすきは蕪村の
夙
(
つと
)
に感ぜし所にやあらん、後世の俳家
徒
(
いたずら
)
に精細ならんとしてますます俗に堕つる者、けだし精細的美を解せざるがためなり。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
紛々たる諸説より其最も善きものを択んで之に従はざるべからずとは志ある者の
夙
(
つと
)
に唱導する所なりき。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
吾人はそれを耳にする時頽廃の如何に恐るべきものなるかを知りそれに対して社会の意識が
夙
(
つと
)
に覚醒せられたのではあるまいかと思はずにはゐられないのである。
恋愛と道徳
(新字旧仮名)
/
エレン・ケイ
(著)
「うん、見た。けれど、ホノルルは
夙
(
つと
)
の昔に辞職しちゃった。知らないのかい?」と娘は云うのです。
兵士と女優
(新字新仮名)
/
渡辺温
、
オン・ワタナベ
(著)
夙
(
つと
)
に中央に接し、中央の軍略政略に参与したこともあるだけに、如水の方がアカ抜けているが、ドサクサの一旗組というものは所詮その根性の本質に於て泥くさく
安吾の新日本地理:03 伊達政宗の城へ乗込む――仙台の巻――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
實際私の生家は此六騎街中の一二の家柄であるばかりでなく、酒造家としても最も石數高く、魚類の問屋としては九州地方の老舖として
夙
(
つと
)
に知られてゐたのである。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
我国女流教育家の
泰斗
(
たいと
)
としての下田歌子女史は、別の機会に残して
夙
(
つと
)
に后の宮の御見出しにあずかり、歌子の名を御下命になったのは女史の十六歳の時だというが
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
夙
(
つと
)
に
逓信省
(
ていしんしょう
)
が公衆電話にて行えるところで、近来は鉄道省も之を切符販売用に用い、専売局は煙草の自働販売器を認め、キャラメル、チョコレートの自働販売器あり
白銅貨の効用
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
『おもろさうし』は
夙
(
つと
)
に著者の先輩田島利三郎が伝えて東都の雑誌上にその一部を披露しまた多数は東京文科大学の国語研究室の一隅に十年余りこのかた所蔵されていたが
南嶋を思いて:――伊波文学士の『古琉球』に及ぶ――
(新字新仮名)
/
新村出
(著)
先生の
放心
(
うっかり
)
は
夙
(
つと
)
に有名なもので、のみならず、たいへん不器用である。持って出た雨傘を持って帰ったことはなく、この
年齢
(
とし
)
になって、じぶんで
鶏卵
(
たまご
)
を割ることができない。
犂氏の友情
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
主として
明
(
みん
)
律、
清
(
しん
)
律などを基礎として立案したのであるが、伯は
夙
(
つと
)
に泰西の法律に着目し、
箕作麟祥
(
みつくりりんしょう
)
氏に命じてフランスの刑法法典を翻訳せしめ、これを編輯局に持参して
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
“夙”の解説
夙(しゅく、夙の者、宿の者)は、中世から近世にかけて近畿地方に多く住んでいた賎民。中世の非人身分が分解する際に生じ、被差別部落の起源の多くであったかわたよりも下位でありながら、その差別はそれほど強烈ではなかったといわれる。
(出典:Wikipedia)
夙
漢検準1級
部首:⼣
6画
“夙”を含む語句
夙夜
夙慧
夙川
夙縁
夙昔
夙人
夙起
夙志
夙懟
夙才
馬夙彩
臣夙夜
夙約
夙村
夙望
夙少
夙卒
夙分