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境
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きょう
ふりがな文庫
“
境
(
きょう
)” の例文
無人の
境
(
きょう
)
を歩いていく、ピカピカ光った黄金の豹。そのあとから、だまってついていく警官たち。それは、じつに異様な光景でした。
黄金豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
自ら信ずるにも
関
(
かかわ
)
らず、
幽寂
(
ゆうじゃく
)
の
境
(
きょう
)
に於て突然婦人に会えば、一種
謂
(
い
)
うべからざる陰惨の鬼気を感じて、
勝
(
た
)
えざるものあるは何ぞや。
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうして黄色い声や青い声が、梁を
纏
(
まと
)
う
唐草
(
からくさ
)
のように、
縺
(
もつ
)
れ合って、天井から
降
(
ふ
)
ってくる。高柳君は
無人
(
むにん
)
の
境
(
きょう
)
に一人坊っちで
佇
(
たたず
)
んでいる。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
無人
(
むじん
)
の
境
(
きょう
)
だった。ただどの店も、いつものように明かるい照明の下に美しく品物をかざっていた。ふしぎな光景だった。
怪星ガン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
たしかに
幽寂
(
ゆうじゃく
)
の感をひくが、それが一つならず、二つならず、無数の秋虫一度にみだれ
咽
(
むせ
)
んで、いわゆる「虫声満
レ
地」とか「虫声如
レ
雨」とかいう
境
(
きょう
)
に至ると
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
いかに自分の弟だからといえ、詩ばかり作って超然と
逸人
(
いつじん
)
の
境
(
きょう
)
を独りたのしんでいる曹植を、諸臣のてまえ、文帝もついにはこれを黙視してはいられなくなった。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ものを
穢
(
けが
)
すという意味で、私たちの
浄
(
きよ
)
らかな心を
汚
(
よご
)
し、迷わすものは、つまりこの外からくる色と声と香と味と触と法とであるから、「六
境
(
きょう
)
」をまた「六
塵
(
じん
)
」ともいうのです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
しかるに、今晩という今晩は、
境
(
きょう
)
が変れば心が変るのであって、夢が現実から古昔に向って放たれました。関ヶ原以来、歴史にさかのぼった夢を見ることは稀れでありましたのです。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
多くの人々にどうか悪い
怪物
(
ばけもの
)
にならないで五官の
迷
(
まよい
)
を捨て修養の道に工夫を凝らし
三摩地
(
さまち
)
の
境
(
きょう
)
に入っていい
怪物
(
ばけもの
)
におなりなさいと勧め、これで
一向
(
いっこう
)
怖く無い
怪物談
(
ばけものだん
)
を
切上
(
きりあ
)
げる事にする。
大きな怪物
(新字新仮名)
/
平井金三
(著)
みんな
女偊
(
じょう
)
氏の弟子での、ものの形を超えて
不生不死
(
ふしょうふし
)
の
境
(
きょう
)
に入ったれば、水にも
濡
(
ぬ
)
れず火にも
焼
(
や
)
けず、寝て夢見ず、覚めて
憂
(
うれ
)
いなきものじゃ。この間も、四人で笑うて話したことがある。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
こう思うと、今まで上天の
境
(
きょう
)
に置いた美しい芳子は、
売女
(
ばいじょ
)
か何ぞのように思われて、その体は愚か、美しい態度も表情も卑しむ気になった。で、その夜は
悶
(
もだ
)
え悶えて
殆
(
ほとん
)
ど眠られなかった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
孝孺の此言に照せば、既に其の卓然として自立し、信ずるところあり安んずるところあり、
潜渓先生
(
せんけいせんせい
)
が
謂
(
い
)
える所の、
特
(
ひと
)
り立って千古を
睨
(
にら
)
み、万象
昭
(
てら
)
して
昏
(
くら
)
き無しの
境
(
きょう
)
に入れるを
看
(
み
)
るべし。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
もと支那の皇帝であられた
宣統帝
(
せんとうてい
)
は、今では
何
(
なん
)
の収入もない
境
(
きょう
)
ぐうにいられる中から、手もとにありたけの一万元を寄附された上、今後の生活費として売りはらうつもりでいられた高貴な宝石
大震火災記
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
もしこの孫六の
鑢
(
やすり
)
を手がける
境
(
きょう
)
まですすんだならば彼こそはその箱の中の
指書
(
ししょ
)
を見て、ひいてはそれより、二刀の柄から水火秘文状を掘り出しても差支えのない人物であることを
自証
(
じしょう
)
するものだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「まだ
法悦
(
ほうえつ
)
の
境
(
きょう
)
に入るほど進んでいないけれど」
四十不惑
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
境勝固天真
境
(
きょう
)
の
勝
(
すぐれ
)
ることは
固
(
もと
)
より
天真
(
てんしん
)
にして
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
心を転じ、
境
(
きょう
)
を転ず。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
主客
(
しゅかく
)
は一である。
主
(
しゅ
)
を離れて
客
(
かく
)
なく、客を離れて主はない。吾々が主客の別を立てて
物我
(
ぶつが
)
の
境
(
きょう
)
を判然と
分劃
(
ぶんかく
)
するのは生存上の
便宜
(
べんぎ
)
である。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
諸君もまた
三更無人
(
さんこうぶじん
)
の
境
(
きょう
)
人目を
憚
(
はばか
)
らざる一個の婦人が、我より
外
(
ほか
)
に人なしと思いつつある場合に
不意
(
ゆくりなく
)
婦人に
邂逅
(
かいこう
)
せんか、その感覚
果
(
はた
)
していかん。
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
耳をすますと、どっか遠くの方から
鼾
(
いびき
)
の声が聞こえてくる。無人の
境
(
きょう
)
ではない。人間がいることはいるのだ。しかしもう方角がわからなくなってしまった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかしよく考えてみると、この広々としたやけあとは
無人
(
むじん
)
の
境
(
きょう
)
としてほってあるので、さっきから長い間、二人のほかに一人の人影もみなかったほどである。
ふしぎ国探検
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あるいは、敵の
計
(
はかり
)
だろうか。引きよせてつつむ法もなくはない。しかし、それなら高氏に、それらしい予見があろう。こう
緩々
(
かんかん
)
と、無人の
境
(
きょう
)
でも行くようなのは、何とも怪しむべきかぎりであった。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
立派な画家である。こう云う
境
(
きょう
)
を得たものが、名画をかくとは限らん。しかし名画をかき得る人は必ずこの境を知らねばならん。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また全館のうち、帳場なり、
客室
(
きゃくま
)
なり、湯殿なり、このくらい、
辞儀
(
じぎ
)
、
斟酌
(
しんしゃく
)
のいらない、
無人
(
むにん
)
の
境
(
きょう
)
はないでしょう。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
怪人をのせた自動車は、無人の
境
(
きょう
)
を、黒い風のように飛んで行くのです。
虎の牙
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
山路
(
やまじ
)
の
険
(
けわ
)
しさはあるが、道は
坦々
(
たんたん
)
、
無人
(
むじん
)
の
境
(
きょう
)
をすすむごとしだ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
淡しとは単に
捕
(
とら
)
え難しと云う意味で、弱きに過ぎる
虞
(
おそれ
)
を含んではおらぬ。
冲融
(
ちゅうゆう
)
とか
澹蕩
(
たんとう
)
とか云う詩人の語はもっともこの
境
(
きょう
)
を切実に言い
了
(
おお
)
せたものだろう。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
御堂
(
みどう
)
正面の扉、両方にさらさらと
開
(
ひら
)
く、赤く輝きたる光、
燦然
(
さんぜん
)
として
漲
(
みなぎ
)
る
裡
(
うち
)
に、秘密の
境
(
きょう
)
は一面の
雪景
(
せっけい
)
。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この爪が、黒髪の根を一本ごとに押し分けて、不毛の
境
(
きょう
)
を巨人の
熊手
(
くまで
)
が疾風の速度で通るごとくに往来する。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すべて、それが魔法なので、貴女を魅して、
夢現
(
ゆめうつつ
)
の
境
(
きょう
)
に乗じて、その
妄執
(
もうしゅう
)
を晴しました。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
半滴
(
はんてき
)
のひろがりに、一瞬の短かきを
偸
(
ぬす
)
んで、疾風の
威
(
い
)
を
作
(
な
)
すは、春にいて春を制する深き
眼
(
まなこ
)
である。この
瞳
(
ひとみ
)
を
遡
(
さかのぼ
)
って、魔力の
境
(
きょう
)
を
窮
(
きわ
)
むるとき、
桃源
(
とうげん
)
に骨を白うして、再び
塵寰
(
じんかん
)
に帰るを得ず。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「御名論だ。僕などはとうてい絶対の
境
(
きょう
)
に
這入
(
はい
)
れそうもない」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二人は
煢々
(
けいけい
)
として
無人
(
むにん
)
の
境
(
きょう
)
を行く。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“境”の解説
境(さかい)とは、政治、行政、言語、食文化等を区切る地理的な境目のこと。
(出典:Wikipedia)
境
常用漢字
小5
部首:⼟
14画
“境”を含む語句
境遇
境界
国境
境内
境地
環境
心境
境涯
見境
恍惚境
地境
境目
村境
國境
無人境
境川
窮境
苦境
海境
境木峠
...