すは)” の例文
一人ひとりすはつて居ると、何処どことなく肌寒はださむの感じがする。不図気が付いたら、机の前の窓がまだてずにあつた。障子をけると月夜だ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
花畑はなばたけへでもいてると、綺麗きれい蝶々てふ/\は、おびて、とまつたんです、ひと不思議ふしぎなのは、立像りつざうきざんだのが、ひざやはらかにすつとすはる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頭の中に籠ツてゐた夜の温籠ぬくもりを、すツかり清水せいすいまして了ツた、さて長火鉢ながひばちの前にすはると、恰で生まれ變ツたやうな心地だ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
千代ちいちやん今日けふすこはうかへと二枚折まいをり屏風べうぶけてまくらもとへすは良之助りやうのすけだせし姿すがたはづかしくきかへらんとつくもいたくせたり。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
○さて幽霊はかげも見えず、源教げんけうあたゝまりて睡眠ねふけをもよほし、居眠ゐねふりしつゝつひに倒れんとして目をひらきしに、お菊が幽霊いうれい何時いつきたりてほとけむかひ、まうけたる新薦あらこもの上にすはかしらたれてゐたり。
足のあひだにその顏のすはるかなしさ、なまじろさ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
三四郎の筋向にすはつてゐた色の白い品のい学生が、しばらく肉刀ナイフの手をめて、与次郎の連中を眺めてゐたが、やがて笑ひながら
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『あゝつ、』といまはしさにはらつて、すはなほして其処等そこらみまはす、とそつ座敷ざしきのぞいた女中ぢよちゆうが、だまつて、スーツと障子しやうじめた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ものにぶき駱駝らくだすはる。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
隣りに田村といふ小説家がすはつて居た。此男が自分のインスピレーシヨンは原稿の催促以外に何にもないと答へたので、大笑ひになつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おほきざうで、めしときなんぞ、ならんですはる、と七才なゝつとしわたくし芥子坊主けしばうずより、づゝとうへに、かみさがつた島田しまだまげえたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しづかにもすは水牛すゐぎう
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
代助はかくして、下手へたな個所々々を悉く塗りへて、とう/\自分の想像しる限りの尤も美くしい色彩に包囲されて、恍惚とすはつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
くるしいのでをもがいて身躰からだうごかすとたゞどぶん/\としづむでく、なさけないとおもつたら、うち母様おつかさんすはつてらつしやる姿すがたえたので、またいきおひついたけれど、やつぱりどぶむ/\としづむから
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そんなら直木を連れてけとあにから注意された時、直木は紺絣こんがすりて、はかま穿いて、六づかしくすはつてゐて不可いけないと答へた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つゞいて、だから先刻さつき云つたかねを貸してください、といふ文句がおのづからあたまなか出来上できあがつた。——けれども代助はたゞ苦笑してあによめの前にすはつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)