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呻
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うな
ふりがな文庫
“
呻
(
うな
)” の例文
「だって、あんな重い牛の頭のかぶりものをかぶって、二時間も三時間も休みなしで
呻
(
うな
)
ったり
喚
(
わめ
)
いたりの真似をするのはやり切れん」
火星探険
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「よろしい!」男は
呻
(
うな
)
るやうに云つた。「俺はそれを造るよ。屹度。それを見たらお前は俺がどんな人間か始めて少し分るだらう!」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
今更そのようなことがあったのかと一九三二年以後、思わず
呻
(
うな
)
るようなこともある。それはいつも滑稽さと悲痛さとの混ったものです。
獄中への手紙:01 一九三四年(昭和九年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「そうだ」警部は、
暫
(
しば
)
し考えていてから、
呻
(
うな
)
るように云った。「そうだ、そう云われて思い出した。之は確にあの男の事件の時に……」
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
炭は真白な灰になり、昼間には
滾
(
たぎ
)
り立つて
呻
(
うな
)
りつづけて居た鉄瓶は、それのなかの水と一緒に冷えきつて居た。それも当然の事である。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
▼ もっと見る
蚊が二三羽耳の傍で
呻
(
うな
)
った。恭三は
焦立
(
いらだ
)
った気持になった。呼吸がせわしくなって胸がつかえる様であった。腋の下に汗が出た。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
そんな事があってから間もなく、人々は夜になると殺生谷の方から、
呻
(
うな
)
るような、叫ぶような、気味の悪い声が聞えて来るのに気付いた。
殺生谷の鬼火
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
一目惚れというかなんて早いやつだと、
暫
(
しばら
)
く二人を見くらべながら
呻
(
うな
)
っていたのだ。しかし、その翌日すべてが明らかになった。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
現れた茸を睨むや、先づ腕組し、一応は
呻
(
うな
)
つてもみて、植物辞典があるならば箸より先にそれを執らうといふ気持に襲はれる茸なのである。
ラムネ氏のこと
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
母の、恐ろしい
呻
(
うな
)
り声が美奈子の魂を
戦
(
おのの
)
かしたが、母の
呻
(
うめ
)
き声を聴いた途端に、悪夢は
断
(
き
)
れた。が、不思議に呻き声のみは、
尚
(
なお
)
続いていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
豚は五人掛りで押えられながらも、鼻を動かしたり、哀しげに
呻
(
うな
)
って鳴いたりした。牛の場合とは違って、大鉞などが用いられるでも無かった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
掠奪
(
ひった
)
くられたように、向うの谷へ抛げ出された、製造場の烟突からでも出そうな、どす黒い綿のような雲が頭から二、三尺の上を
呻
(
うな
)
って飛び交う。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
田圃の中へ入らなければならんが、
彼所
(
あすこ
)
にも柵があるから、其の柵矢来の裏手から入って、藪の中にうん/\
呻
(
うな
)
っていろ
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と今村は
低声
(
こごえ
)
で
呻
(
うな
)
るように云った。そして、こんな返事は却って、おぼえのある証拠であるように思えて、自分で自分のへまさ加減がいやになった。
犠牲者
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
兵さんは低く
呻
(
うな
)
ると、サッと右手を前へ突きだした。次郎はワッと言って尻餅をついた。兵さんの手には、三四寸の
肥後守
(
ひごのかみ
)
の
小刀
(
ナイフ
)
が握られてあった。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
そういう一面から、また一方、極めて高く
汚
(
けが
)
れないその理想主義に至るまでの
幅
(
はば
)
の広さを考えると、子路はウーンと心の底から
呻
(
うな
)
らずにはいられない。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
と
呻
(
うな
)
っているけれど、声があまりにかぼそいもんだから、街の物音にかき消されて
些
(
すこ
)
しも人の注意をひかない。
幻想
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
死後三日目に、張夫婦は墓前に伏して、例のごとくに
慟哭
(
どうこく
)
をつづけていると、たちまち墓のなかで
呻
(
うな
)
るような声がきこえたので、夫婦はおどろいて叫んだ。
中国怪奇小説集:12 続夷堅志・其他(金・元)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
殊に、あの
傲岸
(
ごうがん
)
な阿巌が、うんと
呻
(
うな
)
ったきり、
血涎
(
ちよだ
)
れを出して参ってしまうなどは、近ごろ愉快きわまることだ
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうしてそれには、繰り返して云うが、或る程度の薄暗さと、徹底的に清潔であることと、蚊の
呻
(
うな
)
りさえ耳につくような静かさとが、必須の条件なのである。
陰翳礼讃
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
芒
(
すすき
)
の芽が延びて来た。春が
倐忽
(
しゅっこつ
)
と逝ったのである。
五月雨
(
さみだれ
)
、
木下闇
(
このしたやみ
)
、蚊の
呻
(
うな
)
り、こうして夏が来たのである。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
気が
注
(
つ
)
くと老人の
呻
(
うな
)
るような怒る声が聞えていたのです、もう
黎明
(
よあけ
)
で東のほうが白くなっているのです、私はそれから家に帰ったのですが、
女
(
むすめ
)
のことが気になるし
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その時は何でもないの、もうちッと
酷
(
ひど
)
くくらわすと、丸ッこくなってね、フッてんだ。
呻
(
うな
)
っておっかねえ目をするよ、恐いよ。そこをも一ツ
打
(
ぶ
)
つところりと死ぬさ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あンたよりも二十歳も若い男をお父さんなぞと云わせないでよとはんぱくする。母は
呻
(
うな
)
ってつっぷしてしまう。お前じゃとてなりゆきと云うものがあろうがの……。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
というて苦しげに
呻
(
うな
)
るのは寝ている宇津木兵馬の声で、それと同時に寝返りを打とうとするらしい。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして、寝床の
襤褸
(
ぼろ
)
の底で
呻
(
うな
)
りつづけていた。最初は自分で便所へ立っていたのが、それさえできなくなってきた。鶴代がそれをいちいち始末しなければならなかった。
或る嬰児殺しの動機
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
と、突然、妾の番犬が、妾が
戦慄
(
せんりつ
)
するような
呻
(
うな
)
り声を出して、外部の
暗
(
やみ
)
に向って吠出したのです。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
未
(
ま
)
だ
眠
(
ねむ
)
らないで
南京蟲
(
なんきんむし
)
と
戰
(
たゝか
)
つてゐる
者
(
もの
)
も
有
(
あ
)
らう、
或
(
あるひ
)
は
強
(
つよ
)
く
繃帶
(
はうたい
)
を
締
(
し
)
められて
惱
(
なや
)
んで
呻
(
うな
)
つてゐる
者
(
もの
)
も
有
(
あ
)
らう、
又
(
また
)
或
(
あ
)
る
患者等
(
くわんじやら
)
は
看護婦
(
かんごふ
)
を
相手
(
あいて
)
に
骨牌遊
(
かるたあそび
)
を
爲
(
し
)
てゐる
者
(
もの
)
も
有
(
あ
)
らう
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
うんうん
呻
(
うな
)
って舟を押す、客も船中で一緒に呻るが、船脚すこぶる遅々として根っから効なし。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
かういふ空想に耽りつつ、義雄は一方に森本の
極
(
ごく
)
皮相的な、一般世俗的な事業觀や處世觀を聽くと、自分の自慢ではないまでも、大音樂の前で蚊が
呻
(
うな
)
つてゐる樣に見える。
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
筵を
除
(
と
)
って一目、平次は
呻
(
うな
)
りました。
忙
(
せわ
)
しく
四方
(
あたり
)
の様子を見廻して、もう一度ガラッ八の顔に還った
瞳
(
め
)
には、「——よく疑った」というような色がチラリと見えるのでした。
銭形平次捕物控:030 くるい咲き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それが始めは唯、聲でごさいましたが、暫くしますと、次第に切れ/″\な
語
(
ことば
)
になつて、云はゞ溺れかゝつた人間が水の中で
呻
(
うな
)
るやうに、かやうな事を申すのでございます。
地獄変
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
赤い爛れた目のようなランプが、油を吸い上げるので、ジ、ジー、ジ、ジー
呻
(
うな
)
り出した。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
呻
(
うな
)
りでもすれば、幾ぶんか苦痛の気休めにもなり、また世人はよく覚えず
呻
(
うな
)
りやすきものであるが、帝は決して
呻
(
うな
)
られたことなく、またかつて苦しい顔色を示されたこともなく
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
左手で庄吉の
髻
(
もとどり
)
を掴んでも、二人が、身体を捻じらせて、草を踏み倒し、踏みにじり、獣の格闘の如く、
呻
(
うな
)
っても、吼えても——脇差は、月丸から離れまいと、突き立っていた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
そういうふうに二、三人声を
揃
(
そろ
)
えて笑い出すと、数千人の僧侶も一度に
呻
(
うな
)
り出して堂内も
裂
(
さ
)
けんばかりの声を挙げるですから、その問答に臨むところのラマは容易な事ではない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ところがこの小わッぱめが遂に阿Qの飯碗を取ってしまったんだから、阿Qの
怒
(
いかり
)
尋常一様のものではない。彼はぷんぷんしながら歩き出した。そうしてたちまち手をあげて
呻
(
うな
)
った。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
そしたら、小屋の中から、ウンウン
呻
(
うな
)
る声がして、なんか、入口から這いだして来た。旦那はびっくりしたらしいけんど、胆の太い人じゃけ、提灯をさしだして、照らして見んさった
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
その樹皮に
瘤
(
こぶ
)
が多いのは、壮大に成長した材木に釣り合っている。ちょっと
嵐
(
あらし
)
が吹いても枝がおそろしく
呻
(
うな
)
ったりつぶやいたりするのは、その枝がこんもりと
繁
(
しげ
)
っているからである。
ジョン・ブル
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
その穴跡より一本の
蘆
(
あし
)
生え、秋風の吹くにつけてもあなめ/\と小町の
髑髏
(
されこうべ
)
の眼穴に生えた
芒
(
すすき
)
が
呻
(
うな
)
った向うを張って、不断ミ王驢耳を持つ由囁き散らし、その事
一汎
(
いっぱん
)
に知れ渡った由。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
頬に流れ落ちる
滴
(
しずく
)
を
拭
(
ぬぐ
)
いもやらずに、
頤
(
あご
)
を
襟
(
えり
)
に埋めたまま、いつまでもいつまでもじッと考え込んでいたが、ふと二階の
呻
(
うな
)
り声に気がついて、ようやく力ない体を起したのであった。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
ライオンではカウンター台の上に土で作ったライオンの首が飾ってあって、何ガロンかビールの
樽
(
たる
)
が空くと、その度毎にライオンが「ウオ ウオ」と凄じい
呻
(
うな
)
り声を発する仕掛であった。
ヒウザン会とパンの会
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
先にいた高倉は、おうと
呻
(
うな
)
ってその足をだした。そして重心を移そうと踏みつけた瞬間、足は空にのめっていた。乗りだした、彼の身体はもんどり打った。あッと呼吸がつまって宙に投げだされた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
また、弾丸が空へ向って
呻
(
うな
)
り出た。
パルチザン・ウォルコフ
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
彼は
呻
(
うな
)
るように云うのでした。
入院患者
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
「若旦那様が
呻
(
うな
)
ってますよ。」
小翠
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
とよもし
呻
(
うな
)
る聲
強
(
つよ
)
く
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
鬚
(
ひげ
)
は、
呻
(
うな
)
りに
島
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
そう云って、多田刑事は、小さい
紙片
(
しへん
)
を手渡した。警部は
獣
(
けもの
)
のように低く
呻
(
うな
)
りつつ、多田の聞書というのを読んだ。「よし、会おう」
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「見張の方は
引受
(
ひきう
)
けやした。しばらく拳骨を使わねえから、腕が
呻
(
うな
)
って仕方がねえんです。どうか喧嘩でもできるようにしておくんなさい」
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
呻
漢検1級
部首:⼝
8画
“呻”を含む語句
呻吟
呻声
呻唸
呻吟声
欠呻
呿呻
生呿呻
羽呻
吟呻
直呻
沈呻
横臥呻吟
懊悩呻吟
大欠呻
唸呻
呻聲
呻唸声
呻吟転輾
呻吟聲
呻吟籠居
...