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叱咤
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しった
ふりがな文庫
“
叱咤
(
しった
)” の例文
十三丁目の重三が、張りきった
叱咤
(
しった
)
の声。その
膝
(
ひざ
)
の下にキリキリと縄を打たれて引据えられたのは美しい下女のお照ではありませんか。
銭形平次捕物控:103 巨盗還る
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれど首将みずから
剣槍
(
けんそう
)
の中を駈けあるき、歩兵や騎兵を
叱咤
(
しった
)
し廻る戦闘ぶりに変りはなく、武敏の手にある一
槍
(
そう
)
もすでに血ぬられて
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
スルスルと障子を開けて顔を出した金山寺屋の音松に、
忠相
(
ただすけ
)
は、にこやかな笑顔を向けて、声だけは、
叱咤
(
しった
)
するように激しかった。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と、突然
鬨
(
とき
)
の声が起こった。お館の方へ行くらしかった。門を叩く音がした。烈しい
叱咤
(
しった
)
の声がした。バタバタと逃げ去る足音がした。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
然
(
しか
)
るに酒
酣
(
たけなわ
)
に耳熱して来ると、温鍾馗は二公子を白眼に
視
(
み
)
て、
叱咤
(
しった
)
怒号する。それから妓に琴を弾かせ、笛を吹かせて歌い出す。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
何故あの時
叱咤
(
しった
)
して追い帰さなかったのか。背後に同じ調子でついて来る高城の重い足音を耳に止めながら、宇治は
益々
(
ますます
)
心が沈んで来た。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
奮
(
はず
)
み行く馬の
危
(
あやう
)
く
鰭爪
(
ひづめ
)
に懸けんとしたりしを、馭者は辛うじて手綱を控え、冷汗
掻
(
か
)
きたる腹立紛れに、鞭を
揮
(
ふる
)
いて
叱咤
(
しった
)
せり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「君、手帖に書いて置いてくれ給え。趣味の古代論者、多忙の生活人に
叱咤
(
しった
)
せらる。そもそも南方の強か、北方の強か。」
黄村先生言行録
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
長吉はこの種の音楽にはいつも興味を以て聞き
馴
(
な
)
れているので、場内の
何処
(
どこ
)
かで泣き出す
赤児
(
あかご
)
の声とそれを
叱咤
(
しった
)
する見物人の声に妨げられながら
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
僕はまじめに『僕は在ると思う。
若
(
も
)
し神が無かったら、僕達が人知れずした悪事は誰が見ているのだ。』と
叱咤
(
しった
)
して
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
彼は刺すような眼で代二郎を睨みながら、
叱咤
(
しった
)
の言葉に詰ったようであった。代二郎は静かに低頭し、ずっとさがってから染谷と岡安の二人を見た。
初夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
片腕が肩からない
身体
(
からだ
)
に、すべての勲章や金モウルの飾りを
剥
(
は
)
ぎ取った色の
褪
(
あ
)
せた黒の軍服を着ていた、が、どこかに三軍を
叱咤
(
しった
)
した面影が残って
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
恐ろしく大時代な
叱咤
(
しった
)
の声が鳴り響いた。現代の警察官にもこの有効な掛け声は、案外しばしば使用されているのだ。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
小生、大いに驚き、家内を呼び寄せ、「
汝
(
なんじ
)
らの不注意より、事のここに至りしぞ」と
叱咤
(
しった
)
すれば、これぞ、この夜(十一月十九日)一場の夢にて
候
(
そうら
)
いし。
妖怪報告
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
かくのごとく
勢
(
いきおい
)
強き恐ろしき歌はまたと
有之間敷
(
これあるまじく
)
、八大竜王を
叱咤
(
しった
)
するところ竜王も
懾伏
(
しょうふく
)
致すべき勢
相
(
あい
)
現れ
申
(
もうし
)
候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
空に向って
雷霆
(
らいてい
)
を
叱咤
(
しった
)
したのは此の時の話であるが、その後風雨がなお止まず、遂に鴨川の
洪水
(
こうずい
)
を見るに至った。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「馬の用意をしとけ」と、誰かの
叱咤
(
しった
)
する声が
靄
(
もや
)
がかった河岸でひびくのであった。川添いの街角をまがった彼らは半分駈けるようにして役所に急いだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
狼狽
(
ろうばい
)
して、前後左右にたゞウロ/\する、召使の男女を荘田は声を枯して
叱咤
(
しった
)
した。彼はそう
云
(
い
)
いながらも、右の
掌
(
てのひら
)
で、娘の傷口を力一杯押えているのだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
糸を絶られて芸の情熱を遮断されてしまったあの憤らしさはよくわかる。同情もできる。が、お客へまで聞こえてくるようなあんな楽屋での
叱咤
(
しった
)
怒号はなに事だ。
寄席行灯
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
貧窮
(
ひんきゅう
)
、
病弱
(
びょうじゃく
)
、
菲才
(
ひさい
)
、
双肩
(
そうけん
)
を圧し来って、ややもすれば我れをして
後
(
しり
)
えに
瞠若
(
どうじゃく
)
たらしめんとすといえども、我れあえて心裡の牙兵を
叱咤
(
しった
)
して死戦することを恐れじ。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
用向きの
繁劇
(
はんげき
)
なるがために、三日父子の間に言葉を交えざるは珍しきことにあらず。たまたまその言を聞けば、
遽
(
にわか
)
に子供の挙動を
皮相
(
ひそう
)
してこれを
叱咤
(
しった
)
するに過ぎず。
教育の事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
次の朝、色を
作
(
な
)
した太子疾が白刃を提げた五人の壮士を従えて父の居間へ
闖入
(
ちんにゅう
)
する。太子の無礼を
叱咤
(
しった
)
するどころではなく、荘公は唯色蒼ざめて
戦
(
おのの
)
くばかりである。
盈虚
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
じだんだふんで
叱咤
(
しった
)
しているうちに、やっと裏口からはいりこんだ定吉や権六が、手燭にあかりをうつしたとみえて、雨戸のすきまからぼーっと光がさしてきました。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
実戦を知らぬ将校が自己の名誉心を満足さすために、何も知らない部下を
叱咤
(
しった
)
して戦場に駆り立てる傾向がありはしないでしょうか。実戦というものは残酷なものですよ。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
ノルマン船長は、はじめて
叱咤
(
しった
)
するようにさけんだ。彼の語尾は、かすかにふるえおびていた。
火薬船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
いかに
孟賁烏獲
(
もうほんうかく
)
の腕力に富むもその勢いを制するを得んや。ローマ社会の文弱に
趨
(
おもむ
)
くや、いかに老カトーがこれを
怒罵
(
どば
)
し、これを
叱咤
(
しった
)
し、その
鉄鞭
(
てつべん
)
を飛ばすもこれをいかんせんや。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
と
叱咤
(
しった
)
した。つねになき激語を発したので
弟子
(
でし
)
どもも一時はあっけにとられたという。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
不断、無口でおとなしかった政枝は
却
(
かえ
)
ってこの
叱咤
(
しった
)
に対して別人のように反撥した。
勝ずば
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
中隊の兵舎から、準備に緊張したあわただしい叫びや、
叱咤
(
しった
)
する声がひびいて来た。
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
今度はその従者に対する言語挙動が、まるで奴隷に対するような扱いであり、軽蔑と、
叱咤
(
しった
)
とを以て、待遇するのに、このグロテスクな従者に、一言のないことにも驚かされました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
叱咤
(
しった
)
したとて雪は
脱
(
と
)
れはしない、益々固くなって歯の間に居しこるばかりだった。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
太郎は、群がる犬の中に、
隕石
(
いんせき
)
のような勢いで、馬を乗り入れると、小路を斜めに輪乗りをしながら、
叱咤
(
しった
)
するような声で、こう言った。もとより
躊躇
(
ちゅうちょ
)
に、時を移すべき場合ではない。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夜食を出せば働くというが、その配給分はない。S君は膝まで没するへどろの中につっ立ったまま、苦力を
叱咤
(
しった
)
して四方の壁に土止め板をあてて、中のへどろを掻き出しては棄てさせる。
永久凍土地帯
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
叱咤
(
しった
)
する人の声や吠えつく犬の声をきいた。グルグル廻る太陽と、前後左右に吹きめぐる風と、戦争のように追いつ追われつする砂ほこりを見た。雲の中からブラ下っている電柱を見た。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
忘れない点で、ただやたらに
叱咤
(
しった
)
激励
(
げきれい
)
する連中とは根本的にちがっているよ。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
あるいは
叱咤
(
しった
)
の声と共に三十棒を喰わされたかも知れませんなど思うて
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
神明を
叱咤
(
しった
)
するの権威には、驚嘆せざるを得ぬではないか。
学生と先哲:――予言僧日蓮――
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
播磨守が膝を
叩
(
たた
)
いて
叱咤
(
しった
)
した。主水は顔をあげてこたえた。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「いや、そう仰っしゃりつつ、一面、この官兵衛に、何ぞ
無策
(
むさく
)
なる、はや良計を出しそうなものとの、ご
叱咤
(
しった
)
ではございませぬか」
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
後から続くのは、八五郎自慢の
叱咤
(
しった
)
です。大きい影は、この形勢を見ると、小さい影を突っ放して、キラリと一刀を抜きました。
銭形平次捕物控:062 城の絵図面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
思わずたじたじとなる源十郎へ、ゆったりと振り返って投げつけた泰軒の言葉は、いつになく強い憎悪と
叱咤
(
しった
)
に燃えたっていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
私は、兄の
叱咤
(
しった
)
の言よりも、そのほうに、そっと耳をすましていた。ふっと一言、聴取出来た。私は、
敢然
(
かんぜん
)
と顔を挙げ
一灯
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
間もなく
叱咤
(
しった
)
する声などが、幔幕の
背後
(
うしろ
)
から聞こえて来、やがて
篝火
(
かがりび
)
で昼のように明るい、中庭へ四五人の武士に囲まれ、二人の男女が入って来た。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「光!」と
堪
(
たま
)
りかねて大人と後室、
一
(
いつ
)
は無法者を、一は小間使を、ほとんど同時に同音に
叱咤
(
しった
)
した。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
よろける奴を
邪慳
(
じゃけん
)
にこづきまわした。このとき、
度胆
(
どぎも
)
をぬいてくれた松岡は
慥
(
たし
)
かに一歩機先を制していたのだ。もはや相手は彼の云うなりであった。
叱咤
(
しった
)
して歩かせた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
斉との間の
屈辱的
(
くつじょくてき
)
媾和
(
こうわ
)
のために、定公が孔子を
随
(
したが
)
えて斉の景公と
夾谷
(
きょうこく
)
の地に会したことがある。その時孔子は斉の無礼を
咎
(
とが
)
めて、景公始め群卿諸大夫を頭ごなしに
叱咤
(
しった
)
した。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「きさまは愚かなやつだ、第二」彼は泣きながら自分を
叱咤
(
しった
)
した、「——そんなにもばかだったのか、そんなにも……あんまりじゃないか第二、なんと云いようもないじゃないか」
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして、この
叱咤
(
しった
)
は、羊のように弱い人にとっては、すこしばかり強過ぎるのです。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
厳父は唯厳なるのみにして能く人を
叱咤
(
しった
)
しながら、其一身は則ち醜行紛々、甚だしきは同父異母の子女が一家の中に群居して朝夕その一父衆母の言語挙動を傍観すれば、父母の行う所
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それから更に考えてかの女の、子に対する愛情の方途が間違っているとは思えなかった。彼女は、子を
叱咤
(
しった
)
したり、
苛酷
(
かこく
)
にあつかうばかりが子の「人間成長」に役立つものとは思わない。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
“叱咤”の意味
《名詞》
叱 咤(しった)
大声で叱ること。
大声で励ますこと。
(出典:Wiktionary)
叱
部首:⼝
5画
咤
漢検1級
部首:⼝
9画
“叱咤”で始まる語句
叱咤暗鳴