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口籠
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くちごも
ふりがな文庫
“
口籠
(
くちごも
)” の例文
信一郎が
口籠
(
くちごも
)
りながら何か云おうとしたときに、呼鈴に応じて先刻の小間使が顔を出した。夫人は冷静な口調で、ハッキリと云った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
クリストフは顔を赤くして、「クラフト夫人」——言いつけられたとおりの言葉を使って——に会いに来たのだと
口籠
(
くちごも
)
りながら答えた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「さあ……」明は本当に困惑したような目つきで彼女を見返しながら
口籠
(
くちごも
)
っていた。「……なんて云っていいんだか難しいなあ。」
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
小夜子はまた
口籠
(
くちごも
)
る。東京が好いか悪いかは、目の前に、西洋の
臭
(
におい
)
のする煙草を
燻
(
くゆ
)
らしている青年の心掛一つできまる問題である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そ、それはある。長明は厭世家だ、この世を悲觀したのだ。つまりその頃の天災地變の哀れさを見て……」先生は
口籠
(
くちごも
)
りながら云つた。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
▼ もっと見る
「誰も
貴方
(
あなた
)
を擇びはしませんよ。」と
謂
(
い
)
ツて、少し顏を
赧
(
あか
)
め、
口籠
(
くちごも
)
ツてゐて、「
貴方
(
あなた
)
の方で、私をお擇びなすツたのぢやありませんか。」
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「あれ、私の方から持ち込んだ話ですもの、お世話も何もありゃしませんけど……」と
口籠
(
くちごも
)
るところへ、娘のお仙は茶を
淹
(
い
)
れて持って来た。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
聞
(
きゝ
)
てオヽ
嬉
(
うれ
)
しや申し重四郎樣と云ながら
直
(
つ
)
と身を
寄
(
よせ
)
其縁談
(
そのえんだん
)
は
彼
(
あ
)
の大津屋段右衞門の
後家
(
ごけ
)
にて
縁女
(
えんぢよ
)
はお
恥
(
はづか
)
しながらと
口籠
(
くちごも
)
り顏を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
この質問は妻木君をギックリさせたらしく心持ち
羞恥
(
はにか
)
んだ表情をしたが、やがて
口籠
(
くちごも
)
りながら弁解をするように云った。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お角は問い
糺
(
ただ
)
されて、おのずから
口籠
(
くちごも
)
ります。その口籠るので、若党、草履取はお角にようやく不審の疑いをかけると
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「さあ、それは……」と彼女は明かに
当惑
(
とうわく
)
している様子で
口籠
(
くちごも
)
ったが、「誰なんですか、よく存じません」と答えた。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
主馬は
口籠
(
くちごも
)
った。ふと相談してみようかという気になったのだ、然しそれが不可能なことは明白である、彼は憂鬱に眉をひそめて、そのまま沈黙した。
山椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
初の烏 あの、(
口籠
(
くちごも
)
る)今夜はどういたしました事でございますか、
私
(
わたくし
)
の
形
(
なり
)
……あの、影法師が、この、野中の
宵闇
(
よいやみ
)
に
判然
(
はっきり
)
と見えますのでございます。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
またある時は米屋の借金のいい
訳
(
わけ
)
は婦人に限るなど、
唆
(
そその
)
かされて
詫
(
わ
)
びに行き、存外
口籠
(
くちごも
)
りて赤面したる事もあり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
お菊は、裏門の戸を内から開けて、そこに
佇
(
たたず
)
んでいる旅の僧を見かけると、何か
口籠
(
くちごも
)
って、それからは黙然と、ただ迎え入れ、ただ後ろをそっと閉めた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
といったが掻巻と布団が掛って居りますから、
苦
(
くるし
)
む声が
口籠
(
くちごも
)
って
外
(
そと
)
へ漏れませぬ。
一抉
(
ひとえぐ
)
り抉ると足をばた/\/\とやったきり貞藏は
呼吸
(
いき
)
が絶えました。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その女はその美貌を水も
滴
(
したた
)
るような
丸髷
(
まるまげ
)
と一緒に左右へ静かに振って居る。一しきり振り続け、ちょっと休む間には何かぶつぶつ
口籠
(
くちごも
)
りながら呟く。涙を流す。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「いえ、それが」と、小平太はちょっと
口籠
(
くちごも
)
った。「
御陪身
(
ごばいしん
)
ではござりますが、さる西国大名の御家老格……私としては、もはや主人の
選
(
え
)
り好みはしていられませぬ」
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
母が、「豆腐屋さんのお店は?」と訊いたら、
口籠
(
くちごも
)
っていた。「みきや長屋の近く?」と訊いたら、「へえ。そのみきや長屋で。」と云った。雨の日には、
菅笠
(
すげがさ
)
をかぶってきた。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
これは小花と
揃
(
そろい
)
とは言ひ兼ねてか
口籠
(
くちごも
)
る愛らしさ、ほんに
私
(
わたし
)
の
好
(
い
)
い気な事ねえ、清さんに話をするつてぼんやりしてゐてさ、話といふのも本当は
大袈裟
(
おおげさ
)
な位と、兼吉の言ひ出すを聞けば
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
………と姉は
口籠
(
くちごも
)
りながら、身分や家柄は申分ないが、定職を持っておられないのが不安心だとは云っていた、しかしここいらで
纏
(
まと
)
めなければ、
贅沢
(
ぜいたく
)
を云ったらキリがないと私が云ったので
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
とお秀は
口籠
(
くちごも
)
った、そしてじっとお富の顔を見た目は湿んでいた。
二少女
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
『よくも伺ひませんでしたけれど、』とお志保は
口籠
(
くちごも
)
つて
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「革命だぞ。てめえ知っているか」と阿Qは
口籠
(
くちごも
)
った。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
私
(
わたくし
)
は
口籠
(
くちごも
)
りながら
問
(
と
)
ひかけると、
大佐
(
たいさ
)
は
悠々
(
いう/\
)
として
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
女はそう呼びかけて、振りかえられると
口籠
(
くちごも
)
った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
と、わしが
訊
(
き
)
くと、杉山は、
一寸
(
ちょっと
)
、
口籠
(
くちごも
)
ったが
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
畳に両手
支
(
つ
)
きたるまゝ、声は
震
(
ふる
)
へて
口籠
(
くちごも
)
りぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「いいえ、別に……。」と周平は
口籠
(
くちごも
)
った。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
と
穏
(
おだやか
)
に答えられて若紳士は
暫
(
しばらく
)
く
口籠
(
くちごも
)
りぬ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「訳ですか?」と満枝は
口籠
(
くちごも
)
りたりしが
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と、
口籠
(
くちごも
)
るのを、片里は追いかけて
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と、彼は、いくぶん
口籠
(
くちごも
)
りながら
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
彼は
何故
(
なぜ
)
か一寸
口籠
(
くちごも
)
ったが
蝕眠譜
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
千登世は
口籠
(
くちごも
)
つた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
呉一郎は、それでも何かしら不安そうに鍬の上げ下げを凝視していたが、間もなく
独言
(
ひとりごと
)
のように
口籠
(
くちごも
)
りつつつぶやいた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
美奈子は、もっと何か
云
(
い
)
いたそうだったが、
烈
(
はげ
)
しい興奮のために、胸が
迫
(
せま
)
ったのだろう、そのまゝ
口籠
(
くちごも
)
ってしまった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼女はここへ来て急に
口籠
(
くちごも
)
った。不敏な僕はその後へ何が出て来るのか、まだ
覚
(
さと
)
れなかった。「御前に対して」と
半
(
なか
)
ば彼女を
促
(
うな
)
がすように問をかけた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「それは……」と女客は明らかに
口籠
(
くちごも
)
ったがしかしおっかぶせるように「それはあたくしの方も、つれあいを愛しています。それはたしかでございます」
断層顔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
初の烏 あの、(
口籠
(
くちごも
)
る)今夜は
何
(
ど
)
ういたしました事でございますか、
私
(
わたくし
)
の
形
(
なり
)
……あの、影法師が、此の、
野中
(
のなか
)
の
宵闇
(
よいやみ
)
に
判然
(
はっきり
)
と見えますのでございます。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
兵馬は妙に
口籠
(
くちごも
)
って了った。小房はそれではっとしながら、慌てて寝衣をひろげ、辰之助の肩へと着せかけた。
柿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と
詠
(
えい
)
じける故
流石
(
さすが
)
公家
(
くげ
)
の
侍士
(
さふらひ
)
感心し
腰
(
こし
)
の
墨斗
(
やたて
)
を取出し今一度
吟
(
ぎん
)
じ聞せよと云に女は恥らひし體にて
口籠
(
くちごも
)
るを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それ以上は
口籠
(
くちごも
)
って言わんとしないのであるが、田山白雲はその間から何物かを感得したもののように、しばらく、荒涼たる
名残
(
なご
)
りのそのあたりの動静を視察し、それ以上に
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「有難うございます——」おようは山国の女らしく、こんな場合に明をどう取り扱って好いのか分からなさそうに、唯、相手をいかにも懐しげに眺めながら、その
儘
(
まま
)
口籠
(
くちごも
)
っていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「でも……」と、
口籠
(
くちごも
)
っていたが、顔を見あわせた後、一人が膝をすすめて言った。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私はちょっと
口籠
(
くちごも
)
りながら、しかし勇気を起して訊ねました。
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「ええ、あのそれは」と、おしおは
口籠
(
くちごも
)
りながらつづけた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
「四斗……」と地主は
口籠
(
くちごも
)
る。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と
俄
(
にわか
)
に
口籠
(
くちごも
)
りて後は口の内
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
と、雪子は
口籠
(
くちごも
)
りながら
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
籠
常用漢字
中学
部首:⽵
22画
“口”で始まる語句
口惜
口
口吻
口説
口髭
口許
口上
口調
口々
口吟