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口惜
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くや
ふりがな文庫
“
口惜
(
くや
)” の例文
自分が悪口を云われる
口惜
(
くや
)
し
紛
(
まぎ
)
れに他人の悪口を云うように取られては、悪口の
功力
(
くりき
)
がないと心得て今日まで謹慎の意を表していた。
田山花袋君に答う
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、思う下から、山田美妙斎の小説は、なんと
素
(
す
)
ばらしく、女の肉体の豊富さを描きつくしているのだろうと、
口惜
(
くや
)
しいほどだった。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
力松はさう言つて
口惜
(
くや
)
しがるのです。一國らしい中年者で、田園の匂ひが全身に
溢
(
あふ
)
れるだけに、此男に
嘘
(
うそ
)
があらうとは思はれません。
銭形平次捕物控:145 蜘蛛の巣
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
万一あの中間が
口惜
(
くや
)
しまぎれに舌でも食い切ったらどうするか。あるいは自分の部屋へ引っ返して大勢で仕返しに来たらどうするか。
半七捕物帳:23 鬼娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
短銃の先は
徐
(
おもむ
)
ろに、お富の胸のあたりへ向つた。それでも彼女は
口惜
(
くや
)
しさうに、新公の顔を見つめたきり、何とも口を開かなかつた。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
得たり賢しと、
悋気
(
りんき
)
深い手合がつまらんことを言い触して歩きます。私は奥様の御噂さを聞くと、
口惜
(
くや
)
しいと思うことばかりでした。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私に取ったら忘れられへん
口惜
(
くや
)
しい口惜しい思い出あるとこですのんに、まるでこっちの感情も何も踏み付けにした話ですねんけど
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「だって、そりゃお店の経営や、売上げや何かの話だってあるじゃないの。」と、答えたが、新子は
口惜
(
くや
)
しさで、涙が出そうだった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
鬼火の
姥
(
うば
)
はこわれた戒壇を、
口惜
(
くや
)
しそうな眼で睨みながら、その横に気抜けして地面へ坐り、バカのようになっている範覚へ云った。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一年生のときは、なめくぢと狸がしじゅう遅刻して罰を食ったために蜘蛛が一番になった。なめくぢと狸とは泣いて
口惜
(
くや
)
しがった。
洞熊学校を卒業した三人
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
甚兵衛は
口惜
(
くや
)
しくてたまりませんでした。それでいろいろ
工夫
(
くふう
)
をして、人形を
上手
(
じょうず
)
に使おうと考えましたが、どうもうまくゆきません。
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
前にも申しましたように人と会っても満足に話が出来ず、後であれを言えばよかった、こうも言えばよかったなどと
口惜
(
くや
)
しく思います。
わが半生を語る
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
陰でそう云われるだけでなく、しばしば面と向って「おい蒔田の山猿」などと呼ばれ、
口惜
(
くや
)
しさのあまり幾たびか相手にとびかかった。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
折角
(
せっかく
)
爆弾をおとしてやろうと思ったことも今は無意味です。敵軍の指揮者たちは、無念の
泪
(
なみだ
)
をポロポロとおとして、
口惜
(
くや
)
しがりました。
太平洋雷撃戦隊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それとともに紀州藩の武士ともあろうものが、
天狗
(
てんぐ
)
木精
(
すだま
)
のためにこんな目に
逢
(
あ
)
わされるとは、何たることだと思って
口惜
(
くや
)
しかった。
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それを確めますと、私はもう、悲しさ
口惜
(
くや
)
しさよりも、いうにいわれぬ不気味さに、思わずゾッとしないではいられませんでした。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
復習
(
さらい
)
直しをしていた老妓は、三味線をすぐ下に置くと、内心
口惜
(
くや
)
しさが
漲
(
みなぎ
)
りかけるのを気にも見せず、けろりとした顔を養女に向けた。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
十三年間の道場通いを考えると、
口惜
(
くや
)
しいよりは、情けない。しかも昨日は、師から免許皆伝の目録を授けられたばかりの帰りだ。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分と省作との関係を一口に
淫奔
(
いたずら
)
といわれるは実に
口惜
(
くや
)
しい。さりとて両親の前に恋を語るような
蓮葉
(
はすっぱ
)
はおとよには死ぬともできない。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
大切
(
だいじ
)
の大切の一枚看板を外されては、明日からの人気にさわる。人気よりも、損得よりも、出し抜かれたことがお角としては
口惜
(
くや
)
しい。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何と、その恋人を、しかも自分が、師匠のいいつけで
煽
(
あお
)
がせられて、
口惜
(
くや
)
しがって泣いた、華族の娘に取られようとは、どうです。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
好加減
(
いいかげん
)
なチャラッポコを
真
(
ま
)
に受けて、仙台くんだり迄引張り出されて、
独身
(
ひとり
)
でない事が知れた時にゃ、
如何様
(
どんな
)
に
口惜
(
くや
)
しかったでしょう。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼は競技の進行中ずっと、顔のあらゆる変化に注意し、確信や、驚きや、勝利や、
口惜
(
くや
)
しさなどの表情の違いから、
思惟
(
しい
)
の材料を集める。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
レベジャートニコフ氏があれをなぐったとき、家内はなぐられたためというより、
口惜
(
くや
)
しさが胸にしみてどっと床についたので。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
あたしに
瞞
(
だま
)
されたと思うものは、それや馬鹿なの。だって、今頃瞞されたと思って
口惜
(
くや
)
しがってる男なんか、日本にだっていやしないわ。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
だが何より例の一件をノズドゥリョフに漏らしたことが
口惜
(
くや
)
しかった。まるで赤ん坊か馬鹿者のように
無分別
(
むふんべつ
)
なことをやったものである。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
若旦那
(
わかだんな
)
が
鯱鉾立
(
しゃっちょこだち
)
して
喜
(
よろこ
)
ぶ
話
(
はなし
)
だと、
見世
(
みせ
)
であんなに、
大
(
おお
)
きなせりふでいったじゃないか。あたしゃ
口惜
(
くや
)
しいけれど
聞
(
き
)
いてるんだよ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
彼は遠い昔の恥かしかった事や、
口惜
(
くや
)
しかったことを、フト、なんの連絡もなしに偲い出しては、チェッと舌打するのである。
舌打する
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
何とかいう様な
所謂
(
いわゆる
)
口惜
(
くや
)
しみの念ではなく、ただ私に娘がその死を知らしたいが
為
(
た
)
めだったろうと、
附加
(
つけくわ
)
えていたのであった。
因果
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
口惜
(
くや
)
しい奴等だ。憎い奴等だ。口惜しがっても、憎らしがっても、生きたままではどうにもならぬ。わしは死んで取り殺すぞ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
この
遺書
(
かきおき
)
は警察宛てだったので、すぐ開けられたの。あたしは検事さんが読んでいる内にハラハラと熱い
口惜
(
くや
)
し涙を流したわ。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
悲しい時には泣き、
口惜
(
くや
)
しい時には地団太を踏み、どんな下品なおかしさでもいいから、おかしいと思ったら、大きな口をあいて笑うんだ。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
失恋が、失恋のまゝで尾を
曳
(
ひ
)
いてゐる
中
(
うち
)
は、悲しくても、苦しくても、
口惜
(
くや
)
しくつても、心に張りがあるからまだよかつた。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
口惜
(
くや
)
しい時に遣る彼の癖である。金が欲しい為めでは
勿論
(
もちろん
)
ない。男の意地で掛った仕事であった。彼は此失敗で思い止まる事は出来なかった。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
彼は覚えた軍隊語で、せめて、それだけでも云ってやりたかったがそんな事を云って笑われたらと、それも云えぬ
口惜
(
くや
)
しさに泣いたのだった。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
手の中に探りあてたものを再び見失ったような
口惜
(
くや
)
しさを持ちながら、そのような夜は、明け方までそのまま目ざめて過すのがつねであった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
「おお、長庵さん、お察し下さい。わたしゃ
口惜
(
くや
)
しいのだ——あんな、あんな、お尋ね者に、お妙が心を寄せるなんて——」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
一方からは
半
(
なか
)
ば嘲るやうな眼で見られても自分の氣持ちは一向に平氣なのが不思議な氣がした——イライザが私を
口惜
(
くや
)
しがらせることもなく
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
たゞ
男
(
をとこ
)
を
怨
(
うら
)
んで
呪
(
のろ
)
ひ、
自分
(
じぶん
)
を
嘲
(
わら
)
ひ、
自分
(
じぶん
)
を
憐
(
あはれ
)
み、
殊
(
こと
)
に
人
(
ひと
)
の
物笑
(
ものわら
)
ひの
的
(
まと
)
となる
自分
(
じぶん
)
を
思
(
おも
)
つては
口惜
(
くや
)
しさに
堪
(
た
)
へられなかつた。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
辛
(
つら
)
いことも辛いだろうし
口惜
(
くや
)
しいことも口惜しいだろうが、
先日
(
せん
)
のように逃げ出そうと思ったりなんぞはしちゃあ厭だよ。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その言葉の陰は「それでも
口惜
(
くや
)
しくないのか。」と云っていた。それは撒ビラのことで、二十九日食ったときの事だった。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
前に倒れた奴が
口惜
(
くや
)
しいから又起上って組附いて来る処を、
拳
(
こぶし
)
を固めて脇腹の三枚目(芝居でいたす
当身
(
あてみ
)
をくわせるので)
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
アアとサアと二人の兄さんは大層
口惜
(
くや
)
しがって、今夜リイをウンとイジめてやろうと相談をしましたが、リイはチャンときいて知っておりました。
奇妙な遠眼鏡
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
香倶土三鳥
(著)
お葉は仕事もなく考へもなしに終つた一日を、一人床の中に考へた時、泣く程
口惜
(
くや
)
しく思つたのである。その心が餘儀なく明日といふ日を求める。
三十三の死
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
彼は歯を
喰
(
く
)
ひしばつて
口惜
(
くや
)
しがつた。が、やつぱりどうすることも出来なかつた。
覿面
(
てきめん
)
なもので、林檎林はその後、日に増し生気を失つて行つた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
なんといふことなしに
口惜
(
くや
)
しいのである。それにしても、真相がはつきりした今、安里をほんたうに恨む気になつたのかと云へば、さうでもない。
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
もちろん、貴様が「しみったれの
駱駝
(
らくだ
)
野郎」と言う声は、おれの耳にはいる。
口惜
(
くや
)
しがってくたばれ。勝った嬉しさで、こっちもくたばりそうだ。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
そういう婦人らは、
口惜
(
くや
)
しさを隠しおおせるほど巧みではなくて、
側
(
はた
)
の人々の笑い事となりはしたけれど、はなはだしい悲嘆に沈みはしなかった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
母親は、
寛
(
ひろ
)
い胸から乳房を掴み出し、柔らかいぽとぽと音を立てて陶物に
滴
(
た
)
れる乳を見ながら、
口惜
(
くや
)
しそうに云った。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
家にかえってから、私は母に
得々
(
とくとく
)
とその話しをした。そしたら、三年生の姉が帰ってきて、
口惜
(
くや
)
しがりながら云った。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
惜
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
“口惜”で始まる語句
口惜涙
口惜紛