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克
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か
ふりがな文庫
“
克
(
か
)” の例文
これはあたかも茶碗やランプを相手にする者は力あるものと信じ、取りも直さず器具に
克
(
か
)
つことをもって偉いこととみなすのである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
人々は敗北したおりには、ドイツは人類を理想とすると言っていた。今や他に打ち
克
(
か
)
つと、ドイツは人類の理想であると言っていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
艱苦
(
かんく
)
に
克
(
か
)
ったすぐ後には、艱苦以上の快味がある。苦と快と、生きてゆく人間には、朝に夕に刻々に、たえず二つの波が
相搏
(
あいう
)
っている。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この議のまさに及ぼすべき影響の大きさと、この議の打ち
克
(
か
)
たなくてはならぬ抗抵の強さとは、抽斎の十分に意識していた所であろう。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それが東方の宗教に打ち
克
(
か
)
たれた後にも、キリストの教会内の哲学的な思索は、ソクラテスの弟子と孫弟子の指導の下にあった。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
▼ もっと見る
彼の顔面には此の一瞬間弱い心の
悶
(
もだ
)
えと怖れとがあり/\と現はれて見えた。それは其の汽笛の威嚇に
打
(
う
)
ち
克
(
か
)
たうとする反抗の色であつた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
すなわち、木は火を生ずるものとし、水は火に
克
(
か
)
つものとするの類にて、相生の方を吉とし、相剋の方を凶としてある。左にその表を掲ぐ。
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
が、外界の障害にはどうにかかうにか打ち
克
(
か
)
つて行つても、内面の障害だけは仕方がなかつた。次男は
殆
(
ほとんど
)
幻のやうに昔の庭を見る事が出来た。
庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
燕王父子、
天縦
(
てんしょう
)
の豪雄に加うるに、張玉、朱能、丘福等の勇烈を
以
(
もっ
)
てす。北軍の
克
(
か
)
ち、南軍の
潰
(
つい
)
ゆる、まことに
所以
(
ゆえ
)
ある也。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その話から又三郎が受けた感じは、かれらの生活の困難さではなくて、困難のなかにある
生甲斐
(
いきがい
)
、困難にうち
克
(
か
)
ってゆく緊張の力づよさだった。
野分
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これに打
克
(
か
)
って純理に従うのを唯一の善となした、
而
(
しか
)
もそのいわゆる理なる者は単に情欲に反するのみにて、何らの内容なき消極的の理である。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
拒モウトシテモ誘惑ニ打チ
克
(
か
)
チ得ズ、カエッテソレヲ喜ビ迎エル。ソコガ淫婦ノ淫婦タル
所以
(
ゆえん
)
デアルヿヲ、僕ハ見落シテイタノデアッタ。………
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
……それで仲間の奴等時々私を
揶揄
(
からか
)
いやがる。
息子
(
むすこ
)
が死んでも日本が
克
(
か
)
った方がいいか、日本が負けても、子息が無事でいた方が好いかなんてね。
躯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
義を見ては死を辞せざる、困苦に堪へ
艱難
(
かんなん
)
に
克
(
か
)
ち、初志を貫きて屈せず
撓
(
たわ
)
まざる、一時の私情を制して百歳の事業を
成就
(
じょうじゅ
)
する、これら皆気育に属す。
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
己に
克
(
か
)
つ、——聞いたことがあるだろう、己に克つって。——その己に克つことが、活人剣を握る人の心構えなんだ。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
彼が迷信的の恐怖に打ち
克
(
か
)
って、こういう非常の場合にも沈着で快活であることは、実にあっぱれとも言うべきで、わたしはいろいろの意味において
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
二百年間独立を全うしたアウカインジアンは、同じく短兵もて西人の騎馬鉄砲に
克
(
か
)
ちしを敵も歌に作って称讃した。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
われ若し能く此戀に
克
(
か
)
つにあらずば、此力以て世途の難を排するに足るとはいふべからず。試に此戀の前途を思へ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「そんな時は、
己
(
おのれ
)
に
克
(
か
)
たなくては。」兄は唐突なやうにかう云つて、手に持つてゐた杖を敷石の上に衝き立てた。
尼
(新字旧仮名)
/
グスターフ・ウィード
(著)
「僕が?」と、わたしは悲しげに
繰返
(
くりかえ
)
した。そしてわたしの胸は、うち
克
(
か
)
つことのできない名状すべからざる
陶酔
(
とうすい
)
にいざなわれて、あやしく
震
(
ふる
)
え始めた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
未亡人の絶対の信頼を
克
(
か
)
ち得ている女であったから、何かこの辺に事件の鍵があるのではなかろうか? と、嬢はこの申し立てにも、多大の重さを置いた。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
はじめて落着く場所にかえったような安らかさと、これから始ろうとする
試煉
(
しれん
)
にうち
克
(
か
)
とうとする
初々
(
ういうい
)
しさが、
痩
(
や
)
せた妻の身振りのなかにぱっと
呼吸
(
いき
)
づいていた。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
しからば私はなぜ自滅しないか。死が実感として目の前に来た私はまだ死ねない自分を明らかに認めた。それは本能的な死の恐怖に打ち
克
(
か
)
たれるのだという人もあろう。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
小生の力
能
(
よ
)
くこの苦痛に
克
(
か
)
ち四囲の困難を排除する事を得ば他日多少の事功を成就し得んも、この苦痛と困難とに打負くれば最早それまでにて滅茶々々に失敗致すべく
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
標高においては、遥かに欧洲アルプスの、湖水を凌いでいる、たとい湖の面積深度は、浅小でも、止水の明浄なことにおいては、彼に
克
(
か
)
っている、殊に槍ヶ岳山脈の北翼
日本山岳景の特色
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
反対に情味のとぼしく、知的要素に於て
克
(
か
)
ったものは、その冷感の故に客観的態度と言われる。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
が、報酬なしに土人が何物をも貸さないことを知っていた。が、彼の精根は、そうしたものに、すべて打ち
克
(
か
)
った。冬の終る頃には、一町近い畑が、彼の力に依って
拓
(
ひら
)
かれた。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
如何
(
いか
)
なる人でも境遇に
打
(
う
)
ち
克
(
か
)
つと云ふことは余程困難ですから、私は日本の様な不道徳な社会に
在
(
あ
)
る婦人は、とても
男子
(
をとこ
)
から報酬を望むことは断念せねばならぬと思ひますの
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
少し経てば、私はこの事件によって受けた
衝動
(
ショック
)
に打ち
克
(
か
)
つことが出来よう。この航海日誌をつけ始めたとき、私はそれを終わりまで書かなければならないとは考えていなかった。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
新しくなって行きつつあった日本文明の中で生きて来た者であって、西欧の文明に対して、
打
(
う
)
ち
克
(
か
)
ち難い憧憬をもっていた者である。私は実に、漢文よりはさきに横文字を習った。
明治十年前後
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
およそ
左道
(
さとう
)
に
惑溺
(
わくでき
)
する者は、財を
貪
(
むさぼ
)
り、色を好み、福を
僥倖
(
ぎょうこう
)
に利し、分を職務に忘れ、
外
(
そと
)
財を
軽
(
かろん
)
じ、義を
重
(
おもん
)
ずるの仁なく、
内
(
うち
)
欲に
克
(
か
)
ち、身を脩るの行なく、
生
(
うまれ
)
て肉身の奴隷となり
教門論疑問
(新字新仮名)
/
柏原孝章
(著)
軽躁と
自
(
みずか
)
ら認めている者すら、尚おこうしたもので有ッてみれば、
況
(
ま
)
してお勢の如き、まだ我をも知らぬ、罪の無い処女が
己
(
おのれ
)
の気質に
克
(
か
)
ち得ぬとて、
強
(
あなが
)
ちにそれを無理とも云えぬ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
死ぬのは悲しいという念よりもこの苦痛に
打
(
う
)
ち
克
(
か
)
とうという念の方が強烈であった。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
〔譯〕
眞己
(
しんこ
)
を以て
假己
(
かこ
)
に
克
(
か
)
つ、天理なり。
身我
(
しんが
)
を以て心我を
害
(
がい
)
す、
人欲
(
じんよく
)
なり。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
彼らは、その潮流と、その風とに到底打ち
克
(
か
)
つことができないということをさとると、ぐっとその能率を引き下げた。そして、流れない程度にだけ押して、再び船首を横には向けなかった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
今の計を為さんには、和親して以て二虜を制し、間に乗じて国を富まし兵を強くし、
蝦夷
(
えぞ
)
を
墾
(
ひら
)
き満洲を奪い、朝鮮を来たし南地を
並
(
あわ
)
せ、然るのち米を
拉
(
ひし
)
ぎ欧を
折
(
くじ
)
かば、則ち事
克
(
か
)
たざるは無し。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
この寒さにも
打
(
う
)
ち
克
(
か
)
たねばならず、それぞれ特別の用意が必要となる。
成層圏飛行と私のメモ
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
富岡の冷酷ぶりに打ち
克
(
か
)
つた気がした。昨夜、たやすく、加野の情熱に
溺
(
おぼ
)
れてゆかなかつた強さが、今日の幸福を得たやうな気がして、ゆき子は
何時
(
いつ
)
の間にか、満足してうとうと眠りに落ちてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
その空の
陰鬱
(
いんうつ
)
に
克
(
か
)
つて
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
命
(
めい
)
の
掟
(
おきて
)
になに
克
(
か
)
たむ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
かつは、帝王でいながら今日までの迫害と
艱苦
(
かんく
)
に
克
(
か
)
ちとおしてきた後醍醐を、彼は、平等な人間としても、心から尊敬していた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真に
克
(
か
)
つ者は
己
(
おの
)
れに
克
(
か
)
つを始めとなすべく、しかして後に人に克つべし。しかるに往々この順序を逆にするから結果がおもしろくなくなる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
社会の不安を激成する天変地異は仏法によって打ち
克
(
か
)
たれねばならぬ。そこで数知れぬ寺々、特に国分寺の造営が始まる。僧尼の需要も多くなる。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
「いやたとえ三十、四十になっていたとしても、こういう仕合せにめぐり逢えるとわかっていたら、人間はどんな困難にも
克
(
か
)
ってゆくことができるだろう」
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
翌年韓原の戦に負け掛かった時、去年馬を食い酒を
貰
(
もろ
)
うた者三百余人来援し大いに
克
(
か
)
ちて晋の恵公を
擒
(
とりこ
)
にした。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
もとより、彼は困難に打ち
克
(
か
)
つの快楽を否認するものではなかった。彼もまたその快楽を味わったことがあった。それは彼にとって生の歓びの一つであった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
燕将
張武
(
ちょうぶ
)
悪戦して敵を
却
(
しりぞ
)
くと
雖
(
いえど
)
も、燕軍遂に
克
(
か
)
たず。
是
(
ここ
)
に於て南軍は
橋南
(
きょうなん
)
に
駐
(
とど
)
まり、北軍は橋北に駐まり、
相
(
あい
)
持
(
じ
)
するもの数日、南軍
糧
(
かて
)
尽きて、
蕪
(
ぶ
)
を採って食う。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「三日。陰。夕雨。」一戸の記に拠るに、武揚等の兵が官軍を大野に夜襲して
克
(
か
)
たなかつた日である。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
黄の
克
(
か
)
った、明るみのある
嫩
(
わか
)
い緑で、霧の
雫
(
しずく
)
にプラチナのように光った裏葉を翻えしている。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
……寒さと慣れない仕事にうち
克
(
か
)
つためには、彼は絶えず背中をピンと張りつめていなければならなかった。教員室には、普通の家庭で使用する
煉炭火鉢
(
れんたんひばち
)
が一つ置いてあった。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
克
常用漢字
中学
部首:⼉
7画
“克”を含む語句
打克
一克
克己心
戎克
克平
克己力
哥薩克
博克図
克礼
克明
克己
克服
一克者
哥薩克踊
李克用
麻克
克巳
比斯馬克髭
牙克石
江克児
...