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鳴子
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なるこ
ふりがな文庫
“
鳴子
(
なるこ
)” の例文
さっさと、部屋を出て、介三郎はうろたえるお次より先に、ひとり玄関へ去ったかと思うと、もう庭の闇で、門の
鳴子
(
なるこ
)
が鳴っていた。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「一つ、そこに下っている綱を引っ張ってみて下さい。それで鳴る
鳴子
(
なるこ
)
が
親爺
(
おやじ
)
の方にも娘の方にも、両方の室にあるのですから。」
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
鳴子
(
なるこ
)
や
案山子
(
かかし
)
の立っている
辺
(
あたり
)
から折々ぱっと小鳥の飛立つごとに、稲葉に
埋
(
うずも
)
れた
畦道
(
あぜみち
)
から
駕籠
(
かご
)
を急がす
往来
(
ゆきき
)
の人の姿が現れて来る。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
何百年か
解
(
わか
)
らない
古襖
(
ふるぶすま
)
の正面、板の
間
(
ま
)
のような
床
(
ゆか
)
を
背負
(
しょ
)
って、
大胡坐
(
おおあぐら
)
で控えたのは、何と、
鳴子
(
なるこ
)
の
渡
(
わたし
)
を
仁王立
(
におうだち
)
で越した
抜群
(
ばつぐん
)
なその
親仁
(
おやじ
)
で。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
静岡県などではこの事をダオイといっている。小鳥は日中だけだから比較的楽だが、それでも
鳴子
(
なるこ
)
を時々の風にまかせていてはいられない。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
工場の天井には
雀
(
すずめ
)
おどしの
鳴子
(
なるこ
)
が渡してあって、疲れた女工の眠気をさますために、監督がヒモをひいて鳴らすのだった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
ある午後、粉飾せる死体のそばで、疲れ切って泥の様に眠っていた柾木は、婆やが土蔵の入口の所で引いている、
呼鈴
(
よびりん
)
代りの
鳴子
(
なるこ
)
の音に目を覚ました。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
すると、こちらの農夫も、
鳴子
(
なるこ
)
という因を田の上に釣り下げ、縄をひくという縁によって、からんからんと鳴らせて雀を追払わんとするのが果であります。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
山の田に百姓の鳴らす
鳴子
(
なるこ
)
の音にも逃げずに、黄になった稲の中で
啼
(
な
)
く声にも
愁
(
うれ
)
いがあるようであった。
源氏物語:40 夕霧二
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
物みなそうそうと黒く濡れそびれたなかに、
鳴子
(
なるこ
)
や
案山子
(
かかし
)
が、いまにも倒れそうに危うく立っている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その他
鳴子
(
なるこ
)
は、二之丸、
飯尾
(
いいお
)
の出丸にも兵をくばり、守備と反撃の体勢がみるまにととのった。
死処
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
つづいて一ヵ所の陥し穽で
鳴子
(
なるこ
)
の音がきこえた。
素破
(
すわ
)
こそと彼等は一度そこへ駈けあつまって、用意のたいまつに火をともして窺うと、穴の底に落ちているのは人であった。
馬妖記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
立ち続く峰々は
市
(
いち
)
ある里の空を隠して、争い落つる滝の
千筋
(
ちすじ
)
はさながら銀糸を振り乱しぬ。北は見渡す限り目も
藐
(
はる
)
に、
鹿垣
(
ししがき
)
きびしく
鳴子
(
なるこ
)
は遠く連なりて、山田の秋も忙がしげなり。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
蝙蝠冠兵衛に
狙
(
ねら
)
われると知って、屋敷の内外に
鳴子
(
なるこ
)
を張り渡した上、幾つも幾つも
罠
(
わな
)
を仕掛けて、苦もなく忍び込んだ巨盗冠兵衛を生捕りにし、番頭で用心棒を兼ねた伝六という男が
銭形平次捕物控:150 槍の折れ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
代匠記では
鹿鳴間沈
(
カナルマシヅミ
)
で、鹿の鳴いて来る間に
屏息
(
へいそく
)
して待っている意に取ったが、或は、「か鳴る間しづみ」で、
羂
(
わな
)
に動物がかかって音立てること、
鳴子
(
なるこ
)
のような装置でその音響を知ることで
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
雀
(
すずめ
)
や
烏
(
からす
)
を相手に、「おれはお人間さまだぞ。近寄って大事な稲を食うと、からき目にあわせてやるぞ」と威張ったが、雀の方では、二三度は
鳴子
(
なるこ
)
というトーキー式演出に驚かされたが、早くも
人造物語
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
鳴子
(
なるこ
)
を馬鹿にした
群雀
(
むらすずめ
)
が
案山子
(
かかし
)
の
周囲
(
まわり
)
を飛び廻ッて、辛苦の粒々を
掘
(
ほじ
)
っている,遠くには森がちらほら散ッて見えるが、その蔭から農家の屋根が静かに野良を
眺
(
なが
)
めている,
蛇
(
へび
)
のようなる畑中の
小径
(
こみち
)
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
六蔵は駈けて行つて
鳴子
(
なるこ
)
の綱を引つ張つた
都会と田園
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
鳴子
(
なるこ
)
の音がして
烏
(
からす
)
がぱっと飛んだ。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
露ぬれて
鳴子
(
なるこ
)
の縄や一たぐり 陽和
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
一兵がその
鳴子
(
なるこ
)
を引くと、次の兵から次の兵へ鳴子を伝え、電瞬の間に、(魏の襲撃あり)——は蜀軍のうちへ予報されていた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同
(
おなじ
)
やうに
吹通
(
ふきとお
)
しの、裏は、川筋を一つ向うに、夜中は
尾長猿
(
おながざる
)
が、キツキと鳴き、カラ/\カラと
安達
(
あだち
)
ヶ
原
(
はら
)
の
鳴子
(
なるこ
)
のやうな、
黄金蛇
(
こがねへび
)
の声がする。
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
北斎
(
ほくさい
)
などの読み本の挿画には、田舎の
豊饒
(
ほうじょう
)
を写し出そうとすると、きまって
鳴子
(
なるこ
)
に
頓著
(
とんじゃく
)
せぬらしい雀の大群が描いてある。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
谷中は
私
(
わたくし
)
風に
鳴子
(
なるこ
)
かな ウ白
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
同
(
おなじ
)
やうに
吹通
(
ふきとほ
)
しの、
裏
(
うら
)
は、
川筋
(
かはすぢ
)
を
一
(
ひと
)
つ
向
(
むか
)
うに、
夜中
(
よなか
)
は
尾長猿
(
をながざる
)
が、キツキと
鳴
(
な
)
き、カラ/\カラと
安達
(
あだち
)
ヶ
原
(
はら
)
の
鳴子
(
なるこ
)
のやうな、
黄金蛇
(
こがねへび
)
の
聲
(
こゑ
)
がする。
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
かねて、警戒のため設けておいた
鳴子
(
なるこ
)
が、水欄の辺で、とつぜん魔の笑いみたいにカラカラと音を立てたからだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから
鳴子
(
なるこ
)
を繩の中程に掛けて、風で自然に鳴るようにしてある他に、片隅には
筧
(
かけひ
)
で山水を引いて来て、それが自然にブリキの罐を叩くようにもしてある。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
岩淵をこちらに見て、
大方
(
おおかた
)
跣足
(
はだし
)
でいたでしょう、すたすた五里も十里も
辿
(
たど
)
った
意
(
つもり
)
で、
正午
(
ひる
)
頃に着いたのが、
鳴子
(
なるこ
)
の
渡
(
わたし
)
。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
烈しい水圧と共に、すぐ胸や足を
遮
(
さえぎ
)
るものがあった。河中へ縦横に張りめぐらしてある荒縄だった。縄には無数の鈴が
鳴子
(
なるこ
)
のように結びつけてある。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
案山子の人形なども同じことで、半日も見ていればこれが人間でないことは鳥にもわかる。雀なども
引板
(
ひきいた
)
鳴子
(
なるこ
)
には驚くが案山子の頭には折々は来てとまるかも知れない。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ガラガラと、
階下
(
した
)
の入口に懸けてある
鳴子
(
なるこ
)
が鳴った。——はっと、皆が声をのんで眸を澄ましていると、梯子の下を覗き込んでいた小野寺幸右衛門が
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
田圃
(
たんぼ
)
には
赤蜻蛉
(
あかとんぼ
)
、
案山子
(
かゝし
)
、
鳴子
(
なるこ
)
などいづれも
風情
(
ふぜい
)
なり。
天
(
てん
)
麗
(
うらゝ
)
かにして
其
(
その
)
幽靈坂
(
いうれいざか
)
の
樹立
(
こだち
)
の
中
(
なか
)
に
鳥
(
とり
)
の
聲
(
こゑ
)
す。
弥次行
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
なアに
聟
(
むこ
)
が手前と同職でござりまして、当節は
鳴子
(
なるこ
)
へ稼ぎにまいっていて、留守がないとってことわったのでござりますが、どうでも来てくれと申すのであアして行きました。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
両側の竹藪で、がらがらと、
鳴子
(
なるこ
)
が揺れた。しまったと、後ろへ跳び、元の道へ、走ろうとすると
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
高坂はかえって
唯々
(
いい
)
として、あたかも神に
事
(
つか
)
うるが如く、左に菊を折り、右に
牡丹
(
ぼたん
)
を折り、前に
桔梗
(
ききょう
)
を摘み、
後
(
うしろ
)
に朝顔を
手繰
(
たぐ
)
って、再び、
鈴見
(
すずみ
)
の橋、
鳴子
(
なるこ
)
の
渡
(
わたし
)
、
畷
(
なわて
)
の夕立、
黒婆
(
くろばば
)
の
生豆腐
(
なまどうふ
)
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
鳴子
(
なるこ
)
が鳴っている。
柴門
(
もん
)
の鳴子ががたがた鳴っている。たれか来たのだろう。開けてやれ」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鳴子
(
なるこ
)
も
引板
(
ひた
)
も、半ば——これがための
備
(
そなえ
)
だと思う。むかしのもの
語
(
がたり
)
にも、
年月
(
としつき
)
の
経
(
ふ
)
る間には、おなじ
背戸
(
せど
)
に、孫も
彦
(
ひこ
)
も
群
(
むらが
)
るはずだし、第一
椋鳥
(
むくどり
)
と
塒
(
ねぐら
)
を賭けて戦う時の、雀の軍勢を思いたい。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見届けながら、空しく逃げ降りてくる奴があるか。合図
鳴子
(
なるこ
)
は何のために備えてあると思うのじゃ。うろたえ者め! 早く鳴子を引いて
麓
(
ふもと
)
へ合図をしろ! 早く引けッ、鳴子をッ
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
〽風に
鳴子
(
なるこ
)
の音高く
湯島の境内
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
裏門の
鳴子
(
なるこ
)
を聞いたからである。客が客を
憚
(
はばか
)
るにしては、その眼はすこし
険
(
けわ
)
しすぎる。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鳴
常用漢字
小2
部首:⿃
14画
子
常用漢字
小1
部首:⼦
3画
“鳴子”で始まる語句
鳴子坂
鳴子屋
鳴子縄
鳴子仕掛
鳴子温泉