にほ)” の例文
其處そこふるちよツけた能代のしろぜんわんぬり嬰兒あかんぼがしたか、ときたならしいが、さすがに味噌汁みそしるが、ぷんとすきはらをそゝつてにほふ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
窓下の丁字の花がはつきりとにほつて来る薄雲りの晩に、森と青野が、町端れの音田の部屋でトランプ合戦に耽つてゐると、からたちの生垣の向ふで
まぼろし (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
その蕎麥そばにほひのするきたてのおもちなかからおほきな里芋さといもなぞがしろときは、どんなにうれしいでせう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あなたのそばへ寄ると鼠のにほひがしますよなどと男が戯談じやうだんを云ふと云ふ事である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
刈り草のにほいをいで、彼らはうっとりと酔心地になるようなことはない。
ほんに承はれば兼がわるう御座升だが孃樣御結婚はなさらず共御心に替りなくば、お嬉しう御座ませう靜夫樣も決て貴女をおわすれは、これおぼえがお有でせうと取出す手箱の内にほわせし白ばら一輪
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
路は小さい杜に入つて、月光を遮つた青葉が風もなく、四邊あたりにほはした。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
かげにして紫紺のにほひすさまじき藤浪にあれやけたる
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
机のにほひをいで、かろく打つ時
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
にほへるなみ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
かきはな時分じぶんくと、あのあまにほひのするちひさなはなが一ぱいちてます。時分じぶんくと、あのへたのついたあをちひさなかき澤山たくさんちてます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
づ、いろしろをんなはう、が、ゆきなすしろさ、つめたさではない。薄櫻うすざくらかげがさす、おぼろにほよそほひである。……こんなのこそ、はだへふより、不躾ぶしつけながらにくはう。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
路は小いもりに入つて、月光つきかげさへぎつた青葉が風もなく、四辺あたりにほはした。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
女童めわらはにほふ人づゑ肩触りてはずむぬくみのいろひ母めく
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一體いつたいは、すぐにもいてしまはずなんですが、生憎あいにく何處どこ停車場ステイシヨンにも暖爐ストオブ時分じぶん茶屋小屋ちややこや火鉢ひばちにほはすと、いた一端ひとはし燒切やけきらないうちに、ぎつけられて、あやしまれて
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
にほひのみ寂びたもつ
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
そこで女中ぢよちうをして近所きんじよ燒芋やきいもはせ、うづたかぼんせて、かたはらへあの名筆めいひつもつて、いはく「御浮氣おんうはきどめ」プンとにほつて、三筋みすぢばかり蒸氣けむところを、あちらさまから、おつかひもの、とつてた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)