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雖
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いえど
ふりがな文庫
“
雖
(
いえど
)” の例文
何人と
雖
(
いえど
)
も、少くも既に主義となって形成せられた現在の文芸の主義に対して、根本的に其の主義の善悪を言うことは間違っている。
若き姿の文芸
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
就
(
つい
)
ては方今の騒乱中にこの書を出版したりとて見る者もなかるべしと
雖
(
いえど
)
も、
一度
(
ひとた
)
び木に上するときは保存の道これより安全なるなし
蘭学事始再版之序
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
此両国の訴訟未だ決定に至らざるを以て、
竟
(
つい
)
に争端を起すに至る
乎
(
か
)
、平和に事を鎮する乎、両国の人民と
雖
(
いえど
)
も之を
卜
(
ぼく
)
とする事能はず。
黒田清隆の方針
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
非情の鏡と
雖
(
いえど
)
も恐らくは感慨の深いものがあるであろう。私はそれを思う毎に、いつもそこに或る小説的な興味をさえ感ずるのである。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
勿論彼の作物と
雖
(
いえど
)
も何日か弥次馬の玩弄品となる時があるかも知れない。然しそれは少なくとも彼の心血が悉く注ぎ尽された後である。
少数と多数
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
▼ もっと見る
事実はその正反対で、恐らく日本広しと
雖
(
いえど
)
も北九州の青年ほど天性、国家社会を
患
(
うれ
)
うる気風を持っている者はあるまいと思われる。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
では森下雨村氏と
雖
(
いえど
)
も気遅ればかりを標榜し(或いは
然
(
そ
)
うでは無いかもしれぬが)創作をしないという事は、
些
(
いささ
)
か当を得ないようである。
探偵小説を作って貰い度い人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
敬の著すところ、
卓氏
(
たくし
)
遺書五十巻、予
未
(
いま
)
だ目を
寓
(
ぐう
)
せずと
雖
(
いえど
)
も、
管仲
(
かんちゅう
)
魏徴
(
ぎちょう
)
の事を以て
諷
(
ふう
)
せられしの人、其の書必ず
観
(
み
)
る
可
(
べ
)
きあらん。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
当時又可笑しかったことには赤木と俳談を闘わせた次手に、うっかり蛇笏を賞讃したら、赤木は
透
(
す
)
かさず「君と
雖
(
いえど
)
も
畢
(
つい
)
に蛇笏を認めたかね」
飯田蛇笏
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
フランスへ行ったからといって、
忽然
(
こつぜん
)
として生れかわるわけではない位なことは自分と
雖
(
いえど
)
も万々承知はしているつもりである。
え゛りと・え゛りたす
(新字新仮名)
/
辻潤
(著)
然し自分が殺した証拠が斯くも多数にあると言うと、理性からの判断では、本人と
雖
(
いえど
)
も殺人を認めなくてはならぬことになる。
作家のみた科学者の文学的活動
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
此度
(
このたび
)
権現様小笠原与八郎を先手に
被
(
おお
)
せ付けられ
候
(
そうろう
)
。与八郎下心に挾む所ありと
雖
(
いえど
)
も、辞退に及ばずして、姉川にて先手致し勝利を得申し候。
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その時の彼の心情は
蓋
(
けだ
)
し憐れむべきものがあって、悔悟の状も溢れ出て、何人と
雖
(
いえど
)
もあの際尚彼を
笞打
(
むちう
)
つと云うには忍びなかったであろう。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
慕う慕うと
雖
(
いえど
)
も亦た及ばず是れ即ち
天賦
(
てんぷ
)
の文才にして到底追慕するも亦画餠に属すればなりと予は筆を投じて
嗟嘆
(
さたん
)
して止みぬ
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
酒を飲んで石に及ぶと
雖
(
いえど
)
も、水をもって
沙
(
すな
)
を
濯
(
そそ
)
ぐが如き者であったというのであるから、浴びるほど飲んでいたのであろう。
酒渇記
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
「それから、炊事場へ
露西亜人
(
ロシアじん
)
をよせつけることはならん。残飯は一粒と
雖
(
いえど
)
も、やることは絶対にならん。厳禁してくれ。」
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
既に書いてしまったものを今更悔いても仕方がないが、一度慚愧の念に襲われては、何事にも無頓着なる予と
雖
(
いえど
)
も、さすがに躊躇するのである。
家庭小言
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
という様なことが分ったばかりで、
如何
(
いか
)
なる名探偵と
雖
(
いえど
)
も、園内の
夥多
(
あまた
)
の人々の内から、真犯人を探し出すことは、殆ど不可能な仕事であった。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いかなるものと
雖
(
いえど
)
もそれらの人々のより高きを望む悟性に信頼し、より高遠な、より健康な生活への批判と創造とをそれらの人々に強いるべきが
新感覚論:感覚活動と感覚的作物に対する非難への逆説
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
かかる労力奉仕者なしに十数日
乃至
(
ないし
)
数十日に
亙
(
わた
)
る登山は、如何に不惜身命の行苦に心身を鍛錬した僧侶と
雖
(
いえど
)
も、不可能ではなかったかと想われる。
山の今昔
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
洋装の軍服を着れば如何なる名将と
雖
(
いえど
)
も、威儀風采において日本人は到底西洋の
下士官
(
スーゾフ
)
にも肩を比することは出来ない。
銀座界隈
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この後の成り行きは寒心すべきものありと
雖
(
いえど
)
も、兎に角、この風とこの雨と
微
(
なか
)
りせば、物は火炎の中に
灰燼
(
かいじん
)
し、人は焦熱の中に死すべかりしなり。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
「労働者の
癖
(
くせ
)
にいつの間にか、俺も観念論者になってたよ、
冗談
(
じょうだん
)
じゃねえ、老いたりと
雖
(
いえど
)
も鷲尾和吉これからなんだぜ」
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
た文の妙なるに
因
(
よ
)
る
歟
(
か
)
然
(
しか
)
り
寔
(
まこと
)
に其の文の巧妙なるには因ると
雖
(
いえど
)
も
彼
(
か
)
の圓朝の
叟
(
おじ
)
の如きはもと文壇の人にあらねば
操觚
(
そうこ
)
を
怪談牡丹灯籠:01 序
(新字新仮名)
/
坪内逍遥
(著)
老生もとより
愚昧
(
ぐまい
)
と
雖
(
いえど
)
も教えて責を負わざる無反省の教師にては
無之
(
これなく
)
、昨夕、老骨奮起一番して弓の道場を訪れ申候。
花吹雪
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
唯だその障碍を
蠲
(
のぞ
)
き、学者をして学問の実体を講ずるの力を
寛
(
ゆたか
)
ならしむるものに至らば、在野の人と
雖
(
いえど
)
も
亦
(
ま
)
たその責を分たざるを得ず(謹聴、喝采)。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
中には
頗
(
すこぶ
)
る其原曲の声調に合へるものなきにしもあらずと
雖
(
いえど
)
も、素より変則の仕方なれば、これを以て完美したりと称し難き事は何人も承知する所なり。
「四季」緒言
(新字旧仮名)
/
滝廉太郎
(著)
かしこの威徳
衰
(
おとろ
)
へたりと
雖
(
いえど
)
も、さすがは
征夷
(
せいい
)
大将軍の
居城
(
きょじょう
)
だ、
何処
(
いずこ
)
の門も、番衆、見張、厳重にして
隙間
(
すきま
)
がない。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
正しいことには千万人と
雖
(
いえど
)
も行く。この二つのもののどちらもが生命の中に強くなければならぬ。それが無いことは生命に対して真面目でないことである。
念仏と生活
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
本朝のアルピニストにして、後にアルプスに
驍名
(
ぎょうめい
)
を馳せられた人々に、
槇有恒
(
まきありつね
)
、松方三郎、浦松佐美太郎、
其
(
その
)
他の諸氏ありと
雖
(
いえど
)
も、辻村等は卒先者であり
「続スウィス日記」発掘の始末:附「スウィス日記」の由来
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
紙の裏を貫くような鋭い眼を以て、字という字は一つと
雖
(
いえど
)
も見逃さぬように一気に読み通してしまったのです。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
これで私の親友と
雖
(
いえど
)
も、私が誰だか判らなかったことであろう(図89)。日本人がこの焦げつくような太陽の下を、無帽で歩いて平気なのには実に驚く。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
再度の吟味に逢うと
雖
(
いえど
)
も白状致さぬ、毛頭覚えはないとのみ、
然
(
しか
)
れば主名を明かせと云えば
武士
(
さむらい
)
の道が立たん
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
況
(
いわ
)
んや、名誉に関する言議に、覆面の偽人は戒心を要する。さり
乍
(
なが
)
ら、英人と
雖
(
いえど
)
も、ハイド
公園
(
パアク
)
の散策に
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
廃
(
すた
)
れたる世なりと
雖
(
いえど
)
も、一人や、二人の義人はあろう。それでいい、一人もいなくとも、平山先生が
在
(
おわ
)
そう
三人の相馬大作
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
然りと
雖
(
いえど
)
も大酒は女の為す所ならず、宮方に申して暇を与う]と記されているのを
首肯
(
しゅこう
)
することができる。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
今でもあの門前に
石碑
(
いしぶみ
)
が立ってございます、わたくしには読めませんが、読んだ人の話によりますと『骨肉同胞たりと
雖
(
いえど
)
も、案内人無くして入ることを許さず』
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
さりと
雖
(
いえど
)
も、兵家の戦に、何ぞ米塩を用いんや。米塩ひとり君が
舐
(
な
)
むるにあらず、百姓の生資たるもの、百姓は是、国の大みたから、また攻伐にかかわりなし。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鞘の頂に一鱗片を具う。これを小舌という。小舌の両方に当て往々始め剛毛を具うと
雖
(
いえど
)
もこの毛は大抵後に至て落ち去るがゆえに老葉にはこれを見ざるを常とす。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
伏して
念
(
おも
)
う、某、青年にして世を棄て、
白昼
(
はくちゅう
)
隣
(
りん
)
なし。六魄離ると
雖
(
いえど
)
も、一霊未だ
泯
(
ほろ
)
びず、燈前月下、五百年歓喜の
寃家
(
えんか
)
に逢い、世上民間、千万人風流の
話本
(
わほん
)
をなす。
牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何百万倍も大きな
図体
(
ずうたい
)
の彼奴等が
躍気
(
やっき
)
となっている、だから、この小さい俺達一人々々と
雖
(
いえど
)
もそれだけの「自負」を持って仕事をして行かなければならないと云った。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
宋公の書いた文章の中には「心有りて善を
為
(
な
)
す、善と
雖
(
いえど
)
も賞せず。心無くして悪を為す、悪と雖も罰せず」という句があった。殿上にいた諸神はそれを見て
褒
(
ほ
)
めあった。
考城隍
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
如何なる場合もこの目的のために一命を
抛
(
なげ
)
うって努力すること、このスパイたることは、絶対に他人に
洩
(
も
)
らしてはならぬのみか、同志であるものを発見したときと
雖
(
いえど
)
も
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
まるで
腫
(
はれ
)
ものに触るように怖れているのだ。あれ以来、上官と
雖
(
いえど
)
も彼をぞんざいに扱う者はない。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
彼等が婦人に対して貞操を強ひ、賢妻良母を説く前に、何ぞ男子自ら貞操を全ふして、賢父良夫たらざるや。世に矛盾多しと
雖
(
いえど
)
も、恐らく斯くの如き大矛盾はなかる可し。
肱鉄砲
(新字旧仮名)
/
管野須賀子
(著)
出でては平なりと
雖
(
いえど
)
も重役、乗るに自動車あり、入っては細君の丸髷が小さくなった代りに家屋敷が大きくなって子孫繁昌和気靄々、子爵病も
疾
(
と
)
うの昔に忘れてしまった。
小問題大問題
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
昨夜(二十三日)も川端の紅燈家に婦と寝た。名を「小林光」綺麗な可憐な乙女だった。余は挫けはしない、何者と
雖
(
いえど
)
も余を挫くことは出来ない。愈々背水の陣か? 呵々。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
自己のみの理想と
雖
(
いえど
)
も明日はそれが一般のものと変じ、更らに又新らしき理想が生れて
恋愛と道徳
(新字旧仮名)
/
エレン・ケイ
(著)
そして自己に不利益と見えたものは天上の星と
雖
(
いえど
)
も除き去らずには
措
(
お
)
かぬという強猛な感情家のY、——併し彼は如何に猜疑心を逞しゅうして考えて見ても、まさかYが故意に
子をつれて
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
「一国の王者と
雖
(
いえど
)
も、位人臣を極めた者とて、美術を解し、食を弁ずる者はない」
味を知るもの鮮し
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
雖
漢検1級
部首:⾫
17画
“雖”を含む語句
雖然
猿雖
煩悩障眼雖不見
田乎婆雖作
荒野二者雖有
輅斉雖入地獄受苦
雖不知
雖千万人吾往矣
雖生於戎羯
雖称
雖老
雖辺土未清余妖尚梗而
雖近而不見