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阿呆
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あほう
ふりがな文庫
“
阿呆
(
あほう
)” の例文
花盛りの
梨
(
なし
)
の木の下でその弟とも見える上品な男の子と
手鞠
(
てまり
)
をついて遊んでいる若い娘の姿に、
阿呆
(
あほう
)
の如く口をあいて見とれていた。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「あの
阿呆
(
あほう
)
をね。たれがまあ手をつけたんだか——もっとも、
阿濃
(
あこぎ
)
は次郎さんに、
執心
(
しゅうしん
)
だったが、まさかあの人でもなかろうよ。」
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『ああ、いい
塩梅
(
あんばい
)
に
墜
(
を
)
ちやがつた。
自分
(
じぶん
)
の
眼玉
(
めだま
)
を
喰
(
く
)
ふなんて
阿呆
(
あほう
)
がどこにゐる。ペンペの
邪魔
(
じやま
)
さえゐなけりや、もう
後
(
あと
)
はをれのものだ。』
火を喰つた鴉
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
阿呆
(
あほう
)
やな、もし六波羅が落ちたら、どうなるのじゃ。六波羅はいま、新帝(
光厳帝
(
こうごんてい
)
)の皇居でもあろうによ! ……なぜ勅命を仰がぬか。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何が
阿呆
(
あほう
)
かいな? はい、あんた見たいに利口やおまへんさかいな。
好年配
(
えいとし
)
をして、
彼女
(
あれ
)
や
此女
(
これ
)
や
足袋
(
たび
)
とりかえるような——」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
それをすぐオーケーとばかりに承諾しては田代公吉が
阿呆
(
あほう
)
になるからそれは断然拒絶して夕刊娘美代子の前に男を上げさせる。
初冬の日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「てめえの馬鹿にも、あきれたもんだ。それほどの
阿呆
(
あほう
)
ではないと思って、一度大口の染めの注文をあつかわせてみたおれが、わるかった」
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
するついに春琴は「
阿呆
(
あほう
)
」と云いさま
撥
(
ばち
)
をもって
打
(
ぶ
)
った弾みに
眉間
(
みけん
)
の皮を破ったので利太郎は「あ痛」と悲鳴を挙げたが
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
いかに
阿呆
(
あほう
)
を装っても、もう誰一人葉之助を
愚
(
おろ
)
か者とは思わなかった。彼は高遠一藩の者から、偶像とされ
亀鑑
(
きかん
)
とされた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
或
(
あるい
)
は鼻の頭からやさしい長い触覚を出して、ソロリソロリと動かしながら、リンリンと人を哀れがらせ、
嘴
(
くちばし
)
と鼻を兼帯にして
阿呆
(
あほう
)
阿呆と鳴き渡り
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
祖母の話によると、君子の生まれるまでの母は
精神
(
こころ
)
というものを
前
(
さき
)
の世に忘れてきた人のように、従順ではあったが、
阿呆
(
あほう
)
のようにも見えたそうな。
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
「続け、続け」とウィリアムを呼ぶ。「赤か、白か」とウィリアムは叫ぶ。「
阿呆
(
あほう
)
、丘へ飛ばすより
壕
(
ほり
)
の中へ飛ばせ」
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「あれは関西で、
白痴
(
はくち
)
のことを言うんだよ」と言えば、沢村さんも、「そうとも、ボンチはつまりポンチと同じことじゃ。
阿呆
(
あほう
)
のことをいうんだぞ」
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
お鈴と入れ替って京屋へ来た男、——向柳原の熊五郎が請人で、
阿呆
(
あほう
)
の振りをしていた男——こいつが丈太郎でなかった日にゃ、俺は岡っ引をやめるよ
銭形平次捕物控:134 仏師の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
見ると、これは通常、社会に於て、馬鹿とか
阿呆
(
あほう
)
とか言われる種類に属した人品であることが一目でわかりました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一九二〇年十月極東白衛軍の総帥アタマン・アブラモーフ将軍が、ロマノフ朝最後の皇太子に永遠の
記憶
(
メモリー
)
を捧げたものが、このとてつもない
阿呆
(
あほう
)
宮だった。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
こちらのことを——もし知っているとすれば——「
阿呆
(
あほう
)
め」とでもいって、好い心持になっているであろう。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
だいたいダンスホールへ這入っていながら踊らないなんてことがこういう
阿呆
(
あほう
)
な感傷に落込むもとなんだ。
流浪の追憶
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
もっとえらいのになると、二十年もしてから
阿呆
(
あほう
)
になってひょっこりと出てきた。
元
(
もと
)
の
四
(
よ
)
つ
身
(
み
)
の着物を着たままで、
縫目
(
ぬいめ
)
が
弾
(
はじ
)
けて
綻
(
ほころ
)
びていたなどと言い伝えた。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
しかも私の目をつけているその
阿呆
(
あほう
)
自身が言い出して始まるように、よほど気をつけてやったのだった。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
お石は、唇を噛んでジリジリしながら、どう考えても
馬鹿
(
こけ
)
の
阿呆
(
あほう
)
に違いない自分の亭主を呪った。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
往
(
い
)
んで下さい、
阿呆
(
あほう
)
な事を、人情じゃから
愚僧
(
わし
)
は許すが
表面
(
おもてむき
)
になれば只は許さんぜ、何処までも届け出ますじゃ、出家という者はな、お前なぞは分らんから云って聞かすが
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
前足に
腫
(
は
)
れ物ができているということでがんしたが、なにしろ日もないことだし、それ例の読心術の応用で、
藁牛
(
わらうし
)
の前足に的を付け、そこばかり一心に突かしたら、
阿呆
(
あほう
)
も一字で
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「
阿呆
(
あほう
)
でそのうえ
悪擦
(
わるず
)
れしているんですから、かないませんわ。」と越春さんは云った。越春さんは助ちゃんのことというと、なぜかむやみに反感を
募
(
つの
)
らせる傾きがあったようだ。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
「
阿呆
(
あほう
)
め、おせんの
帯
(
おび
)
じゃ。あれがのうては、
肝腎
(
かんじん
)
の
芝居
(
しばい
)
がわやになってしまうがな」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
すり硝子の笠はとうてい見つけようもなく、二度と手にはいらない稀品でこのスタンドはこの笠一つで装われているものであったから、私は畳の上の破片をしばらく
阿呆
(
あほう
)
のように眺めた。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ルピック氏——もういいから、
黙
(
だま
)
っとれ、
阿呆
(
あほう
)
! わしから注意しといてやるが、もし、頭のいい
児
(
こ
)
っていう評判を
失
(
な
)
くしたくなけりゃ、そんなでたらめはよその人の前でいわんこった。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
一人は足
痿
(
な
)
えの
阿呆
(
あほう
)
、もう一人は足痿えの
佝僂
(
せむし
)
、もう一人は足も達者で、利口すぎるくらいでございますが、女学生でして、もう一度ペテルブルグへ行くと申して、何でもネヴァ川の岸で
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
落着きはらっているのは、
阿呆
(
あほう
)
だからこそのことだ。自分と対等の人間とほんの少しでも言葉を
交
(
か
)
わせば、万事は、こんな連中と長々しゃべっているよりも比較にならぬほど
明瞭
(
めいりょう
)
になるだろう。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
しかし、困ったといって、こうして腕を
拱
(
く
)
んで、
阿呆
(
あほう
)
見たいな顔はしていられない。どうにかしなければならないという気が何よりもまず先立って来る。あの百観音が今焼かれようとしている。
幕末維新懐古談:33 蠑螺堂百観音の成り行き
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そしてまた、政治家であることに誇りを感ずる思想家も
阿呆
(
あほう
)
である。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
阿呆
(
あほう
)
、ぐず、のろま、
意久地
(
いくじ
)
なしは云ふに及ばず、気取り屋、おしやべり、臆病、卑怯、未練、ケチンボ、コセツキ屋、悧巧者、ひとりよがり、逆上家、やきもち屋、愚痴こぼし、お世辞屋、偽善者
サニンの態度
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
この人はまるで
阿呆
(
あほう
)
のようだ。そのくせわたしの着物にはいろいろと世話をやく。あらい
柄
(
がら
)
のものをわたしが着さえすれば
悦
(
よろ
)
んで居る。ときには少女が着でもするような派手な着物を買ってさえ来る。
愛よ愛
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
阿呆
(
あほう
)
どもが! 俺を馬鹿者にしようとしてやがる……。」
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「伜は
阿呆
(
あほう
)
だが、好い
孫
(
まご
)
を生ませる爲に家に置く。」
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「
阿呆
(
あほう
)
の一つおぼえということがありますからね」
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
そういうものに熱中する君は、よほどの
阿呆
(
あほう
)
だ
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「いや、何とも致さぬが、もしこの中に少納言殿の
御内
(
みうち
)
でないものがいたと思え。そのものこそは
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
の
阿呆
(
あほう
)
ものじゃ。」
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「その信長を、
一頃
(
ひところ
)
は、稀なわがままものよ、
阿呆
(
あほう
)
の殿よと、今川家などにおいても、よう笑いばなしに取沙汰があったが」
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは無理もない事だ。しかし、僕だって
阿呆
(
あほう
)
ではない。朝から晩まで、ただ、げたげた笑って暮しているわけではない。それは、あたり前の事だ。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
働く者はみんな食える、貧乏はない、ということは
此
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く死の如く
馬鹿
(
ばか
)
阿呆
(
あほう
)
の如く平穏であることを銘記する必要がある。人間の幸福はそんなところにはない。
魔の退屈
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
何の気も付かない
阿呆
(
あほう
)
みたいな恰好で追払われながら引き退って来た。そのままこの事を姉と妻に話して聞かせると、二人もまたいい気なもので凱歌を揚げて喜んだ。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
阿呆
(
あほう
)
なぼくは時折、あなたのことを思い出しては、痛く胸を
噛
(
か
)
む苦さと快さを
愉
(
たの
)
しんでいました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
お舟は處刑され、お銀は
阿呆
(
あほう
)
拂ひにされて、間もなくお糸は伊三郎と娶合せられました。
銭形平次捕物控:175 子守唄
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
芸者はあきれた顔をして、しばらくその方を眺めていましたが、やがて
根
(
こん
)
かぎりの大きな声で、
阿呆
(
あほう
)
と呼びました。すると阿呆と呼ばれた客が端艇をこっちへ
漕
(
こ
)
ぎ戻して来ました。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「黙れ、
迂濶者
(
うかつもの
)
、この
阿呆
(
あほう
)
! ……密閉してある檻なんぞ、カラクリじゃ、まやかしよ! そのようなものに何んの何んの、
落人
(
おちゅうど
)
なんど隠して置こうか! ……
獣
(
けもの
)
の檻に、獣の檻に!」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして、自分ながら
阿呆
(
あほう
)
な訊ねようだと思ったが、もし京都からかくかくの
風体
(
ふうてい
)
の者で病気の静養に来ている者がこの辺の農家に見当らないであろうかと問うてみたが、それもやっぱり
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そこで、もし君が馬鹿でないなら、俗物の
阿呆
(
あほう
)
でないなら、
箸
(
はし
)
にも棒にもかからない大たわけでないなら、外国種の翻訳でないならばだ……いや実はね、白状するが、君は愛すべき
聡明
(
そうめい
)
な男だ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
捉
(
とら
)
え
阿呆
(
あほう
)
などと
口汚
(
くちぎたな
)
く云うのは
聞辛
(
ききづら
)
しあれだけはなにとぞ
慎
(
つつし
)
んで下されもうこれからは時間を定めて夜が
更
(
ふ
)
けぬうちに
止
(
や
)
めたがよい佐助のひいひい泣く声が耳について皆が寝られないで困りますと
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私はメリーが魔法使のお婆さんのために犬に化せられた人間の娘で、やがていつかはその魔法がとけて再びもとの娘の姿にもどるのではないかしらと、そんな
阿呆
(
あほう
)
なことを半ば本気で空想したりした。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
“阿呆”の解説
この記事には相手を中傷したりする不適切な言葉や表現が含まれています。
阿呆(ja: あほう、あほ・en: Idiot・zh: 白痴)は、愚かであることを指摘する罵倒語・侮蔑語・俗語。近畿地方を中心とした地域でみられる表現で、関東地方などの「馬鹿」、愛知県などの「タワケ」、石川県・富山県・島根県出雲地方などの「ダラ」に相当する。行動の愚かさだけでなく、学のなさなどもさす。また、そういう人のことを指す。「馬鹿」と同じ意味を持つ。
(出典:Wikipedia)
阿
漢検準1級
部首:⾩
8画
呆
漢検準1級
部首:⼝
7画
“阿呆”で始まる語句
阿呆陀羅経
阿呆鳥
阿呆顔
阿呆面
阿呆陀羅
阿呆陀羅經
阿呆駄羅経
阿呆宮
阿呆感
阿呆拂