“采配:さいはい” の例文
“采配:さいはい”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂12
吉川英治11
中里介山5
佐々木味津三3
林不忘3
“采配:さいはい”を含む作品のジャンル比率
歴史 > 地理・地誌・紀行 > アジア50.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.4%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「いや、あんたに、大きな宿屋の采配さいはいをふるわせてみても、面白いであろうと思う。たとえば、掛川の具足屋のような」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
わけて新田義貞の采配さいはい振りも、かつての鎌倉入りの日以上な冴えで、その用兵ぶりなど、さすがと思われるものがある。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半年の間、番頭の有八が采配さいはいをふるつて、文字通り床を剥がし、壁まで落して搜しましたが、小粒一つ出てこない有樣です。
御自身ごじしん采配さいはいって家人がじん指図さしずし、心限こころかぎりの歓待もてなしをされために
お千勢の矢場といふは、お千勢の母親のお組が采配さいはいを揮ひ、娘のお千勢の愛嬌を看板に、この二三年めき/\と仕上げた店でした。
その日、用いて来た鍾馗しょうきの馬じるし、きん采配さいはい、刀などに、感状をそえて、助右衛門に与えた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とうの中將殿(重衡)も管絃くわんげんしらべこそたくみなれ、千軍萬馬の間に立ちて采配さいはいとらんうつはに非ず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
二人の住僧が近郷へ托鉢たくはつに出て行くと、日吉は、隠しておいた木剣や、手製の采配さいはいを腰に差し、
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おまえにまかせる。いちいち、わしの令に待たんでもよい」と、あらましは彼の采配さいはいにゆだねていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奸物かんぶつにも取りえはある。おぬしに表門の采配さいはいを振らせるとは、林殿にしてはよく出来た」
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大勢の踊手が密集した方陣形に整列して白刃を舞わし、音楽に合せて白刃と紙の采配さいはいとを打合わせる。
雑記帳より(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
首の廻りに茶色の絹を巻いて、今日だけは奥と台所をいったり来たり、一人で采配さいはいふるってる。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
采配さいはい、陣立て、すべてはむろん、軍師ぐんし小幡民部こばたみんぶこれを指揮しきするところ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、真言を唱えつつ珠数じゅず采配さいはいのごとくに振り廻して、そうして向うから出て来る山雲を退散せしむる状をなして大いにその雲と戦う。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼の胸には、サッポロの彼らの使庁を采配さいはいしている岩村判官の得意げな顔が見えるようであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
……そこの森番が年寄りで、おまけに病気ばかりしているものですから、実際のところ、この私が、何から何まで采配さいはいをふっているようなものです。
家の中はひどくごた/\して居りましたが、采配さいはいを揮るつて居るのは番頭の徳松。主人の義弟で、此店の支配をして居る、新之助の姿は見えません。
叱咤しったに、声をからしていた秀吉は、さらに、左右の若者たちへ、烈しく采配さいはいを示して、
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わからば、采女うねめ! そちが采配さいはい振って、火急に七、八頭ほど、早馬の用意せい!」
紺地無紋こんじむもん陣羽織じんばおりをつけ、ひだりの籠手こて采配さいはいをもち、銀作しろがねづくりの太刀をうしろへ長くそらしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は日に一度位ずつその具足を身に着けて、金紙きんがみで拵えた采配さいはいを振り舞わした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
信長は、傍らの塗筥ぬりばこを小姓の手から授けた。特に、采配さいはいを賜わったのである。藤吉郎は初めて、信長から一個の将として許されたのであった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見張りに残ったのは三宅平七ただひとり。この男、旗本の次男でまだ二十三になったばかりだが、諸事みな采配さいはいふるって、なかなかおちついているのです。
絵で見た大将が持つ采配さいはいを略したような、何にするものだか、今もってわからない。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
采配さいはいを揮つたのは與力の笹野新三郎、夜は曲者を逃がすおそれがあるので、わざと林の中の捕物に眞晝を選んだのは、錢形の平次の智惠だつたのです。
——両方から訴えられた北条幕府は、どっちへ采配さいはいをあげたものかに迷ってしまった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「主人が縛られて、内儀が寢込むと、あの家は采配さいはいるものが無いから、娘の存分になるやうで、近頃は隱居所へ運ぶ三度の膳も大した御馳走ですよ」
——何とぞ、藤吉郎の秘策、御採用たまわって、諸事の采配さいはい、大処より御覧あそばして
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は実際には次官であったけれども、長官の席が空のままにして置かれたため、開拓使の問題——、従って北方の経営に関しては一切が彼の采配さいはいの下にあった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そのうち安斉あんざいさんという老人が指導主事として采配さいはいをふるっている。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
権高に店員をしかっているあんばい、むろんこの家の娘にちがいないが、どうやら店のこと、金の出入りの采配さいはいも、その娘が切りまわしているらしい様子でした。
「先頃まで、御老女様という大へんにけんしきの高いお年寄が采配さいはいを振っておいでになりましたが、近頃では、すっかり浪人者で固めておしまいになりましたね」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いくら冷淡と薄情とを信条として多勢の抱妓かかえ采配さいはいっているこの家の女主人にしても物の入りわけはまた人一倍わかるはずだと思ったのであった。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「よし、それも一策じゃ、しからばこの仕事の采配さいはいを土方氏、貴殿に願おうか」
しかし、地丸左陣方でも、大将自身出馬して物慣れた采配さいはいふるい出してからは、士気にわかに奮い立ち、反対に敵を圧迫し取られた木戸を取り返そうとした。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それとばかり采配さいはいを振り、自ら陣太鼓を打ち鳴らして、最後の突撃に移った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それほどに、信玄の采配さいはいは、敵の大将をさえ感銘させる神変をもっていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
采配さいはいを持っている右手も、左手のこぶしも、膝において、ひらきまたに、床几へ腰うちかけた姿勢は、余りに前かがみで、何となく、威風にさわるように思われる。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
値が出来ないで舌打をして引返す……煙草入たばこいれ引懸ひっかかっただぼはぜを、鳥の毛の采配さいはいで釣ろうと構えて、ストンと外した玉屋の爺様じいさま
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遊びのままごとは七つ八つ、もう少し大きなは冷淡になるに反して、この日は年かさの親玉ともいうべき者が采配さいはいふるって臨時に女の子ども組が組織せられる。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
北新堀の釜屋へ行くと、町役人が詰めかけた上、土地の御用聞が二三人、靈岸島の瀧五郎の采配さいはいで、裏表を嚴重に固め、出入りを一々檢査して、水もらさぬ大警戒です。
「人によっては、西郷につづく薩摩での人物だと言っている。益満が采配さいはいふるって、ああして江戸の市中を騒がしているのだから、まだまだ面白い芝居が見られるだろう」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これは簡単な殺しでした。へっつい横丁のお種の家が、臨時の事務所に当てられ、牛込の顔役で朝吉というのが采配さいはいふるって、手に余るとつい平次を呼んでくる騒ぎです。
直樹の父親の旦那だんなは、伝馬町てんまちょうの「大将」と言って、紺暖簾こんのれんの影で采配さいはいを振るような人であったが、その「大将」が自然と実の旦那でもあった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それはそういう尊いラマが俗人の頭に手を着けるということが出来ないから、そこで采配さいはいのような仏器をこしらえてそのうつわで頭をさすってやるのが按法器礼であります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「魏軍の盲動近し」とさとるや、その前夜、兵を分配して、石亭のうしろへ廻し、南北の麓にも堅陣をつらね、自身采配さいはいを振って、その正面から攻めのぼる態をなしたのである。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「寄手の勢は、柴田のおい、玄蕃允盛政が采配さいはいか」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人の次郎右衞門は六十前後、これは持病があつて、あまり店の方には出ず、五十年配の番頭平兵衞が采配さいはいを執り、手代喜三郎以下多勢の丁稚でつち小僧を指圖して益々身代を太らせるばかり。
罪も無い三ちやんをたたかせて、お前は高見で采配さいはいを振つておいでなされたの、さあ謝罪あやまりなさんすか、何とで御座んす、私の事を女郎女郎と長吉づらに言はせるのもお前の指図
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで米友が道庵を呼びかけますと、道庵は泰然自若として、前に自分が重しにかけられた切石の上に腰をかけ、片手には、最初に問題を引起した提灯をひろい上げて、采配さいはいを振るように振りまわし、
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鉄騎十万ラインを圧して南下したるの日、理想と光栄の路に国民を導きたる者は、普帝が朱綬しゆじゆ采配さいはいに非ずして、実にその身は一兵卒たるに過ぎざりし不滅の花の、無限の力と生命なりしに候はずや。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お前は高見で采配さいはいを振つてお出なされたの、さあ謝罪あやまりなさんすか、何とで御座んす、私の事を女郎女郎と長吉づらに言はせるのもお前の指圖、女郎でも宜いでは無いか、塵一本お前さんが世話には成らぬ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
出て来られる都合ならば又今までのやうにお世話に成りに来まする、成るべくはちよつとたち帰りに直ぐも出京したきものと軽くいへば、それでもあなたは一家の御主人さまに成りて采配さいはいをおとりなさらずは叶ふまじ
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
君臣の間の離反は、事ごとにみぞを深くし、とうていまどかな結果はあるまいと、誰しも予想したとおり、主水は家老の職をがれ、先代が依託した采配さいはいまで召しあげられたのを機会に、この日一門残らず三百余人
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
やむなく、道庵のもてあました軍勢を引連れてお角さんが、ここ美濃の国、不破の郡、関ヶ原で采配さいはいを振ってみようという段取りにまでなりましたが、本来、お角さんは、自分が興行師であって役者でないことをよく知っている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「殺された傳六はひどい奴で、成瀬屋の先代に奉公人とも居候ともつかずに入り込み、人の良い先代をだまして、到頭身代限りの目に逢はせ、首までくゝらせた上、今の總右衞門を伴れ込んで、自分が采配さいはいを振つて居たさうですよ」
一空さまが、柘植の家がもとこの和泉屋の持ち主で、宗庵の死後、娘のおゆうが采配さいはいをふるっていたはずなのが、それもなくなったのち、どうして柘植の家から離れるようになったのか、そこの関係はいまどうなっているのかと伊之吉にきくと
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
手代の伊介は三十一二、小意氣な男で道樂強さうですが、これはお勝手の采配さいはいを振つて事件には關係が薄く、もう一人の手代の源七は、たくましい二十七八の男ですが、庭にばかり居て、これは事件の前後には一度も家の中へ入りません。
ところが氏家をたすけに出た伊達軍の総大将の小山田筑前は三千余騎を率いて、金の采配さいはいを許されて勇み進んだに関らず、岩出山の氏家弾正を援けようとして一本槍に前進して中新田城を攻めたため、大崎から救援の敵将等と戦って居る中に
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「なんの理由もない、ただ、きみには連盟の首領たるべき権利がないと思うのだ。ぼくらはみんな白色人種である。連盟は白色人種が多数だ。それなのに、有色人種が大統領になって采配さいはいをふる、次回にはモコウ、すなわち黒人の大統領ができるだろう」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
口惜くやしいねえ、……(清葉が来るもんか。)呼んで下すった、それが私で、お孝が、こんな家へと云って貰いたかった。……私はそこへ手水鉢なんぞじゃない、摺鉢あたりばち采配さいはいを両手に持って、肌脱ぎになって駆込んで驚かしてやったものを。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なにしろ会場における不満連ふまんれんの総大将けん黒幕くろまくとしてはルーズヴェルト氏みずか采配さいはいを取っているという始末しまつであるから、我々の考えでは珍事ちんじなしには終らぬと気遣きづかったのも、今思えば杞憂きゆうに過ぎなかった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「やあ、三河町。いいところへ来てくれた。実は少し御用ごとがあるんだが、なにしろこの始末で動きが取れねえ。といって、若けえ奴らにばかりまかせて置くのも不安心だと思っていたところだが、どうだろう。おれの代りに采配さいはいを振って、若けえ奴らを追い廻してくれめえか」
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だって、武人の似絵は、どれを見ても、みんな強そうにか、でなければ、威権いけんを誇示しているのが普通でございましょう。ところがこの似絵のお人は、甲冑かっちゅうもつけず、床几しょうぎにかかって采配さいはいを持たず、衣冠束帯いかんそくたいというのでもありません。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこにお島を落着かせてから、壮太郎が荷物運搬の采配さいはいに、雨のなかを再び停車場へ出かけていってから、お島は晩の食事の支度に台所へ出たが、女がおりおり来ると見えて、しばらく女中のいない男世帯としては、戸棚とだな流元ながしもと綺麗きれいに取片着いていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
庸三はにわかに興奮を感じ、なお硝子戸の引いてある手摺てすりもたれて、順々に荷物の積まれるのを見ていたが、小池の采配さいはいですっかり積みこまれなわがかけられるのを見澄ましてから、煙草たばこを一本取り出してふかしはじめ、車の引き出されるのを待っていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その男も今は旦那だんなが死んで、堅いのを見込まれて、婿むこ養子としてあとわって、采配さいはいを振るっているという訳で、ちょっと悪くないから私もその気で、再びりが戻ったんですの。私はそうなると、お神さんのあるのが業腹ごうはらで帰してやるのがいやなんです。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その手一ぱいの買いしめが、これまでは図星に当って、たとえ世の中からは、何といわれようと、この分で、あきないが続くことには、長崎屋の世帯も、そのうちには、倍にはなる——と考えていたところへ、おぬしの今度の采配さいはい——関東の凶作に引きかえて、九州、中国にだぶついている米が
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「神や仏、そんなものが有るか無いか、拙者は知らん、ちょっと水が出たからとて百人千人はブン流されるほどの人の命じゃ、疫病神やくびょうがみが出て采配さいはいを一つ振れば、五万十万のらない命が直ぐにそこへ集まるではないか、これからの拙者が一日に一人ずつ斬ってみたからとて知れたものじゃ」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
主人の兵左衞門は、五十を越したばかりですが、しんやまひの持病があつて、寢たり起きたり、奧は若くて美しい後妻のおはま采配さいはいを振ひ、店は叔父と言つても、遠縁の掛りうどけい之助と、働き者の手代の喜三郎に任せて、手堅い商賣と、古い暖簾のれんの誇を持ち續けて居ります。
「多勢居たようです。料理の方は、重三郎という、これは顔馴染かおなじみの板前で、外に近所の女達二人、下女のお角が采配さいはいを揮って居たようで。奇月宗匠に貸しのあるのはうんと居ますが、怨みのあるのは一人もありません。下男の次六は、昨夜も鎌倉町の店へ使いに行って騒ぎのずっと後で戻って来たようで」
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
またのとき、東照宮家康公、侍臣にかたって曰く——いまどきの人、諸人のかしらをもする者ども、軍法だてをして床几しょうぎに腰を掛け、采配さいはいを持って人数を使う手をも汚さず、口の先ばかりにていくさに勝たるるものと心得るは大なる了簡りょうけん違いなり、一手の大将たる者が、味方の諸人のぼんのくぼを見て、敵などに勝たるるものにてはなし……これは軍事のおしえじゃが、和時わじにおける奉行の職務は、すなわち、邪悪を敵とする法のたたかいである。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)